大切な誰かへ   作:刹那の奏

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刹那の奏です。
いつも読んでくださってありがとうございます!作者一同これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。
今回と次回のお話のテーマは夜明けと黄昏時です。黄昏と言えば「君の名は」で有名ですね。黄昏時の語源は誰そ彼時。暗くて目の前の人の顔が分かりにくく、貴方は誰?と聞いたのが、現代では黄昏時と漢字が当てられていますね。逆は彼は誰時だったそうです。
また、昼は生者の時間、夜は死者の時間でその境目にある時間帯は、死者と生者の境が曖昧になるという考え方もあるようです。

それでは本編どうぞ!




十四羽

「都!」

 

十四郎から連絡が来て急いで偵察隊の救援に一角と弓親と共に向かう。その場に着くとそこは酷い有り様で都一人が辛うじて立っていた。

 

『六杖光牢!』

 

動きを止める。一瞬できた隙をついて一角が攻撃を仕掛けるも避けられてしまった。少なくとも十人以上食らってる。あの縛道を破るのには相当力がなければならない。まだ、動きが縛られている内に早く討伐部隊を出さねば被害は増える。(ホロウ)の相手をしている間に都の保護に向かった弓親が言う。

 

「先生 志波三席が」

 

荒い呼吸を繰り返してる。一度退避して都に治療を受けさせないと。なおも襲い来る虚を縛り声を張り上げる。

 

『鎖条鎖縛』

「総員退避!」

 

都を一角に抱えてもらって救護詰所に走る。出血量が多い。このままでは…。

 

「一角 回道は扱える?」

「自信はない」

「わかった 彼女をこっちに」

 

今度は私が彼女を抱え、回道で少しでも止血をする。あの時、立っていたのが不思議なほど体のあちこちが食われてる。内臓もなくなってるところがある。一刻も早く専門家に見てもらわないと。速度を上げて走る。

 

四番隊の救護詰所が見えた。半ば扉を打ち壊すように突っ込む。門番の人ごめん。

 

「卯の花隊長 偵察隊の生存者一名

都三席の治療をお願いします

弓親 十四郎隊長と海燕副隊長を呼んで」

「はい」

 

都を預けると卯の花隊長は勇音を呼ぶ。

 

「酷い怪我ですね 勇音 始めますよ」

「はい」

 

二人が治療を始めたので一度部屋から出て、三人を待つ。

 

「大丈夫っすかね」

「大丈夫

彼女の生きる力を信じてるから

信じていてあげて」

 

暫くしてドタドタと足音が近づいてきた。

 

「一条 斑目」

「都は!?」

「今治療中

彼女以外偵察隊は全滅

(ホロウ)はだいぶ力をつけてる」

「わかった 討伐部隊の編成を始めておこう」

「ルキアも来たのね」

「はい 志波副隊長に呼ばれて」

 

短いやり取りをしていると勇音が出てきた。

 

「皆さん中へ

治療はしましたが怪我が酷くもう長くは……」

「……」

 

中に入ると都は静かに眠っていた。側によって海燕が声をかけると、瞼を震わせ彼女が目を覚ました。彼女はぽつりぽつりとゆっくり(ホロウ)の能力を話していった。姿、名前、触手に触れると斬魄刀が消滅すること、死神の体を乗っ取れること、とても知能が高いこと等の能力、あの中で冷静にここまで見ていたのか。

 

「最後…に大好き……な先…生…………………隊長 ……後輩…………みん………な……に……囲まれ……て…………愛する人…の腕の中…にいれて…

う………………心…は………こ……こに……」

 

その先は続くことなく彼女の体から力が抜けていく。日が沈む。命の灯火が消えていく。それを聞いて海燕が立ち上がりどこかに行こうとする。

 

「待て!海燕!!今討伐部隊を組んでいる」

「待てません

大人しく待ってるなんて!」

 

そう言って行ってしまった。悔しい気持ちは同じだ。だからそう言われては共に行くしかないじゃないか。

 

「海燕 着いておいで場所知らないでしょ」

 

昔見たあれは、たぶんこの事。長い黒髪は都。その後に続いて現れた斬魄刀は敵をとるために向かうメンバー。

 

 

 

再びここに戻ってくるとは思わなかった。

(ホロウ)の声がする。

 

「匂いが…するのぅ

食い損ねた女の匂いが!」

 

この距離から見つけられるとは。

 

「隊長 俺一人で行かせてください」

「あぁ」

 

海燕はその答えを聞くや否や飛び出す。海燕が着地すると暫く二人の会話が続く。海燕の声は怒りと悲しみで震えていた。

 

「ひひっまずはお前からか!小僧?」

「…戦う前に

オメーに聞いておきたいことがある

今までに…何人の死神を喰らった?」

「…はて何人かのう ひひっ

悪いが数まで覚えちゃおらんよ」

「それを一度でも悔いたことはあるか?」

「愚問じゃのう小僧

儂とてぬしらと同じ心はある

死神を喰ろうて悔いぬ夜などあるものか…

今とてそうじゃ…

昨夜のことを悔いておる…

昨夜喰ろうた女の死神を喰い損ねたことを

そのあと来た男女の死神を喰い損ねたことを

悔いておったところだ小僧!!」

「そうか」

 

静かに言葉が交わされていき、やがて話は終わったとばかりに海燕が間合いを詰めて切る。触手には触れない。しかし着地した瞬間、迫ってきた触手に吹っ飛ばされる。隣でルキアが叫ぶ。触手に触れた………。

 

「海燕殿!」

 

斬魄刀が消滅する。ルキアが抜刀しそのまま飛び出していこうとしたのを、その手を握って十四郎が止める。

 

「隊長…!?

お放しください!

海燕殿を助けなければ!!」

「お前が今 力を貸せばなるほど

奴の命は救われるだろう

だがそれは奴の誇りを永遠に殺すことになる」

「誇りが何だというのですか!

命に比べれば誇りなど!!」

「…いいかよく覚えておけ

戦いには二つあり…

我々は戦いの中に身を置く限り

常にそれを見極め続けなければならない

 

命を守るための戦いと

誇りを守るための戦いと……!」

 

十四郎の持論だ。私は、どうあっても生きていて欲しいと願う方だけど、彼のその考えも長年一緒にいて知っているから止めるようなことはしない。彼が私の意見を否定しないように、私も彼の意見を否定しない。正しいと思った道を選んでいるだけだ。

 

「今奴は誇りのために戦っている

妻の誇り

部下達の誇り

そして何より奴自身の誇りのために

…つまらん意地と思ってくれて構わん……

奴を…このまま戦わせてくれてやってくれ……」

 

ほんとは飛び出していきたい。けれどそれは海燕のことを信じてないことになる。信じて送り出した。あの時止めなかったということはそういうことだ。だから、本当に危うくなるまでは飛び出さない。

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