ご注文はゲーマーですか?   作:天翔blue

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...早くするとは言った。
間違いない。それは事実だ。
だが出来るかどうかは別問d
深「知るか。関係ない、書け。」
バイトで疲れt
深「その歳でそれはどうなんだよ。」
...ハイ、カキマス。


第十四話 ココロノオクソコ

次の朝、チノ達五人より、深が早く起きた。

 

朝、起きてからの彼の日課は、まず、スマホのゲームを起動させ、ログインボーナスを受け取り、

それから、布団からモゾモゾ抜け出して部屋の電気をつけ、青いクリアカラーのブルーライトカット効果強めの

眼鏡をつけ、勉強机の上にあるノートPCを起動させ、椅子に座り

ニュースサイトを開き、ある程度の量の記事を三十分見てから

フィットネスのゲームで10分近く運動しておく...というのが前までの日課だったのだ。

今はフィットネスのゲームではなく、買ったゲームのシナリオを進める時間となり、

その時間も一時間程度となっていた。

 

そのころには時計は6:30の表示になっていた。

この時間にはいつもならチノがココアを起こそうとしている時間帯なのだが、

廊下の足音すら聞こえない、休日であるため

昨日、泊まりに来たみんなと一緒に

ぐっすり寝ているのだろう。

 

少し時間の余裕を感じた深は、ゲームを終わらせ、眠い目を瞼の上からこすりながら、

本棚の一番上の右端にあった日記を取り出し、

机の上に置いて、付箋を入れてあったページから

読むことにした。

 

…これを読むのはかなり心に堪える物がある。

忌々しいから焼いてしまおうとも考えた代物だった。

それでも、あの日を忘れてはならない。

 

自分が少なくとも、まだ壊れていなかった頃の、

苦しみや楽しみをしっかりと感じられていた時の思い出

を、失ったものを、絶対に。

 

その決意を胸に仕舞い込み、今日もまた、

日記を閉じ、本棚に閉まってから、その右隣にあった

大きめのノートを取り出した。

 

そのノートには、

ココアたちの性格や特徴が書かれていた。

ただ、ページの隅にはこう書かれていた。

「Relatively normaly」と。

 

そしてページを捲るうちに自分自身のページに

辿り着いた。その隅にはココア達とはまるで違い、

「abnormaled」の文字の先には「sociopathy…?」

と赤文字で書かれている。

 

これはすべて彼自身が書いているもので、

ある時、他人の性格を調べる中、自分と人との

価値観、倫理観の相違で気づいたものだ。

 

彼の部屋には人には見せたくないものが幾つかある。

血の付着したガラス片、人の特徴を綴ったノート。

他にも色々ある。ただ、奥深くにしまいすぎて、

取り出すのが億劫になる。

気づいた頃には、7時を回っていた。

ようやく、廊下から足音が聞こえてきた。

…複数だ。足音のリズムが早い。

3人ぐらい歩いている。

 

足音を聞けば、何人くらいかはある程度なら分かる。

合わされると分からなくなるものだが、

微妙にズレていることが多いので、わかるときもある。

だんだんと足音が近づいてくる。

部屋は自分の部屋が廊下では端から2番目である為、

自分の部屋に来ようとしているのはわかった。

 

それがわかると、すぐに椅子から立ち上がり、

普段は掛けている部屋の鍵を開けると、そこには

リゼと千夜、シャロがいた。

 

おはよう。深

「部屋から出てこないのかどうしたのかと思ったわよ。」

「お寝坊さんなのかしら?」

 

…朝から嫌味か何かだろうか。

リゼは普通だからいいとして、

千夜が言うような寝坊はしていない。

そもそも今日は予定がないから寝坊も何も無いのだ。

 

「…おはよう、今から帰るのか?飯でも食っていくの?」

 

頭が回らないため、とりあえず返事を返した。

 

「なんかより一層無愛想な顔つきね。」

 

シャロは朝から嫌味でも言いに来たのだろうか。

まだ、眠気がなくなりきっている訳では無いので

瞼が重い。それが無愛想に見えるのだろうか。

…まあ、そもそも愛想も何も、愛想よくして何になるのだろうか…所詮は「他人」に過ぎないのに。

 

「…まあ、気を付けて帰ってな。」

 

そんな上っ面の心配だけで声をかける。

他人に情を持つのが、何より危ないと彼は思う。

それがきっと判断を鈍らせてしまうから。

 

扉の前から3人が去った後、

今度はココアがやってきた。

 

「深くん!みんなを玄関で見送るよ!」

 

…ココアは朝から物凄い元気だ。

少し鬱陶しいくらいの声の大きさと、満面の笑みで

扉の前に立っている。

まるで小学生みたいだと思う。

わざわざ見送らなくても、家にぐらい帰れるだろう。

 

「行くよ!」

 

そう言って、有無を言わせず、自分の手を掴むココアに連れられ、ラビットハウスの前まで来てしまった。

 

そうして、両手を大きく振り3人を見送るココアと

片手だけ小さく振って見送るチノを横目に、

深は遠ざかっていく3人に背を向け、

着替えを探しに自分の部屋に戻った。

 

着替えを終えた後、朝食を3人で作る。

これはいつも通りのことで、特別、

難なく朝食を済ませた。

 

今日は少し遠出して、PCの周辺機器でも見に

家電量販店に行こう。と思い、

地図を見ながら外へ出掛けた。

 

まずはゲーミングマウスだ。

最近のものは無線でも有線と変わらない位の

性能を持つものがあるので、そこはまだいい。

しかし、ボタンの数もなかなか重要なポイントに

なる。多ければ多いほど様々な動作を簡略化できる。

そのメリットはゲームではとても大きいのだ。

 

ある程度の目星がついたので、

店内を見渡すと、ゲーム機のソフトが目に入った。

新しく入ったゲームのようだ。

ジャンルとしてはRPGのようだが、オープンワールドで

自由度の高いゲームだとネットで話題になっていた。

そのパッケージを見ていると、

横から女の子の声がした。

 

「あっ、兄貴だ!おーいアニキー!」

 

という声と共に体に突っ込んできた。

当然、受け止める準備なんてしていないため、

そのまま床に倒れ込んでしまった。

持っていた手提げカバンの中身が

床に散らばる。

 

「…いってぇ…人違いなんだがなぁ…」

「…あっ、兄貴じゃなかった!?ごっごめんなさい!」

 

…ちゃんと謝ってくれたし、どうやら散らばった物も

どうやら壊れていないようだし、全然気にしていない。

ただ、この子の兄貴は大変なんだろうと気の毒に思った

 

改めてその子を見た時、その子が…小学生か中学生

ぐらいであることは大体わかった。

青みがかった髪、特徴的な八重歯。

…何だか…小学生にしか見えなくなってきた。

そんなことを考えていると、後ろから誰かが走ってきた。

 

「マヤ!やっと見つけた!」

「あっ!兄貴!」

 

どうやら向こうもこの子を探していたようだ。

マヤ…という名前のようだ。

 

「どこいってたんだよ。探したぞ。

…え?僕と間違えてこの人に突っ込んだ…?」

 

その話を聞いた途端、慌ててこちらの顔を伺う。

…別にそんなに気にしてないのだけれども。

 

「うちの妹がすいません!怪我ないですか!?」

「あ~…いや、特に怪我はしてないよ。

落としたものも無事だし、全然気にしてないよ。」

 

妹に似て、青みがかった髪をしているが、

八重歯はない。そしてしっかりとしているいい兄貴だ。

…自分とは真逆だと、改めて認識させられる。

 

「マヤ!この人に謝ったの?」

「いえ、もう謝ってくれてますし、いいですよ?」

謝ったかどうか聞こうとしていたマヤという女の子の

兄に、そう声をかけると安心して、

女の子の腕に軽く肘打ちした。

 

「いたっ。何するんだよ~。」

「反省しなさい。」

 

いい兄妹だな。と見ていて思う。

…もう弟はこういう関係には戻れない。

とても羨ましく思ってしまう。

 

「…ゲーム、お好きなんですか?」

「えっ、まっ、まあ。…ど、どうしてそう…?」

 

こちらから話しかけると、向こうもタジタジだが、

返答はしてくれたようだ。

 

「ここはカメラやパソコンとは離れて、個別にゲームコーナーとしての場所ですし、ここに来るのはゲームを見に来ている人ぐらいですからね。」

「あ~…確かに言われてみれば…そうですね。」

 

ここのゲームコーナーに来るのは

大体小学生の高学年以上で、割とゲームが好きな人だ。

多分、この新しいゲームが目当てなんだろう。

 

「このゲームは最近、話題になってる新作アクションゲームですよね。

コンシューマゲームなので、ハードを持ってない僕は

プレイ出来ないんですよね~…」

 

「そうなんだ、ゲーム機とディスプレイあるし、

どうかな?一緒にやりません?」

 

久しぶりに誰かとゲームがしてみたくなり、

これも何かの縁だと思い、ゲーム機がないと嘆く同志を誘うことにした。

 

「…いいんですか?」

「むしろ歓迎しますよ。俺も久しぶりに誰かとゲームがしたくて。」

 

向こうはかなり遠慮しているようだが、

実際、ゲームは誰かとやるのがかなり楽しい。

インターネットの相手とやるのも、それなりに楽しいのだが、一緒に隣でプレイするのが一番楽しいのだ。

向こうも気になっているゲームができて、

こちらも一緒にプレイできる人間を確保出来る。

つまりwin-winという訳だ。

だから、深は珍しく笑顔で誘ってみた。

 

「少し待ってて。ちょっと電話する。」

そういって、タカヒロさんに電話する。

下宿させてもらっているのだから、友達を入れるのも許可は取るべきだと思ったからだ。

 

「いいんですか?ありがとうございます!」

 

家にあげる許可を頂けた。これで久しぶりに誰かとゲームができる。

心の底からうれしくなったのはいつぶりだろうか。

抑えきれなくなりそうな興奮をなんとか抑えながら、久しぶりにできた友達に声を掛けた。

 

「行こう!僕の下宿先はラビットハウスに!ゲーム代は僕が持つから!」

「え!?...いいんですか?」

 

相手はかなり驚いていた。このゲームの価格は7000円代。ゲームソフトとしてはかなり高めだ。

それを全部払って、それをプレイさせてくれるという、あまりにもよすぎる話に驚いたのだ。

 

「いやいや、少しは払いますよ!?せめて三分の一くらいは!」

「別にいいよ!もともと欲しかったのは俺だしさ!友達に負担させるもんでもないよ。」

 

いつから友達になったの、というツッコミすら言わせない、

その気前の良さに完全に押されていた。

そもそもこれを断る理由もなかった。

話題の新作ゲームをタダでやらせてくれると言うのだ。とてもありがたい話である。

 

「...ありがとうございます。」

「さて、レジにいって買ってくるよ!少し待っててね!」

 

そういって走ってレジまでいく深を見送りながらマヤとマヤの兄は

笑いながら、

 

「なんか急に明るくなったね兄貴、すっごいいいやつじゃん。」

「そうだな!まさか新作ゲームをやらせてくれるなんて思ってなかったよ!

やったな!マヤ!」

 

そう言って喜んでいた。

しばらくして、レジ袋を携え戻ってきた深と一緒に、

三人とも偶然にも自転車で来ていたので、ラビットハウスに三人とも一緒に向かった。

 

「お邪魔します。」

「お邪魔しまーす!」

 

二人はちゃんとそう言ってから、深に連れられ、店側からカウンターの裏へ行くと、

下駄箱のようなものが置いてある場所で靴を脱ぐよう言われた。

言う通り靴を脱ぎ、階段を上り、廊下の奥にある深の部屋に入ろうとすると、深が慌てて、

 

「ごめんね、ちょっと待ってて!」

 

と言い出したので、先に深が入ると、

部屋からガラガラの缶のなる音やドタドタと聞こえる足音が聞こえた。

しばらくするとビニール袋のサッサッという鳴る音が聞こえた。

ようやく、深が入っていいよといって部屋に入ると、部屋の端には

中身の入っていない缶コーヒーの缶が袋二つ並んでいた。

小さな机の上にはディスプレイとゲーム機本体が

ケーブルで繋がれていた。

ディスプレイは18インチと、それなりの大きさのものを用意した。

 

ゲームソフトのパッケージを開け、ゲームのディスクを取り出し、

ゲーム機のディスクトレイに入れ、ソフトを起動させる

 

ディスクを読み込んでいるゲーム機の音を聞きながら深呼吸をする。

いつも通りにゲームをする前のルーティンだ。

 

ゲームコントローラを強く握りながら、今からゲームをプレイすることを非常に楽しみにしていた。

 

「これからが楽しみだな...!」

「...あれ?どうしたんですか?」

 

途端に目の色が変わる。

表情もみるみるうちに明るくなる

深はゲームとなると、とてもわくわくして止まらなくなる。

ゲームで徹夜なんてザラだった。ゲームを三日で攻略したこともあった。

それも、今となってはさらに頻度は増している。

 

「敬語なんてもう使わなくていいよ~!同じゲームのプレイヤー同士仲良くやろうぜ?」

「...うん。そうだね!ゲームを楽しもう!」

 

マヤの兄はさっきまで、その変わりように動揺していたが、

深の笑顔と言葉に嬉しくなり、つられて笑顔になる。

その後ろにいたマヤは、なんだかその二人がまるで前から友達であったかのように見えた。

 

「全く笑ってなかったのに急に笑うようになってる...。」

 

そしてマヤは感じていた違和感を口にした。

そう、深はゲームの話になるまで、笑っていなかった。

それこそ、マヤがぶつかった時ですら、

虚ろ目で無表情だったのに対し、今やゲームを楽しむ

ごくありきたりな、少年のようだった。

 

「チュートリアルやる?」

「じゃあ、僕がやるね。操作方法とかは確認しなくて大丈夫?」

「俺は全然大丈夫、すぐ慣れるタイプだし、見てればだいたいわかるよ。」

 

深はそれまで、ゲームをするとき、操作方法をほぼ感覚で理解していたため、

説明書も読まず、チュートリアルはするにはするが、飽きたらすぐにスキップしてしまうようなタイプだった。

 

マヤの兄は、チュートリアルをプレイしようと、深からコントローラを受け取り、チュートリアルを終えると、

そのまま、最初のクエストが始まり、フィールドに出ると、敵NPCが出現して、

プレイヤーアバターに向かって走ってきた。

 

そのままシームレスに戦闘に突入すると、一発当て、攻撃を回避して、また攻撃するという

いわゆるヒット&アウェイ方式で戦う堅実なやり方だった。

 

それを見ながら、深は何かに気づいたのか、

ゆっくり肩を叩き、ちょっと貸して、とコントローラを受け取ると、

様々なボタンをいじり出した。

 

そうすると、攻撃のエフェクトに変化が起こり、派手なものに変化しただけでなく、

攻撃の動作もダイナミックな動作に変化した。

先ほどのマヤの兄のプレイとは打って変わって、既にある程度プレイしていたかのような、

手慣れた手つきで、敵NPCを狩りつくしていた。

 

「...格ゲーとか得意じゃない感じ?」

「あー...わかる?」

「このゲームは連続入力で強力な攻撃が打てる、っていう格ゲー的要素があるみたいだから

そういうところでプレイヤースキルが露見するよね。」

 

プレイを見ていたマヤとその兄も、突然の達者なプレイを見て、すこしの間、声が出なくなっていた。

あまりにも上達が早すぎる。自分なら十分ぐらいかかっているだろうプレイを、

この数秒で深がやって見せている。

そんな驚きの中、話かけられてしまったので、返答にも口ごもってしまった。

既にゲームの特徴をとらえ始めている深と、まだまだこれから慣れていこうとしている二人という格差が

確実なものとして浮き彫りになる。

 

「へー...格ゲーとか得意なの?」

「別に得意なわけじゃないよ、それなりにやってるだけかな。

好きなジャンルはアクションとか、アドベンチャーかな、あとはレースとRPGを少し。」

 

そうはいうものの、買ったゲームは8割はクリアする様にしているので、

傍から見れば、割と上手に見えるのだ。

ゲームをプレイしたことのある方々にはわかっていただけるとは思うのだが、

実は共通のゲームジャンルでは、ある程度の操作は共通している部分があるので、

それなりにプレイしていれば、別のゲームで多少違えど、操作の順応は比較的早くできる。

格闘ゲームはコンボをつなぐスピードを素早く要求されるゲームなので、

記憶力、共に思考力を求められるのだ。

 

「割と広いんだね。ゲームはやっぱり大好き?」

「...それは、どうだろう。それがなきゃやってけなかった、というのもあるし、

感傷に浸るときもあるかな。もちろん楽しんでやることの方が多いんだけどね。」

 

深のするゲームジャンルが広いと驚くマヤの兄の言葉を聞きながら、

内心では、そんなことない、と否定する。

ゲームが好きかと問われると、実は大好きというほどでもないと答える。

彼にとってゲームとは自己の安定のためにやっているようなものであるので、

「好きだからいっぱいやる」ではなく「やっているうちに手が広がった」というのが正しいのだ。

ゲームは自らの安定と、思い出に浸る時間にもなる。そのために機器をそろえてきたのだ。

...といっても理解は得られないだろう。本心は隠しながら答えるしかなかった。

 

「...兄貴、カンショ―って何?」

「...僕もよくわからないかな。」

 

深の言った「感傷」という単語がわからず、兄に聞いてもわからないと答えられて

ただ首をかしげるマヤを見ながらクスクス笑いながら

 

「そんなもんだよ、環境が違いすぎた。ただそれだけで大きく変わってくるもんだからさ。」

 

と表情を少し暗くしながら答えた。

人は環境で大きく変わるものだと。

何もかも環境というわけではないが、人の人格形成に環境が大きくかかわるのは違いない。

荒んだ環境であれば、非行に走るケースもあるし、恵まれた環境であれば聖人君子が生まれるケースもある。

 

「へー、そんなもんなんだ。」

「そんなもんだよ、人生なんてもっぱらそんなもんだと思うぞ。」

 

まるで人生を悟ってしまったかのような話し方をする深を見ながら、

その目の奥に何があるのか疑問そうにしているマヤの兄はある質問を投げかけた。

 

「...歳はいくつか聞いていい?」

「高校一年だからね...16だよ。」

「同い年じゃん!なあんだ同い年だったんだ!なんか年上っぽい雰囲気だったよ!」

 

歳が離れているように見られるのは、全然喋らないだからだろうか。

寡黙と聞けば聞こえはいいものの、実際のところただ他人と喋るのが基本的に億劫なだけで、

わざと黙っているわけではない。

 

「ほんと?俺ってそう見えるんだ。」

「そういえば名前も聞いてなかったよね?なんていうの?」

 

そういえば名前すら聞いていなかった。

むしろ名前すら聞いていないのに会話できている自分自身にも少し驚いた。

もしかしたら向こうが聞いてこなかったら名乗ることすらしなかったんじゃないか。

聞かれたからには答えるのが道理なのでわかりやすく名前を伝えることにした。

 

「俺は青野 深。青色の青、平野の野で青野。で、名前は「海が深い」とかの深で、「しん」と読むんだ。」

「僕は条河 慧璃耶。条件の条に大河の河で条河。名前は...ちょっと難しいと思うから紙に書くよ。」

 

そして、書かれた名前の字を見て、思わず声が漏れた。

漢検の一級の漢字が使われていたのでなんだかかっこよく見えたからだ。

 

「なんだこれ...かっこいいじゃん。いいね!」

「うん、まぁかっこいいっちゃかっこいいとは思うけどさ、テストの時名前書くのめんどくさくなるんだよね。」

 

言われてみればやたら画数の多い名前だ。

確実に一文字ずつ、15画はありそうな漢字ばかりだ。

確かにめんどくさいだろう。問題が一つ解けそうなくらいの時間を名前を書くことに費やしてしまうのだ。

 

「ああ~...画数多いしな。でも一つ一つがいい意味持ってるぞこれ。」

「ほんと?どういう意味がある感じなのこれ?」

 

深は実は漢検一級に合格しており、漢字の意味はそれなりに理解していた。

名前の字から意味を推察したとき、名前の意味がわかったような気がした。

本人は名前の漢字の意味をよく知らないようだった。

 

「一文字目が賢いって意味で、二文字目が瑠璃っていう宝石の文字だから...綺麗とかだと思う。

三文字目のこれは疑問とかの意味を持つ助字だったはずだから...好奇心か何かのことを指してるんだと思う。

これはすごいな、意味を理解すればするほど名前のすごみが増すぞこれ。」

 

こう見れば随分意味を込めに込めた名前なんだろうとすこし感動を覚えた。

そういえば妹、マヤという名前は兄妹間の会話で分かったものの漢字はまだ見たことがなかった。

そういうわけで妹さんにも聞いてみることにした。

 

「そうだ、妹さんはどんな漢字なの?」

「麻耶って書くんだ。兄貴、書いて!」

 

どうやらマヤの方は自分では書けないらしい。

兄に頼んで書いてもらっていた。兄も兄で、はいはいと二つ返事で書いていた。

...ただこうしているだけでも、見ているこっちの心が少し苦しくなるけれど。

 

そして書かれた漢字を見てみると、兄妹間で同じ漢字を使っている事に気づいた。

そんな話を一時間弱にも渡って楽しそうに笑いながら、話していた。

 




頭の中にだけある程度のプロットがあって、少し考えて没にしたり、採用したり。
そんなことを続けているうちに長引いてしまうのです。
さて、次回ですが、学校回か、それともラビットハウス回(もちろんオリジナル)か、
少し迷っています。

ということで今回、初の試みとしてアンケートを取ることにしてみます。

学校回はシリアス多めになります。対してラビットハウス回はチラチラ出てくるだけです。
加え、学校回は深の過去に少し触れつつ、彼の信念が垣間見える回となります。
ラビットハウス回は本棚の詳しい内容から、チノ達との会話など、
普段の彼"ら"にスポットを当てたものになります。


(追記)期限を投稿日から1週間にさせていただきます。
ご了承ください

十五話の内容のアンケート

  • シリアス多めな学校回
  • 彼らにスポットを当てたラビットハウス回
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