「ここは…。」
目が覚めるとそこは全体真っ黒な空間だった。
「ほう、気がついたか。」
俺の前に全身黒ずくめの銀髪の青年が現れた。
ただでさえ真っ暗な空間なのにお前まで真っ黒なんかい…というツッコミを心の中でし、
「アンタは…?それにここは…。」
「俺か?そうだな。とりあえず闇の帝王、とでも言っておこうか。」
「はぁ?アンタ何言って…」
「そしてここはそうだな。あえて言うのであれば死後の世界、か。つまり君はもう死でいる。」
「また何を訳の分からないことを言ってるんだアンタは。死んでいたら俺は話せるわけないだろ。」
「たわけ。君の知っている世界以外にも世界はいくつもあるのだよ。今はその世界の境にいると言っても差し支えないだろう。」
要するに天国に行くか地獄に行くかのどっちかの道中ってわけか。もしくは成仏する前の状態か。
「しかし君はラッキーだ。
君はあるゲームの参加資格を与えられた。」
「なんだよ。他界行き列車の中でもゲームできるのか?」
「私は別にそれでも構わないが、それよりも退屈しないやつさ。このゲームの参加賞として君は数分前までいた世界に戻ることができる。」
「生き返る…ってことか?」
「正確には生き返るのとは少し違う。
このゲームの参加資格を与えられた今の君はあの世界でまだ半分生きている。」
「半分生きている?どういう意味だ。」
「まぁわかりやすく言えばあの世界でのびている君は仮死状態だ。
もし君が今から2人の契約者と契約を交わせば、その相手の半分の生と能力を受けあの世に現存する存在とみなされる。
半分生きていて半分死んでいる、ハーフアンデットと我々は呼んでいる。」
ハーフアンデット。
つまり半分は人間でもう半分は生ける屍。
あの世に生きることはできてももう既に人間は卒業しちゃってるってわけか。
「というかなんで契約者は2人なんだ?生きるのに能力なんかいらないだろ?」
「ああ、それがこのゲームと深く関わっている。生は命を共有するパートナーとして、能力はその契約者の力を授かり駆使するためにそれぞれ契約する。
生の契約者はライフドナー、
能力の契約者はフォースドナー、
と呼ばれる。逆にドナー側からみた君をアクセプターとも呼ぶ。」
「そして契約を結んだハーフアンデットその恩恵を受ける代わりにある使命が課せられる。
まぁ要はゲームのルールだな。
「…何すればいいんだ?」
「まずゲームの勝利条件として全てのハーフアンデットの消滅、そしてこのゲームを終わらせることだ。その報酬は契約者同士の願いをなんでも一つ叶えることができる。」
「敗北条件は契約者との契約が破られること。ライフドナーが死ねば命を共有しているライフアクセプター、つまりハーフアンデットも消滅を意味する。」
「ん?待てよ。ハーフアンデットって俺がこれからなるやつだろ?そんでハーフアンデットはこれからも日に日に増えていくってことだよな。」
「ああ。その通りだ。」
「ハーフアンデットを倒してもまた新たに別のが増えていく…。
つまり全てのハーフアンデットを消滅することはほぼ不可能…」
「ほう。君は随分と察しがいいようだ。
腰振ってるだけの脳筋坊主かと思っていたが、頭の方もなかなかのキレだ。」
「なっ…!?お前まで言ってんじゃねぇ!!それに俺は偏差値は68の高校に言ってんだよ、当然だ。」
「気に触るようであるなら悪かった。話を戻すとそうだな、このゲームを終わらせるのはほぼ不可能だ。だがないわけではない。それに私自身もこんなゲームの早期終結を願っている。」
「あー悪いがそれは無理ゲーってやつだ。誰がどう頑張っても終わらない。何をしたって
人には限界ってもんがある。」
俺は剣道の全国大会の経験を思い出しながら語る。
「この私に語りかけるとはいい度胸じゃないか。俺から言わせれば『そんなものやってみなければわからない』だがな。」
「まぁしかし限界はあるな。ただし人には、だが。」
あ…、そういえば俺はもう人じゃなったっけか。全く、地雷踏んだぜ。
「さてと、説明は以上だ。あとはアクセプターである君の意志次第だ。」
「なるほど。大体理解した。」
闇の帝王は、今の話を聞いても物怖じ一つしない一夜をみて、
「ほう、話がはやくて助かる。
大半の人間が事実を受け止めきれず正気を失ったり我欲に溺れ生半可な覚悟で契約を結んだりするようだが…。大した精神力だ。」
と感心した口調で言った。
「だが俺にはあの世界に未練はない。普通に生きていたかっただけで別に刺激的な毎日を送りたかったわけでもない。
あのまま生きていても風のように流れていくだけの人生を送っていくだけだ。」
「ふっ、おもしろい。これほどまでに無欲な人間がいたとは。ますます気に入った。」
闇の帝王は続ける。
「ではこういうのはどうだろうか。
誰かの為に授かった命を張って守る。
そう、君があの時したような行為をな。」
多分あいつは俺が玲奈を庇った時のことを言っているのだろう。
誰かの為に、か。悪くない。
どうせ風になるのなら、
誰かを心地よくさせるよそ風になるか。
「いいぜ。その契約、結んでやる。
それと男が女を守るのは当然だろ。あとで闇の辞書にでも付け加えておけよ?」
「うむ、決まりだな。
ライフドナーは直にわかる。」
「じゃあフォースドナーはお前か?」
「そうだ。」
「闇の帝王というほどなんだからよほどのものなんだろ?」
「さて、どうだろうか。
神をも殺せれば、虫一匹すら殺せないかもしれぬ。
生かすも殺すもお前次第だ。」
「おもしろいじゃないか。
楽しみにしてるぜ。」
「ああ…私もだ。黒下一夜。」
そう言って消えていく闇の帝王の後に続いて、真っ暗なこの空間が次第に光に包まれた。
思ったより長くなってしまいました。
闇の帝王はキングダムハーツのアンセムみたいなイメージですかねー。cvは諏訪部さんあたりかと。