パルキアに転生して、着いた世界はリリカルな世界 作:DFGNEXT
平和にほのぼのと・・・そしてカオスな日常生活を歩むなのはたちを描いていきたいと思います。
それでは、どうぞ!!
後日談1「平和な日々の始まり」
ピピピピピピピピピピピピピp
「う、うーーん・・・」
目覚まし時計がけたたましく鳴り響き、なのはに朝の訪れを告げる。
腕だけを静かに伸ばし、探るように目覚まし時計を見つけ止めた。
少し頭がぼうっとして眠気を覚まそうとなのはは目をこする。
肩に顔を擦り付けてその小さな口を大きく開けてあくびをする。
口に手を当てながら、なのはは首だけを動かして時計を確認する
「ふぁ~あ・・・・・・今七時か・・・」
頭に血が上っていないのか、自分がセットした時間も忘れていた。
昨日は『大学へ向けての数学』シリーズを読破していて、
結局12時まで起きていたが、予想以上に早く起きてしまった。
なのは自身は今そう感じていた。セットしたことすら忘れていたのだ。
今日は日曜日。しかもまだ春休み。
砕け得ぬ闇事件から3日たっただけなのに、今は大分平和だった。
眠い頭を揺らしながら、なのはは部屋を出て洗面所に向かう。
洗面所に向かうと、すでに先客がいた。
「あぁ、なのはか。おはよう」
「おはようナハト。珍しいね。こんな時間に起きてるなんて」
「今日は私は仕事は休みだからな。あの兄妹は早起きして道場にいるが」
銀髪を靡かせながら、顔にタオルを当てる彼女の名前は「ナハトヴァール」
三か月ほど前の『闇の書事件』で姿を現した防衛プログラム。
その闇の書の防衛プログラムが意思を持った存在だ。
夜天の書の管制人格の知識と一部の感情だけを受け継ぎ誕生したため
その見た目はリインフォースととてもよく似ている。
そのため本人たちは自分たちを区別のために、
ナハトヴァールが髪型をポニーテールにしている。
銀髪に赤色のリボンがどことなくかわいさを思わせるが、
朝だからなのか、男性者の白いシャツを着ているために
どうしてもプラスマイナスゼロになっているなとなのはは感じた。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんは朝早いからね。
わたしは逆に夜遅くまで起きている方だけど」
なのはの姉『高町美由希』は剣術を学んでおり、兄の高町恭也はその師匠だ。
二人は基本的になのはたちよりも早起きし、自宅の道場で日々鍛錬を積んでいた。
なのはは朝に弱くはないものの、基本的に夜型だった。
そんななのはを心配するようにナハトは声に出して忠告する。
「また夜更かししたのか、小学生なんだからもっと早く寝たほうがいい」
「大丈夫だよ。12時までしか起きてないし」
確かに睡眠時間7時間には足りてはいるように思われるが、
眠るのに時間が多少はかかっているはずなので健康に悪いだろうと
ナハトヴァールは素直な気持ちでそう感じていたが、言葉には出さなかった。
「それに・・・数学者になるって夢、まだ諦めてないからね。
まぁ、パズル作家でもいいかなとは思っているけど」
「お前はギヴァーよりもソルヴァ―向けだと思うのだが・・・」
「わたしはソルヴァ―と戦う方が好きだけどね」
なのはは顔の寝ぼけ眼を覚ますため、洗面所で顔を洗う。
まだ冬が過ぎたばかりで肌寒い中、冷たい水が眠気を取り払ってくれた。
タオルをナハトから受け取り、少しだけ湿ったそれでなのはは顔を拭る。
「ありがとう、ナハト」
タオルを再び渡してナハトにお礼を言った後、
なのははフェイトと交換した大切な黒いリボンを髪につける。
慣れた手つきでなのはは髪にそれを付けると、瞬く間に、
いつもの髪を両脇で結んで弧を描いている「跳ね髪」が誕生した。
「どういたしまして、なのはは今日はどうするんだ?」
仕事が休みなので、ナハトは家で寛ぐ予定だった。
ナハトにそう聞かれたなのはは少しだけ考えるようなそぶりをした後、答えた。
「今日の午後はレヴィたちが来るからね。とりあえず午前中は散歩でもしてるよ」
レヴィとラティオ。この二日間二人はよく高町家に遊びに来ていた。
今日も午後はなのはも予定がないので了承していたのだった。
「そうか、まぁ、気を付けてな」
「うん」
なのはは明るくそう言い返すと、道場で訓練をしているであろう
兄の恭也と姉の美由希を呼びに行っていった。
そろそろ朝食の時間だ。
◆◆◆◆
家族そろっての朝食を食べ終わるとなのはは後片付けをした後、部屋へと戻る。
今は8時を丁度過ぎたころだった。午後までは散歩に行くことにしていた。
なのはは部屋に戻ると、タンスからお気に入りの衣服を取り出す。
黒いパーカーを上に羽織り、濃紺のカーゴパンツを穿く。
そしてなのははタンスの下の棚からリュックサックを手に取った。
黒色の地味目のリュックサック。女性、そして10歳になる女の子が
背負うようなタイプのものではなかったが、なのははその利便さを気に入っていた。
なのははその中に、携帯電話、財布、携帯端末タブレット、ハンカチ、ティッシュなど
出かけるのに必要なものを手当たり次第に詰め込んでいった。
仕舞い方にもこだわりがあり、沢山ものを詰め込んだがまだまだ空きがあるほどだった。
「よし、これで準備OKっと・・・」
なのははそう口に出すと、今度はタンスの傍にかけられた
またまた黒いキャップの帽子を手に取った。
上から下まで順序良く見ても真っ暗という印象を受ける衣服。
家族どころか、ナハトにすら「地味」と称されたされたコーディネート。
だが、なのはとしては余計な装飾がないこの姿が一番気に入っていた。
見た目的にもあまり目立たない方が、今のなのはの好みだった。
バリアジャケットや制服が白くて目立つ姿なので、
本能的に真逆の色を選んでいるようだった。
なのはは家族に行ってきますの挨拶をすると、お気に入りのシューズを履いて
翠屋がある駅前商店街へと歩いていった。今日は電車に乗って遠出するのだ。
軽やかなステップをしながら、なのはは駅まで向かっていくのだった。
◆◆◆◆
さて日曜日は、当然学校が休みである。さらに春休みの終盤ときた。
駅に向かったなのはだったが、珍しく人の数はかなり少なかった。
切符を買って、なのはは電車に乗り込む。
わざわざ計算してまでちょうどいい時間を選んだが、ドンピシャだったようだ。
線路を走りながら、少し揺れる電車の中でなのははしばしの休息を味わうのだった。
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そしてなのはは、電車で約30分ほどかかる平墳駅にやってきた。
各駅列車を使用しても一駅で着くほどだから、かなり近い方の街だった。
改札をくぐり、駅の外に出ると、三月の終わりとあってのあまり強くない日差し。
そして、少しだけ肌寒い風がなのはの頬を撫でていった。
現在時刻は8:45分・・・時間的には余裕だ。
なのはは心機一転とばかりに大きく深呼吸、
そして背伸びをすると街に出歩いていった。
なのはがこの街に来るのは久しぶりだった。
道に迷うような街の構造自体が変わっているわけではないが、
所々佇んでいる店が変わっていたりしていて、意外と新鮮な気持ちだった。
なのはがここに来たのは街にある商店街を散歩することだったが、
もう一つ、この街には独特の店が存在していたのだ。
その名も「数学喫茶-
その名の通り、喫茶店であるのだが、
かつていろいろと話題になった数学カフェとよく似たもので
フランスではカフェで哲学の話と議論をする「哲学カフェ」
それを哲学者が始めたことがきっかけで誕生したらしい。
違うところは討論の場というよりは本質はあくまでも喫茶であり、
お店のなかで人と駄弁りながらゆったりとした時間を過ごすところだ。
もちろん、その名が示すようにこの店は数学の討論をしたり、
はたまたパズル大会参加者の試作品パズルを出し合ったりと
数学、パズル好きにはたまらない空間でもあった。
なのはは喫茶店の店主の娘としては他人の喫茶店に行くことは
最初のうちは少し罪悪感があったが、今では微塵もなかった。
方向性が同じ喫茶店と言っても違うことが、それを後押ししていた。
中小商店が立ち並ぶ商店街をなのはは歩いていく。
三日前までの激戦、悲劇がまるで幻想だったかのように平和だった。
久しく感じていなかったその空気を今日改めてその身で実感しながら、
なのはは顔を緩ませながら、静かに微笑んでいた。
やがて道を歩いていくと、まわりの店の雰囲気が変わり始めてきた。
ここから先は風俗店が立ち並ぶ歓楽街となっていく。
そんな店と店との丁度境に「数学喫茶-楠芽-」はあった。
その外観は今風のカフェよりも古めかしい喫茶店という感じであり、
少し灰色がかった白色の外壁といかにも洋風といった窓が特徴的だ。
そんなお店の黒い四角いドアをなのはがくぐると
カランカランと心地よいドアベルの音が鳴り響いた。
その音に気が付いたのか、
コーヒーのカップを丁寧に拭いていたマスターが反応を示した。
この店のマスター『
高校時代から数学、パズルにのめり込んだ人間であり、
パズルの大会では上位にいたこともある優秀な
年齢は27歳で見た目は少し乱れながらも、不思議と嫌悪感はない髪形。
そして黒縁のめがねが印象的な長身の男性だった。
「おや、いらっしゃい。高町さん。お久しぶりですね」
「お久しぶりですマスター。コーヒーを一杯とシナモントーストを一つ」
「かしこまりました」
なのははマスターに注文をすると開いているカウンター席に座った。
今の時間は10時少し前。周りを見ると客はなのは以外一人もいない。
ギリギリお昼時前ということで、喫茶店内は静けさを保っていた。
この店はカウンターが他の喫茶店に比べれば小さい。
どちらかといえば四五人が座れるテーブル席のほうが多い。
理由はとても簡単なもので、この店が数学喫茶だからだ。
カウンターでマスターと駄弁る人も多いが、お昼時やお昼過ぎでは
テーブル席は数学、パズル好きで満席になることもあるらしい。
カウンター席に座ったなのはは頼んだ品物を待つ間に、
傍らに置いたリュックサックから水色をした大学ノートを取り出した。
それを見たマスターが興味津々とばかりに
作業は続けながらなのはの方を向き、問いかけた。
「おや、新作ですか?」
「はい、今回はパズルのほうですが」
なのはが取り出した大学ノートに書かれていたのはパズルだった。
図形パズルやナンバープレース、ナンバークロスワードパズルなど
ロジックパズルを除いたなのはが作り上げたパズル群がそこには書かれていた。
ロジックパズルが入っていないのは、単純になのはの求めるものと違うからであり、
なのはがロジックパズルそのものを苦手としているわけではなかった。
ちなみにこの喫茶店はロジックパズルももちろん大丈夫である。
なのはが出したのはクリスクロス。日本ではスケルトンと呼ばれるパズルだ。
あらかじめ指定された単語を指定の枠に埋めるというルールは単純なものだ。
ただしクロスワードと違うのはどこに単語を入れればよいかのヒントがないこと。
厳密に言えば文字数などから、
それがこのパズルの特徴的なところであり、面白い部分でもある。
なのはが作ったのは数字を埋めていくタイプのクリスクロスだった。
それを見たマスターは顎に手を当てながら、うーんと唸る。
そしてわずか数秒後にはハッと顔を明るくしながら、鼻歌を歌い始めた。
やがてこの店自慢の珈琲とシナモントーストを持ってくる。
「珈琲とシナモントーストでございます」
「ありがとうございます。それでこのパズルはどうですか?」
受け取った湯気がほのかにのぼるそのコーヒーを一口飲むとなのははそう聞いた。
するとマスターはどことなくニマリとした様子で笑うとカウンターに置かれていた
鉛筆を華麗に取り出し、スラスラと答えを書いていった。
なのはは急いでその答えを確認する・・・すべて正解だった。
驚いたなのはが恐る恐るといった様子で頭を上にあげると
そこにあったのは少しだけドヤ顔をしているマスターの姿だった。
「なかなか楽しいパズルでしたが、やはりまだまだですよ」
ドヤ顔でそう返されてしまったが、なのはには言い返せない。
これでも二日かけて作り上げた新作だったのだ。無理もない。
なのはの心に多少残っていたプライドが完全に崩れ去った。
なのははレモンをシナモントーストにかけながら言った。
「あぁ、残念です。今朝、家族にも言われましたが、
やっぱりわたしはソルヴァーのほうが向いてるんでしょうか?」
「まだ高町さんは小学生ですからわかりませんよ。
でも今はギヴァーよりはソルヴァーのほうが向いてますね」
「そうですか・・・はむ」
マスターからの少しだけきつい言葉を聞きながら、
なのははふんわり甘いシナモントーストを口に頬張った。
「でも、まだまだパズルはたくさんあります。
お客さんが来るまで解いてくれますか?」
「喜んで」
なのはの提案に迷うことなくマスターは了承した。
大学ノートをめくる音とえんぴつが流れる音だけが響き渡る空間。
なのはの休日はまだまだこれからだった――――
伏線というよりは今回は伏線回収回です。←大ヒント
ってここまで書くとわかる人にはわかっちゃうよなぁ・・・展開・・・