よろしくお願いします。
どうも皆さんこんにちは。私の名前は片岡 空。極めて一般的な転生者です。よろしくお願いします。
前世はしがないブラック企業勤め。心身ともにズタボロになった社会人2年目の春、交通事故でポックリ死にました。そこから転生して2度目の人生を歩んでます。
いやー、にしても転生ってホントにあるんですね。前世では割とオタク気質なところがあり、そういった方面も理解はあったつもりですが。実際に経験してみると何も言えなくなってしまいます。
マジで神的な何かがいましたし、話もしました。二次創作では適当かつ強引な感じの性格で描写されているものが多かった気がしますが、礼儀正しく融通のきく方でしたね。その恩恵で今私はここにいるわけですし。でもあいつは許しません。覚えてろよ神的な何か。
さて、私が神的な何かに土下座して転生しました世界は『ワールドトリガー』という作品になります。他にもいろいろ考えはしたんですが、迷った結果これを選びました。
え、何故かって?それはもちろん、オペレーターのみかみかと結婚したいからですよ!
ワールドトリガーという作品をご存知ない方に軽く説明しますと、この世界は「
そこで出てくるオペレーターの女の子たちが可愛くて可愛くてですね、端的に言えば大好きなんですよ。
その中でもみかみか、三上歌歩ちゃんという子が私、大好きです。早く会って結婚したい。いっしょにとんこつラーメン食べに行きたい。大福作ってあげたい。よってワールドトリガーに転生しました。
煩悩だらけですね、でも悪いのは私ではありません。あんな可愛い子を産み出してしまった葦原先生が悪いのです。私は悪くない。
と、ここまで長ったらしく話してきたわけですが、私今、非常に悩んでます。聞いていただけますかね。
「……バイパーが使えない、だと……?!」
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
とりあえず、この悩みに至った経緯をお話しましょう。
今世では極めて一般的な男子中学生。その日はボーダーの試験の合否発表に来てました。
まあありがたいことに結果は合格。適正トリガーやパラメータの書類をいただき、自分のトリガーを決めるため、早急に自宅に帰った次第です。
「お兄ちゃん、よかったね。これで一緒にボーダーで仕事できるよ」
「そうだねぇ、夕ちゃん。よかったよかった」
この私には良くできた妹の名前は片岡 夕。2つ下の小学六年生です。
「早くどんなトリガーが使えるか見てみよ?」
ということでもらった書類を拝見。
ふむふむ。パラメータは前世のファンブックみたいな感じで書かれてますね。
「わぁ、イーグレット、だって。私の適正トリガー。スナイパーってこと?」
なんと。夕ちゃんはイーグレットを使うのですか。
まあ彼女は集中力がありながらも、感覚で物事をそつなくこなす生まれつきの天才というやつなので、今回もさらっとマスターするとは思いますが。
ぶっちゃけ私ではなく妹が転生者なのではと思うことがよくありますが、まあそれはおいといて。
私のパラメータに関しては、概ね納得のいくものでしたね。神的な何かに土下座した甲斐もあり、トリオンも多く他の能力も期待通りといったところでしょう。あとは適正トリガーですが……
「お兄ちゃんのは……、弧月、だって。これって、日本刀みたいなかっこいいやつだよね。やったね、お兄ちゃん!」
………え?
弧月、ですって?
「お兄ちゃんが攻撃手で、私が狙撃手になるのかなぁ……、頑張ろうね!」
ちょ、ちょっと待ってください?
本来なら、私の適正トリガーはバイパーになっているはずでは…
「ゆ、夕ちゃん、ちょっとその紙貸してくれるかな?」
「うん。お兄ちゃんのだし、もちろん」
待ってくださいね、私がこの目で適正トリガーの紙を見てみますから。夕ちゃんのことを信頼してないわけではないですが、転生者特典でバイパーを扱うための能力をもらってきた私がバイパーの適正をもってないはずがありません。
しかとこの目で見てやりましょう!
「な、何度見ても……、弧月、弧月ですって?し、しかも……」
現実は、残酷でした。
「……バイパーが使えない、だと……?!」
どこにもバイパーの文字がありませんでした。
おのれ神的な何か。許さん。
モノローグ、終了です。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
突然ですが、私はワールドトリガーに出てくるトリガーの中で、ボーダーのものだとバイパーが一番好きです。全部含めるとアフトクラトルの弟さんが使ってた雷の羽なのですが、まあとにかく自由度の高い射撃トリガーが好きなのです。
せっかくワールドトリガーの世界に転生したのですから、ボーダーには入りたいです。ボーダーに入るならば、1番好きなバイパーを使いたいです。なのでそれを考えて、転生者が1つ貰えるという特典はバイパーを使うための能力にしました。バイパーは複雑な軌道を描く弾丸トリガーのため、想像以上に使用者のセンスが求められるのです。センスないせいで使えませんでしたー、なんて嫌ですから。
え、みかみかとの結婚はどうしたって?いや、やっぱり夢は自分の力で叶えたいじゃないですか。
ということなので、第1目標のみかみかとの結婚は自分の力でなんとかしたいですが、この世界を楽しみ尽くすためにちょっとズルをさせてもらいます。心の広い皆さんなら許してくれるかと思ったんです!許してくれますよね!
前世では仕事は苦行だったので、せめて今世では仕事に楽しみを、何卒何卒。
そんなわけで高をくくって生きてきたわけですが、まさかバイパーを使えないとは……!
「どうしたのお兄ちゃん、さっきから黙っちゃって。大丈夫?」
おっと、この怒りを外に出さないよう努めていただけなのですが、夕ちゃんに心配をかけてしまったようですね。では最後に心の中で大声で。
(特典はどーした神的な何か!訴訟も辞さないレベルですよ!)
まあ最悪バイパーが使えなくとも、みかみかと結婚できればそれでいいのですが……
「大丈夫だよ。それより、夕ちゃんの適正トリガーは狙撃手用な訳だけど、どうするつもりなの?」
「うーん、私はお兄ちゃんの助けになればなんでもいいし、合ってるっていうならそれでいいかな」
なんと、聞きましたか皆さん。天使がここにいますよ。こんなこと言われてはお兄ちゃん冥利に尽きますね。
しかし、兄としてはここで言わなければいけないことが一つ。
「私のことを考えてくれるのは嬉しいけどね、夕。一度しかない夕ちゃんだけの人生なんだ。それでいい、じゃなくて、それがいい、と納得できるものを選んだほうがいいよ」
それを聞いて、夕ちゃんは大きく目を見開き、そして俯いてしまいました。
わ、私はまた何かやらかしてしまったでしょうか。前世では一人っ子だったため、いかんせん下の子の扱いがわからないのです。昔も今も、夕をよく泣かせてしまいます。
「……ぉにいちゃんの」
「な、なんだい、夕ちゃん」
「おにいちゃんの……、お兄ちゃんのバカーーーーー!」
「?!」
そう言って、夕ちゃんはリビングから2階に向かって走っていってしまいました。恐らく自室に向かったのでしょう。
「そ、そんな。何が悪かったのか……」
とりあえず、できるだけ今日の夕食は豪華にしましょう。あとは平謝りするしかありません。
今日も私は、転生者のくせに至らないところばかりです。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「というわけで、ボーダーには無事受かりました……」
「おお、おめでとう!」
夕ちゃんと喧嘩してしまった翌日、中学校に登校中です。
ああ、どうしましょう。まだ夕に謝れてません。朝食も食べずに夕ちゃんは小学校に行ってしまいましたし…。ああ、どうすればいいんでしょうか。
「ランク戦の話聞いたか?前々から言ってたけど、入ったら俺とやろうな」
この元気な友人は出水 公平。お察しの通り、原作キャラです。小学校からの友人になります。
小学校に入学して、この名前を見てからすぐに話しかけに行きました。いや、まさか同学年だったとは…!
嬉しいです。なぜなら、出水と同学年=みかみかとも同学年になるからです。
も、もちろん出水と友達になれたのも嬉しいんですよ。那須さんとこいつだけですから。バイパー使いこなしてる射手は。
「楽しみだな、空!トリガーは何使うつもりなんだ?」
「……」
「……っておいおい、どうしたんだよ。また夕ちゃんと喧嘩でもしたか?」
さすが、弾馬鹿のくせに成績はそこそこ、洞察力やセンスは一級品の出水です。小学校からの付き合いもあってか、バレバレだったみたいですね。
「ええ、まあ……。ちなみになぜ夕ちゃんのことだと?」
「お前が落ち込む理由なんて、夕ちゃん絡み以外考えられないからな」
そんな風に思われてたのですか。前世の経験のおかげか、少しのことでは何も思わなくなっているのは事実ですが。
「そうですか……。出水、私やっぱり今日休みます。それでは」
「待て空。お前、帰って何するつもりだ」
そんなの、決まってるじゃないですか。
「お菓子を沢山つくって、夕ちゃんの帰りを待ちます」
「馬鹿かお前は」
そう言って出水はローキックをかましてきやがりました。
痛いです。原作でも唯我君がちょくちょく受けてた気がしますが、なかなかの威力があります。
「出水、痛いです。痛いので帰ります。先生には加害者の出水公平君が説明を」
「やかましい。さっさと行くぞ。話は聞いてやるから」
「……すみません。お願いします」
夕ちゃんと喧嘩した時は、いつも出水に助けてもらっています。彼は姉がいますから、下の子の気持ちがわかるのでしょう。
いつも感謝してます。悔しいので言葉にはしませんが。
というわけで出水に昨日のことをありのまま説明しました。
「……あー、うん。それは空にはどうしようもないわな」
「どうしようもない、とは?」
「いや、なんでもない。それより、そういうことなら空はなにもしないのが正解だと思う。別に空が悪いことをしたわけじゃないんだろ?」
「いや、しかしですね……」
出水には私の主観で話したことですし、そう言ってくれても正直なところやはり私が何かしたのではないかと思うのですが。
「それでも不安だって言うなら、今日1日だけでも待ってくれよ。きっと夕ちゃんから話しかけてくると思うぜ」
はぁ、分かりました。事実彼の助言には毎回助けられてますし、1日だけ待ってみることにしましょう。
「じゃ、この話は終わりだ!それで空、お前はどのトリガー使うんだよ」
「敵にはカードは晒しません。基本ですよ。出水も私に教えてくれないじゃないですか、使用トリガー」
まあ、原作読んでるんで知ってるんですけどね。
「まあ入隊後の訓練でどうせ判るんだけどな、お互い」
「じゃあそれまで待ってください」
「ケチ」
「うるさいです」
実際は使いたいと思ってたトリガーが使えない疑惑があり、困っているだけなのですが。
色々癪なので、含みを持たせておきましょう。
その後出水にお願いをして、見学という名目でボーダーに行くことにしました。ちょっとバイパーのことを調べようと思いまして。
しかし、出水には感謝ですね。基本仮入隊前にボーダー本部には入れませんからね。ジュース1本で何とかしてくれるなら安いものです。というか安すぎます。出水さんすげぇっす。
160円の出費は稼ぎのない中学生にはきついですが、これからの人生のためです。必要な出費でしょう。
はぁ、転生者のくせに思い通りにならないことだらけです。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
そんなこんなで、ボーダー本部にやってきました。一応入隊試験合格者ということで、特例で入っていいことになったそうです。とりあえず出水からはバックレて、トリガーに詳しそうな人を探すことにします。
お、いますね。原作3年前ということで若いですが、やはり貫禄のある方が。
「こんにちは。忍田本部長」
みんな大好きノーマルトリガー最強の虎、忍田本部長です。
「こんにちは。君は……、片岡 空君だね」
「おや、私のことをご存知で」
「ああ、今季入隊の子達の中でも印象が強くてね。どうしてここに?まだ仮入隊期間ではなかったはずだが」
「特例________として見学を許されました。友人の出水のおかげで」
「なるほど。それならば問題はない。好きに見ていくといい」
よし、本部長のお墨付きが出ました。好きに見ていきます。色々。
しかしかっこいいですね本部長。この人が城戸指令の車ブレードで真っ二つにしたとか、川の上走れるか試したりとか、想像つかないんですけど。
さて、そろそろ本部長に声をかけた本来の目的を思い出しましょうか。あちらもお忙しいでしょうし。
「ところで忍田本部長。バイパーって聞いてなにか思い浮かびますか?」
「バイパー?viperというと……毒蛇のことか?」
やはり。
「お答えいただきありがとうございます。すみません。出水も待っていることでしょうし、本日はこれにて失礼します」
「う、うむ。入隊後、また会おう」
そういって私はペコリと一礼。出水がどこにいるかわからないのであてもなくフラフラと探検するつもりです。
それより、バイパーの件についてですね。私の考えた私がバイパーを使えない理由。それはですね、そもそもバイパーがまだトリガーとして存在してない説でした。
あの礼儀正しい神的な何かが特典をつけ忘れるとは思わないんですよね。なので、私の問題ではなくバイパーというトリガーに何か問題があるのではないかと判断しました。
そして見事にビンゴ。バイパーはまだ存在してない。これが私の適正トリガーにバイパーがなかった理由です。
ごめんなさい神的な何か。マジで申し訳ない。
もしかしたら、バイパーというトリガーは出水がA級になって開発したものなのかもですね。A級になったらトリガー作れるみたいな設定あったじゃないですか。あれ、ありませんでしたっけ。
じゃあ私がA級になる前にはさすがにバイパーできてそうですね。出水の能力に期待しましょう。
それじゃ、一件落着したことですし。今頃呆れてるであろう我が友の元へ向かうとしましょう。どこにいるか分かりませんが。
転生者、とりあえず抱えてる問題を1つ解決して、安心です。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あの後出水にはそこそこ怒られました。昔はちゃんと怒ってくれたのですが、最近は呆れのほうが強くなってきてしまったのでしょうか。雑に怒られてる気がします。
そして、自宅に着いたわけですが。
家に帰ったら、いつの間にかリビングがケーキバイキングに。
うん、これにはなかなかびっくりです。
「お、おかえり。お兄ちゃん」
わお、ホントに夕ちゃんから話しかけてくれました。嬉しいです。嬉しいですが、これはちょっと看過できないですね。
「うん、ただいま。夕ちゃん、一体これはどういうことかな?」
「そ、それは……、昨日のこと、謝ろうと思って。ケーキいっぱい作ったの。一緒に……、食べて、くれない?」
「うん、ケーキは後でいただくよ。もちろん一緒に食べようね。でも、聞いてるのはそういうことじゃないんだ。夕ちゃんの今日の1日のどこに、こんな量のケーキを作る時間があったのかな?」
見ればわかっていただけると思うのですが、真面目にケーキバイキングのお店を開けるレベルの量がリビングにはありました。
夕ちゃんは今日は6時間授業のはず。私が放課後ボーダー基地に行っていたことを考えても、実質使える時間は私が帰ってくるまでに3時間といったところのはずです。
彼女の天才的なスペックをフル活用したとしても、3時間でこれはありえないでしょう。既製品でもないようですしね。
つまり、学校から帰ってきてから作るのでは間に合わないでしょうし、既製品でもないということは。
「夕ちゃん、学校サボったでしょう」
「さ、サボってなんかないよ!その、友達!友達に手伝ってもらって……」
「そうなんだ。それならそのお友達も呼んでケーキを食べよっか。せっかく作ってくれたんだし、ね」
「そ、それがね、家族で夜外食にいくんだって。だから、呼んでも来れないと思うなー」
うーん、夕ちゃんの言っていることは苦しいですが、これ以上追い詰めてまた話せなくなるのも嫌ですし。
釘だけさしておきましょうか。ぶっちゃけ私も同じ事をしようと思ってましたし、棚にあげてグチグチ言うのも嫌になってきました。
「それは残念だね。じゃあありがたくいただこうかな、夕ちゃん。それと昨日はごめんね」
「う、ううん、いいの。あれは私が悪かったんだから。私こそごめんなさい。それより……」
「まあ、今日は大目に見ます。でも、私のために自分の時間を犠牲にするのはやめなさい。犠牲にしなくても、なにか少ししてくれるだけで私は嬉しいよ。ありがとう」
「……うん、わかった」
これで問題は全て解消ですね。それではケーキをいただきましょう。
これからどうなるかは分かりませんが、第2の人生、思いっきり楽しんでいきたいと思います。
「ちょっと多いかも……、ねえ夕ちゃん、出水呼んでいいかな?」
「うん……、私も藍ちゃん呼ぶね」
結婚できると思い込んでるやべーやつ。