ルドラサウム大陸に転生したが、双子の妹がヤバイ件について 作:ローカルランス
オリ魔王の子2人め登場(また登場しただけ)
母親とこの展開はまた賛否が分かれそうな所をチョイスしてしまった……。
それからセピアの名前について、感想欄で指摘されるまで03の軍人と名前かぶってたのに気づいてませんでした。カラーの名前だから色関連の単語にしようという所だけ先にあって、他のカラーと名前被りが無いのは確認したんですが……。
今から変えるのもどうかと思うので、このまま行きます。
「とりあえず腹拵えしよっか。どうせ経費で落とせるし、今日はボク奢るよ!」
そう言って連れて来られたのはシャングリラのメインストリートから少し外れた所にある酒場だ。どうやら昼間は軽食をメインに営業しているらしい。少々手狭だが、しっかりと掃除が行き届いているようで、店の雰囲気も悪くない。
「んー……オススメは魚料理かな?ここ砂漠のド真ん中だから割高だけど、ここのマスターの料理は食べて損は無いよ。オツマミも良いんだけど今はなー……」
今回同行する事になった少女……セピア・カラー。
外見だけ見ればスレンダーな美人と言った印象を受ける。当然というべきか、まだ肉体的には11歳の俺よりも背が高い。恐らく成人女性の平均よりも長身だろう。
……背の高さの割に胸は控えめな様だが。
カラーの特徴である水色の髪をポニーテールに結い、砂漠の気候もあってか露出度の高い白い衣装を身に纏っている。美人なのもカラーの特徴だったか?
ちなみに額のクリスタルは赤だった。カラーのクリスタルって相手の顔を見ると自然と目に入ってしまうのだが、意識して見るのはやっぱりマナー違反だろうか?セクハラで訴えられたらどうしよう。シャングリラの司法機関ってなんかアテにならなそう(偏見)。
「おう、セピアちゃん。またパトロールサボって昼間から酒かい?」
「ちょっと!失礼しちゃうなー。今日はお仕事中だよ。昼ごはん食べながらミーティング!」
なにやら店主の中年とは顔見知りらしい。そう言えばこの店に移動するまでにも何度か住民に声を掛けられていたな。警備隊長の娘という立場だが、住民との距離は近いらしい。
それはそれとして警備隊の職業意識について聞いてみたくなったが、今は置いておこう。
「あ、注文決まった?遠慮しないで良いからねー。マスター!ボクはサラダと、揚げ物の盛り合わせと……後はいつものやつね!お酒はナシで!」
顔を合わせてから1時間も経たないが、どうやらよく喋る娘のようだ。意識して見れば顔立ちはイージス隊長に似てクール系だが、お喋りに合わせて表情がコロコロ変わるためか子供っぽい印象を受ける。実際カラーは外見から年齢を探ることが難しいので、如何にもお姉さんといった外見に反して俺より年下という事もあり得るのだが。
いや、さっきアムが言っていた事が本当なら俺と同じくらいか?
そんな事を考えつつ適当に注文を済ませ、一息ついたところでセピアが切り出してきた。
ちなみにアムはアムで料理を頼みつつ、仕事の話には殆ど口を挟んでこない。毎回この手の話は俺が進めるのがパターンになりつつある。
コイツに好き勝手喋らせたら収拾がつかなくなるから別に良いんだが。
「それじゃ、先に仕事の話済ませちゃおっか」
相槌を打ちつつ、質問を投げかける。
「ええ。確認ですが、昨晩のバイクで襲ってきた連中の残りを捕まえれば良いんですか?」
「んー……まあ要点だけ言えばそんなカンジなんだけどね。……あ、ボク相手に敬語は良いから。多分歳も変わらないしね」
言いながら、最初に運ばれてきた簡単なサラダをテーブルの中央に寄せてくる。俺は注文していないが、好きにつついて良いという事らしい。断るのもどうかと思うので、失礼にならない程度に摘みながら続きを促す。
「まあ、面倒な相手ではあるけど所詮は盗賊だしね。時間かければどうとでもなるんだけどさ。……正直、ちょっと急ぎで解決しなきゃいけない理由があってさ」
ちらりとセピアが周囲に目を配った。話が聞こえる範囲に他の人が居ないか気を張っているようだ。
まあ、敢えてその理由を聞く事はすまい。一介の冒険者が公的機関の事情に首を突っ込んでも良いことはない。仕事の内容に差し障りがないなら構わないだろう。
「それで、どうやって本拠地を探すんだ?昨日捕まえた連中が口を割ったとか?」
「実はまだ解ってないんだよねぇ……。ウチって一応公的機関だから、あんまりキツイ尋問は出来ないし……。それに、後で言う問題にも絡んでくるんだけど、多分口を割らせるのは難しいかな。大体の範囲は解ってるから、最終的には現地で探索する事になりそう」
「了解だ。まあ、なにか良い手が無いかこっちでも考えておくとしよう」
「で、ボクたちは今から急いで盗賊団のボスを倒して連中を一掃する必要するがあるんだけど、警備隊だけじゃ手が出せない問題が2つ」
こちらと同じくセピアもサラダを口に運びながら言葉を続ける。
「1つ。例の盗賊団、ボスが魔物将軍なんだって」
「……魔物将軍というと、あれか」
「そ。魔軍を指揮する上級のモンスターだね。魔王が交代してから魔物界も色々あるらしくてさ、聞いた話によると逃げてきた魔物将軍が居るんだって。ちなみに部下の魔物兵も何体か居るみたい。」
話によるとそういった魔軍の逃亡兵が表に出てこないのは、バイクが魔物たちが乗るのに適していないかららしい。その連中は別に人間に対して軍事的な攻撃を仕掛けるでもなく、手下にした盗賊団に自分たちの為の金や食料を集めさせているのだとか。
「なるほど。下っ端もその魔物将軍からの報復を恐れて口を割らないわけだ」
そう聞くと、表に出ないのも目立たない為と考えることも出来るか。最近は人間と魔物の垣根も幾らか低くなっている。逃亡兵である自分たちの存在が魔物界に伝わるのは避けたいらしい。実際、俺のようなただの冒険者という立場では聞くことすら無かった話だ。かなり巧妙に隠れているらしい。
「ソイツとは前に一度、警備隊が連中のアジトを見つけた時に交戦してね。……ああ、流石にもうアジトの場所は移ってるよ?魔物の軍団は率いてないけど、魔物将軍自体が普通の兵士じゃ勝ち目が無いくらい強いからなー。ウチだと勝てるのはボクとママくらい?流石にパステル様やリセット様を戦わせる訳にはいかないしね」
と、セピアがこちらに目線を寄越してきた。
「その点ビールは強いみたいだし、頼りになりそうだね。レベルもボクと同じくらいでしょ?」
「……さて。足を引っ張らない程度には強いとは思うが」
実の所、俺は自分の強さがどの程度なのか正確には把握できていない。
どうも俺は、戦闘に関しては才能があるらしい。レベルで言えば70オーバー。これが世界基準で見てもトップクラスだというのは知識として理解している。実際にこれまでの依頼でも、人間魔物を問わず負け無しだ。流石に魔物将軍と戦った事は無いが。
だが逆に、これまで格上と戦った経験が無い。エールとの訓練は同格相手と言えるかもしれないが、あくまで訓練だ。
旅に出て以降は、質より量で経験値を稼いでレベルアップを重ねてここまで来た。
そう言った事情もあって、相手の強さを測る基準を俺は持っていない。セピアと相対しても、漠然と強いなと感じ取れるだけだ。
「あら、私はどうかしら?」
面白そうに口を挟むのはアムだ。コイツはコイツでちゃっかりサラダを食いまくっていた。仕事の話に口を出さない分、俺より食ってる。
「んー……アムさんは何ていうかねぇ……。単純に強さだけ見たら私でも戦えそうなんだけど、それ以上に得体が知れないって言うか……」
「あら、失礼ね」
良いカンをしている。
追加で届いた揚げ物を摘みつつ、俺はその様子を眺めていた。
アムは現在レベル80だが、これが才能限界。俺がこのまま鍛え続ければ超えるのは間違いないが、正直レベル100を超えてもコイツには勝てる気がしない。
これが得体の知れなさから来るものなのか、幼い頃からの苦手意識によるものなのかは微妙な所だが……。
ともかく、これで俺たちを雇った理由はハッキリした。下手に警備隊のメンバーを連れて行って死人を出すよりは、魔物将軍と戦えるレベルの冒険者を雇った方が良いと判断したんだろう。
「それで、もう一つの問題というのは?」
「ん……まあ、こっちも言っちゃえば警備隊の人たちじゃ荷が重いって話なんだよね。ちょっと事情が特殊なんだけど……んー……」
少し悩んで。
「望み薄だけど、事前にどうにか出来る可能性もあるし……。ご飯の後で付いてきてくれるかな。問題の相手と一度会っておくからさ」
丁度届いたドリンクに口を付けてから、セピアが言った。
「キミたちにも教えておくよ。場合によっては今回戦う事になる相手……魔王の子について、さ」
※
シャングリラの外縁部の路地裏。
元々人が住まない廃墟として砂漠の真ん中に存在していたシャングリラの中には、急速な発展に取り残された結果人が寄り付かない場所が点在している。
そんな路地裏に数人の男がたむろしていた。それも、どちらかと言えば『ガラが悪い』と評されるタイプの者たちが。
目を引くのは、近くの壁に立てかけられた人数分のバイクか。一般人では手に入れることが困難な貴重品である。それが人数分。外見で判断するなら、この場にいる男たちが手に入れられるような代物では無い。
「んで、あの野郎どもの居場所はわかったのかよ?」
口を開くのはリーダー格と思しき男。青髪に赤のメッシュの入った髪に、サングラスが特徴的な男。黒革のツナギに身を包んだ彼は、他の男達と比べて明らかに若い。せいぜいが10代中盤と言った所だが、周囲はその乱暴な口調に反感を抱く事もなく従っている。
「いや……連中、隠れるのは上手くてな……」
「ちっ……」
舌打ちしながら足元の酒瓶を乱暴に蹴り上げる。瓶はそのまま壁にぶつかって粉々に割れた。
「しゃあねえ、今夜も出るぞ。さっさと連中にオトシマエ付けてもらわねえとなぁ……!」
コツコツと足音を立てて、3人の招かれざる客が路地裏を訪れたのはそんな時だった。
「やあブラック君。相変わらず荒れてるねぇ」
その場の雰囲気にそぐわぬ、軽い調子で現れたのは警備隊のセピア・カラー。この場にいる面々とは一応の面識があった。
「んだ、テメエ。何の用だ」
億劫そうに答えたのはリーダー……ブラックと呼ばれた少年。他のメンバーは道を開けるように一歩下がった。この場でこの女に勝てるのはリーダーだけだと、実力差を理解しているのだ。
「時間も無いから手短に言うけどさ。例の盗賊団、今夜私達が潰すから邪魔しないでね」
「……あぁ?」
その瞬間、ブラックから威圧感が放たれる。仲間である男たちもたじろぐ程の重圧を受けて、セピアは変わらずの笑顔だった。
ブラックがちらりと目を向ければ、セピアが連れてきた2人も同様。黒いドレスの少女は柔らかな笑顔を浮かべたままで、黒髪の少年は眉一つ動かす様子が無い。
「邪魔すんなってのはこっちの台詞だ。手ェ出すなって言っといただろうが」
「そう言われてもねぇ、こっちもお仕事だし。ていうかキミらがさっさと片付けてくれればそれで済んだ話でしょ?」
ブラックがサングラス越しに相手を睨みつける。一方ニコニコと笑いながら、セピアも臨戦態勢だ。
「これ以上あの連中の被害が増えるのはキミとしてもアレでしょ?今回は大人しくしておいてくれない?」
「断る。そっちこそ大人しくしとけよ。ガキ引き連れて、余裕こいてるつもりか?」
「んー?この子達の方がキミよりよっぽど強いけど思うよ?」
その言葉に反応したのは、ブラックよりも周りの男達だった。
「んだとテメェ!」
その中の一人が肩を怒らせて前に出たのを見て、セピアは後ろの少年、ビールの肩を叩いて前に出した。
「……おい」
「良いから良いから」
男がビールに掴みかかる。体格的に見れば完全に大人と子供。頭2つ分は体格が違う。
だがビールは伸ばされた手を取ると、アッサリと男を地面に叩きつけた。母親から教えられた対人用の格闘技術である。
「がっ……!」
「何故挑発した……」
苦しげに呻く男を無視して、ビールはセピアに講義の視線を送る。最もけしかけた本人は殆ど気にしていない様子だが。
「ま、一応忠告をね。ブラック君さ、どうしても自分たちが関わりたいみたいだけど、この調子だとキミ以外死ぬよ?」
笑いながらも、その警告は重く裏路地に響いた。
「相手はホンモノの魔軍だ。喧嘩で済むのはキミくらいのものだよ。仲間が大事なら止めときなって」
「……余計な世話だ」
はあ、とため息を一つ吐いて、セピアは踵を返した。
「ま、忠告はしたからね。今夜出てきて怪我しても自己責任で。……ああそれと」
思い出したように振り返って。
「またマリアさんからキミの捜索願出てるから。あんまり心配させちゃだめだよ?」
言うだけ言って去っていくセピアに続き、ビールとアムも裏路地を出ていった。
耳に入ってきた内容を吟味して、また面倒事が増えるとビールは確信した