林中の中での二ヶ月間   作:夜仙

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最終回です。


六十日目

 夜がまだ明けない午前三時。

 

 フクロウの鳴き声が静かに響く。

 

 森はザワザワとさざめき合う。

 

 そんな森の中に一つの廃墟がある。

 

 その名は『黒死館』。誰も住みたがらないし、近寄らないこの場所の窓から一人の男が何かをしている。 

 

「これでよし……だな」

 

 人が入るぐらいの大きなケースのような物に何かを入れて準備万端。彼は意気揚々とダイニングへと向かう。

 

 彼の名前は小栗虫太郎。このいわくつきの黒死館に住んでいる変わった奴である。 

 

「雨はもう止んだのか」

 

 昨日まで降っていた春雨はもうすでに止んでいた。彼はちらりと寝室として使われている部屋の窓にしな垂れかかる葉を見た。その葉には一粒の雫がきらきらと宝石のように煌めいている。

 

 何時の彼なら、それを無視するだろう。そして、仮にそれに想いを馳せる人と一緒にいるのなら、彼は「これの何処がいいんだ」とでもぼやいていただろう。しかし、今日の彼はその行為をしていた。

 

(あいつはこれをトリックとして使いそうだな)

 

『虫太郎君』

 

(分かっているさ、このミステリー中毒者)

 

 そっと彼は目を閉じる。彼には迷いが何処かあるようである。 

 

しかし、それは次の瞬間に消え去っていた。彼は荷物を取ると、それを館の前へと重そうに運ぶ。

 

 どうやら中には相当重い物であり、大切な物が入っているのだろう。そして、彼はそれが終わると館へと引き返し、リビングに置いてある小型のラジオの電源を入れた。

 

 そこから聞こえて来る四十代位の中年男性の声に小栗は耳を傾ける。

 

 聞こえてきたのは昨日、何者かによって殺された売れっ子推理作家の悲報が大半。残りはそのラジオで何時もやるだろうお悩み相談であった。

 

 彼はそれを聞き終えると電源を切って、晩に買っておいた仏パンを食べる。

 

「固い……こんな物を好きになる奴の気が知れん」

 

 小栗はそう愚痴を零しつつも、仏パンを綺麗に完食した。

 

……

 

………

 

 ドアを叩く音が聞こえて来る。

 

 小栗はそれを面倒臭そうに応じる。

 

 そこにいたのは中年の白髪頭の執事のような姿だった。

 

 その後ろには立派な黒い車がそびえ立っている。 

   

「虫太郎様、準備は出来たでしょうか?」

 

「あぁ、もう出来ている。行こう」

 

 小栗は男にそう言うと、重い荷物を持って、車の方へと歩き出す。

 

 時間は午前五時。朝焼けがこの黒死館に生い茂る木々の頂点をうっすらと照らす。黒死館も上の方のみだが、オレンジ色に染まる。

 

 だが、空はまだ蒼い空が、星空が綺麗に残っている。

 

 彼はその中で一歩一歩歩く。

 

 自身がどういう運命を辿るか彼は知らないだろう。

 

 だが、それでも僕は祈る。

 

 この男の辿る運命が幸福に満ちることを。

 

 この朝焼けのように彼がこの世界で輝く事を。




今までありがとうございました。

あとがきとして今からこのお話の裏側を書きます。

このお話は、はっきり言って作者がこのキャラを好きだからこそ書いた話で、まぁ、要は気まぐれで書いた話なんです。

この作品は他の文豪ストレイドッグズの作品にしてはかなり薄っぺらいものだったと思いますが、それは作者が書きたかったものでもあります。

理由はなんかこういうものを書いてみたかったんですよ。

まぁ、ここだけなんですけど、このお話、どれだけ未完で終わらそうかかなり迷いました。

でも、ここまで書けました。

はっきり言って後悔はありません。楽しかったです。

さて、ここでこのあとがきも終わらそうと思います。

長々と文章を書きましたが、ここで終わらしてもらいます。

今までありがとうございました。
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