大切な誰かへ   作:刹那の奏

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如月ユキと一条ときの無音無動作鬼道特訓 前編

「一条、その子に何仕込んだの?」

「何って……無音無動作で鬼道が撃てるように特訓しただけ、だけど?」

「それは“だけ”って言うことじゃないでしょ!?」

 

 

 

 

これは現在から三十年前、ユキが入隊して二十年がたった頃のお話

 

 

九番隊に入隊して檜佐木の元で仕事をしていたユキは、何の因果か十一番隊七席・一条ときと鬼道の特訓を行っていた

 

「ユキは飲み込み早いね、もう無音と無動作それぞれが出来るようになってる」

そう言いながらときはユキの頭を撫でつつ水筒を渡した

「そうかなぁ、まだまだ先生には敵わないけどね」

ユキは、口ではそう言っているけれど褒められて嬉しい様子を隠しきれていないまま水筒を受け取った

「でもやっぱり難しいよ、無音か無動作かどっちかは出来るけど両方同時にっていうのがなかなか出来ない」

しょんぼりとしながら言うユキにときは苦笑して

「そんなにしょんぼりしないで?私だって最初は全然出来なかった、というかユキよりも出来てなかったかもね」

「でも、ふとした瞬間になんとなくコツが掴めてそこから出来るようになったの」

だからユキも出来るようになるよ、そう言いながら再びユキの頭を撫でてときは立ち上がった

「さっ、休憩はお終い!特訓の続きやろう」

「はーい」

返事をしてユキも立ち上がる

んー、と目いっぱい伸びをして気持ちを切り替える

 

「よし、始めるよ」

「よろしくお願いします!」

元気な声と共に響く破裂音

ときの放つ鬼道を避けつつユキも鬼道を放つ

最初は詠唱破棄から始まり、段々無音へと変化していく

途中鬼道が乱れた時はときからのアドバイスが飛ぶ

「そこで集中を切らさない!」

「はい!」

ちなみにここは九番隊の裏にある裏山の広場だ

九番隊隊舎からもこちらの様子は見えるので、時々檜佐木や東仙が様子を見に(聞きに)来ていた

 

「そこですぐに体勢整えて!戦闘中に一息ついてる暇なんてないよ!」

「はい!」

鬼道のぶつかり合う音やときの鋭いアドバイス、ユキの返事が響く

ふとユキが顔を少し上げると、ときが放った双蓮蒼火墜が正面に迫っていた

「ユキッ!」

ときの叫び声を遥か遠くに聞きながらユキは目を閉じ、手を下げた

その時、頭の中でカチッとピースのはまる音がした

 

 

 

ズドンッ!という一際大きな音が裏山に響いた

もうもうと上がる砂煙

ときは急いでユキの立っていた場所に向かう

自分の放った双蓮蒼火墜がユキに直撃していたらと思うと居てもたってもいられなかった

先程の場面、ときから見たユキは双蓮蒼火墜が当たる直前に目を閉じて手を下げていた

無抵抗で当たってしまったかもしれない

無事でいてほしいと思いながら急いでユキの元へ駆けた

 

「ユキ!大丈b……あれ?」

ときはその場に着くと同時にユキに声をかけようとしたが、それは間抜けな声に変わった

別に、ユキがその場から消えていたとかそういう訳では無い

そこにあったのは防御壁だった

「……断空?でもなんで?」

そう思いつつ後ろを覗き込むとそこにはユキが先程の──目を閉じ手を下ろした姿勢のまま立っていた

「ユキ?」

ときが声をかけると同時にユキは目を開けた

「あれ……?先生?なんで?」

ユキは何が起こったのか分からないと言ったように困惑していた

「さっき双蓮蒼火墜が飛んできて……でも私は無傷で……?んん?でも断空が発動してる?あれ?」

うーん?と唸っているユキを見つめながらときも思考を巡らせる

確かにユキは対抗策を出してはいなかったはずだ

あの一瞬で何かあったとすれば、それは──

 

「……もしかして、無音無動作で断空を放った?」

 

ときがそう口に出すと、ユキはポカンとした顔をしたまま固まった

まさかとは思ったが、先程のユキの行動から見てそれ以外に考えられなかった

 

「……じゃあさっきなんかピースがはまった音がしたのってそれだったのかな?」

ユキが首をかしげつつ、そう呟く

「そうじゃないかな?ちょっと試してみる?」

「うーん、やってみたいな」

「よし、じゃあちょっと休憩したらまた再開しようか」

「はぁい」

 

 

「おっ?珍しい組み合わせだねぇ」

「一条に如月か、確かに珍しい組み合わせだ」

 

二人が休憩していると、九番隊隊舎の方から声が聞こえてきた

二人がそちらに目を向けると、そこには八番隊隊長・京楽春水と十三番隊隊長・浮竹十四郎がいた

「春水に十四郎?二人ともなんでここに?」

ときが不思議そうに聞くと

「ちょうど通りがかったらすごい音が聞こえたからね、気になって覗いてみたんだ」

浮竹がそう答え、

「いやぁ、音だけじゃなくて霊力の波動も結構凄かったよ〜?」

京楽は相変わらずゆったりと感想を述べた

それを聞いたときは、

「そんなに凄かった?やっぱり双蓮蒼火墜と断空のぶつかり合いだったから?」

と考えつつユキをチラリと見る

すると、少々うずうずとした様子の彼女の姿が目に入った

その瞬間、ときはいい事を思いついた!と言わんばかりの悪戯っ子のような表情を浮かべてこう言った

 

 

「ねえ、春水?ユキと手合わせしてもらえない?」

 

 

それを聞いたユキは元々大きめの瞳をさらに大きく見開いて固まった

京楽も少々驚いたようで動きを止めていた

浮竹だけがいつものように笑って

「面白そうじゃないか京楽、やってあげたらどうだい?」

などと言っていた

 

「えぇ?ボクが相手で大丈夫?一条がやってたんじゃないの?」

「そうだけど、ずっと同じ相手じゃワンパターンだしね?ちょっと趣向を変えてみようかと思って」

「いやいやいや、どうしてそうなっちゃったの?」

「だって十四郎は流石に無理でしょ?そうすると春水しかいないし」

「まあ……、確かに浮竹に無理させる訳にはいかないよねぇ……」

「俺は全然構わないんだぞ?今日は調子いい方だし」

「「その言葉は信用できない」」

「それは酷くないか!?」

「………あ、あのっ!」

 

同期三人のテンポの良い会話に目を白黒させていたユキがようやく口を開く

それに三人同時に反応し振り向いたため、ビクッと肩を震わせたがおずおずと話を切り出した

「えっと、私はちょっとやってみたいですけど……」

ユキがそう言うが早いか、ときが「よし、じゃあやろう!」といそいそと準備を始めた

周囲に被害が出ないように、闘う二人を中心として簡易的な結界を張った

 

「じゃ、始めよっか」

ニッコリと笑顔で京楽が言い放った

「お、お願いします!」

緊張していたユキは、京楽のあまりの軽さに毒気を抜かれつつ挨拶を返した

それと同時にときから開始の合図が出された

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