大切な誰かへ   作:刹那の奏

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刹那の奏です。
この小説、携帯から書いているのですが、先日携帯が壊れまして…今は代用から投稿しています。それはいいのですが、書き留めていた下書きが吹っ飛びまして暫く更新ができません………本当に申し訳ないです。運良く投稿予約をしていたこのお話だけが手元に残っておりました。投稿が出来ない間も、どうかよろしくお願いします。
それではどうぞ


二十一羽

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

一護達が突入してきてから一晩たった。始業時刻より少し早めに隊舎で書類仕事をしていた。警戒体制になったところで、書類が減るわけではない。というかこういう時だからか皆投げ出していったから増えてる。その朝、悲鳴が瀞霊廷に響く。この声は桃?

急いで声の方に走る。この方角には東大聖壁がある。いったい、何があった。

 

近づいていくにつれて、爆発音が聞こえる。鬼道か斬魄刀の力だな。廊下を走り抜けると斬魄刀を解放しようとしてるイヅルがいて、桃の方はもう解放してる。止めないと被害が大きくなる。

 

「桃! イヅル! 止め!」

 

言霊で二人を縛る。やりたくなかったけど始解した副隊長を二人まとめて止めるには縛道は強度が心配だし、こちらの方が早い。少し遅れて冬獅朗が来て、他の副隊長に指示を出す。

 

「捕えろ 二人共だ」

 

その場に居た桃とイヅル以外の副隊長が二人を拘束する。

 

「総隊長への報告は俺がする!

そいつらは拘置だ!連れていけ!」

 

二人は副隊長に連れられて行く。ギンが冬獅朗に声をかける。

 

「すんませんな十番隊長さん

ウチのまで手間かけさしてもうて…」

「…市丸 てめえ今雛森を殺そうとしたな?」

 

冬獅朗の目線の先を見るとギンの手は何かの破道の形がとられていた。正確には分からないけど、一撃で効果のある鬼道だと考えられる。

 

「はて 何のことやら」

「…今のうちに言っとくぞ

雛森に血ィ流させたら俺が てめえを殺すぜ」

「そら怖い

悪い奴が近付かんようによう見張っとかなあきませんな」

 

そう言うとギンはその場を去った。相変わらず表情が読めないから何を考えているのかも分かりづらい。冬獅朗が私に声をかけてきた。

 

「一条 あの形で止めてくれて助かった

ありがとう」

「いいえ 此方こそ迅速な指示ありがとう」

「あれは縛道を使ったように見えなかったが何をしたんだ?」

 

やっぱり聞かれるか。まぁでもこれは誰でも使える術だから教えても問題ない。

 

「あれは言霊で二人を縛ったの

何かに集中してる時に名前を呼ばれると動きが止まるでしょ?

あれと似たようなものだから誰でも扱えるちょっとした術だよ」

「そうか」

「ところで何があったのか掴めてないんだけど分かる?」

 

そう言うと、冬獅朗の視線が壁の方に向く。それを追うがその先は刀が一本刺さっているだけだ。あれは藍染の斬魄刀…。どうしてこんなところに。

 

「あれだろうな……藍染が殺されてる」

「殺されてる?」

 

あれが冬獅朗や皆には死体に見えてる?

言うべきか言わないべきか…斬魄刀を撫でる。これではっきりしてきた。多分、あれは幻を見せ、感覚を支配する類いのもの。そしてこれまで感じていた違和感の正体だ。だから、私には自分の斬魄刀の力によってそれが効かなかった。何処からか藍染が見ているのならば話を合わせておいた方がいい。後でどうにか伝えよう。

 

「何かあったか?」

「なんでもない

桃は彼を慕っていたから

これはショックが大きいだろうね」

 

差し障りの無いことを返す。慕っていた上司が殺されてるなんてトラウマになるに違いない。

 

「なあ一条

俺は犯人が市丸だと思ってる

お前はどう思う?」

 

冬獅朗はギンが犯人だと思ってるみたいだ。でも、犯人は彼じゃない。そう動いてるだけ。今考えると作戦の全てが藍染の斬魄刀を主軸に考えられてる。幻を見せ、五感を支配する、ということは誰かを自分に見せることも出来る。それにギンは…失われたものを取り返したいだけだ。そのためにしたことを許せる訳では無いけれど、きっとその立場になったとき私も同じ様なことをする。五十年ほど前、一度だけ例えばと話してくれたけどあれは本気の目だった。きっとあの時から周りを欺いて居たのだろうな。掴み所の無い彼が唯一見せてくれた感情だったからよく覚えてる。

 

「私は……」

 

言いかけた所で複数の足音が聞こえて振り返る。

 

「あらあらこれは」

 

卯ノ花隊長を筆頭に数名の隊長が来た。そのあと直ぐに刀もとい遺体が慎重に降ろされた。そのまま、四番隊に引き取られていく。

 

また大きい霊圧のぶつかり合いが起こってる。これは隊長と一護だな。春水と旅禍の誰かが戦ってる。間に入るべきか。取り敢えず先に地獄蝶に藍染のことを卯ノ花隊長と十四郎、春水、重國先生に伝えるように飛ばす。正直信じてくれるかは五分五分だな。

取り敢えず走る。向かう途中で十二番隊士と死覇装を纏う見覚えの無い少女と雨竜が居た。マユリがギリギリこの位置から見える。何かボタンを押した。反射的に呪を唱える。

 

「禁!」

「なんで爆発しないのだネ」

 

そう言いつつマユリはカチカチとボタンを押し続けてる。何をしようとしてたのか聞いてみるか。

 

「爆発することを禁じただけ

マユリ隊長何をしようとしたんですか?」

「爆発させようとしたのだヨ」

「何を?」

 

笑顔で言う。あっマユリが黙った。ろくでもないことをしようとしてた事だけは分かったから拳骨でも落としておく。まさかこれで伸びるとは。やり過ぎたか、場所が悪かったか。人員が足りないのにいったい隊士に何をしたのやら。隣に居たネムに伝言を頼む。

 

「ネム副隊長連れていって

あと伝言…ネム副隊長や隊士に手を出したら叱る(物理)からって伝えといて」

「はい」

 

若干引きずりながらネムがマユリを連れていく。全く、自分だけじゃ飽きたらず周りの人に手を出すのは止めてもらいたい。隊士達の方を向く。入隊したばかりの彼等にもこの権利はあるはずだ。

 

「君ら移動届を優先的に受理してもらえるようにしとくから異動したい人は出しなさい

但し希望した隊に異動できるとは限らないけど今よりは君らの能力に合った隊に行けるように交渉しとく」

「はっはい」

 

それを隊士達に言うと全員散っていく。今期入った新人だ。怖かったろうな。その場に残ったのは、旅禍の二人だ。雨竜が話しかけてきた。

 

「僕達を助けてどうする気だ」

「どうもしないよ

早く行きなさい」

「もしかしてこちら側の協力者って…」

 

少女の方が話しかけてきた。喜助から話を聞いたかな。ただ、結果的に彼等を助けた形になったけど、動いた理由はマユリを止めたかっただけだから言わないでおこう。

 

「どうでしょうね

私の気紛れかもしれないよ?

気が変わらないうちに行きなさい」

 

早くこの場から立ち去らせる。私も行きたい所がある。春水と戦ってた旅禍の子の霊圧が急に弱まった。隊長の霊圧とそれに続いて一護のものもだ。春水は旅禍の子を治療するだろうからいいとして、隊長達が危ない。急がないと。


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