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放課後を告げるチャイムが鳴り、今日は部活やら遊びに行くやらで教室が騒がしくなる。白鷺千聖は疲れたのか、背伸びをして、帰宅の準備をしている。彼女の親友である松原花音は茶道部の活動があるため、それを終わらせてから一緒に帰るとのこと。生徒がぞろぞろと人が出ていき、10分後にはあっという間に一人になった。
千聖は静かになった教室で、風の音や、ホイッスルの音を聞きながら、一人きりの教室てベースを弾いていた。今日は仕事が無いので久し振りに花音と近くのカフェテリアでゆったりできる。一曲引き終えた頃、ぱちぱちと一人の拍手が耳に入った。
「わぁ……、千聖ちゃん凄いね……!」
「あら、花音じゃない。ありがとう」
ふと顔を上げると、其処には部活を終えた花音がいた。お礼を言えば、ベースを片付ける。片付けを終えれば、肩に掛けて花音に「行きましょ」と声を掛けてから二人でカフェテリアに向かったのだった。
「千聖ちゃんって、好きな人いるの?」
「急にどうしたの、花音」
カフェテリアに着けば、花音から唐突に質問された。千聖は驚いたような表情を浮かべて聞き返す。花音曰く、「なんとなく気になった」と答えられた。千聖は首を横に振って、いないわよと答える。
「そういえば、幼馴染みの天馬くんには最近あってないけど……、元気にしてるかな?」
「……天馬?彼も彼なりに忙しいからなかなか会えないの。あと一応言うけど天馬とは付き合ってないからね?」
「うー、分かってるよー……!」
ふぇぇ、と口癖をついつい漏らしながら申し訳なさげな表情を浮かべる花音。そんな花音を見て楽しそうに笑っている千聖。
「私、あの人が好きなんだ」
「……え?」
あの人?誰のことかしら……。
千聖は少し考えた。まさか天馬?そんなことは無いわよね、絶対……。悶々と考えてから顔を上げてこう聞いた。
「花音、あの人って誰なの?」
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「花音、天馬と千聖は両思いなんだよ」
「ふ、ふぇ?薫さん、いきなりどうしたんですか……?」
事の発端は薫さん……ハロー、ハッピーワールドのギター担当の瀬田薫の一言だった。千聖や天馬の幼馴染みだったからか、二人のことをよくわかる彼女は、花音にそう言った。バイオレットのポニーテールを揺らし、ギターを弾く姿は某矢野さんみたいと言われているが、そこは置いておこう。
「二人を両思いにするために私も協力するよ。いつまでもうじうじしてて、花音だってやきもきするだろう?」
「確かに、言われてみればそうかも……」
花音は頷いて、苦笑いを浮かべながらその事を思い出していた。
それは一昨日くらいのことだった。土砂降りの雨が降った時のこと。その時の天馬は傘を持っておらず、鞄を頭に添えて雨を凌いでいた。所々、雨で制服が濡れているのが分かる。一方の千聖は傘をさして、ため息を吐いているようだ。
「天馬、ずぶ濡れじゃないの」
「……、千聖か。どうしたんだ?」
「たまたま通りかかっただけよ。これから家に帰るところなんだけど」
千聖はそう言うと、鞄の中から折り畳み傘を取り出す。驚いたような表情を浮かべる天馬を見てから顔を逸らした。ちなみに近くで見ていた薫曰く、「林檎のように赤く、儚かった」らしい。
「ほら、風邪引くわよ。髪拭いて。私の家に上がっていいからちゃんと風呂入って」
「う、うっせーよ!……別に邪魔しないとは言ってねーけど」
「ふふ、じゃあ行きましょ」
得意の演技でなんとか誤魔化した二人。勿論内心薫に見られていた。
(なんで私こんなに冷たくしちゃうのかしら。天馬だから許しちゃうのよね、きっと。でもなんでこんなに胸が締め付けられるのかしら……?何かの病気なら早く治さないと)
(俺、素直になれないんだよな。千聖、いつも俺の言葉で傷付いているはずだ。でも鼓動速すぎる……、いやまさかな)
「確かにそうですよね。あの二人、絶対付き合った方がいいんじゃないかって彩ちゃんも言ってましたし……」
「じゃあさっさと付き合わせよう。そうすれば花音もやきもきせずに済むだろう?試しに天馬が好きって言ってくるといい」
「……わ、わかりました!」
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「花音?」
「……あ、ちょっと考え事してたんだ。ごめんねっ」
花音は慌ててそう言って、深呼吸した。千聖を見据えて、席に座ろっか、其処で話すよ。と微笑みながらそう言った。
二人はテラス席に腰を掛けた。苺のケーキを食べる千聖に花音は先程の話を持ち掛けた。花音が好きな人について話す時、少し頬を赤らめていた。本当に好きですと見せるため、と薫にアドバイスされたんだとか。
「私ね、天馬くんが好きなの。びっくりしたかな?」
――ズキリ。
千聖の心は急に痛んだ。痛んだ場所をそっと手を当てて考える。この気持ちはなんなのか、私は天馬をどう思ってるのかなど。
(小さい頃から薫と3人で居たから、この気持ちに気付けなかったのかもしれないわ。……でも、もしかすると、心の中では恋の芽が出てたのかしら?)
(やっぱり、千聖ちゃんは天馬くんのことが好きだったんだ……!薫さんに報告っと)
花音:薫さん、やってみたら千聖ちゃんはやっぱり天馬くんのこと好きだったらしいですよ!
薫:素晴らしいよ、あの方法でやったんだね。
花音は作戦は成功したと思って薫にLINEを送った。千聖はそんな事を気にせずに顔を真っ赤にしながら考え事をしていた。
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次の日、千聖はいつも通り天馬と一緒に登校していた。昨日花音に天馬が好きだと言われたときからずっと心がもやもやしていた。
「おい、千聖どうしたんだよ」
「っ……!別に、何でもないわよ」
「はぁ?千聖が嘘つく癖なんて俺には解るからな!」
「仕事で疲れただけよ。昨日は無かったけど、花音と新作のスイーツとか食べに行っただけだから」
そんな他愛の無い会話をしていても、この速いドキドキは止まらない。何とかして止めようと早歩きをする。それに負けじと天馬も早歩きをする。
(なんで避けるんだよ、意味わかんねぇ)
(早く、早く終わって!このままじゃ私の心臓が持たないわっ!)
「はぁ、はぁ……、もう限界……」
「お前何があったんだよ」
柱に手をついて、息を切らしている千聖にむ、としながら聞く天馬。未だに頬が赤い千聖はなんとか手で隠して、何でもないとまた言った。
「そろそろ遅刻するわ。じゃあね」
腕時計を見てからさっさと千聖は行ってしまった。残された天馬。後ろから彼の同級生である七尾太一が現れた。
「今のって、有名な白鷺千聖チャンじゃないっすかー!なんでそんなに話せるんすかー!羨ましいっすー!」
「うるせぇ!一応幼馴染みだからな。彼女とかじゃねぇよ。小さい頃から一緒だったし、仕事とかでよく共演するんだよ」
そう言って、太一と一緒に登校する天馬。どうやら太一は二人が恋人同士だと思っていたらしい。
(千聖と俺が恋人か……、なれるならなりたいけど、あっちが拒否ってくるからな)
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今日はお仕事があったのか、三時間目頃に学校を出た。一度家に帰って支度してかか出るため、帰り道を歩いていた。
「……あ」
「ん、千聖か」
そういえば、今日は天馬も一緒に仕事に出るんだった、と思い出した千聖。軽く会釈して、さっさと家に戻ろうとすると、手を握られてしまった。
「ちょっと、離してっ」
「なんで避けるんだよ。ほら、家まで送るからな。拒否権なしで」
「……、わかったわよ」
ため息を吐いて、仕方なく天馬に着いていく千聖。ドキドキが止まらず、俯いて後ろで歩いている。一方の天馬は普通に歩いていた。
天馬をちらりと見てから、千聖は昨日のことを思い出した。
『私、好きな人がいるんだ』
『私ね、天馬くんが好きなんだ。びっくりしたかな?』
思い出すだけで胸がチクチクする。その度に自分は天馬が好きなのだ、と感じてしまう。天馬は私をどう思っているのか?なんて思いながらこう聞いた。
「天馬は今、好きな人はいるの?」
びくりと何故か肩を揺らしている天馬を首をかしげて見ている千聖。天馬は振り向いてこう言った。
「秘密。教えねーから」
「ちょっと、教えなさいよ!」
むっとしながらそう言っていると、いつの間にか家についていた。
「じゃ、外で待ってるからな」
「わかったわ。10分で支度を終わらせてくるからね」
くすりと笑ってそう宣言した千聖は、このあとちゃんと10分で支度を終わらせて、一緒に撮影場所に向かったのだった。
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そのまた次の日の朝。いつもより早起きをして、いつもとは違った髪型をしてみた。髪飾りは去年の誕生日プレゼントで天馬から貰った白のバレッタを付ける。
「似合ってるかしら……、プライベート以外で着けたことはないから心配だけど……」
なんてポツリと呟いて、頬を赤く染めながら位置を調整する。天馬は気付いてくれるのか。…彼のことだから気付かない、と千聖はそう思いながら支度をしていた。
寮の外で天馬を待ち初めてから20分。ようやく天馬が出てきた。食パンをくわえて、制服を着崩していた。
「ちょっと、制服は着崩さない。ほらパンを食べてていいから」
千聖は天馬の制服を整えて、腕時計を見ながら歩いていた。その間、天馬の熱い視線に気付かないままだった。
「お前、去年の誕生日プレゼントの……、結構似合ってるじゃねぇか」
「……!そう、ありがとう」
気付いて貰えたのが嬉しかったのか、心の中でガッツポーズをしていた。しかし、天馬の顔は真っ赤だった。
(なんで千聖を見ただけでこんなに胸が高鳴るんだ……?まさか、……いや、俺、やっぱり好きだったのか、千聖のこと)
千聖への恋心に気付いた天馬は、顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにしていた。
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「……、はぁ」
「千聖ちゃん、ため息つくと幸せが逃げちゃうよ!」
ぼんやりと窓を眺めていると、桃髪の女子がやって来た。同じバンドのボーカル担当の丸山彩だった。
「彩ちゃん、どうしたの?」
「千聖ちゃん、好きって言うなら早く言った方がいいよ。天馬くん好きな人多いらしいんだよね」
「そうなの?」
彩はまるで千聖が天馬の事を好きだと分かっているような感じで言っていた。モテることってあったのかしら、なんて考えていると、昔天馬が言っていた言葉を思い出した。
『千聖!大きくなったら結婚しよう!』
ああ、そうだ。毎日のように結婚しようだなんて言われてて、彼はマネージャーさんに怒られていたんだっけ。
思い出すと笑ってしまう。天馬は小さい頃から私のことが好きだった。それなのに、今は私の方が好きになっている。
「……、まさか私が天馬のことを好きになるなんて思ってなかったわ」
千聖は今日の帰りにちゃんと自分の気持ちを言おうと、そう決めたのだった。
白鷺千聖Shirasagi Chisato
Pastel*Palettesのベース担当。
本職は女優。
花咲川高校2年生で、所属する部活はなく、女優業とバンドに精を出している。
花音の親友で、彼女とはよく一緒に行動する。
瀬田薫は幼馴染みの一人だが、ナルシストな行動や言動に呆れている(花音に影響しないか心配)。
皇天馬Sumeragi Tenma
MANKAIカンパニー夏組のリーダー。
本職は俳優。
欧華高校2年生で、仕事や劇団に精を出しているので、部活には所属していない。
ルームメイトの幸とはケンカップルのような感じだが、本人らは否定している。
太一に幼馴染み二人のことを知られてからは、『天チャンはすごくモテモテ』と勘違いされてるが、大体薫のファン。