Villain 〜その男、極悪につき〜   作:桒田レオ

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五話「ノーマルエンド」

 

 

 

 何時もは活気にあふれている大衆酒場ゲートが、今夜は通夜の様に静かだった。

 此処だけではない。魔界都市全体が静寂に包まれている。中央区は勿論、東西南北、裏区に至るまで……

 何時もの風景を知っている者からすれば、不気味に思えるだろう。

 明らかに人口が少ない。

 

 客人が殆どいない店内で、大和は何時も通り飲酒を楽しんでいた。

 

「こういう静かな酒場もありだな! 裏通りのバーみたいでよ!」

 

 カラカラと笑いながらグラスにブラックラムを注いでいる。

 その両隣には、絶世の美女たちが座っていた。

 

「ネメアさん! アタシは獺祭(だっさい)、純米大吟醸! ボトルで頼むぜ!」

「私は仙桃で造られたお酒をお願いします。高くても構いませんので」

 

 褐色肌の九尾の狐、エリカ。中華系の美女、玉風(ユーフォン)

 彼女たちはそれぞれ好みの酒を頼む。

 大和は笑いながら言った。

 

「今夜は俺の奢りだ。酒でもつまみでも好きなもん頼め」

「いえーい! なら追加でだし巻き卵! 大根おろし付きで! あと、焼きほっけと冷や奴!」

「私はそうですね……フルーツの盛り合わせを。あと、他に神造のお酒はありませんか? 魔造でも構いません。なるべく度数が高く、美味しいものをお願いします」

「あ! ならアタシも! 十四代(じゅうよんだい)出羽桜(でわざくら)! あるもんでいいから!」

 

 二人ともノリノリで頼む。

 大和はビターチョコの盛り合わせを頼むと、じゃれてくる二人を適当に可愛がった。

 ネメアはオーダーを確認して厨房に入っていく。

 

 大和はブラックラムを飲みながら、今回の件について話しはじめた。

 

「たまにはこういうのも悪くない」

「異世界一つ滅ぼしといて言うことかよ!」

「まぁ、今回は何時もと違いましたからね」

 

 玉風の言葉に、大和はゆっくりと頷く。

 

「ああ。そういえばあの異世界の軍人……ゼクスだったか? アイツはどうした」

 

 大和の問いに、玉風が答える。

 

「飛龍さんが弟子として迎え入れました」

「ほぅ、あのフェイロンが……」

 

 大和は目を細める。興味があるのだろう。

 玉風は続ける。

 

「彼の才能を高く評価しているようです。実際、何時死んでもおかしくないような修業をさせていますよ」

「ご愁傷様。フェイロンに潰された弟子は数多い。……しかし、アレは中々にいい素材だった。将来化けるかもな」

「ええ、将来が楽しみです。我々の良き同胞となってくれるでしょう」

「ククク、そうだな」

 

 ゼクスは決して若くない。しかし、大和たちからすれば若造も若造だ。

 

 そんな時、入り口のウェスタンドアが開く。

 

 そこには黄金の妖魔王と桃色の美姫が佇んでいた。

 東区の頭領、万葉と先日助けた竜人族の少女、ピスカである。

 万葉は何時も通りの幼女スタイルで、限界まで美貌を隠していた。

 ピスカは清楚でありながら綺麗な着物を着ており、和風然としている。

 

 万葉は大和を見つけると、大きく手を振るった。

 

「大和様~!! この娘、採用じゃ~!! とても美しくええ子じゃのぅ!! これは他の男共が放っておくまいて!!」

 

 万葉は走って大和に抱き着く。

 大和はその狐耳ごと頭を撫でた。

 

「こっちこそ、ありがとうな。無理矢理薦めちまったのに」

「なんのなんの!! こういう子なら何時でも大歓迎じゃ!! ふぉぉ~っ♪ もっと撫でてくれたも~♪」

「よしよし」

 

 一通り撫でられて満足した万葉は、一度離れて報告する。

 

「この子は娼婦ではなく接待専門として迎え入れた。本人の希望でな。まぁ、この美貌じゃ。身体で稼ぐ必要もなかろう」

「そうか」

「しっかし、大和様も罪な男よのぅ」

 

 ニヤニヤと笑う万葉。その額を大和は指で小突く。

 万葉は驚いたが、次にはやれやれと苦笑した。

 

 彼女はピスカから事の顛末を聞いていた。

 

 ピスカは大和に会釈する。

 彼が手をあげると、微笑んで傍によってきた。

 

「ありがとうございます、大和様。何から何まで……」

「気にすんな。俺がしたくてした事だ。これからは好きに生きろ。まずは金を稼いで、やりたい事を見つけるんだな」

 

 微笑みかけてくる大和に対して、ピスカは頬をほんのり赤く染める。

 次には花が咲いたように笑った。

 

 数多の犠牲者が生まれた。

 だが最後には、禍々しくも清々しい風が吹いた。

 

 

《完》

 

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