ルドラサウム大陸に転生したが、双子の妹がヤバイ件について 作:ローカルランス
とか何とか言いつつ、本編でオリ魔王の子が出る前に小ネタに逃げるあたり意志薄弱さが滲み出ている気がする……。
感想欄見てたらふと思いついてしまったんです。
ちなみにサブタイの通り、本編時系列が原作第二部に追いついてもこういう展開にはなりません。
地面に叩きつけられたせいか、全身がズキズキと痛む。
エールは何とか立ち上がろうと、腕に力を込める。
『貴様、なにか混じっているな……』
視界に影がさした。
自分を見下ろすのは、ドラゴンの骸骨のような頭を持つ巨大な悪魔。
以前キナニ砂漠でも襲われたが、今回は本気でマズイ。
先程、大怪獣クエルプランを追い返した力。何故自分にそんな事が出来たのかわからないが、この悪魔はそれに興味があるようだ。
既に仲間たちも倒れ、動ける者は居ない。絶体絶命の状況。
捕まったら何をされるかわかったものじゃない。そう思いつつも、自分の手は無意識に剣を取り、この相手に一矢報いようとしている。
最も、そんなことが叶う程の体力も残っていないのだが。
『抵抗は無意味だ……。あるがままを受け入れろ……』
そうして巨大な腕が、自分を捕らえようと伸ばされ―――
『ぐぁっ!?』
光と共に衝撃が悪魔の鼻先へ叩き込まれた。
同時に、自分が誰かに抱き上げられる。その誰かは、即座に悪魔から距離を取ると、優しく自分を地面に降ろした。
「ゴメン、回復してる時間はなさそう。……ヒーリングは使えるよね?」
どこまでも冷静な少女の声。
どうやら自分で回復しろということらしい。
そこでようやく、エールは声の主を視認できた。
銀色の軽装鎧に砂色のマント。同色のゴーグル付きキャップから溢れた黒髪を、短めのツインテールに纏めている。目を引くのは左手に装備した大盾だ。
声からイメージした通り考えの読めない無表情を貼り付けた顔は、誰かに似ている気がした……。
少女は、するりとALソードを抜くと、エールに背を向けて悪魔ネプラカスに向き直る。
『また羽虫が湧いたか……』
「……」
苛立ちを隠さない悪魔に対して、少女は無言。
次の瞬間、少女は悪魔に向けて疾走する。
当然のように振るわれる迎撃の爪を掻い潜り、懐に潜り込んでの一撃。
白い光を纏った剣が、空間に軌跡を残しながら振るわれる。
AL魔法剣―――自分も使う、神魔法と剣の合わせ技だ。
だがその一撃にも悪魔は揺るがない。
お返しとばかりに振るわれた爪を盾で捌き、距離を取り、追撃の魔法を魔法で防ぐ。
その後は焼き直しのように、少女が飛び込んでは一撃を与え、距離を取り、また一撃。
それは端から見てもギリギリの綱渡りながら、エールたちが回復するだけの時間を確実に稼いでいた。
最終的に、自分たちの長兄であるダークランスが助けに現れるまで、黒髪の少女の時間稼ぎは続けられる事になる。
実際の時間にしてみれば極僅かな間。しかし、それまでエールたち一行を軽く蹴散らした強大な悪魔を相手に単身で戦い続けた少女の姿は、その場に居た全員の眼に焼き付いていた……。
※
(もう無理。帰って寝たい。いや、実家に帰れる状態じゃないんだけど……)
自分を殺してくれ、などと言ってくる謎の声を追って訪れた死国で、我が妹が悪魔に襲われる場面に出くわしてから10分ほど。
一体何の冗談だと思えるほどバカ強い悪魔との戦いは、ダークランスの加勢によって敵が逃げ出すことで収束した。
と言うか何ださっきの悪魔。レベル250超えた今の俺が一撃貰えば戦闘不能になりかねないほど強かったんだけど。勝てる気がしねえ。
少なくとも魔人より強いのは断言できる。階級幾つだよ、ラスボスか何か?
などと考えていると、カラーの少女がコチラに近づいてきた。隣にはエールも一緒にいる。
その後ろにはエールのパーティーである魔王の子一行。
リセット・カラーにザンス・リーザス。山本乱義、見当ウズメ、徳川深根。
それ以外にも魔想志津香とナギ・ス・ラガール。あと謎のハニー。
我が妹が魔王の子を集めて魔王退治の旅に出たという噂は聞いていたが、まさかJAPANに来ているとは思わなかったぜ。
「あの、さっきはありがとうございます」
礼儀正しくお辞儀をするのはランスの娘、リセット・カラー。なんか15年以上経っているはずなのに幼女体型のままだ。
とは言え言動はしっかりと大人びている。会うのは初めてだが、なるほど流石は時期カラーの女王と思わせるだけの貫禄がある。何より話上手なようだ。
俺が年下だと見ても、礼儀を損なわない程度に砕けた話し方で、こちらが「大したことじゃない」と伝えても相手を不愉快にさせない距離感で感謝の言葉を続け……
「そうだ!お名前聞かせてもらっても良いかな?」
ちなみにそう言ってる間にも、隣にいるエールはこちらをじっと観察するように見ているだけで口を挟んでこない。
ふむ、流石に今の俺をビール・モフスとは認識できないようだ。置き去りにして逃走してから2年だ、バレたら今頃何をされているやら……。
とは言えわからないのも無理はない。
……なにせ今。俺は正真正銘の女の子になってるからな!
※
きっかけは極単純。
俺とアムはギルドから受けたクエストでJAPANに来ていたのだ。
依頼を達成した帰り。天満橋があるモロッコで宿を取ったので、俺は暇つぶしに周囲を探索していた。当たり前のように幼馴染(笑)も付いてきたのだが。
「モロッコ」「探索」という単語を頭に思い浮かべた時点で何かが警鐘を鳴らして居たのだが、その時の俺は大して警戒することも無く探索を続行してしまった。
その結果、然程時間を掛けることも無く発見してしまったのだ。『性転換の神殿』を。
そして俺は何を思ったのか―――後で考えてみればアムの話術を喰らっていた―――性転換の儀式を受け、エールとよく似た少女の姿になっていた。何故か喋ろうとすると口調が女の子っぽくなるおまけ付きで。
ちなみに鎧は何故か性転換した時点で変形していた。どういう仕組だ……?
その後、一晩明けた時点で我に帰った俺は速攻で性転換をし直しに神殿へと戻ったのだが、何故か神殿は破壊された後。
復旧は出来るがどれだけ時間が掛かるか解らないらしい。
ちなみにアムは姿を消していた。次に見つけたら泣かす。
そうこうしている間に、JAPANの国主が地獄穴を開いている北条早雲を探しているという御触れが出されているのを聞き、開き直って謝礼目的で捜索に参加。
死国に地獄穴が多い事を思い出した俺は真っ先にそこへ向かい、死国に入った辺りで謎の声を聞き―――そして今に至る。
※
「……ルビー」
「ルビーちゃんって言うんだ!よろしくね!」
ニコニコと笑うリセットの後ろで、ザンスがエールに話しかけている。
「おい、アレ出せ。少し気になる事がある」
言われたエールがバッグから取り出したのは、「R」のマークがついた手鏡。それをこっちに向けると。
―――ピンポーン!
何かの音がなった。
それを聞いた一行はマイペースな一部を除いて驚いたような表情をしている。
「……、それは?」
恐る恐る聞いてみると、答えたのは派手な髪型のハニー。
「おう!なんとコレは魔王ランスの血縁者を判別出来るっていうスゲーアイテムなんだよ。まさかJAPANに入ってから3人目が見つかるとは思っても見なかったぜ!」
「ハン!道理でな。随分レベルも高ぇようだし、戦力にはなるな」
なにそれ初耳なんだけど。
「……何かの間違いじゃないかな」
やんわりと否定しておくが、どうやら完全にロックオンされたらしい。特にエールの視線がヤバイ感じになりつつある。
「となると誰の子どもかしら……?リセットは面識ないの?」
志津香がリセットに問いかけるが、当然彼女は知らない。
なにせ性転換前でも他の兄弟に会った事なんて無いからな。
家を出てから調べた所、法王クルックー・モフスに子どもが居るなんて話は全く聞かないし、俺たち兄妹の情報は徹底的に隠されてるようだ。
「……知らない。両親とは会った事が無いし」
とりあえずこの場は嘘で切り抜けよう。
狙った通り、この言葉で殆どのメンバーは気まずそうな顔になった。基本的に兄弟たちは善良な人物のようだ。
もっとも、空気を読まないやつが一人居るのだが。
「仲間になってくれませんか?」
言わずもがな、我が妹エールである。
「ちょっ!?この空気で」
「いや、私は……」
ハニワ君がツッコミに回ってくれるが、それで止まるエールではない。
「仲間になってくれませんか?」
いつの間にか距離を詰め、俺の手をガッチリ握っている。
「仲間になってくれませんか?」
「あの、手を離してくれるとありがたいんだけど……」
距離が近いし、なんかコイツの雰囲気が怖いんだけど!
「仲間に……」
「あーもう!わかった!一緒に行けば良いんでしょ!」
結局。
以前置き去りにした負い目もあって俺は旅に同行する事になった。
実際の所、魔王はどうにかしなければならないのも確かで、現状最も可能性があるのはこのパーティーだろう。
あわよくば2年の間にエールの後ろにいるアレの視線がマシになっていれば、なんて期待もあるし。
……まあ、当然ながら俺の正体は教えるつもりはないがな。
性転換しましたとか言えるはずも無し。
願わくば、この旅が終わるまでに神殿が再建されますように……。
言うまでもなく容姿は黒エールちゃん。
画集の描き下ろし見てやっぱりエールちゃんはいいなと思いました(小並感)