villain 〜その男、極悪につき〜   作:桒田レオ

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三話「魔界都市・裏区」

 

 

 数分後。

 大和と斬魔は裏区に赴こうとしていた。

 

 裏区は中央区と対を成す真逆の世界である。

 悪逆、淫売、麻薬、汚染──

 デスシティの濃厚な(うみ)をかき集めた、文字通りの掃き溜め場。

 

 厳重なバリケード、有刺鉄線の壁を超え、大和達は裏区に続く小道を進んでいく。

 しかし、小道には既に裏側の空気が滲んでいた。

 

 怪しい屋台が両脇にズラリと並んでいる。

 経営しているのは薬剤師という名の麻薬売人達。

 薬品の内容は肉体強化薬、精神覚醒剤、媚薬、各種毒薬。

 他にも密輸&魔改造が施された銃器。スタンガン、応急キット、催眠スプレーなど──

 曰く付きには事欠かない。

 

 行き交う者達は厚化粧の情婦、刀剣を携えたヤクザ、妖物。

 

 何より、臭い。

 数多の劇薬と血、オイル、そして愛液が混じり合った──悪臭。

 慣れない者が嗅げば嘔吐してしまう。

 

 女の喘ぎ声と断末魔が、同時に聞こえてきた。

 

「ひでぇな。スラム街が天国に見える」

 

 囁く斬魔。

 彼は前を歩く褐色肌の美丈夫に聞いた。

 

「それで──大和、俺はこれからどうすればいい?」

「あ?」

 

 大和は振り返ると、斬魔の背負っている黒金の棺桶を見つめる。

 

「そうさな、まずはお前の背負ってる棺桶の中にいる奴を紹介して貰おうか」

「そうくるか」

 

 苦笑する斬魔。

 隠すつもりはないのだろう。

 

「オーケー、紹介する」

 

 斬魔は棺桶を地面に下ろす。

 ズドンと重厚な音を鳴らして直立する棺桶。

 その中から、白薔薇と一緒に類稀な美女が現れた。

 

「全く……ロクに休眠できなかったわ。相方もそうだけど、この都市は色々と酷いわね」

 

 苦言を漏らす美女。

 その肌は、舞い散る純白の花弁よりも白かった。

 瞳は水晶玉の様で、唇の色素は極端に薄い。

 

 服装は濃紺色のロングコートに漆黒のブーツ。

 首に巻かれた水色のスカーフが靡く。

 耳元で輝く逆十字のイヤリングは儚ささえ感じさせた。

 しかし、ロングコートの上からでもわかる肢体は妙に生々しい。

 

 周囲がざわめきだす。

 ただでさえ、大和と斬魔は悪目立ちするのだ。

 そこにもう一名、稀有な美女が加わったとなれば──

 

 魔界都市とは言え、ここまでの「美」を誇る者達が集うのは稀。

 故に、周囲は騒然としていた。

 

 当の美女は野次馬達を一瞥すると、大和に振り返る。

 そして、青白い唇を動かした。

 

「はじめまして。キミが今回、私達の補佐をしてくれる殺し屋ね?」

「~♪ こりゃまた、大層な別嬪さんだ」

 

 口笛を吹く大和に対し、美女は淡々と告げた。

 

「私の名前はえりあ。後ろの馬鹿の補佐役を務めているの。よろしくね」

 

 

 ◆◆

 

 

 野次馬達が集う中、大和は意味深な流し目をふり撒いた。

 途端に、野次馬達は蜘蛛の子を散らす様に逃げていく。

 

 大和は、別に威嚇したわけでは無い。

 この都市において、大和という存在はそれ程までに恐れられているのだ。

 

「さて、煩い奴等もいなくなったし……」

 

 大和は改めて、青き美女──えりあに向き直る。

 そして、そのきめ細やかな指を手に取った。

 

「どうだい? この任務が終わった後、俺と甘い一時を過ごすってのは……天国へ連れてってやるぜ?」

 

 美女であれば誰でも口説く。

 それが大和という男だ。

 

 タチが悪いことに、それを成せるだけの美貌を大和は持っている。

 何より、その言葉に嘘偽りが全く無い。

 

 実際に満足させているのだ。

 あらゆる種族の女を──

 大和に抱かれて不満を抱いた女は、今まで一人としていない。

 

 しかし、それは「抱かれれば」の話である。

 現に、斬魔がこれ見よがしに肩を竦めた。

 

「やめとけって大和。「俺」のパートナーだぜ。美貌だけで堕とせるような女じゃねぇ」

 

 斬魔の発言とほぼ同時──

 大和の頬に銃口が付きつけられた。

 

 淡く銀色に輝く自動拳銃。

 しかし、女の得物にしてはあまりに物騒だった。

 

 世界最大の拳銃、デザートイーグルより尚大きい。

 全長35センチ、重量12キロ、装弾数8発。

 

 対天使病拳銃「Danse Macabre」

 

 専用弾「祝福儀礼済み13mm劣化ウラン弾」は、デスシティの化物達を容易く仕留めてみせる。

 銃身を彩る薔薇のレリーフは、持ち主がどういう女であるかを暗に物語っていた。

 

 えりあは大和の頬に銃口を突きつけたまま言う。

 

「誘ってくれるのは素直に嬉しいけど、キミみたいなケダモノと寝るのは少しね……」

「口説いただけで銃口を突きつける女に、ケダモノたぁ言われたくねぇなァ」

 

 嗤う大和。

 えりあの表情は変わらない。

 

「言ってくれるじゃない。こうでもしなきゃ、キミはもっと先へ進もうとするでしょう?」

「一発だけでいいからよ」

「早く退きなさい。ほっぺに風穴開けられたいの?」

 

 声音に怒気がこもる。

 すると、大和は意外なほど早く身を引いた。

 

「参ったなコリャ。まるで薔薇……棘が鋭くて触れやしねぇ」

 

 両手を上げて降参のポーズをするも、大和は好奇で瞳を揺らめかせた。

 

「だが、男ってもんは袖に振られるほど滾るもんだ。えりあ、だったか? 覚悟しとけよ」

 

 子供のように無邪気でいて。

 それでいて、百戦錬磨の男娼の如き笑み。

 

 えりあは思わず溜息を吐いた。

 

「……全く、噂以上の女っ垂らしね。うちの馬鹿が影響を受けなければいいのだけれど」

 

 えりあは相棒──斬魔に向き直る。

 斬魔は神妙な顔付きで大和を見つめていた。

 

「なぁ、大和」

「あ?」

 

 首を傾げる大和に、斬魔は緊迫した声音で問う。

 

「おっぱいは、好きか?」

「当たり前だろ?」

 

「……」

「……」

 

「「HAHAHA!」」

 

 唐突にハイタッチを交わす二人。

 何か通じるものがあったのだろう。

 

 斬魔は快活な笑顔で言う。

 

「流石だぜ大和! やっぱ男は美女! 酒! 煙草だよな!」

「わかってるじゃねぇの」

「なぁ大和! 俺行きてぇ場所があるんだよ!」

 

 斬魔は懐から雑誌を取り出す。

 雑誌の表紙は際どいボンテージを着たサキュバスのお姉さんが飾っていた。

 

 タイトルは『今日は眠らせない!! デスシティま〇ま〇ガイド!!』

 

 斬魔は鼻息を荒げながらページをめくり、ある項目を指す。

 

「この「プッ〇ー・キャット」って高級娼館! 色々な種族の美女美少女が揃ってんだろう!?」

「そこならよく行くぜ、お勧めだ」

「マジか~ッ、なぁなぁ! この店にゃぁ、色気ムンムンのエルフ姉ちゃんとか、あざといケット・シーのお嬢ちゃんとかも居るのか!?」

「大概揃ってる。あの店は品揃えがいいからなァ……なんなら任務の後、一緒に行くか?」

「マジでか!?」

 

 斬魔は子供の様に目を輝かせる。

 

「行く行く! ぜってぇ行く! てか今行きてぇ!!」

「なら今から行くか。一日くらいいいだろ」

「いいねぇ! さすが大和!! ノリがいいねぇ!!」

「おうさ! 早速行こうぜ!」

「おう! デスシティで一夜のアバンチュール! 楽しませてもらうぜ!」

 

 ジャキン、と。

 大和と斬魔の顎に銃口が突き付けられた。

 二人の眼前には、えりあが佇んでいた。

 彼女は絶対零度の視線を二人に向けている。

 

「楽園に行きたいの? なら行かせてあげるわよ? 物理的に」

 

「……」

「……」

 

「任務中よ。真面目になさい」

「「……へーい」」

 

 有無を言わさない圧力に、大和と斬魔は引き気味に返事をした。

 

「……ふんっ」

 

 えりあは不機嫌そうに鼻を鳴らし、踵を返す。

 濃紺色のロングコートが翻り、腰辺りに二丁拳銃が収納された。

 その仕組みは大和を以てしてもわからない。

 

 ズカズカとブーツを踏み鳴らして先へと進んでいくえりあ。

 大和と斬魔は、揃って肩を竦めた。

 

 

 ◆◆

 

 

 裏区。

 此処はデスシティの負の側面を端的に表している場所だ。

 

 ケバケバしいネオンが点滅を繰り返し。

 獣人族の中でも「ケモノ」と揶揄される半人半獣がたむろしている。

 カマキリの蟲人が得体の知れない肉に食らい付き、身体障害者が不自由な身体を引きずっていた。

 

 騒動が起こる場所では、数名のヤクザが麻薬売人達を公開処刑していた。

 彼等はここら一帯を治めるヤクザ、骸道会(むどうかい)の構成員。

 骸道会は裏区を長年縄張りにしている武闘派&極悪ヤクザだ。

 

 此処は最果ての最果て。

 力の弱い者が、更に力の弱い者を求めて訪れる掃きだめ場。

 

 瘴気と共に漂ってくるのは激烈な悪臭。

 麻薬と糞尿、そして廃棄物が、鼻が腐るほどの悪臭を生んでいるのだ。

 住民達は強烈な香水で誤魔化しているが、この腐乱臭は誤魔化せるものではない。

 

 糞にたかる魔虫「豚虫」が不気味に蠢いていた。

 が、途端に物陰に隠れる。

 この虫は臆病な事で有名だ。

 身の危険を感じ取ったのだろう。

 

 同時刻、三名の美魔人がこの地に降り立った。

 褐色肌の美丈夫。影すら美しい美男。そして、死人を連想させる美女。

 三名の美貌は、荒んだ住民達の心を好奇と欲情で慄かせた。

 

 三名の内、褐色肌の美丈夫が顔を歪めた。

 此処に足を踏み入れた直後だ。

 

 彼は鼻を摘みながら叫ぶ。

 

「くっせぇぇぇっ、マジでくせぇ。カーッ」

 

 嫌悪感を隠そうともしない。

 褐色肌の美丈夫──大和は盛大に咳き込んだ。

 

「ゴホゴホッ……! ア~クソッ、お前等、大丈夫か?」

 

 大和は振り返る。

 すると、青を纏った死美人が無愛想に告げた。

 

「ええ。大丈夫よこれ位」

 

 死美人──えりあは全く表情を変えない。

 彼女は淡々と大和に問う。

 

「で、どうして此処へ来たの? 理由はあるのかしら」

「あ?」

 

 大和は片眉を上げた。

 

「何だお前、棺桶の中で聞いてなかったのか?」

「眠っていたのよ。再度、説明願えないかしら」

「ハァ……」

 

 大和は面倒臭そうに溜息を吐きながらも、説明する。

 

「此処に天使病を研究してる奴がいる」

「天使病の研究?」

「患者から霊子型ナノマシンを抜き取って、人造天使を製造してるんだ」

「……」

 

 えりあの双眸が僅かに細くなった。

 彼女から嫌悪感を感じ取った大和は、念を押す。

 

「余計な真似はすんなよ」

「……しないわよ。私達の役目は天使病の患者の抹殺、そして根源の排除。ただそれだけ」

「そうか。安心した」

 

 大和は表情を和らげる。

 

「お前の相棒も同じ様な事を言ったからな。でも確認だけはさせて貰ったぜ」

「……そう」

 

 えりあは小さく相槌を打つ。

 彼女はふと、ロングコートの下から大きめの瓶を取り出した。

 

「一応サンプルを持参してきたのだけれど、役に立つかしら」

 

 瓶の中にはグロテスクな怪物が収められていた。

 赤子ほどのサイズで、蟲のような複眼を持ち、身体中から純白の翼を生やしている。

 頬から牙が幾つも突き出しており、手足の関節も異様に柔らかい。

 

 大和は顎を擦る。

 

「それが──」

「今回の特異な天使病の患者、その一部よ。分裂したから、その一匹を収めたの」

「カーっ」

 

 大和は瓶に収まるバケモノを気持ち悪そうに眺めていた。

 

「やっぱキメェな。天使病の患者は」

「全員そうよ」

 

 冷たく告げたえりあは瓶をコートの内側に戻す。

 先程の二丁拳銃といい、彼女のロングコートは異次元ポケットか何かなのか──

 気になった大和だが、追求はしなかった。

 

 彼は首を傾げる。

 

「そういやぁ、相棒はどこ行った? 後ろにいねぇぞ」

「……」

 

 えりあは振り返る。

 そこに居る筈の斬魔がいなかった。

 代わりに、調子に乗った笑い声が聞こえてくる。

 

「HAHAHA! おいおいベイビー達! そう擦り寄るなって! 俺の身体は一つしかねぇんだぞ!」

 

 少し離れた場所で。

 亜人の娼婦達に囲まれている斬魔がいた。

 彼は黄色い歓声をあげる牝達を両手で囲んでいる。

 

「…………大和。少し待ってて頂戴。すぐに戻るから」

「ん」

 

 大和は頷く。

 えりあはズカズカとブーツを踏み鳴らし、斬魔の元まで歩み寄った。

 

 斬魔は相棒の存在に気付いて、ヘラヘラと笑う。

 

「どうしたえりあ、今取り込み中なんだ。後にしてくれ」

「何をしているの?」

「可愛いベイビー達を囲んでんだ」

「質問を変えるわ。何をしようとしているの?」

 

 

「そりゃお前、この後ホテルで「ケツ出して並べ」的なことを……」

 

 

 ゴシャリと、鈍い音が立った。

 えりあの拳が斬魔の顔面にめり込んだのだ。

 慌てて逃げていく娼婦達。

 斬魔は倒れて痙攣している。

 

 えりあは無様な相棒を引きずって、大和の元まで戻って来た。

 

「お待たせ」

「面白れぇ奴だな。お守が大変そうだ」

「キミが言えることかしら?」

「だから俺は普段、単独行動なんだ」

「……」

 

 えりあは斬魔から手を離すと、右腕を指す。

 そこには真紅の、逆十字の紋章が入った腕章が巻かれていた。

 

「これは補佐の証。天使殺戮士は普段二人一組で行動するの。私の仕事は、この馬鹿の面倒を見ること」

「なんだ、恋人じゃねぇのか?」

「…………わかってて言ってるわよね?」

「冗談だ。んな不快そうな顔すんなって」

 

 眉間に大層な皺を寄せるえりあに対し、大和は仰々しく両手を広げる。

 すると、今まで倒れていた斬魔がよろけながら立ち上がった。

 

「ま、前が見えねぇ……ッッ」

 

 顔面が陥没していた。

 こうなれば自慢の美顔も形無しである。

 えりあは冷たい眼差しを大和に向け、忠告する。

 

「キミも、ふざけた真似したらこうするから。真面目に仕事をしてね」

「へいへーい」

「……はぁ」

 

 えりあは少し疲れたのか、小さく溜息を吐いた。

 

 

 ◆◆

 

 

 暫く歩いていると、三名の視界に厳かな建造物が入ってきた。

 近未来を彷彿させるドーム状の建物は、まるで要塞。

 濃紺色に輝く表面は未知の金属で形成されているのか、圧倒的な質感を誇っている。

 

 高圧電流を常に循環させている有刺鉄線が侵入者を許さない。

 更に監視カメラを、ざっと千台弱。

 それも、不可視である筈の霊体までも察知する超高性能タイプだ。

 

 ふと、敷地内に偶然入った肉食性の(からす)が消滅した。

 敷地内に張り巡らされた不可視のレーザーの網。

 そして、各所に設置された50口径の全自動式レーザーライフル。

 それらを一身に受けた鴉は、悲鳴を上げる事もできずに蒸発したのだ。

 

「スゲェな。宇宙人でもいんのか?」

「宇宙人のほうがマシだぜ」

 

 斬魔の軽口に大和は鬱屈げに答える。

 今度はえりあが問うた。

 

「ここにいる人物が、天使病の研究をしているの?」

「まぁ、研究内容の一つに「天使病」が入ってるだけなんだけどな」

「どんな人物なの?」

「……」

 

 大和はえりあ達に振り返る。

 

華仙(かせん)。世界一の医者にして世界最高の科学者。その気になりゃあ表世界の文明を1000年進める事ができる、正真正銘の天才だ」

 

 大和は向き直り、歩みを再開する。

 

「まぁ、ここで立ち話をする必要もねぇだろ。事情を説明すりゃあ中に入れてくれるだろうし、さっさと行こうぜ」

 

 大和は数歩進む。

 しかし、返事が無かったことに違和感を感じて再度振り返った。

 

 斬魔とえりあは消えていた。

 隠れた訳ではない。その程度なら大和にもわかる。

 

「……アイツ等、どこ行ったんだ?」

 

 大和は思わず首を傾げた。

 

 

 ◆◆

 

 

 真紅の満月が、二名の頭上で不気味に輝いていた。

 デスシティに月は現れない。

 大気圏は瘴気と有毒ガスに覆われている筈だ。

 

「オイ、えりあ……」

「……」

 

 斬魔とえりあは現状を察する。

 先程とは、居る世界が違う。

 デスシティとは全く別の世界に「連れ込まれた」

 

 暁に照らし出されたのは西洋風の建物。

 地面は数多の白骨で埋め尽くされていた。

 

 何処からともなく笑い声が聞こえてくる。

 

「クククッ……」

「あの青い女は俺のもんだ」

「ならあの可愛い坊やは私のものよ」

「ほざくな。二人とも俺が頂く……」

 

「キヒヒッ……」

「美味しそう……っ」

 

 粘り付いた声。

 複数の嘲笑。

 おどろおどろしい欲望が狂気となって、斬魔とえりあに纏わりつく。

 

 濃密な血臭を嗅ぎ分け、斬魔は苦笑した。

 

「魔界都市たぁよく言ったもんだぜ。マジで魔界だな、ここぁ」

「減らず口を叩く前に、構えなさい。来るわよ」

 

 えりあは既に二丁拳銃を取り出していた。

 斬魔は黒金の長物で肩をトントンと叩く。

 

「殺すなよ。天使病の患者以外を殺すのは、俺達にとってタブーだ」

「殺さなかったらいいんでしょう? 半殺しならOKだわ」

 

 ドライな相棒に、斬魔は肩を竦めた。

 

「オーイお前等、逃げるなら今の内だぞー」

 

 斬魔の忠告は無意味だった。

 魔界都市の住民達が躍り出る。

 二人を凌辱し尽くさんと迫る。

 

 斬魔は溜息を吐いた。

 

「……忠告はしたぜ。後で泣きべそかいても知らねぇからな」

 

 斬魔とえりあは得物を構える。

 二人は超犯罪都市から洗礼を受ける事になった。

 

 この都市に要求されるものはたった一つ。

「力」だ。

 

 弱肉強食。

 弱者に生きる価値はない。

 

 正義を貫いても構わない。

 悪を謳うのも構わない。

 

 ただし、強くなければならないのだ。

 

 

 


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