Villain 〜その男、極悪につき〜   作:桒田レオ

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第四章「魔忍伝」
一話「魔忍」


 

 

 

 魔忍。

 忍術、体術以外にも魔術や呪術を習得した忍者。

 彼女達は全員くノ一だ。

 理由は魔忍の最たる所以である「とある能力」が、女性にしか受け継がれないからだ。

 

 魔忍の始祖、加藤段蔵(かとうだんぞう)

 戦国時代に暗躍したこのくノ一は、人間と天狗の混血(ハーフ)だった。

 

 彼女の血液を摂取する事で各々の特殊能力を開花させた超常の存在こそ、魔忍なのだ。

 

 飛段の血は女性にしか作用しない。

 故に、魔忍はくノ一しかいない。

 

 妖魔と戦えるだけの戦力を誇る彼女たちは、古来より時の人に重宝された。

 現代では総理大臣お抱えの組織、特務機関(とくむきかん)の「魔忍部隊」として編成されている。

 

 此度、この魔忍部隊に入隊できる存在を選別するために「とある試験」が実施されようとしていた。

 その内容とは──

 

 

 ◆◆

 

 

 国家防衛省、特務機関施設の一室で。

 

「魔界都市デスシティで一週間のサバイバル……」

「そうだ。世界の負の側面そのものであるあの都市で、一週間生き延びてみせろ。できなければ貴様等に魔忍を名乗る資格は無い。潔く死ね」

 

 教官から告げられた残酷な内容に、しかし魔忍達は動揺していなかった。

 何時死んでもいい様に教育された彼女達に、死の恐怖など存在しない。

 

 魔忍に限らず、忍とは飛び道具。消耗品だ。

 彼女達は教官から下された命令に絶対に従う。

 

 命令はただこなすのみ──そういう風に教育されてきたのた。

 

 しかし、眉を顰めるくノ一もまた居た。

 過酷な教育の中でも確かな自我を確保している彼女達は、教官からの無茶ぶりに不満を抱いていた。

 

 未だ未熟な彼女達でも、超犯罪都市デスシティの恐ろしさは身を以て知っている。

 下忍に昇格するためとは言え、あの都市で一週間のサバイバルはあまりに酷な内容だった。

 

 無茶ぶりをした教官は、相当な手練である。

 上忍の更に上、最上忍である彼女は、現代で伝説と謳われる魔忍だった。

 

 紫苑色の長髪を結い、ビジネススーツに身を包んだ妙齢の美女。

 端正な造りの眼鏡が冷徹さを強調しているが、それ以上にその身から溢れ出る色気は相当なものだった。

 ビジネススーツの上からでもわかる、凹凸のハッキリした肢体。

 女性の理想の一つを体現している。

 

 彼女──(すみれ)は教え子達を見渡す。

 手を上げている者が一人居たので、名指しした。

 

「何だ、百合(ゆり)

 

 百合という名の魔忍は、未だ二十歳に満たない少女だった。

 しかし纏う風格は歴戦のソレ。

 魔忍特有のぴっちりと肌に吸い付くボディースーツを着こなしている。

 紺色の長髪はポニーテールに結われており、抜き身の刃の様な鋭い碧眼が印象的だった。

 ボディースーツの上からでもわかる豊満な肢体は瑞々しさを残しつつ、大人に負けない色香を放っている。

 

 彼女は淡々と聞いた。

 

「生き残るためなら、どんな方法を使ってもいいのでしょうか?」

「無論だ。お前達は忍、任務を達成するためならばどんな邪法を用いてもいい。今回は自分の命を死守するため、あらゆる方法を用いろ。……最も、この場に居る殆どが死ぬだろうがな」

 

 菫の言葉によって場が緊張で満たされる。

 しかし、百合は平然とした調子で席に着いた。

 

「他に質問は無いか? ……であれば明日から試験を執り行う。各自、準備を怠るないように。以上!」

 

 菫の宣言と共に、説明会は終わった。

 

 

 ◆◆

 

 

 特務機関施設の廊下にて。

 百合は自室に向かう最中、友人でありライバルである少女と遭遇した。

 

「ふふふ♪ 百合ちゃん。今回の試験、頑張ろうね!」

 

 可愛く片目を閉じる美少女。

 ツインテールにされた黒髪。くりりと愛らしい双眸。

 真紅のボディースーツに紫のマフラーという派手な衣装が印象的だ。

 雰囲気にあどけなさが残るが、ボディースーツを盛り上げる肢体は成熟している。

 

 百合とは違ったタイプの美少女だ。

 百合は固い表情を崩す。

 

「ああ。頑張ろう、牡丹(ぼたん)

「うん♪」

 

 えへへ~と笑う牡丹。

 能天気に見えるが、その実力は百合と同等かそれ以上という期待のホープ。

 特務機関は、彼女達に特別目をかけていた。

 

 二人は握手をする。

 互いに信じていた。

 今回の難題も、きっと乗り越えられると。

 

 しかし、魔界都市はそこまで温い世界では無かった。

 魔忍とは言え、所詮表世界の住民。

 デスシティの住民達にとって、彼女達は良質な獲物でしか無かった。

 

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