もう少しで十羽行きますね。話数カウントの羽は燕から来てます。変換ミスでは無いです。現時点の燕の巣を見ていると羽とか尾とかが、飛び出しているのが見えます。早いところは、飛ぶ練習をしてますね。
長々とすみません。今回の話は霊術院での授業の話です。それではどうぞ!
今年の生徒が入学してから一月経って、漸く学舎も落ちついてきた。恋次達も上手く学舎のメンバーに馴染んでいるようだ。よく一緒にいるのは、桃とイヅル、ユキ、弥生だ。それでイヅルと葛籠がよくつるんでて、弥生と桃、ルキアとユキが特に仲が良い。今日はいつも鬼道を教えている先生が欠席なので、代理で教えることになった。
はぁ、反鬼相殺出来るかな。鬼道に対して同質同量の逆回転の鬼道をぶつけるって難しいんだよ。暫くやってないからな。少し心配だ。失敗すると生徒が危ない。
練習場に行くともう生徒が集まっていた。考え事してると着くの早いなぁ。開始時間より少し早いけど始めよう。
「今日は代理で授業を担当します
よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
元気のいい返事が返ってきた。ちょっとびっくりする。いつも見ているのが座学だからかな。その時より生き生きしてる。
「今日皆にやってもらうのは
破道の三十一 赤火砲です
それを向こうにある的に当ててください」
「はい」
「まずは私がやります」
『君臨者よ 血肉の仮面 万象 羽ばたき 人の名を冠す者よ 焦熱と騒乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ 破道の三十一 赤火砲』
いつもよりかなり抑えて撃つ。実践で使うには威力が足りないが、今はこれでいいだろう。いつもの火力でやったら練習場が無くなるから。
赤火砲は的の真ん中を撃ち壊す。よし。
「順番にこれをやっていってください
分からないことがあればすぐに聞くように
それでははじめ」
生徒達が詠唱を始める。それを周りながら危険がないか見る。的に当てられたのは数人で、外す方が多かった。
何人か危なっかしい子もいた。大抵は霊圧を纏め立て直して撃てていたので、あとは的に当てることが目標だ。立て直せない子は術が完成する前に一度詠唱を止めさせてもう一度やらせる。行き場の無くなった霊圧は散らしておく。暴発すると危険だからね。
桃とルキア、ユキは霊圧のコントロールが上手い。一発で的に当てた上に中央を撃ち壊した。この二人はもう少ししたら詠唱破棄出来るようになるだろう。生徒達には出来るだけ詠唱破棄も出来るようになってほしい。実際の戦闘では、詠唱してる隙がないこともある。命を守る一つの手段として覚えてもらいたい。
他の子も素質はあるけどコントロールが出来てないみたいだ。そんで葛籠は詠唱を噛んじゃうんだよな。どうしたものか。
ふと恋次を見ると詠唱している途中だった。霊圧がどんどん膨らんでいく。今の霊圧だけなら上位席官に匹敵するかもしれない。他の生徒が恋次の周りから後ずさっていく。霊圧に当てられて気絶する子も出始めた。綺麗な球が出来ているけど、これだけ大きいと制御できなくなるかもしれない…。
何かあったときのために生徒を遠ざけ、恋次の赤火砲の軌道上に入る。何もなければ避ければいい。
次の瞬間、暴発する。
『反鬼相殺』
………ダメだ。合わせられなかった。ぶつけた霊圧が大きすぎた。恋次が危ない。
瞬歩で鬼道より速く恋次に近付き抱き締めて、そのまま横に転がることで勢いを殺す。赤火砲は着弾して、地面をえぐり土煙をあげる。数メートル転がって、漸く止まったので互いに砂を払いながら体を起こす。
「ごめんなさい 恋次
怪我はない?
馴れないことはするもんじゃないな」
「大丈夫です
先生は……けがしてるじゃないっすか」
右肩から腕にかけての火傷みたいだ。これくらいなら大丈夫。恋次は転がったためか擦り傷だらけだ。最初からどうにかして上に弾いてしまえばよかった。そしたら余計な怪我をさせずに済んだ。これは私のミスだ。
「平気平気 続けよう
他に怪我をした人はいる?」
見渡してみるが居ないようだ。良かった。気絶してた子も起きている。
「鬼道を暴発させると周りの人を巻き込んで危険だから気を付けるように」
そろそろ時間だ。終わらせよう。
「今日の授業はここまで
危ない目に遭わせてしまってごめんなさい
聞きたいことがあればおいで」
生徒達はバラバラと教室に戻っていく。そんな中、その場に残る影が四つ。
「恋次 戻るぞ」
「阿散井くん」
「阿散井 行こう」
「…行こ」
恋次がその場から動かなくなってしまったようだ。私も、鬼道を暴発させて師を傷つけたことがある。傷つけることの辛さは知ってる。
「恋次…
気にしなくていい あれは私のミス
自分で撃ったものを自分で受けただけだから…
それよりも君を危険な目に遭わせてしまった
本当にごめんなさい」
「とき先…生 すみません…でした」
そばに寄って、恋次の頭を撫でる。身長伸びたな。鬼道が苦手なのは、込める霊圧の調節が出来ないからだ。今の彼には、零か百しかない。それだけでは、扱いきれない霊圧が暴発してしまう。なら調節するための術を教えればいい。
「大丈夫 平気って言ったはずだよ
鬼道は暴発しないように練習すればいい
制御が出来れば撃てるようになる」
「……」
「……詠唱しながら指先の一点に灯る小さな火を想像してそこに霊子を球状に纏める
私が鬼道を撃つときの感覚」
「……………」
「焦らなくていい
先はまだ長いからゆっくりで構わない」
恋次は、最後まで俯いたまま私の声に答えることなく教室に戻っていった。慌ててルキア達が追いかける。本当に申し訳ないことをした。鬼道を使うことがトラウマになっていたとしたら私に出来ることは少ない。彼が自分で乗り越えて行かねばならないものだから。
恋次とルキア達の背中が見えなくなって、一度書類を取りに職員室に戻る。
「一条先生 その怪我」
同僚から声をかけられる。あっ、怪我のことをすっかり忘れてた。
「後で行くので大丈夫です」
「だめです
そう言っていつも行かないって聞いてます
今回は火傷じゃないですか!
後が残ったらどうするんですか!」
「傷痕なんて今さ…「だめ 今回こそは引きずってでも連れて行きますよ」
結局私が折れて無理やり救護詰所に連行された。そこで任務帰りの十一番隊の隊士と遭遇してしまって殴りかかられる。そこにたまたま居合わせた卯の花隊長が笑顔で場を収める。
私がここに自分のことで来ない理由はこれだ。だから来たくなかったのに。まぁ、来ちゃったから大人しく治療を受けておこう。