林中の中での二ヶ月間   作:夜仙

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ついに魔人が出てきます。


四十日目3

 小栗が魔人の入室を待っていること十分ぐらいで来た。

 

「お待たせしました」

 

 魔人、ドストエフスキーは微笑を浮かべて来た。

 

 ドストエフスキーは顔は色白でロシア特有の僧服を着ていて、かなり痩せている。だが彼の両目はどこか目が何か退屈そうな目を浮かべている。

 

 ドストエフスキーはさっき侍従長が座っていた椅子を引き寄せ、トスンと座った。

 

「今日私を呼び出した要件はなんだ?私は前にも行った通り表には出ない、とお前に約束したはずだが」

 

 それを聞いたドストエフスキーは爪をガリガリと噛み始める。これは別に苛立っている訳ではなく、ただ無意識に噛んでいるだけだ。

 

「プシュキンやゴンチャロフから何も聞いてないんですか?」

 

 小栗はその言葉にムッとする。プシュキンといえばドストエフスキーが『共食い』と呼ばれる計画に重要人物として彼も聞いているからだ。そんな人物と何処で会ったか、顎に手を当て考える。

 

 ドストエフスキーはそんな小栗を見て何か悟ったのか少し笑って

 

「あなたの案内役がプシュキンですよ」

 

「あいつがか!?」

 

 小栗からしてみれば、その言葉は想定外だった。彼はてっきりプシュキンを自分と同じような奴だと思っていたからだ。そんな淡い期待を裏切られた。彼のイメージのプシュキンはもはや豚のようにせせら笑う醜い人へと瞬時に変わった。

 

「そうか」

 

 小栗はこの一言を言うと押し黙った。

 

 ドストエフスキーはそんな小栗を一瞬だけ哀れみの目で見ると、またあの笑顔を出し、

 

「さて本題に入りましょうか」

 

 ドストエフスキーはそう言うと、書類の束を小栗に向ける。書類の束の一番上には『敵組織の異能一覧表』と書かれている。

 

「それは我々の敵組織である『探偵社』や『マフィア』、『異能特務科』に属する人達が載っています」

 

「なるほど…それでどうしてこれを私に?」

 

「あなたの自衛のためです」

 

 そう言って、ドストエフスキーはパラパラと書類の束を捲り、ある一枚に目を止める。そして、それを小栗に見せた。そこには目を開いているか分からない小柄な少年のような男が映っていた。

 

「この男は『江戸川乱歩』という者で恐らくあなたを追う人物です」

 

「私を…追う?」

 

 小栗はドストエフスキーのこの言葉に思わず目が見開いてしまう。まさか、この子供のような奴が追う、これには流石の小栗も魔人がふざけているとしか思えなくなった。

 

 これに気づいてかドストエフスキーは小栗に冷笑を浴びせると、次のような言葉を吐く。

 

「彼はこのヨコハマ、いや世界水準で最も手強い探偵です。それは彼が自称しているところの『超推理』のためです」

 

「『超推理?』」

 

「はい。彼がメガネをかけると、彼が直面している難事件という難事件が全て解決するという恐ろしい能力です。まぁ実際は異能ではなく、本人の力量ですが」

 

 もし、ドストエフスキーの言うとおりだとしたら、その江戸川乱歩は恐ろしい男だ。小栗のような異能によってやっていける異能者ではなく、本物のプロと言うことだ。これには流石に驚きを禁じ得ない。

 

「じゃあ勝率はどれぐらいだ。その江戸川乱歩というやつのは」

 

「十割です。一般人でこれは正直凄いです」

 

 十割…その言葉は小栗にとって最悪の知らせだった。だが…

 

「心配してくれてありがとうドストエフスキー君。確かに手強そうだが私の異能でなんとかしてみせるさ。後、これはもらうぞ」

 

「もちろん良いですとも」

 

 最後に彼は部屋を出るとき、ドストエフスキーに笑顔を見せ、帰った。その表情はまさしく強者にしか出せない不敵な笑みだった。

 

「そうですか。ご武運を」

 

 ドストエフスキーは小栗に向かって笑みの返答をした。

 

 

 

 




次回はいつも通りほのぼの系です。
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