大切な誰かへ   作:刹那の奏

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刹那の奏です。
前回の続きから始まります。オリ主がどのように浦原達を送り出すのか……。
暫くオリ主視点で話が進んでいきます。誤字、脱字ありましたら知らせて貰えるとありがたいです。
それではどうぞ!


二羽

「…ここは………」

 

目が覚めると『知らない天井だ』なんて言うけど、そんな事はなかった。たぶんここは救護詰所だ。何度か大怪我した生徒を連れてきているから覚えてる。誰かが運んでくれたのだろう。わかったらお礼を言わなければ。と誰かが入ってくる。

 

「おはようございます 先生」

「おはよう清之助副隊長」

 

彼がいると言うことはやはり四番隊の管轄で間違いないようだ。彼もまた先生呼びをやめてくれない人だ。外が騒がしい。何かあったのだろうか。

 

「荒巻隊士から突然倒れられたと聞きましたが体調は大丈夫ですか?」

「大丈夫何時ものことだから

それよりも……」

 

言いかけたところで、また誰かが入ってくる。

卯の花隊長だった。

 

「おはようございます一条七席」

「おはようございます卯の花隊長」

 

彼女の顔はいつもよりも険しいものだった。その表情に嫌な予感がする。卯の花隊長は私に問う。

 

「平子隊長と浦原隊長と隊首会の前最後に会ったのは貴女だそうですね

一応聞いておきます

何か変わったことはありませんでしたか?」

「いえ何もありませんでした

彼らと話したのは最近騒ぎになっている消滅事件のことだけです 何があったのですか?」

 

私はそう答え、意識を失った後のことを聞いた。彼女は昨晩あったことを話してくれた。纏めると、喜助が虚化の実験を真子、楼十郎、羅武、鉢玄、リサ、拳西、白、文丸以上隊長格九名に試行した罪で。鉄裁は禁術行使の罪で、二人とも四十六室に連れていかれたとのことだった。隊長格九名は今後(ホロウ)として処理されるであろうことも全て。

 

私はその後のことをあまり覚えていない。あの夢が表していたのは隊長格の(ホロウ)化によることだったのか。もっと早く夢を読みとくことが出来ていればこんなことにはならなかったのだろうか。言い訳が幾つも幾つも浮かんでは消えていく。どんなに考えてもダメだった。

 

いつの間にか私は隊舎の自室にいて書類の山を片付けていた。相変わらず、修繕関係の書類が多いな、と思っていると、鐘が打ち鳴らされ二番隊隊長夜一と共に逃亡した罪人、喜助と鉄裁の捜索命令が出された。私は、斬魄刀を持ってある場所へと向かう。捜索命令が出ている時点で私も探しにいって問題ないだろう。彼らが向かう先は、だいたいの検討がついてる。たぶん昔こっそり喜助と夜一が教えてくれた遊び場だ。彼処は、私と彼ら以外知らない場所。誰も周囲に居ないことを確認してその入り口のある横穴に入る。さらにその地下に行くための蓋に触れると結界が張ってあった。たぶんこれは、侵入者検知と視覚妨害、侵入者を弾くやつだ。注意深く探ると感じる霊圧は鉄裁のもの。私は結界の隙間を見つけるとそこから遊び場に入る。着地して辺りを見回すと三重の結界の中に九人が寝かされていて、喜助が何かを作っていた。そして目の前には迎撃態勢の鉄裁。夜一は居ない。侵入者が私だと分かっても警戒してるということは、事態は相当悪い。私は彼に声をかける。

 

「鉄裁…また鬼道の腕をあげたね

あの結界 注意して霊圧を探らないと誰が張ったのか分からなかった

それに入る隙間を見つけるのも一苦労したよ」

 

「一条先生」

 

私は斬魄刀を利き手に持ち替えることで敵意がないということを示した。すると彼も態勢を解いてくれた。どうやら意図が伝わったようだ。そこでようやく喜助が気づいた。

 

「先生…」

「喜助、鉄裁

今朝事情はだいたい聞いた

ただその情報は信じてない

二人の罪状は冤罪だと考えてる

真実を教えて……」

 

私は聞く。喜助は首を横にふる。どうやら教えてはくれなさそうだ。

 

「先生まで巻き込めないッス

もうここに来るまで鉄裁サンと夜一サンも巻き込んでますこれ以上は甘えられません」

「……これからどうするの?」

「現世に行くつもりッス」

 

真っ直ぐその瞳を見つめる。曇りのない覚悟が伝わる。私にはそれで十分。長く先生やってるからね、人を見る目だけはあるつもりだ。

 

「そう……私はここで誰とも会わなかったということにしておく」

 

そう言って私はここを出るために踵をかえす。

その直前に見えた二人の顔は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔だった。

 

「無理に聞き出さないんスね」

 

それに背を向けたまま答える。

 

「話したくないのなら話さなくていい

もう自分の行く道を決めたのでしょう?

だったら真っ直ぐぶれずに進みなさい

もしも貴方が道を間違えたらその時はきっと

夜一が蹴り飛ばしてくれる

鉄裁が殴り倒してくれる

そういう友がいる

皆揃って道を間違えたなら……

最後は皆揃って正座させて私が叱るから」

 

「ハハハ それはいやッスね

そうならないように善処します」

 

喜助が苦笑しながら心底嫌そうに言っているのが分かる。昔一度やったのが堪えているらしい

 

「私は手助けはいくらでもするよ

あなた達が努力する限りね」

 

一度言葉を切る。驚くくらい硬い声で言ってしまったから、今度は優しい声で続きを紡ぐ。

 

「最後にひとつ…

私はあなた達を信じるだから……

 

必ずまた十一人で…

どうか声を聞かせて、元気な顔みせて

それが私の願い」

 

最後に少し振り返って見た二人の顔は泣きそうだった。っていう私も笑えてるかな。そうだといいな。教え子を見送るんだ、笑顔がいい。

 

喜助は事態の想定と解決策を探るのが得意。いたずらっ子でよく変な発明して回りの子を巻き込んだ。でも絶対に人を傷付けるようなことだけはしない。懐に入れた人にはとことん甘い子だ。ひよ里が心配だったのだろう。

鉄裁は真面目で情に厚い。回りの子よりも鬼道の力の加減が苦手だった。よく暴発もさせた。だからこそ誰よりも鬼道の便利さと危険性を知ってる。禁術を使ったのは使わなければならない事態に陥ったから。そして、その時自分に出来る最善の手段だったからだろう。

 

知らないところで教え子が逞しくなっている。嫌でも時間の流れを感じてしまう。

 

外に出て、何人かの隊士と会って隊舎に戻る。ちょうど、荒巻隊士にも会ったから昨日のお礼を言っておいた。それからしばらくして捜索は打ち切られた。

 

 

 

 

 

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