積極的に攻撃してこなくなったから。。
「気を付け! 番号!」
「1!」
「2!」
「3!」
……
「798!」
「声が小さい!!」
「798!!」
「次!」
「799!」
……
ここはとある訓練場。
この訓練場では、来るべき時のため国民一丸となって敵国への尖兵となる準備を進めている。
尖兵として男子は剣道、女子は長刀を習熟してもらうことになっている。
そう、基本的には。
しかしこの訓練場は少々異質で、女子にも剣道をさせており本物の銃を持たせている。
男子と差のない訓練により、ほとんどの女子は音を上げてる。
「声が出せるってことは、まだ疲れてないってことだ。今から走り込みだ!
15キロ川辺を走って来い!」
「「「はい」」」
男子や丈夫な女子は、そのまま走っていく。
しかしこのような事に適正のない子は、走ろうとしてもこけてしまう。
「おい、立て。立ち上がれ。帝国軍人は、このような事で音は上げんのだ!」
「ひいっ」
まだ子供な彼女は、上官が地面に打ち付ける竹刀で地面がえぐれるのを見て怯える。
「葵っ!」
「お姉ちゃっ……!」
「軍人たるものが、一人で立ち上がれないでどうする!」
葵という子の姉が、彼女に近づこうとすると周囲にいる女子に羽交い締めにされ、
他の上官に走り込みをさせられる。
そして葵の姿やほかのくたばっている女子を見て、上官は葵以外の女子に近づく。
上官である彼は、手にもつ竹刀を女子の尻に突き立てる。
「テメェら、休憩するな!戦場は甘くねぇぞ!わかってんのか!
今立ち上がらない奴は、便衣兵か従軍慰安婦にさせるぞ!」
「そ、それだけは……」
「やだ、いやだ……」
立ち上がる者もいるが、青いだけは立ち上がれない。
教官ではない上官のいびりに、腰が抜けてしまったようだ。
だがそんなことを知らない上官が、葵に近づく。
「とりあえず、お前は俺たちの宿舎に連れていく。ヤれ」
「「はっ」」
「やだっ、イヤアアッ!!」
髪や手足を握られ、屈強な上官の部下が口元をゆがめて自らの宿舎に連れて行く。
その様子を走り込みをしている周囲の兵士である男女の目に、深く焼き付けられる。
そして上官のいう事が嘘ではないという事を、後日にて見せつけられた。
葵を含め上官複数が、宿舎から出てこなかったのである。
だが更に後日、葵は服役した。
「お姉ちゃん!」
「葵!」
長官に連れてこられた葵は、一人鬱になっている姉である茜を見ると一目散に駆けだした。
勿論茜も葵を見ると、一気に表情を明るくさせ彼女と抱き合った。
限られた、夜の休憩時間。
そこに葵を連れてきた人物が、彼女たちの邂逅に時間を見計らって水を差す。
「ちょっといいかな?」
「あ、え? えと、あの、妹を助けていただいて」
「うん、その事も含めてなんだけど……」
茜は眼中になかった長官を確認すると、すぐに頭を下げて感謝と謝罪をしようとする。
でも長官は気にしていないといって、微笑む。
「君たちは明日から、僕の指揮下に入ってもらうことになるんだ。
申し遅れたね。僕は、伍長の結月ゆかり。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
夜なので大きな音は出せない。
しかし勲章を胸につけている長官が、じきじき部屋に来たことにたいして
少なからず衝撃を受けている。
「と、まあ、僕は忙しい身なので、これにて失礼するけど……。
葵さんは何もされていないから大丈夫だよ」
「本当に、ありがとうございます……!」
涙ながらに感謝をする茜を見て、結月は大事ないように、と微笑んだ。
そして入口にいた部下と共に、この宿舎を去る。
頭の両側に長く伸ばした紫色の髪を結ったものを流しており、それがたなびくと良い匂いが周囲に流れる。男性と思えないその魅力に、葵はもちろん茜も興味が引かれた。
今日も辺境であり、最前線の訓練場での日々が終わる。
ここは、満蒙開拓団という名の同化政策にて送り込まれた日本人が住まう最西端の村。
この村は不憫にも、過激派の関東軍の息がかかった軍団長が送られている。
尊王攘夷なんて、全くのくそくらえ。先軍思想に塗れた者の巣窟だ。
厄介なことに天皇を無視しておきながら、選民思想に拍車がかかり
日本人ではなく帝国軍人こそが至高と考えている。
おかげで大陸の軍事関係において、関東軍が好きかってやっている。
その為、帝国男子が圧倒的権力と優先順位を持っている。
逆に一番低いとすれば、その土地の人間……ではない。
忌子とされる、帝国と大陸の子、日系満蒙人である茜や葵ら第二世代なのだ!
つまり異常な仕打ち男女の仕分けがないのは、そういうのが理由である。
このような組織の崩壊・分離が起こってしまった国家の行く末はどうなるのか。
見ものであるな。