Villain 〜その男、極悪につき〜   作:桒田レオ

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第三十三章「師弟伝」
一話「新たな弟子」


 

 

 

 大和は大衆酒場ゲートで昼食をとっていた。

 天ぷらうどんと野菜ジュースのセットはお決まりのメニューである。

 

 厨房にいるネメアは思わず聞いた。

 

「何時も同じメニューで飽きないか?」

「全然、うめぇし」

「嬉しいが、他のメニューもおすすめだぞ。最近また料理の腕が上がったんだ」

「マジか、じゃあ今度はおすすめ頼むわ」

「任せろ」

 

 気軽な、友人同士の会話。

 締めに野菜ジュースをがぶ飲みした大和は行儀よく両手を重ねると、席を立つ。

 

「さぁて、腹ごなしも済んだし……今日はカジノにでも行くかなぁ」

 

 爪楊枝を咥えながら店を出ようとする大和の前で、小さな騒動が起こっていた。

 

 二人組の女。片方は厳つい美女だ。

 鮮血色の長髪をポニーテイルに結い、金色の瞳を鋭く輝かせている。

 服装は紺色の袴を極太のしめ縄で締め、上半身はサラシ。

 桜吹雪の舞った羽織を肩から羽織っている。

 ボンキュボンのナイスバディだが筋肉質であり、腹筋はバキバキに割れていた。肩の筋肉も凄まじい。

 それでも凄絶な色香を醸しているのは、彼女が人外であるからだろう。

 

 現に、その額には二本の角が生えていた。

 

 彼女は大和に用件があるのだろう、気軽に手を上げる。

 

「おう大和、よかったぜ。鬼狩りのチンチクリンがいない時にいやがった」

朱天(しゅてん)じゃねぇか、どうした」

 

 朱天。本名を酒呑童子。

 平安時代に京都で大暴れした東洋を代表する鬼神。

 現在は強力な妖魔で構成されている暴力集団「朱天組」の組長を務めており、その異常な喧嘩の強さから世界最強の拳法家達「四大魔拳」の一角に数えられている。

 

 鬼という種族の超越者。

 EXクラスの戦闘力を誇るデスシティの真の強者の一人だ。

 

 大和と然程身長が変わらない彼女は、彼の肩を気軽に叩く。

 

「お前に頼みてぇ事があってよ。今暇か?」

「まぁ、暇だぜ。どうした」

「コイツを一人前に育てて欲しいんだよ」

「……はぁ?」

 

 頓狂な声を上げた大和は朱天の隣にいる少女を見下ろす。

 可憐な美少女だった。

 濡羽色のミディアムヘアに深緑色の双眸。

 デスシティの美女達の中でも上位に入るであろう顔立ち。

 服装は白の着物に紺の袴、肩から白銀の羽織を羽織っている。

 その額には角が一本、腰には妖気を纏った刀が帯びられていた。

 

 小柄な彼女は大和を見上げると、深くお辞儀をする。

 朱天は彼女を指差した。

 

「コイツ、鬼なんだけど生来力が弱くてな。俺じゃあどうしても教えられない部分がある。だからお前に期間限定で師匠をして貰いたいと思ってな」

「……」

「報酬はきっちり払うぜ。コイツ、他の奴らから貧弱だって馬鹿にされはじめてな。コイツはコイツで才能あると思うんだが……どうだ?」

 

 そう言われ、大和は鬼娘の頭頂から爪先まで観察する。

 鬼娘は硬直した。

 

 大和の返答は意外なものだった。

 

「コイツ、天才だぜ。武術の素質がズバ抜けてる。ここまでの逸材は中々いねぇぞ」

「……!!」

 

 鬼娘は思わず顔を上げる。

 その瞳には期待と猜疑心、どちらも混ざっていた。

 大和は苦笑しながら彼女を抱き寄せる。

 

「いいぜ、コイツは俺が預かる。暫く暇だったからな。コイツを馬鹿にした脳筋共を見返せるくらい強くしてやるよ」

 

 大和の発言に、鬼娘は思わず声を上げた。

 

「あの……本当に見返せるでしょうか。私を馬鹿にした奴らを」

「任せとけ。だが俺の修行はキツイぞ。耐えられるか?」

 

 鬼娘は迷わず頷く。

 

「はい……! 是非ご教授ください! 師匠!」

 

 そのエメラルドの眼に滾る決意をくみ取り、大和は笑った。

 

「よし、お前はこれから俺の弟子だ。頑張れよ」

「はい!」

 

 礼儀正しく頷く彼女の頭を、大和は優しく撫であげた。

 

 

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