ルドラサウム大陸に転生したが、双子の妹がヤバイ件について   作:ローカルランス

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更新が遅くなりました……。



シャングリラのお転婆娘・2

先程、警備隊に長期の休暇届を出してきた。

時期が時期だからママは難しい顔をしていたが、最終的には受理してくれた。これで来週からはシフトに入る事もなく、自由な時間を満喫できる。

その時間で何をしようかという予定は、全く決まっていないのだが……。

 

15年。ボクは生まれてから殆どの時間をこのシャングリラで過ごし、そのまた殆どの時間を警備隊としてこの街を守りながら過ごしてきた。

シャングリラの警備隊の前身は、カラーの里であるペンシルカウの防衛隊だ。当時の防衛隊の存在意義は、カラーのクリスタルを狙う人間たちから里を護るという、外敵から種族そのものを護るための武力という面が強かった。当然ながら構成員は全てカラーであり、辞めるとか辞めないなどと言うものではなく、カラーの中でも戦う才能を持って生まれたなら、里を護るために戦うのは当たり前というのが常識だった。

 

 

翻ってシャングリラ警備隊は、その名の通り純粋に都市の自治組織に過ぎない。業務内容は自由都市帯にある各都市の警備隊とそう変わらない。

今では他種族の隊員も増えているし、仕事の内容は犯罪者の取締り。間違っても相手が国家規模の軍隊になる事などありえない。

カラーだからといって入らなければならない訳でも無し。辞めるのも自由だ。

 

そんな警備隊に何故ボクが入ったかと言えば、それしか知らなかったから。カラーの成長は早い。生まれて数週間で人間で言う5歳程度の体格と知能は手に入るし、数年で成人すると言って良い。

ボクが生まれたのは丁度ペンシルカウに変わる新たな拠点としてシャングリラに入植する直前であり、戦士として戦えると判断されたのもカラー防衛隊がシャングリラ警備隊へと名前を変えた頃だ。

 

5年、10年と時間が過ぎ、組織の形態が変わっていく中で、自分で選んだ訳でもない警備隊を続ける事に疑問を持ち始めた。同時に、もう辞めても良いんじゃないかと考える事が多くなってきた。

事実、ママはそれでも良いと言ってくれたけど……。

 

それでも私は他に生き方を知らなかったし、まだ警備隊でやりたい事も幾らかは残ってた。そうして「やりたい事」と惰性とでズルズルと時間だけが過ぎ……先日「やりたい事」は全て済んでしまった。

 

もう、流石にここまでだろう。そう思って衝動的に休暇届を出した。

 

実を言えば、なにか警備隊以外でやりたい事があった訳じゃない。

「これまでと違う事をしてみたい」と思いは間違いなくある。もしくは「惰性で生きてちゃダメだ」という義務感か。そして、漠然と「外の世界を見たい」と思ってはいるのだ。

 

同時にこれまでと違う生き方への不安のようなものや、「別にこのままでも良いだろう」という怠惰な感情ががあるのも事実。

 

……まあ、なるようになる。自慢じゃないが要領は良い方だし、図らずとも腕っぷしの方は先日シャングリラ最強だと証明されてしまったから。

 

とりあえず、最後のお勤めだけはやり切ろう。後の事は後で考えればいいさ。

 

 

―――そんな事を思っていた時、ボクはあの2人と出会ったんだ。

 

 

 

シャングリラ都市長の館の一角、警備隊の本部は妙な緊張感に包まれていた。

警戒と困惑、それに僅かな恐怖。

そんな感情が煙のように応接室に充満している。

 

飾り気のない仕事場と言った雰囲気の応接室に居るのは、警備隊の隊長、イージス・カラー。出頭命令を受けて参上した冒険者2人と、それを案内してきた隊員、セピア・カラー。

 

問題は冒険者の片割れ、アム・イスエル。イージスにとって知らぬ相手ではない。当然、良い意味ではない。

部屋に漂う空気はこの2人によって―――正確にはイージスからアムに対して放たれる感情が原因である。

蚊帳の外に要るセピアはただ困惑するのみだ。

 

そして入室して数分、もしかしたら数十秒程度か。

沈黙を破ったのはアムからだった。

 

「あら、お久しぶりね、イージスさん。魔人討伐隊以来かしら?」

 

嫌らしく一拍の間を置いて。

 

「―――パステルさんは元気?」

「っ!貴様―――」

 

ごつん!!

冒険者のもう片割れの少年が無言でアムにげんこつを落とした。

一切動かない表情とは裏腹に、拳の方は盛大に音を立てた。

 

「……うん?」

「え?」

 

困惑するカラー2人を他所に、変わらず無表情の少年が頭を下げる。

 

「連れがご迷惑をお掛けします。この街で妙な事は起こさぬよう監督しますので、ご容赦頂けないでしょうか……」

 

 

「あ、ああ……。とりあえず掛けてくれ」

 

先程の空気から10割増し程度の困惑を浮かべてイージスが頷いた。

 

「もう、痛いじゃない……」

 

頭を抑えながら全く痛そうに見えないアムに関しては、全員がとりあえず無視した。

 

 

 

「……盗賊団の逮捕、ですか?」

 

警備隊に呼び出されて早々アムがやらかしかけたが、どうにかその場は収めることが出来たようだ。そういやコイツ、カラーに散々迷惑掛けてましたね。

俺はなんでコイツを連れてきたんだろう……。いやまあ、目を離した好きにシャングリラで暗躍されても困るんだけどさ。

 

ともあれ、呼び出された件は昨日遭遇したバイク乗りの盗賊連中について。

シャングリラに着いたあとで連中をふん縛って転がしておいた場所を警備隊に通報しておいたので、その件で呼出があるのは想定内だ。

まさか追加で連中の逮捕を依頼されるとは思わなかったが。

 

「ああ。正確には件の盗賊団の調査と逮捕……。とは言えこちらの人員の補助、という形になるがな。昨日の手際は行商人から聞いている。そちらの実力を見込んで頼みたい」

「それは光栄ですが……」

 

仕事を受けること事態は問題ない。提示された書面を見る限り、報酬額も盗賊退治としては相当に割の良い部類だ。

問題は何故わざわざ冒険者に依頼するのか、という点だが。

都市の外に現れる盗賊の退治を冒険者が依頼される事は良くある話だが、あのアウトバーンはシャングリラの管轄だったハズだ。

こちらが補助とは言え、本来は組織内で完結させるべき話だ。自分たちの手柄をみすみす余所者に譲るという話である。

 

「疑問はあるだろうが、詳しい事は受ける事を決めてからにしてくれ。当然ながら依頼に関する内容を口外するのは禁止だ」

 

……なるほど、依頼料は口止め料込か。

 

「つまり、ギルドは通さない形の依頼と。分かりました、受けましょう」

 

「そう言ってくれると助かる。……セピア」

「……、え?はいっ!」

 

イージスが声を掛けたのは同席していた少女。先程からアムの方をチラチラと気にしていたようだが、慌てて返事をしていた。

 

「あとはお前に任せる。彼らと協力して盗賊団を捕まえろ」

「ん、了解!期待して待ってて!」

 

気安い調子で答えるセピアと呼ばれた少女。

その様子を見てふと気になったことが一つ。

 

「……そちらからは一人で?」

「む。そんなに不安?こう見えて結構強いんだけど」

 

如何にも気分を害したと言ったような素振りのセピア。どう見てもからかっている様子なので本気で怒っているワケではなさそうだが。

 

「詳しいことは後で聞いてくれ。彼女の実力は保証しよう」

「そういう事!ま、相手のアジトを探すのに3人じゃ少ないってのはボク思うけどね」

 

こちらの懸念は伝わったようだが、実際どうする積もりだろうか。あちらに案があると助かるのだが。

まあ、最悪レベル補正に依るフィジカルのゴリ押しでローラー作戦とかも出来るので無理とは言わないが……。

などと話している間に、俺の隣に座っている女が再び爆弾を落とした。

 

「……へえ。まさかイージスさんに娘が出来てるなんて。父親はやっぱりランス君かしら?」

 

ゴスッ!

とりあえず肘打ちで黙らせておいた。コイツに喋らせると碌な事が起きないのは目に見えている。

 

「……え?ボクがママの娘だって言ったっけ……?」

 

疑問符を浮かべているのは今回の同行者となるセピア。

話の流れから察するにイージスの娘らしい。

 

話を受けて苦虫を噛み潰したような顔をしているのはイージス。

 

「……あまり余計な事は口にしないでくれ。特にこの建物の中では」

「ああ、パステルさんに知られると面倒だものね」

 

楽しそうにクスクスと笑うアム。

疲れた表情のイージス。

何故か興味深そうにこちらを伺ってくるセピア。

 

ただでさえ面倒な依頼に、アムのせいで余計な面倒事までやって来そうな今回の冒険。

間違いなく俺が苦労させられるパターンだな、などと予想できる程度には冒険者生活にも慣れてきた。

……まあ、慣れただけで苦労するのは変わらないのだが。

 

 

こうして、暫定魔王の子、セピア・カラーとの縁が生まれたワケである。

 

 

 




オリ魔王の子登場回(ホントに登場しただけ)

やはり最初の仲間はカラーの娘。
詳しい事は次の話で。

このペースなら1話ごとの分量増やしたほうが良さそうだけど、とりあえず投稿はしておきたいジレンマ。
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