今回は東仙隊長の話です。
それではどうぞ!
「先生のことか……構わない」
檜佐木が私にまで取材しに来るとは思わなかった。あまり話せることもないのだが、その思い出は色濃く残っている。
「あまり話せることもないのだがそれでもいいか?」
「はい 何でも大丈夫です」
「では 初めてあった時の話でもしよう
初めて会ったのは流魂街でだった」
〈貴方が東仙要さん?〉
すれ違い様にそう聞かれたのが始まりだった。今思うと、話に聞いた外見の特徴だけで私を探し当てたのだろう。
「先生は私の事を探していたらしい
理由は私の友人が大怪我をし ずっと私の事を呼んでいるのだと話していた」
聞かれたことに是と答えると時間があまりないから瀞霊廷に移動しながら、友人と自らの関係と探していた理由、そして大怪我をした理由全てを話してくれた。目が見えないことも知っていたらしく、気配が読みやすいように気遣ってくれてもいた。
「その後すぐに瀞霊廷にいる友人のところに向かった」
「でも流魂街の住民は許可がなければ瀞霊廷に入れないですし一隊士が大怪我をしてもそんな風に連絡はいかないのでは?」
確かにその通りだ。あの時のことは特例中の特例だとも話していた。彼女が大怪我をした理由があまりよくなかった。
「確かに通常ならそうだったが許可は特例で予め先生がもぎ取ってきていたようだ
あとは大怪我をした理由が原因だった
彼女の夫は同僚を些細な喧嘩で斬ろうとした
それを止めに彼女が間に入ったところを夫が切ったらしい」
先生は包み隠さず全てを話してくれた。隠し通したとしても二人とも傷つくだけだからと。
「星にかかる雲を払いたいとささやかな願いをもった彼女は死神を続けられない体になっていた
私は怒りでどうにかなりそうだった……
丁度その時彼女の夫が訪ねてきた
私はベット横に立て掛けてあった刀を抜いて斬りかかった」
今でも忘れることはない。
〈やぁ 我が妻 歌匡よ〉
突然現れた男はそう言った。その言葉からその男が彼女の夫であり、彼女を切った本人だとすぐにわかった。
彼女を自らで切ってなおそんな風に声をかけるあの男が気にくわなかった。
「刃がそいつに当たると思ったそのとき先生が素手で切っ先を掴み反らしたらしい
次いでもう片方の手でそいつを叩いた」
「え゛」
「先生も思うところがあったんだろう
私が手を出せば相手は分家ではあったが五大貴族の血筋だったからな…反逆の意思ありと見なされ私は今ここには居なかっただろう
だから私の代わりに先生が叩いた」
あれは本当に驚いた。私を止めたかと思えば、自分が叩いてしまったのだから。男が五大貴族の血筋だというのは後から聞いたことだった。
〈力は誰かを傷つけるためにあらず
仲間を 友を 人を護るためにある
いい加減どうにかしたらどうですかねぇ…
その傲慢な態度を…〉
先生は地を這うような低い声で男にそう言った。その時の彼女からは底知れぬ恐ろしさがあった。後から聞いた話だと、感情無く笑っていたらしい。ついで、私も諭された。それは優しい声だった。
〈これは彼女の斬魄刀
これを使ってあの男を傷付けたら貴方もあの男と同じになってしまう
この力は傷つけるためではなく守るための力だからね〉
そう言って、刀を鞘に納めた音がした。
「そのまま男は逃げていった
何かを怖がっていたよ
漸く三人になって先生は私と彼女にそれぞれこれから進むことのできる道を示してくれた
どんな道でも君達は選ぶことができる
貴方達が進みたい道を進めばいい
君達は…子供は未来だからといって」
「それ市丸隊長も言ってました」
「そうか…
子供は未来を生きる
可能性を広げていく力を持つ
自分達がやれなかったことをやって見せてくれる 十年 二十年後には今は無い仕事で活躍する子も出てくる 今の当たり前を引っくり返す子も居るだろうと…………
だから子供達の可能性を広げる手伝いのできる教諭というこの仕事に誇りを持ってるそう言ってもいたよ
これで終わりだ」
私達二人はそれぞれ道を選んだ。私は彼女の願いを叶えるために死神となった。その一方で、彼女は死神を辞し今は流魂街で手習所をやっている。先生が話したように、未来を創る子供達の可能性を広げるのだと言っていた。先生は誰よりも真っ直ぐで、優しい人だ。この人についていきたいと思って死神となった。己の正義と先生の教えのためなら私は……。
「そうですか
ありがとうございました」