カラコロと音がする。
「どうやらお困りみたいッスねぇ」
そんなまさか…。その声は………。
「………喜……助…」
「まさか先生っスか?」
その問いに首肯する。会えた…。
「とりあえずこんなところで長話もなんですからアタシの店に来てください
彼らの治療もそこでやりましょ」
「そうだね」
「先生もっスよ」
そんなやり取りをしていると、黒髪の少年の目が覚めたようだ。良かった傷はあまり深くないみたいだ。傷はほとんど塞げた。ただ斬魄刀から受けた傷だったので休んだ方がいいと判断して声をかける。
「一度休んでから帰られたらどうでしょう?」
「お気遣いありがとうございます
でも僕は大丈夫
それより黒崎をよろしくお願いします…
…今奴等を倒せる可能性があるとすれば…
それは僕じゃない
黒崎を…よろしく………お願いします」
手から血が出るほど握りしめている。彼もまた悔しいのだろう。無理しなければいいけど。
「…わかりました
暫くは無理をしないでください」
「はい」
その背を見送り、もう一人の少年を抱えて走る喜助の後に着いていく。しばらく行ったところに浦原商店という看板があった。そのなかに入ると慌ただしく治療がされていく。私も鉄斎に背中の治療を受け、喜助の部屋に行く。
「先生……お久しぶりです」
「うん 久しぶり
良かった また会えて」
ぽつり、ぽつりと話をしていく。あのあと真子達の命が助かったこと、今は別のところで暮らしていること。自分は駄菓子屋を営んでいること。そしてあの時の真相。
「あの事件…裏で藍染が動いてたんです
彼は虚化の実験を流魂街でやっていた
それが大量魂魄消失事件並びに隊長格の虚化
奴がすべての首謀者っス」
「そう…」
私は驚かなかった。その事に対して喜助はほんの少し目を丸くしている。
「その事件と今回のルキアに関連は?」
そう切り返して問うと話すべきかどうか悩んでいるみたいだった。少しして覚悟を決めたように言う。
「あるッス
藍染はアタシの…開発した物を狙っていました
それを朽木サンの魂魄に隠したんス」
「隠した?」
「はい
破壊が出来ず 封印を試みたんですがそれも跳ね返してしまって…」
「そっか……」
申し訳なさそうに話していく。
「取り敢えずルキアをどうにかして助けないといけないってことか」
「そうです」
「策はあるの?」
彼は策士だ。何か考えているだろう。
「あるにはあります
それには黒崎一護サンが鍵っス
瀞霊廷全体を引っくり返しますよ彼は」
白哉の袴の裾を掴んだときのあの目……。
「…確かにそうかもしれないね
あの時見た…目に灯る意思は力強いものだった
力をつければ彼はそれだけの力を持つかもしれない」
「それに関してはアタシがやります
十日間で彼を鍛え上げます」
彼を策に最初から組み込むとは思わなかった。そんなに信用してるってことは、一護君は喜助が懐に入れた子なんだろうな。喜助は懐に入れた人には甘い一方で、そのための基準はとても厳しいから。
「彼は死神の力を失いかけてる
取り戻す方法はあるの?」
「あります
荒療治ですけど乗り越えられると思ってるっス
彼ならね」
「もし 尸魂界に乗り込んできたときは出来る限りの助力はするよ」
「ありがとうございます」
「ただ…現世に生ける者をあまり此方に干渉させたくない………本来なら巻き込んではいけない者を巻き込んでるからね
此方で護るべき者を危険にさらすのは………」
「はい…わかってます」
これで約束の半分…あとは真子達と会えたらそれでいい。
「先生もお元気そうでよかった…
折り鶴届いたっス
ありがとうございました……」
「あれ届いたんだ」
「はい
あれは励みになりました
………スミマセン
こんなことになったのはアタシのせいです」
なんとなく喜助の頭を撫で回す。
「ちょ先生………」
「ふふっ」
「おやお邪魔でしたかな?」
そこに鉄斎と子供達が入ってきた。
「いいえ 鉄斎も元気そうでよかった
その子達は?」
私が聞くと喜助が挨拶するように促す。
「紬屋雨」
「花刈ジン太 オメーはなにもんだ?」
「こらジン太」
ジン太を鉄斎が叱る。雨にジン太か。
「鉄斎そんなに怒らなくても………
私は一条とき よろしく」
「彼女はアタシ達の先生っス」
「へぇー」
「さて…
そろそろ黒崎さんのところに戻りますよ」
その一言で、三人が隣の部屋に戻っていく。
「私も帰るよ
十四郎のとこから飛び出して来ちゃったから」
「そうですか お元気で」
「ええ」
帰ろうとしたところでふと気になったことを聞いてみる。
「喜助……
今回の策に私って入ってる?」
「入ってますよ
ただ先生について知らないことが多過ぎてそこは考慮できてません
あの時朽木白哉サンを止めようとした技も知らないものでしたし」
「あら……何時から見てたの?」
「最初から」
確かに私は人に明かしてない事が多い。悪用されると厄介だから明かさなかった。けど、喜助には話しておいたほうがいいだろうか。薄々気付いてそうだけど。話しておいても彼は悪用はしないだろう。
「知りたい?」
「いえ……やめておきましょう
明かさないということはそれなりの理由があるからでしょうしね…
基本的に自由に動いて構いません」
「そう わかった
また会いに来るよ」
「お待ちしてます」
私も彼の目覚めを待たずに尸魂界に戻る。