大切な誰かへ   作:刹那の奏

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今回は樹さんとときさんの話です。新人の時の話になってます。それではどうぞ!!!


閑話 樹とときの話

入隊して直ぐの事だった。一条は自らの直属の上司、七竈に呼ばれていた。行き先は十一番隊の道場だ。

 

「斬魄刀を持って道場に……」

 

書き置きに書いてあったことについて考え事をしながら彼女が歩いていると、道場に入るために角を曲がった瞬間柱に激突する。

 

「っ〜」

 

その光景を七竈は目撃してしまったようで、一条の方に駆け寄っていく。

 

「おい!大丈夫か?すごい音したぞ?」

「すいません考え事してて……

大丈夫です」

「次は気を付けろよ」

「はい」

「にしても一条!

お前にそんな一面があったとはな

もっと隙の無い奴だと思ってたよ」

 

そんな事を言われて一条の顔が赤くなる。

 

「あはは 冗談だ

お前ほどの切れ者を俺は知らねえ

たまにはドジしたっていいだろうよ

 

さて!本題だ

剣術の稽古やらないか?向こうの先生からお前が剣術が苦手な事は聞いてるからさ

これから任務に出るようにもなるしな

出来るようになっといた方が良いだろ」

「はい」

 

そうして少し打ち合う。しかし、全く当たらない。刀が交わる事が無いのだ。当然空振りした音しか聞こえない。

 

「おい!一条 目を閉じるな!俺の剣先見ろ!」

「はっはい!」

 

時折、七竈が声をかけるもののやはり目を閉じてしまって二人の刀は交わらない。

 

「よし!やめだやめ!」

「ごめんなさい」

「謝ることはねぇーよ

ちょっと休憩だ」

 

二人は道場の隅にある長椅子に腰掛ける。

 

「剣を握るのは怖いか?」

 

一条はその問いに頷く。

 

「一条 お前は何を護りたい?」

「…まだわかりません……」

「そうか じゃあ いつか護りたいものが出来たときにそれらを護れるように力をつけろ

後悔しないようにな」

「はい」

 

七竈は大きな手を一条の頭の上にのせてくしゃりと撫でる。

 

「そうだな…お前は普通に剣術やるよりこっちの方が向いてそうだ よく見てろよ」

 

そう言うと七竈は立ち上がり、斬魄刀を腰に差す。刀に静かに手を置く。一瞬全ての空気の流れが止まる。

 

「一之型 燕空」

 

そう告げる。素早く抜刀し、そのままの勢いで斜め上に切り上げ、突く。 そして、鞘に静かに刀を納める。

 

「居合だ 俺がやり易いようにしてあるけどな

お前に向いてるんじゃないか?

燕は空を翔、幸運を運ぶ

技の名は燕に空と書いて燕空だ いい名だろ

虚だってなりたくてなったわけじゃねぇ

俺達が間に合わなかったからこうなったんだ

だからせめてこの後の幸せくらい願いたいさ

これやってみるか?」

 

「はい!」

 

それから彼女が居合を出来るようになるまで少し時間はかかったが、形にすることとなる。

大切なひととの別れと引き換えに…………。

 

 


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