事情を説明させていただきますとテスト勉強やバイトで忙しくなり、
その上、この二次創作のストーリーが定まらないまま書いていました...。
つまりは行き当たりばったりであることをご了承ください。
さて今回は予定していた
オリジナル+ごちうさ原作です。
またシリアス重めとなっております。
夜の十二時。
ラビットハウスのバータイムの時間。
チノの父、タカヒロさんがマスターとして営業している時間帯だ。
その時間、上で深はオンラインゲームをひたすら楽しんでいた。
MMORPGのゲームでボスに挑戦中。チャットで連携をとり、どんどんボスのHPを削っていく。
こんな時間までゲームをするようになったのは、小学生からだっただろうか。
初めてゲーム機でゲームをしてから、[ゲームは楽しく遊ぶもの]だと思っていて、
それ故に、彼がやっているゲームで率いている『Breaker』というギルドはノルマも入団のレベル制限もない。
ただし、そのギルドには一つだけある制約があった。
それは
【他ギルド、自ギルド問わず他プレイヤーに暴言を吐かない】というもの。
勿論、それを決めたとき友達からはPKに関しては疑問の声をあげられた。
確かにPKは、装備や資金を得ることができる。
だが、それは相手にとって全く利がなく、ストレスでしかない。
数時間分の努力がパーにでもなれば、ゲームをする気が萎えて、ゲームから離れてしまう事につながる。
ちなみに暴言に関しては、言われた相手にはストレスでしかないし、
PKと同じくゲームから離れてしまう事につながるから。
それが深がその制約をつけた理由だ。
深にとってはプレイヤーは[ゲーム攻略の協力者]であり、敵ではなく味方。
だから、できれば協力し合ってゲームがしたい。
それが深のゲームスタイルで、深のギルドがエンジョイ勢の受け入れ先のようになっている理由でもある。
そしてそのエンジョイ勢のギルド集団が今戦っているボスは、春イベントのボス。
自然属性という、水属性と草属性の混合属性の新ボスモンスター。
そのため草を燃やす火属性の攻撃が効きにくくなるため、この属性は攻略しにくい。
弱点属性は氷。植物は寒い環境に弱い上、水も凍ってしまうからだ。
問題はその氷属性の武器は強い武器が入手しにくいこと。
生産素材を落とすモンスターが一部にしかおらず、その一部の範囲ですら稀にしか出てこないレアモンスター
であるため、彼のギルドでは氷属性装備を持っているプレイヤーがギルド全体の三分の一しかおらず、
その上、物理攻撃が通りにくく、魔法に頼ることになるため、MP回復のために要員を割くことになり、
攻撃要員に半分、防御・回復要員に半分という配置予定を、大きく変更することになり
攻撃に三分の一、防御に三分の一、MPとHP回復に三分の一の配置に変更したため、
回復役のMP回復のローテーションがうまくいかず、回復に手間取っているため、
攻撃役が減っていき、残すところ10人になってしまった。
「...どうしたらいいんだよ...。範囲攻撃で多段ヒットとかキツイぞ...。」
深は決め手に欠ける状況に陥り、手探りで攻略法を見つけようとしていた。
クエストの制限時間はもう残り15分しかなく、削り切れるかどうかというラインだった。
当然、味方にも自らにも焦りが生まれる。
その時、深が昔にやっていた攻略法を思い出した。
はっきり言って自分でも無茶だと思い、決めかねる。
それでも時間は刻一刻と迫る。
ついに出した指示は本当にギルド団員が困惑する内容だった。
『全員に攻撃バフかけて、とりあえず無属性魔法でごり押しでいこう。防御してても仕方ないわ。』
...もちろん団員から『は?』の返しが川を流れる水のように流れてくる。
それでも、そうでもしないと削りきれない事は皆、感覚で理解していた。
ただ『無属性魔法ごり押し』はこのゲームでは愚策なのだ。
このゲームにおける無属性魔法は『初期装備魔法の強化』で、威力は低いし、もう攻略で使う人もいない。
それをバフで補うと言っても、普段使う魔法より劣る。
ただし、MP消費が少ないのでそこが使いやすい事もあり、周回ではよく使われる。
深はそこに賭けた。
MP消費が少ない分撃てることを伝え、残ったメンバーの殆どを攻撃に回し、
ひたすら撃ち続ける。団員が攻撃され続けどんどんHPを減らされていく。
それでも尚撃ち続ける。すでに残り時間5分。
団員が一人、また一人と倒れていく。イベントフィールドではアイテムドロップがないため、特にアイテム関係の問題はないが、それでも攻撃のメンバーが減るのはキツイ。
その中で一人、攻撃を溜め続けている団員がいた。
それに気づいたMP回復担当が『あいつ何やってるんだ!?』とチャットを送るまで皆気づかなかった。
そしてちょうど、その魔法が放たれた。
皆驚いた事だろう。じりじりとしか減らない体力が急にどんどん減り出した。
「そうか!毒属性超消費カスタムか!」
思わずはっきりと声が出る。
超消費カスタムははっきり言うとこのゲームではネタカスタムと呼ばれ、見向きもされないカスタムで、
そのカスタムをしている人は滅多にいないため、その事は考慮していなかった。
(そうか!属性付与強化してMP消費上げたから毒も威力がすごいのか!)
その毒で削りやすくなり、残り時間三分にさしかかった頃。
ボスが倒れ、ようやくクエストクリアされた。
(おっっっわっったぁ~...。)
クエストを終えた達成感と共に脱力感が襲う。
『お疲れー。あの魔法凄かったぞ!』
『思いつきってのもバカにできないものですね。とりあえず役に立ててよかったです!』
クエストの決め手になった魔法を繰り出した仲間とチャットした後、全員におつかれさまと言葉をかけてから
ログアウトし、ベッドにつく。
------------------------------------------------------------------------------------------------------
翌朝、タカヒロさんに呼ばれ、タカヒロさんの部屋まで行くと、
「昨日の夜、何があったんだ?」
と聞かれ、何かあったか聞いてみると、
何でもベッドから落ちた時、チノがびっくりしてしまったらしく、音の出所が僕の部屋だったので
何かあったのか不安だったらしい。
「そんなに不安がらなくても大丈夫ですよ。寝相が悪くてベッドから落ちただけですよ。」
「そうか...なら大丈夫だね。」
「では、僕はお仕事に戻ります。失礼しました。」
タカヒロさんとの話を終え、部屋を出て仕事に戻る。
「結局、何があったんだ?」
リゼにそう聞かれ、なんでそんなに騒ぐのかと思いながら苦笑いして答える。
「ベッドから落ちただけだよ。何でそんなに大騒ぎするんだか...。ベッドから落ちたことぐらいあるよな?」
と、リゼの質問に答えながらチノとココアにも話を振る。
「ないです。」
「ないよ?」
「ないぞ。」
三人からベッドから落ちた事がないとの返答。
まさか満場一致で、ないと返ってくるなんて思っていなかったので、
思わず本当か聞き返してしまったが、どうやら本当にないみたいだ。
「それよりチノって夜が怖いのか?ベッドから落ちる音ってそんなに大きいか?」
チノに夜が怖いのか質問する。深のチノに対する単なる疑問でもあるし、
何より怖いならば、また今度怪談でもして怖がらせてやろうという密かに考えているからだ。
「まぁ、怖いわけではないんですが...その...」
「え...なんでそんなに溜めるんだよ?なんか気になるぞ...。」
「寝返りを打つたびに布団をきたままベッドから離れていくのでちょっとびっくりしました。」
「「え...。」」
深のあまりにも酷い寝相のイメージができた二人は絶句してしまったようだ。
この寝相を簡潔に例えると、『人間春巻き』と言えばいいだろう。
一般的に言う寝相が悪いのラインをとっくに超えている。
だがこれでも、よくなっている。
前はベッドの下、部屋のドアが開いたままだったら部屋の外まで転がっていく事もあった。
そしてさらに驚くことに
「ていうか俺、昨日はベッドで寝てたのか。いつもは床だし...。」
最近、夜は床でしか寝ていない。
床で寝ても特に困ったことも起こらない...夜が遅いからなのか、肩こりが酷い事を除いて。
「ゆ、床で寝てるの!?」
「か、体は痛くないのか?」
床で寝ていることを話した途端、急に心配される。
「あ~...ゲームばっかりやってるからだろうな、肩こりがひでぇ...。」
ゲーマーにはありがちな悩み。それは肩こり。
眼精疲労などから起こり、ひどくなれば頭痛も起こる。
「あ~...肩こりが簡単にな...」 バタァン!!
突然、入口ドアが轟音をあげて開くと共に千夜が血相を変えて入店してきた。
「シャ...シャロちゃんが!このチラシを持ってきたの!いかがわしいお店で働いてるみたいなの!
怖くて本人には聞けないわ!どうしたらいいの!?」
...話を遮られた上、とんでもない話が入ってきた。
「ちょっと見せてみてくれ...あ~...」
千夜が急いで持ってきたチラシにはバニーガールのシルエットと『心も体も癒します』
という文字がデザインされていた。
まぁ、そういう風には見える。
実は深は同級生に見られても変な噂が立てられないようにマスクをつけて行ったことがある。
最初に窓から見たときには三度見した。【色々と大丈夫なのかと】。
(フルール・ド・ラパンは喫茶店だ。普通ではないけど、いかがわ...ああ...なんて言えばいい?)
どう説明したらいいのかわからない。
[ハーブティーのおいしいお店]...信じてくれるだろうか。
結局説明できずに、とりあえず付いてもらえるようにコーヒーを出した。
「どうしましょうか...」
「仕事が終わったらみんなで行ってみる?」
「俺は行かねぇよ...めんど...わかったよ行くよ仕方ないな。」
断ろうとしたら千夜とチノがムッとしたので仕方なく行く事にした。
「じゃあ、潜入になりますね。」
「潜入するんだな!?」
チノが発した『潜入』というワードに過剰なぐらいに反応するリゼ。
深はいつもこんなことになるたびに思う。
どうしてこうなったんだこの女は...と。
元々軍隊にいた父親の影響とはいえ、なんだか染まりすぎな気がする。
「うん、ちょっとやっぱり俺寝てくる。おやすみ。」
深はもうめんどくさくなり、やっぱり寝に行こうとするが
「よし行くぞー!ついてこいー!」
腕を掴まれたらおしまいだ。リゼは力が他の三人と比べ力が強く、
そこらの男子なら倒せそうなぐらいなので、振り払うことができない。
ついていくしかないと観念することになった。
結局、フルール・ド・ラパンの前の植木鉢辺りに潜入することになったが、
これだと潜入ではない。潜伏だ。それで気づいた。
リゼは潜入と潜伏を混同して間違えていることに。
簡単に言うと、潜入とはその場所に入り潜むことであり、潜伏は人に見つからないように隠れること。
しかもただ隠れているだけなので、きっとそのうち...
「なんでいるのよ...。」
シャロにバレた。そりゃバレバレだ。
これで窓からのぞいているのだ。バレることなど火を見るよりも明らか。
シャロに店内まで入れてもらった。
なんだか申し訳ない。一回来たことあるのに。
シャロにお店についての説明をされる。一回来たことあるのに。
シャロには申し訳ない。お騒がせしてすみません。本当にごめんなさい。
「シャロ姐さん。元凶はこの女です。本当にすいません。」
即刻、千夜を突き出してやった。
「千夜のせいなのね...ん?姐さん?同い年よね?」
突然の「姐さん」呼びにびっくりしているだろう。
そう。この中で、最もまともで信頼できる人はシャロだけである。
チノは常識人ではあるが変な腹話術をしている。
ココアは言わずもがな、シスコン。
リゼは軍人の親から影響を受けているとはいえ、モデルガンを常備している。
千夜に関しては祖母が経営している店のメニュー名が滅茶苦茶だったりするのは千夜のせい。
深はゲーム廃人、コミュ障。
そう。シャロはこの六人の中で唯一の常識人だ。
チノはともかく、ココアとリゼには若干気疲れする。
この二人に合わせる事はなかなか難しい。
そんなことを考えていると、リゼが後ろで何か頷いていた。
何か気になるのだろうか。
シャロのロップイヤーのうさぎの制服を見ている。
...これが気に入ったのだろうか。リゼの意外な一面を見た気がした。
ココアの提案でお茶をすることになったラビットハウス御一行。
(ハーブティーにも色々種類がある...なんか効能とかあるってさっきシャロは言ってたな...。)
リゼはメニューを見ながら何を頼もうかと思案しているところ、
深はウトウトと効能の事を考えながら、ゲーム攻略の情報とプログラミング言語の情報を集めていた。
「さっきからずっとスマホばっかり見てるけど、注文は決まったの?」
シャロがメニューをチラ見程度しかしていない深に注文内容を聞こうと声をかけるが、
「効能がどうたらこうたらは俺、よくわかんないし、シャロさんに任しますよ。
変に手を打って損するよか、知ってる人に任せたほうがいいしな。」
と、シャロに丸投げをする。
普段、ゲーム以外では考える気が起きない深は、本当に誰かに任せっきりになることがある。
「まぁ、一理あるけど...本当に飽きないのね。前も20~30分置きぐらいに見てたわよね?」
前にも深がそうしていた事があったことを覚えていたようだ。
割と短い間隔で見ていたらしく、飽きないのかとも思われていたようだ。
「飽きるわけないだろ、ゲームってのは目まぐるしいほどに状況が変化するんだよ。」
楽しそうに話す深は子供のよう。
「なんでそこまでゲームごときにそこまで...」
シャロは呆れたような目を向けた。
「たかがゲームされどゲームだ。おれにとっては、な。
というか皆は紅茶何にするんだ?俺はシャロ姐さんに決めてもらいますけど。」
シャロの視線に対しすこし癇に障ったのか、すこし声のトーンが低くなる。
ところが、チノたちに話しかけるときには声のトーンがケロッと戻る。
「ちょっと落ち着かないからその呼び方止めてくれない?」
そろそろ呼び方にイライラとしてきたのか、ついに深に
呼び方を変えてもらうように言った。
「うーん、私もシャロさんにお願いしようかと。」
「私もシャロちゃんにお願いするー!」
「シャロが選んでくれるのか!じゃあ頼むぞ、シャロ。」
ハーブティーに詳しくない面々は深に促されたかのように
シャロに決めてもらう事に決めたようだ。
「シャロさんは頼られるんだなーすげえなー。」
思ったよりうまくいったようだ。
実はこっそりと本の知識を日常で使い、実践することで着々と身につけている。
嬉しくなり、すこし口角が上がる。
「うるさいわね。じゃあ、ココアはリラックス効果のある”リンデンフラワー”
千夜は肩こりに効く”ローズマリー”、チノちゃんは飲みやすい甘い香りの”カモミール”
リゼ先輩は最近眠れないと言ってましたから、”ラベンダー”がおすすめです。
...アンタは、何がいいの?」
煽られたシャロはたまっていくストレスを我慢をして押さえつけながら深に注文を伺う。
「俺は千夜と一緒のローズマリーでお願い。肩こりはゲーマーの悩みの一つだよ。」
溜息を吐きながらシャロにローズマリーを注文する。
実際、ゲーマーは肩こりになりやすいのでこういう効能はかなりありがたい。
「じゃあ、深、アンタもローズマリーね。」
注文を受けたシャロは裏方へハーブティーを作りにいった。
「あ、ティッピーには腰痛と老眼防止の効果がある物を...」
チノが追加でティッピーの分を注文する。
「ティッピー大分老けてるの!?」
注文の内容がもうおじいちゃん。
どうやら中身も体自体も結構な歳を召しているようだ。
深はシャロが裏方へ行ったのを確認してから、四人にある提案をする。
「じゃあ何か待ってる間、何かゲームでもする?」
「どうやってですか?何か持ってきてるんですか?」
チノから飛んできた質問で一瞬言葉を詰まらせる。
何も持ってきてないのでできるゲームもかなり限られる。
「ああ、何もないしなぁ...ああ、じゃあ、クイズとかなぞなぞでも出すか。
一問目、フライパンはフライパンでも、食べられるフライパンってなんだ?」
”パンはパンでも食べられないパンはなんだ”なら聞いたことあるだろうから
少しひねりをかけ、一見そんなものなさそうな問題にした。
「...食べられるフライパン?」
「わからないわね...」
「わからないですね...。」
「フライパン...フライ...パン」
ココアはさっぱりわからないようで、ありもしない”食べられるフライパン”の事で
頭が真っ白になっているのか完全にぽかんとしている。
千夜とチノも考えてはみるがそれでもやっぱり思いつかない。
ただリゼだけは何かに気づいたようで、一単語ずつの意味を考えているようだ。
(リゼは掴んでそうだね。ほかのみんな...はわかってないな。)
その様子を見た深は思ったよりうまくいった手ごたえを感じていた。
ただリゼはなかなか賢い考えをしていた。
「ヒント!給食に出てくるおいしいパンだよ。」
問題を出してから10秒たってから一つヒントを出した。
高校生になってからはお昼はお弁当か学食を買って昼食をとるので
"給食"とはなかなか懐かしさを覚えるワードだろう。
「...わかった!揚げパンだ!」
リゼはヒントが決め手となったのか、すぐに答えた。
「正解!揚げる(fry)とパンの組み合わせだ。」
深は嬉しそうにリゼに正解の旨を伝えた。
リゼはかなり頭と勘が切れる、深からするといつか自らを見透かされそうな気がしてしまう。まだ他人が怖いのもあるが
女特有の勘という物で、実はもう見透かされているんじゃないかなどと考えてしまう。
「おーい、どうしたの~?」
ココアが目の近くで手をかざすように近づけ、手を振る。
「...!ああ、ごめん。ぼーっとしちゃってた。」
「じゃあ次の問題な?ある検事は二人の囚人に司法取引をしました。共犯である二人に対して以下の内容を話した
『本来ならお前たちは懲役5年だが、
もし2人とも黙秘したら証拠不十分として減刑する。
2人とも懲役2年だ。
だが共犯のあいつか、お前だけが自白したなら、自白した方はその場で釈放してやる。
この場合黙秘してた方は懲役10年だ。
ただし、2人とも自白したら、判決どおり2人とも懲役5年だ。』
と話しました。さてこの条件の司法取引はなんと言われているでしょう?」
「「「「...わからない(です)。」」」」
深はこういうマニアックな知識が多い。
勿論、これを知っている人は少ない。
というか、知っていても使う機会はまず訪れないだろう。
深がだしたこの問題はいわゆる【司法取引】に関する
″囚人のジレンマ″と呼ばれるゲーム理論におけるゲームの1つ(Wikipedia引用)のことである。
ちなみに余談ではあるが日本では2018年6月に司法取引が取り入れられるようになり
もしかすれば使われることはあるのかもしれない。
さて、本筋に戻り...チノたちは。
「チノちゃんも...千夜ちゃんもリゼちゃんもわからないんだ...なんだろ...?そうだ!お兄ちゃんに聞けば!」
皆もわかっていない中、ココアは兄が弁護士であったことを思い出し兄に答えを聞こうとしたが、
そうは問屋がが卸さない。ココアの携帯電話の画面を隠す。
「カンニングはいけないなぁ。ココアぁ?ほら、三人とも調べちゃダメだぞ。」
ココアに圧をかけながら、こっそり後ろで調べようとしていた三人にも圧をかける。
"イカサマして勝つ"はっきり言えばその手法は別に構わないし、すればいい。
だがそう易々とさせるなんて一言も言ってないし、してほしいとも思わない。
皆、この問題の答えなんてわかるわけがない。
深自体も見かねて答えを言おうとした。その時。
「結構意地悪なのね。ヒントぐらい挙げてもいいんじゃないの?」
ハーブティーを持ってきたシャロに苦言を呈される。
「お!ハーブティー来たね。じゃあ答えを言おうか。答えは【囚人のジレンマ】。これはなかなか面白いものなんだけど...説明はハーブティーを飲みながらじっくり話をしようか。」
シャロがポットをテーブルの上におき、お湯を淹れる。
淹れたお湯が紅く染まるのを見た深が
―思い出しそうになる。
―あの忌々しい記憶は、いつまでも僕についてくる。
「紅く染まった!綺麗だね!...どうしたの?」
ココアが
深が苦しそうに頭を抱えているのを見て今度は心配そうに声をかける。
―思い出そうとするな。忘れろ、抑えろ。
荒れた呼吸を整える。
何もなかったふりをして深はなんでもない、ただの偏頭痛と答えた。
「大丈夫なのか?」
リゼも心配そうに話しかける。
...リゼは何か、ココアより不安そうな顔をしている。
ただの仕事仲間なのにそこまで心配するのだろうか。
「安心して、ただの睡眠不足の偏頭痛だよ、そんなに心配しなくていいから。」
深は苦笑いしながら言葉を返す。
チノもリゼも心配そうにしている。
ココアと千夜は偏頭痛というワードがよくわかっていないようだ。
シャロだけ、何かを察したのか特に声を掛けなかった。
シャロは
「ほら、みんなでハーブティー飲もうか。
ほ、ほらチノもそのハーブティーは輪切りにしたレモンがついてるよ、入れてみたら?」
「え?は、はい。あっ、青からピンクに色が変わりました!」
チノがレモンを言われるがままにレモンを入れるとハーブティーの色が
青からピンクへと変わる。
「ハーブを使ってクッキーを焼いてみました、いかがでしょう?」
シャロがハーブを使って焼いたクッキーを勧める。
「...おいしい!」
リゼがそう言うと、シャロは少し顔を赤らめる。
深はその反応の意味をすぐさま理解した。
「...うまいなこれ。毎日これとか色々甘いの食えたら最高じゃないか?ねぇリゼさん?」
「ん?まぁそうだが...食べ過ぎたらカロリー云々...。」
実は甘党である深はこのクッキーを毎日食べたくなったようだが、
リゼも女の子のようで、やはりカロリーの事を心配しているようだ。
「あれ?このクッキー甘くないよ?」
「え?これで甘くないっていつもどんなの食べてるの?」
実際、これはいい甘さをしたクッキーであることは確かであるし、
甘さを感じないことはまずないはずなのだが何故かココアは甘さを感じていないようだ。
後は、いつもこれ以上甘いものを日常的に食べていて、甘さに鈍感になっているぐらいしか思いつかない
「ギムネマシルベスターを飲んだのね?」
「ギムネマ...なんだって?」
突然シャロがかっこよさげな名前を言う。
あまりに突然だったので深はうまく聞き取れずにシャロに聞き直す。
「ギムネマシルベスターよ。ギムネマとは『砂糖を壊すもの』の意味。
それを食べると一時的に甘みを感じなくなるのよ」
ドヤ顔で説明されるとなんだか少しイラッとくるのは自分だけだろうか。
「そうなんだ、飲んだりするのこれ?」
効能に詳しいあたり、飲んだこともあると考え、質問を投げかけてみる。
「えっ...ええ。飲むこともあるわね。」
なんだか微妙な反応なシャロ。
少しいいにくいということは何かしらの事情でもあったんだろう。
深は察して聞くのをやめた。そこまでして聞くのはかわいそうだ。
「ふぅ...。」
飲み終わったカップを机におき、背伸びをする。
ハーブティーはかなり美味しかった。
こういういい効能のある嗜好品は個人的に好きだ。
「たくさん飲んじゃったわ。あ!なんだか肩が軽いわね!」
千夜がニコニコしながら話をしているのを見て、
なかなかよさそうなところだとやっぱり思う。
...ロップイヤーの制服の事を考えると少し入りにくくはあるのだが。
「私も少し元気になったような気がします。」
チノも千夜のように、体が楽になったようだ。
ハーブの記述のある本を探して読んでみよう。
ネットより本の方が確実性がありそうだ。
「リラックスはしたけどそれは流石に...」
しかし、リゼの方はそうでもない...こともないようだ。
リラックスはしているがそこまでではないようだ。
やはり個人差だろうか、それともプラシーボ効果というやつなんだろうか。
「いやーホントになんか疲れがとれ...」スー...スー...
なんだか眠たくなり、たちまち眠ってしまう。
ゲームイベントがあったりすると寝ない日もあるので、相当体にきていたのだろう。
「店で寝るな深...ココアも!?」
深を起こそうと、リゼは体をゆするが、それでは起きない様子。
さらにココアまで眠りに入り出す。店で眠ってしまうのはよくないことなのだが、
人間の三大欲求の一つ、逆らい続けるにもやはり限度がある。
「二人とも寝ないでください...ココアさん、深さん。」
チノもリゼと一緒に二人を起こそうと頬をペシペシ叩いてみたりする。
チノはココアを、リゼは深を起こそうしてだんだん頬を叩く勢いを増していく。
「いたっ、痛いよ!ちょ、チノちゃん痛い痛い!」
「痛ぇ!ちょっと手加げ、痛いっておい」
「起きない二人が悪い(です)。」
痛みに声をあげながら痛みを訴える二人に対し、無情にもしっかり起きるまで叩き続ける。
確かに自分たちが悪いのだが、頬が赤くなってきてもなおやってくるのはやりすぎではないだろうか。
ラビットハウス御一行+千夜は席を立ちお会計を済ませ、店を出ようとしたとき
「...ああ、すまんみんな先に帰っててくれ。」
深がチノたちに先に帰るようにと言い出したのだ。
なくしものを探しているわけでもないようなのだが、何かあったのだろうか。
「?...どうしたの?」
当然、何があったのか気になったココアは聞こうと話しかけるが、
深は「少しシャロさんと話がね。すまん、後で言うから。」と、お茶を濁すような返し方で話を終わらせる。
「じゃあ、私たちは帰るね、シャロちゃん頑張ってね!」
特に気にするようなそぶりもせず、シャロに一言元気づけるように言ってから
みんなと一緒に店をでる。それを確認してから、シャロの方へ向き直った深はこう切り出す。
「話って何?」
突然、話があると言われ二人きりになる、シャロとしては少し気まずい雰囲気だ。
「シャロさん...俺はアンタを信用してる。常識人だと思ってるからな。」
「...そこで頼みがある。実は―――」
その内容を聞いたシャロは...絶句してしまった。
全てを察してしまったのだ。
「...ああ、そうだ。物わかりの早い人で助かった。」
その顔を見て、シャロが全てを察しているのを理解した。
やはりシャロも頭が切れる人のようだ。やはりシャロが適任だったのだ。
「それをリゼやココア達に知られないようにしてくれ。頼む。」
そう言葉をつづけると深もシャロも苦いものを飲み込んだような顔をする。
「そう...。そこまでの事情があるなら。」
少しショッキングすぎただろうか、でも仕方のない事だと自分に言い聞かせる。
こういう心に負担のかかるようなことはさせたくなかった。
でも自分の居場所を守りきるためには自分の知らないところで知られないように手を打つこともしておかなければならない。
「ごめん...負担になるかもしれないけど...君にしか頼める人がいないんだよ...。
時間をとってすまなかった。じゃあ俺も帰るから、仕事頑張ってな。」
苦しそうなシャロにお詫びを兼ねて言葉をかけ、店のドアへ手をかける。
「千夜だったよな?あんたの幼馴染の名前。」
「...ええ、そうよ。」
シャロにあの女の子の名前を確認する。
人の名前を覚えるのが苦手な深は本人に聞ききにくいため、その友達にコッソリ聞くことが多い。
「大事にしなよ。失ってから気づくのが一番辛いから...。」
今度は深が苦しそうな顔をする。
背負わせてしまった罪悪感と、昔の親友を思い出すような存在のいる彼女がどこか羨ましい。
そして、自分の同じ過ちを繰り返させないように。また言葉をかける。
涙が一滴、頬を流れる。こらえきれない悲しみが溢れ出してしまう。
見られるのも恥ずかしいため、すぐに店を出る。
「はいはい、わかっ...え?今なん...行っちゃった。」
微かに言った言葉がしっかりと聞き取れなかったため聞き直そうとするが、退店していく深に聞き直すことはできなかった。
――確かに、過去という重圧が今も深を苦しめている。
この、「過去」が深の性格に影響し、話の中の頭痛の理由にもなっています。
これも後々、詳細が出てくるのですが、深が知られてはならないと考えている理由。
ただひたすらゲームを楽しもうとする理由。
彼のそれすらもその過去に起因します。
さて次回は...ごちうさの雨回です。次回はほとんど深君出てきません。