大切な誰かへ   作:刹那の奏

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作者その二、かまぼこです。
ここのところよく何かしら間食をすることが多くなって体重の増加をひしひしと感じます…。
とりあえず痩せたい(無理)と思いつつ今日もお菓子を貪ります。
では本編どうぞ。


十五羽

海燕と(ホロウ)が再び対峙する。

 

「斬魄刀なしでここまで粘るか…

なかなかやりおるのぅ 小僧」

「当たりめーだろ

テメーごとき鬼道があれば十分だ

悪いがこのまま倒させてもらうぜ」

「小僧が舐めた口を利きよるわ

仕方ない昨日の今日で使いとうはなかったが

そこまでなめられては致し方ないのぅ!!」

 

(ホロウ)が無数の糸のように変化し海燕に乗り移ろうとする。本能的にあれを受けさせてはいけないと感じた。あれは駄目だ。(ホロウ)を縛るために加勢する。

 

「!!」

『鎖条鎖縛』

 

糸が細い。捕捉できない。縛ろうとしてもあの状態では縛れない。ルキアだったら凍らせることができただろうか。完全に乗り移られた。

 

「海燕………殿… 海燕殿!!!」

「そんなに儂が恋しければ…

まずは貴様から喰ろうてやろう」

 

海燕の名を呼ぶルキアを標的にした。恐怖のあまり動けない彼女の間に十四郎が入り、(ホロウ)の攻撃を防ぐ。そのまま彼はルキアに命じる。

 

「逃げろ!死にたいのか」

 

ルキアが退避して私と十四郎で相手をしながら策を練る。切りかからない私達の意図に気づいた虚が嗤う。

 

「どうした何故切りかかって来ん?!

わかっているぞ

 

こやつの中から儂だけを引きずり出す方法を考えておるのだろう?

無駄だ!!!!

霊体同士の融合じゃ

永劫解けることはない!」

 

それを聞いた瞬間、迷うことなく彼は海燕を切った。その一方で私は賭けではあるが策を思いつき彼に向かって叫ぶ。もう腹をくくった。

この後どうなろうとも構わない。

 

「十四郎!やれるかどうか一か八かの賭け…

少しでいい時間を稼いで!」

「なにをするつもりだ!」

 

時間が惜しい、その問いに答えぬまま詠唱を始める。あまり時間をかけると(ホロウ)と海燕の魂の境目が分からなくなる。

これから唱えるのは死神が知らない呪。

死神には扱えない呪。

神と魔の者の間に立ちその声を聴くことが出来る者にしか唱えられない呪。

この地に満ちる神々の力を借りて唱える呪。

そして、山本先生に使用を禁じられた呪。

こちらで、この身で扱うには反動が大きい。だから禁じられた。ここは神々への信仰が薄い。力を貸してもらえるかは一か八かだがやってみるしかない。

 

『かけまくもかしこき 天地のはじめ

高天原にあれませる 大神たち』

 

十四郎が吐血する。その隙に(ホロウ)が異動する。行く先には退避させたはずのルキアがいた。間に入るには間に合わない、かといって詠唱は止められない。

 

「馬鹿野郎!朽木!!

どうして戻ってきた!!!」

 

十四郎の悲痛な怒声が聞こえる。

 

「殺せ

そいつはもう海燕じゃない!!!」

 

天御中主神(アメノミナカヌシノカミ)

高御産霊神(タカミムスビノカミ)

神産巣日神(カミムスビノカミ)という大神たち

ここに厄なす悪しき魄を』

 

ルキアが海燕に刀を向ける。仲間に、親しき人に刀を向けることがどれだけ辛いことか。

 

『祓いたまえ清めたまえと申しことの由を

天津神 国津神

八百万の神々ともに 聞食せと白す(きこしめせともうす)

 

最後に、開手を辺り一帯に響くようにうつ。同時にルキアの向けた刀が海燕の体を貫く。その瞬間融合した虚は海燕の体から分離する。立て続けにもうひとつ詠唱を始める。

 

『木枯れよ 禍者よ

いざ立ち還れもとの住処へ

形なき弓 ちはやぶる神の弓の放つ矢よ

妖気を的と為し 闇を吹き祓え』

 

霊力で形作られた弓に矢をつがえ、放つことで(ホロウ)を浄化する。辛うじて残っていた破片もこれによって霧散していく。

 

「海燕!」

「海燕殿」

 

私達は海燕のところに駆け寄り、側に座る。

 

「隊長………ありがとうございました…

俺を戦わせてくれて

先生……見守ってくれて…

ありがとう…ございました

ルキアごめんな………」

「海……燕…」

 

このまま逝かせるものか。彼には兄弟もいる。今度こそ。もう教え子を亡くすのは…。

あんな思いをさせるのは…。

 

『神癒』

「一条 それ以上は」

 

十四郎に掴みかかられるがそれを自らの霊圧の結界で弾く。

これは癒しの呪。癒すものによっては反動が凄まじいが回道よりも扱いが得意な術だ。辺りに霊力が波のように広がって行く。今の私の力だけでは足りない、だからこの地に満ちる気を木に、花に、枝に力を貸してもらう。今ある力を全て使って、遠くまで言霊を響かせる。あの時は出来なかったことを…。

 

 

 

 

 

 

 

やはり力を貸りづらい。いつもの倍以上神経を使う。しかし、その波は海燕の傷を癒し、十四郎の傷まで癒す。

 

 

 

ありったけの霊力を使いきってしまう。もう体に力を入れていられない。でも、後悔はしてない。ぐらりと体が傾き倒れる。しかし、いつまでたっても衝撃は訪れない。誰かが背後で支えてる?でも目の前に三人ともいる。一体誰がと考えていると声が降ってきた。懐かしい声。

 

「お疲れさん 全く無理しすぎだ

そこは昔から変わらねぇんだから

もう時間か

ずっと見守ってるからな……」

 

その人は私の体を横たえるとスッと消えていってしまった。柄にもなくぼろぼろと泣く。

オレンジ色の光が射し込んでくる。いつの間にか夜が明けていたんだ。夜明けと日暮れは死者と生者の境目が曖昧になるという。その僅かな時間に彼は会いに来てくれた。

 

「一条 !」

「…」

 

十四郎の声が聞こえる。そんなに心配しなくてもいい、使いきった霊力を回復するのだと言いたかったけど声がでないや………。

 

 

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