大切な誰かへ   作:刹那の奏

21 / 46
台風皆さんは大丈夫でしたか?自然災害は怖いですね。
風が強く、そこそこ大きい鉢が幾つも倒れていました。
素焼きの鉢が割れなかったことは幸いでした。わりといい高さから落ちていたので…。
いよいよ原作突入です。それではどうぞ!


十七羽

それから少し経って仕事に復帰してすぐルキアは現世へ発った。海燕の復帰はまだ先になりそうだ。代わりに三席が二人立ち、仕事を分担する仕組みができた。相変わらず自隊の隊士は、書類仕事をやらないのだけど、それを片付けようとすると一角と弓親に取り上げられる。そのあと二人が嫌がる隊士を椅子に縛り付けて書類をやらせるまでがセットだ。復帰したときは違和感が有ったけど、今では見慣れた光景になっている。

 

講師の方の復帰はもうしばらく後になるらしく時期を見て、戻れるように手配してくれるそうだ。もう知ってる顔は卒業して隊士として働いている。早い人は席をもらっていた。たまに顔を会わせると心配される。

 

という訳で今日も定時より早く仕事が終わってしまったので、現在十四郎の部屋で雑談をしている。そこに一匹の地獄蝶が飛んできた。十四郎になにか伝言があるようだ。それを聞いた瞬間、彼の顔色が変わる。

 

「十四郎…?」

「…ルキアが数日前から行方不明だったんだ

それが見つかったらしい……

ただ人間への力の譲渡

超過滞在の罪が課せられてる」

「えっ…………?」

「白哉と恋次が現世に向かってる」

 

ふと思い出す。あの鮮やかな夢を。

 

「夢……

黒髪の少女…オレンジ色の髪の少年…

桜吹雪…蛇………火の鳥…鏡…………まさか

ごめん この後うまくやっといて」

「えっ?おい待て一条!」

 

懐紙を取り出してひとがたをとる。息を吹き掛けて、呪を唱えるとそれは私の分身となる。

それに斬魄刀を預け、あとのことを任せて、地獄蝶を連れ現世に発つ。

 

こちらは夜だ。

着物は呪を使って変える。生前よく纏っていた濃緑の狩衣だ。懐かしい。向こうを出る前に霊圧を抑えた。たぶんわからないはずだ。わかるとしたら、山本先生か卯ノ花隊長くらいだろう。ルキアは人間に死神の力を譲渡したと十四郎が言っていた。それはきっと夢のオレンジ色の髪の少年…………昔親しかった死神代行、空吾のこともある、人の子に死神の力を持たせたままなのは危ないと判断して彼を生かしておくことはしないだろう。古き契りのこともある。それに鏡の破片が気になる。彼女を連れていかれると事が大きく動く、そんな気がした。

 

微かに感じる二人の霊圧を追って、走り回る。

 

 

 

 

見えた。ルキアと恋次、白哉、黒髪の少年とオレンジ色の髪の少年がいる。黒髪の少年は怪我をしてる。切りつけられたか。白哉がオレンジ色の髪の少年に刀を向けた。動………く。地を蹴り加速することで一気に彼らの間に入る。一撃目は防げなかった。二撃目を放つ前に少年を突き放し、太刀筋を反らす。

 

「兄は何者だ」

 

冷ややかな声で問われる。

 

「……」

「答えぬか

ならばここで倒すまで」

 

白哉が攻撃を仕掛けてくる。それを懐刀で受け流し、刀を叩き落とす。後ろに飛んで間合いをとる。白哉が鬼道を放とうとしたところでルキアが間に入る。

 

「もうお止めください

このような者らに兄様自ら手を下す必要はありません

私を尸魂界にお連れください」

「なに言ってんだルキア

行かせねぇ………行かせねぇぞ…」

 

貫かれてなお意識を保てるか。その面影も似ているけど、海燕に似て強い子だ。少年は白哉の袴の裾を掴む。その目に灯る意思は力強い。

 

「…放せ小僧」

「…聞こえねーよ…

…こっち向いて喋れ……」

 

その言葉は琴線に触れたようだ。白哉の霊圧がはね上がる。昔から熱くなりやすいところは変わらない。

 

「…そうか……余程その腕いらぬと見える」

 

『縛…』

「お前の相手は俺だ」

 

白哉の動きを封じようとしたが、恋次が間に入る。仕方なくそちらの相手をする。互いにいつでも動けるように間合いをとる。

 

「いくぜ蛇尾丸」

 

あちらが先に攻撃を仕掛けてくる。何度か刀を受け流す。斬魄刀は身元がばれるので分身に預けてきてる。懐刀で受け流し続ける。リーチが短い。

 

「…!」

 

……しまった後ろに回り込まれた。不規則に動く刃に背中を斬られる。急所は避けたが出血が多い。正体を明かさないため瞬歩を使えない今、恋次の動きについていくのは厳しい。

 

「なんでオメーは間に入ってきた?」

「……我らの間に交わされた契りを破ったからだ

死神と我らはその強大な力を互いに専門領域を守りながら人を護るために使うという契りを」

「そうかよ!そんな契りは知らねーな」

 

大昔、本当に結ばれた約束。時代と共に私と同じ術を扱う術士の家系が絶えてしまった為に今は無いものとなってしまっている。それでも、死神が護るべき人を傷つけることを良しとしたくはないし、最後の術士として約束を全うしたいと思う。約束というのは元来重いものなのだから……。かつて遊女が小指を切り落として思い人に渡したという話があるように……。それを結んだのが遠い先祖だったとしてもだ。それ以上に、彼らの悲しそうな顔をもう見たくない。

次の攻撃を避ける。何度か打ち合うが、攻撃が白哉の一言によって止まった。

 

「恋次 もうよい行くぞ」

「でも…」

「全員深傷を負っている

捨て置いても問題無かろう」

「…はい 解錠」

 

しぶしぶ恋次が穿界門を開く。三人が行ってしまう。垣間見た苦痛の表情。静かに呟く。

 

「…その道はそなたらの後悔しない道か?

その道はそなたらの信じる道か?

我はそれを見ていよう

…それが主らの選ぶ運命だ……」

 

限りなく低い声で彼らに問う。

恋次が、ルキアが振り返った気がした。

行ってしまったか……。

 

オレンジの彼が叫ぶ。悔しいのだろう。しばらくして雨が降り始め、その声はプツリと切れた。

 

さて、傷塞がないとこのままじゃオレンジの彼の命が危ない。流石に気絶してるか。傷を見るとやっぱり魂魄の急所を砕かれてる。私じゃ治せない。どうするか……。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。