えー今回はとある人の霊術院時代のお話です。
作者の学生の頃はまだ純真だったようなそうでもないような…記憶がもう薄れてありません。
最近性格も肌も段々荒れてくるのを感じます、歳はとりたく無いものですね。それでは本編どうぞ。
「今回の現世実習を引率する六回生たちです
よく話を聞くように
何かあれば各々配ったブザーを鳴らしなさい
六回生か私が行きます」
そう言って引率を担当する六回生に引き継ぐ。あのブザーは、何年か前に現世実習で
この授業には私も同行するようになった。むしろ、今までこの授業に教員が付かなかったのが謎だ。と考え事してたら置いていかれるところだった。生徒の後ろについて最後に門に入る。そういえば今回やたら、惣右介隊長にブザーを生徒に持たせるのを止められたな。もうあんな思いはしたくない、生徒の安全を考えて持たせるとごり押した。
現世に着くと、見渡しやすい位置に立つ。グループごとに散らばっていくのが見える。
というかこの地区霊が多いな。担当誰だ。絶対にサボってるだろこれは。成仏できない霊を探して、魂葬する授業なのにすぐに霊を見つけられるような状態じゃ駄目だろう。後で調べて、叱ってやる。六回生から連絡が来た。
〈六回生の玄人です
今最後の生徒が終わりました
集合かけます〉
「わかった
気をつけて戻って来なさい」
〈はい〉
近いところにいた生徒から戻ってくる。あらかた戻ってきたところで人数を数える。一回生三人と六回生が足りない。六回生の玄人と修兵のグループか。そこでブザーが鳴り彼らの現在地が示される。
「六回生!一回生達を連れて戻れ
大丈夫 必ず戻ってくる
念のため隊長に連絡
向こうの救援体制整えといて 開錠」
「了解っす」
パニックになっている子は居ない。彼らに任せておけばあの子達は大丈夫だろう。瞬歩で向かう。あのときのように迷うことはない。頼むから無事で居てくれ。もう血だらけの生徒を見るのはごめんだ。土煙があがっている。あそこか。
『斥』
急降下して、振り下ろされる
「居合一の型
仮面を真っ二つに割る。周囲に
「六回生も大丈夫
生きていれば傷はやがて癒える
だから笑いなさい
皆揃って帰れるのだから」
そう言って私は笑う。言霊は力だ。自分にも、人にも力を与えてくれる。
「帰ろう
向こうで皆待ってる
早く安心させてあげよう 開錠」
「肩から胸にかけての傷です
簡単な治療は向こうでしてあります」
「分かりました」
「春水隊長も迅速な対応
ありがとうございました」
「いやぁ かまわないよ
もう少し遅かったら現世に行…「せんせい」くところだったよ」
「すみません」
「いいよ 皆心配してたんだ」
春水の言葉を遮って生徒達が抱きついてきた。皆、涙でぐしゃぐしゃだ。あの状況で、冷静でいようと努めていたのが、私達の姿を見て安心したんだろう。
「言ったでしょ
必ず戻ってくるって」
暫くそのままだったが、頭を撫でていたら収まってきたようだ。もうだいぶ、遅い時間になっている。間に合って、守れてよかった。本当にあんなのはもう二度と。
「そろそろ皆寮に帰りなさい」
そう言うと皆それぞれ寮に戻っていくが、一人だけその場に残る。修兵だ。
「どうしたの?」
「いつでも質問しに来ていいって話してくれたので 話を聞きたいんです」
もう遅いから、と断ろうとしたけど彼の表情を見て今答えないといけない気がした。
「いいよ 何が聞きたい?」
「…
俺は霊術院に入る前にも
そんな風になりたいと考えて死神を志した
でも実際は怖くて動けなかった……」
「…怖いよ とても怖い
でもそれ以上に失うことの方が怖い
失うことの恐ろしさを知っているからね
だから
新人の頃
そして上官は叫んだ 今だ斬れ…と
私は彼を助けたくてただその一心で……斬った。
どんなに頑張っても血が止まらなくて……。修兵の言葉で現実に引き戻される。
「上官はどんな方だったんですか?」
彼の話をするのは久しぶりだ。
「彼は強くて優しかった
十一番隊は好戦的な人が多くて恐れられてる
そんななかでは珍しい人だった
私に居合を教えてくれたのも彼だった
一の型は彼の技 燕に空と書いて燕空
最初で最後に教えてもらった技
燕は大空を自由に飛んで人々に幸運を運ぶ鳥
だから罪に縛られた霊を空に解き放つこと
一度
数ある技の中で一番彼を表してる」
〔いい名だろ
俺達が間に合わなかったからこうなったんだ
だからせめてこの後の幸せくらい願いたいさ〕
これを教わったとき彼が話していたことだ。
「優しい技ですね
今その方はどうしているのですか?」
「亡くなった……
私を庇ってね
生きていればきっと何処かの隊の隊長格になっていたかもしれない」
実際その話は上がっていたようだった。
「先生は誰かを助けられなかったことを後悔してますか」
「……後悔してない……とは言い切れないかな
でもそれで歩みを止めることは絶対にしない
立ち止まるにはいろんな人から想いを…
託され過ぎてしまった
救えないものもある…残念だけどこれが現実
それでも手の届く限り
救える命ある限り私は手を伸ばし続ける
未来を託されちゃったからね」
今でも忘れない。彼の最後の言葉も…全部。
〔…生きろ…立ち止まるな ……屍を越えて……
前に進め……未来は託したぞ………〕
多くの仲間の死を見送ってそれでも、壊れずにいられたのはこの言葉があったからだ。今思えば、彼は見抜いていたのかもしれない。これから出会うであろう多くの仲間の死を。
その辛さを。
「修兵 結ばれた縁を大切にしなさい
決して最善を尽くしても救えなかったことで
自分を責めるな
託された想いを誰かに繋いで行きなさい
他にはある?」
「もうないです」
「遅くなってしまったね
寮にお帰り」
帰って行く修兵の後ろ姿を見送りながら思う。
たくさん救えなかった人がいた。救えた人がいた。その人たちのことを忘れたことは…ない。
今はまだ小さな背中がこれからきっと私の知らないところで大きくなっていく。それが少し寂しく感じる。どうかこれからもこの縁が切れぬことを祈ろう。