ご注文はゲーマーですか?   作:天翔blue

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えー...二か月ぶりの投稿となりました。
天翔です。お久しぶりです。
遅くなった理由ですか?...そのー、色々と、
数学と物理教科が難しくなって、さらに、資格の勉強云々で忙しく。
さらに、明るい話を作るのがすこし苦手という自分の弱点に気づいていませんでした。

それからしばらくどうしようか、と考えたとき、一話から六話ぐらいの文章と
展開の動かし方がやっぱり気になって、「これは書き直したほうがいいかな」
と思い、一話を書き直しました。これで、「ご注文はゲーマーですか?」を
本格的に書きはじめることができます。

では十五話です。


十五話 Sunday"RABBIT-HOUSE"

「...今日も少ないな、客は。」

 

日曜日の昼下がり。

飲食店において、土日にはお客が多く来るものなのだが、それはラビットハウスでは例外なようで、

意外と平日と変わらないような少なさであった。

あまりにこないからか、ココアが窓際で日向ぼっこしてしまっているのをみて苦笑いする。

 

「まぁだ言うか。」

自分がかつて立てた店が人の全然来ない店だと、下宿人に週に何回もぼやかれているのだ。

ティッピーが声を低くし、少し苛立ちながらも深の手を踏んづける。

不愉快だろうが、かなしきかな、これが現実であり、その一分一分を、カメが坂道を歩くのを

眺めているような、それぐらいの時間の感覚で感じられるこの静寂の中で、

何かぼやいてでもしないと、眠ってしまいそうなくらいだった。

 

「残念だろうけど、痛くないぞ。しょうがないだろ。

事実だしなぁ...立地はいいと思うんだけどなここ...。」

そんなことされても、そんなモフモフの体では何をしようと無意味なのだ。

そんなティッピーに無意味だと言いながら、自己弁護を試みる。

実際、事実であることに変わりはない。

ただ、不思議なことに、この店周辺に全く人がいないわけではないのだ。

人通りもそれなりにある場所であるにも関わらず、客が少ない。

なぜかは考えてもわかる気はしないので、考えることをする気にはならなかった。

 

「暇だな。」

閑散としたこの状況の中、何をしようと考えるまでもなく、

制服の左ポケットからB6サイズのノートを取り出し、ぺらぺらとめくり出した。

その内容といえば、日本語の文章と、

傍から見ればただの英数の羅列にしか見えないものだった。

 

「…メモ帳取り出して何読んでるんですか?」

そんなメモ帳をいきなり取り出し、読み始めたとなれば、

確かに気になることだろう。

チノはこちらの様子を窺うように静かに話しかけてきた。

 

「プログラミングの本の内容を簡略化して書き写したんだよ、読む?」

そういってチノが見やすいようにページを大きく開けて見せる。

チノはそれをしばらく見ていたが、だんだんと気が遠くなっていったのか、

途中で頭を抱えながら机に突っ伏してしまった。

 

(…英単語だらけです…何がなんだか…)

 

プログラム自体は英単語を使用して書かれるものなので、それがどういう意味か

全く知らない人からすれば、到底、理解すらままならないものが仕上がるのだ。

もちろん、プログラミングを生業とする人たちは、それを何万、何億と書き連ねることになる。

当然ながら、全く知らなかったチノには英単語とスペースや括弧で仕上がったその羅列が

どのように動作されるものなのか、というより、そもそもこれこそがプログラムコードである

ということすらよく理解できていなかった。

 

「…もしプログラミングに興味あるなら本貸すよ?」

深から見ると、ずっとメモの内容を熟読しているように見えたので、

きっと興味があるんだろうと思っていた。

そんなに興味があるなら、と本を貸してあげようと思い、提案をしてみたが、

 

「…いえ、いいです。」

 

完全に滅入っていたのか、文字の書かれたページに手をあて、目を逸らしたので、

興味を持ってもらえなかったことに落ち込みながらページを閉じて机の上に軽く投げるように置いた。

 

「…ふーん、難しいんだね、プログラミングって。深君はできるの?」

気づいたときにはココアが読んでいた。

ココアは理系であるため、やろうと思ってくれるなら

物理プログラミングでも軽く教えようとも思った。

「まぁ、それなりにやってるからなぁ…俺もバリバリやってる訳じゃないしなぁ…」

 

自分ができる方だとは思わない、ポインタというものすらまだ理解していないし、

これからも更新されていくものがあるので、完全に理解するなら、勉強の時間をさらに削らないといけない。

所詮、趣味で成績を落とすなんて学生としてはよろしくない。

 

「チノは部屋で何かやってんの?あんまり部屋から出ないよね?」

 

そういえば、チノが外に出ていることもあまりない。

時々聞こえる、チノの部屋からドアの音が少なく、その間隔もあまり大きくはない。

つまりそれはその部屋から大きく離れない室内ということになるのだ。

では、部屋の中で何かをしているのか、深も気になるところだった。

ちょうどこういう話の流れなので聞いてみることにした。

 

「部屋でボトルシップを組み立ててます。」

 

ボトルシップと聞いてすぐにピンとくる人は少ないだろう。

実際、ココアは首を斜めに傾げていた。

深は昔から、「何かを作る、組み上げること」に興味はあったので、小耳にはさんだ程度で知っていた。

 

「ボトルシップね。俺らとしてはプラモデルとかがそれに近い感覚だな。」

「ただ造形はかなり細かいんだろうな…。」

 

昔に、ロボットアニメに出てきたロボのプラモデルを組み上げたことがあったため、

感覚的にはわかりやすかった。しかしボトルシップは、ボトル内の限られた空間内で、

小さな部品を精密に取り付けることをする作業である、人によってはプラモデルより難しく感じるだろう。

 

「組上げる時にはピンセットで慎重にやります。」

 

それを組み上げてきたであろうチノはかなり器用なのだろう。

深にそういう精密さはあまりない。

昔、組もうとしたプラモデルは親に手伝ってもらってようやく完成したぐらいだった。

 

「そういう静かに何かを作るのが趣味なところは2人はそっくりなんだな。」

 

リゼはチノと深の共通点を見出し、そっくりだと言う。

それを聞く深は若干難しそうな顔をしながらこう返した。

 

「確かに言われてみればそうっちゃそうなんだけど、

俺は調べてソースコードみて、書き写して知識取り入れてるだけだから特に何か作っちゃいないんだよな」

 

その実、彼の部屋にある本棚には、三冊のノートがあり、その全ページには、

プログラムコードやその解説の記事を投稿できるサイトの重要な部分だけかいつまんで写したものだ。

名も知らぬ誰かが書き上げたコードを書き写し、理解し、

自らに取り入れるインプットだけで、何かを作るということはまだしていなかった。

 

「ソースコード?」

「プログラムの文字列のことだと覚えててくれれば特に問題ないよ。」

 

ソースコードというものもココアたちにとっては知らない用語。

それを復唱するかのように深に尋ね、さらっと答えた深を見ながら、

こっそり深が投げ置いたノートを開いて文を目で追っていた。

難しそうにしていたが、英単語自体はまだ簡単なものしか扱ったプログラミングはしていないので、

文系が苦手なココアもすんなりと理解できてきたのか、途中、頷きながら読んでいた。

 

そうして読んでいるうちに今度はチノが話を切り出してきた。

 

「ココアさんは部屋で何してるんですか?」

ココアはどちらかというと、外でワイワイやっていそうなものなのだが、部屋で何かをしているイメージはなかった。しかし、チノの質問に答えるココアの答えには…

 

「え、うーん、青山さんの本を読んでたり...かな。」

本を読んでいる…と、本というジャンルで

「青山」と聞くと、だいたいの人は

「青山ブルーマウンテン」という作家を

思い浮かべるのだが、ココアのいう「青山」もその人

なのだろう。しかし、青山という姓の作家は1人だけでない、確証が欲しいので聞いて確認をとることにした。

 

「青山さん?青山ブルーマウンテンのこと?」

 

「うん。読んだことある?」

どうやら当たりだったようだ。

青山ブルーマウンテン…名前は聞いたことがある。

確か、作品が映画として、公開される程の人気作家だが、残念ながら深は小説を読んだことがない。

 

「うーん、流行りに疎いから読んでないなぁ...。」

流行りに疎い、は嘘で、ただ読んでないだけなのだが、

興味がない、と話をすぐに終わらせてしまうのは不快感を生じさせるので、それを避けるための嘘であった。

 

ネットで「話題のニュース」くらいなら検索エンジンで

検索してしまえばすぐ出てくるので、

1日1回は検索している、流行りに疎い訳ではない。

そんな嘘を難しい顔をしながら首を傾げ、

言葉を濁しながら答えた。

 

「うさぎになったバリスタっていう本なんだけど...。」

うさぎになったバリスタ、そんな奇妙なタイトルの本

ニュースにもあった、映画になる作品もそのタイトルだった。

うさぎになったバリスタ、と聞くとなんだか心当たりがあるような、

そんなあるはずもない不思議な感覚に襲われた。

 

チノの祖父はここのマスターだった。

しかし、チノによると死去している。

科学的、生物的にはありえないとわかっているが、あのアンゴラウサギから発される老人の声は

チノを知っていて、かつチノの父であるタカヒロさんと会話を交わし、そして、タカヒロさんには親父

と呼ばれている、チノの祖父であるとしか思えない。まさか、実話を元とした本なのだろうか…。

ココアの話からそんな非現実的な、しかし、現実でないにしては、なぜか辻褄があうような、

都市伝説を聞いている気分になり、いきなり興味が湧いてきた。

 

「名前は聞いたことある。...いつか買ってみるかな。」

 

本格的な小説を読んだことのない深は、「これも何かの奇妙な縁だ」と思い、

また今度、プログラミングの本を買うついでに購入してみようと思った。

何より、この「青山ブルーマウンテン」がどんな人物か気になって仕方なくなった。

 

「そういえば、部屋に本棚があるんだっけ?どんな本が入ってるの?」

 

ココアに本棚に関して聞かれた深は、一瞬、動揺してしまった。あの本棚には隠しているものがある。

血塗られた硝子の欠片と最後に親友と撮ったあの写真。あれが見つかれば、写真の親友の話を聞きたがる。

それが、怖い。知られたくない過去を隠匿し続けたい。

その恐怖を引き出されるような感覚に身が震えそうになった。なんとかその震えを隠し、

言葉を詰まらせそうになりながら、目を合わせず答えた。

 

「コンピュータ、ゲームの攻略本、PCの雑誌ぐらいかな。それで1列くらい埋まるぞ。あとは気になって色んなジャンルの本を色々…」

 

そういえば、その1列を埋める本たちも

それがきっかけで本格的に集めるようになったんだと、久しぶりに思いだした。

 

それを聞いたチノは雑誌の横幅がどれくらいか考えていた。雑誌の厚みはそれほど大きくなく、

前に運んだ本棚は割と大きなサイズだったはずだ。

つまり、チノが運んでいないものを含めて、それで本棚に埋まる量。相当な量である。

 

「それだけで本棚の1列を埋まってるんですか!?」

 

驚くのも無理はない。3cm位の横の厚みで本棚が埋まる

なら、2種の雑誌を毎月買ったとしても2年は掛かりそうなものだ。

 

「...まぁ大体埋まるだろ?月間だしな。」

 

月間だから大体埋まる。実際そうなのかもしれないが、

だとすれば一つだけ引っかかることがあったようで

今までただ傍観していたリゼが口を開いた

 

「いや、教科書はどうしてるんだよ。」

 

学校で貰うはずの教科書や卒業アルバムはどこに閉まっているのだろうかと。

大体は処分したり、どこかしらに保管するのが一般的だ。リゼの家はどこかにしまっているのだろう。

 

「中学の時に授業で作ったあれで。」

工作の授業で作ったあの小さな本棚。

ココア達も作ったことはあるだろう、25センチ四方の

小さな本棚にしまっているのだと言う。

 

「あれはそんなに容量ないぞ!?」

 

その実、その横幅では教科書すべてをしっかり収納できるわけではなく、

深は一部だけを小さな本棚にしまっている。

 

「教科書は置き勉すればいいだろ。」

 

その上、持って帰って勉強することもないので基本的に教科書を置いて帰ることにしている。

しかし、それに関してチノがその「置き勉」に関してこんな質問をされた。

 

「置き勉ってやっていいものなんですか?」

 

確かに置き勉に関しては、それをしていけないというルールがある学校も少なからずあるのだという。

そんな話を掲示板だのSNSだので目にしたことがあった。

そんな疑問に深は答える直前に首を軽くかしげてから答えた

 

「学校によるが俺は肯定派だな。例えばチノは自分の体重の体重の四分の一、または半分のものを毎日毎日背負っていけるか?」

 

「そもそも、そんな重さ背負って学校なんていけませんよ...。」

 

「だと思うだろ?今の小学生もっぱらそれだぞ。ただの苦行だぞ。」

 

「そういえば...確かに重かった記憶があるな。」

 

ランドセルの重さによる骨などの変形は実際に問題になっている。

平均的な重さが5.7キロ、約6キロと言いかえても特に問題ないだろう。

2Lの水の入ったペットボトルが3本だと例えるとわかりやすい。

チノからすればその感覚がないかもしれないが、実際それくらいの重さだそうだ。

意外にもチノでなくリゼが重かったと言っていることに、普段見ているリゼとの

ギャップを感じた。

 

「ココアも少し考えてみなよ、チノに毎日そんなもん背負って行けって言うか?」

 

「私がチノちゃんを背負っていくよ!」

 

「ココアさんのスイッチを入れないでください。」

 

「でも間違ってはないからなぁ...。」

 

ココアにチノ関連の話を振ると即時反応するのがすこしおもしろく感じた。

チノは快く思わないようだが、ココアのチノに対する執着がかなり見て取れる。

そして、今度はココアの趣味を聞いてみることにした。

 

「チノはボトルシップ、俺はプログラミングの勉強...んでさっきの話からだと...ココアは本読んでたり?」

 

「うん、愛読書は『罪と罰』だよ。」

 

耳を疑った。あの「罪と罰」。

書いた時の作者が悲惨な境遇の中で書いたとされるあの小説。

哲学的な小説だった。一度だけ読んで、もう読んでいない。

しかし驚きなのは、あんな重苦しい内容の小説を愛読書としているギャップが強すぎる。

 

「...え?ハード過ぎない?」

 

気づけば、無意識に口に出していた。

結局、購入してから一度読んで、それから全く読まずに、ここに来てからもずっと本棚にはあるが、

雑誌と雑誌の間に粗雑に挟まったままになっている。

そんな中、チノが少し驚いたように聞いてきた

 

「読んだことあるんですか?」

 

確かに部屋の本の殆どは雑誌ばかりだが小説ぐらいは読む。

しかし、このタイミングで聞いてくるあたり読んだことがあるのだろうか。

 

「あるよ。明るいもんじゃないよあれ。ココアもよく読もうと思ったなあれ。」

 

とりあえず、ある。と答え、内容に関して言うとその一言しか言えなかった。

ココアがその作品を読んでいるイメージが全く浮かばない。

その軽くつぶやいた一言がチノには気になったようで、さらに内容の事を聞いてきた。

 

「そんなに暗い作品なんですか?」

 

「暗いし重いし…読んでて精神病む人がいそうなくらい…。」

 

精神を病むは若干盛ったが、読んだ後の虚無感や脱力感は他のものと比べると

より一層深い。その脱力感のまま寝てしまえそうなほどだった。

内容を思い出しながら語っている今も少し脱力感を覚えていた。

 

「ココアさんもそんな作品読むんですね。意外です。」

 

確かに、ココアならだいたいハッピーエンドで大団円を迎えるような本ばかり読んでいるものだと思っていた。

チノもリゼもそう思っていただろう。チノはココアにそういうと、笑顔でチノ含めこちらにもこう言った。

 

「うん!哲学的で面白いよね!」

 

哲学的で面白い、肯定はしないが正直にそうだともいえない。

哲学には興味がないし、どちらかというとそれより人間心理の方が興味がある。

 

「...まぁ、うん。そうだな。そう思うよ。」

 

軽く目を逸らしながら話を合わせるためだけに共感の言葉を述べた。

当然、本心ではないのですぐさまリゼにバレてしまい、

 

「そう思ってないようだぞ。ココア。」

 

「ヴぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

と、リゼがバラしてくれたおかげでココアにもバレてしまった。

理解されなかったことがびっくりしていたのが奇声をというか

ゲームの怪物の咆哮のような声を上げた。

そんなココアを無視するがごとく今度はリゼの普段の生活についての話になった。

 

「ところでリゼさんは普段何してるんです?」

 

「...私か?私は...モデルガンを集めたりとか...射撃場で銃を撃ったりとかだな。」

 

まぁ、想像通りではある。しかし家に射撃場は莫大な財を必要とするはず。

リゼの家はお金持ちなのだろう。それはともかくモデルガンを集めているということは

もしかすると自分が知っている銃のモデルガンがあるかもしれない。

 

「...じゃあさ、トンプソン。トンプソン・コンテンダーとかあるの?」

 

「あるぞ。どうした。いきなり特定の銃の名前あげるなんて、詳しいのか?」

 

『トンプソン・コンテンダー』、知っている人は知っているであろう、

中折れ式かつシングルアクションという個人的にロマンの塊だと思う銃だ。

しかも様々な銃弾を使用できる多機能性があり、その調整も簡単にできるという機能性の良さも相まって、

個人的にお気に入りの銃だ。今は買うことができないが、実物やモデルガンをお目にかかりたいものだ。

 

「いやー...好きなキャラがその銃を使って戦ってるのがかっこよくてさ。」

 

好きな作品のキャラクターがその銃を使っているのだが、そのキャラクターもとてもすきだった

自らの信念を持って行動し、その信念故に多くの物を手にかけ、それに苦しみながらも

なお戦い続けた。そんな姿にあこがれすら覚えた。

 

「一発ずつしか装弾できないんじゃなかったかあれ?それで戦えてるってすごいな。」

 

「そうそう。男のロマンだよな。」

 

そもそも狩猟・競技用なので、実戦を想定とした構造でないため、銃弾は一発しか装填できず

さらに銃弾を発射するための最低限の機構以外がついていないが、

それを踏まえても前述のメリットによってかすんで見えるのだ。

そんな「男のロマン」に溢れるその銃もとても好きだ。

 

「深さんも銃に詳しいんですか?」

 

「俺は全然。好きなキャラがそういう銃を扱ってるとかそういうので覚えただけで他のはわからないな

アサルトライフルとか、ショットガンとか、そういう分類的なことまでしかわからないんだよ。」

 

チノからすれば、詳しそうに見えるようだが実際のところ、ゲームやアニメで少し知っているだけで

そこまで詳しいわけではない。リゼの方が確実に詳しいはずだ。

M202やP90、デザートイーグルなど、有名どころしか知らない。

 

「興味あるなら、また今度見に来るか?」

 

「あー...それは遠慮しとくよ。」

 

リゼがせっかく誘ってくれたのは気を許してくれているのか、

近い趣味の者がいると思って、それがうれしいからだろうか。

一般的な世の男性なら、それはそれは、即答で快諾するだろう、それを深は断った。

 

「ん?どうしたそんな気まずそうな顔して。全然遠慮しなくていいのに。」

 

「俺は人の家にあがるのは苦手なんだ。部屋とかもさ。」

 

リゼが笑顔でそう言ってくれるのは、実際少しだけ嬉しく思う。

他人の家に上がるのが苦手というより心苦しい。

家とは、その人の居場所であり、そこでの主導権は当たり前だが、その家の者にある。

もちろん、それが当然なことだと理解している。

『主導権が相手にある』その状況こそ、彼にとっての苦痛の一つなのだ。

しかし、その場合、ひとつの矛盾が生じる。それこそ、

 

「ラビットハウスもそうなんじゃないのか?」

 

「それはそれで別だね...自分の部屋があるから、そこだけがこう落ち着けるというか。」

 

ラビットハウスは香風家、チノとタカヒロさんの家で、そこにココアと深がいる。

この状況であれば、深は常に苦痛を感じ続けていることになる。

しかし、この場合は例外で、自分の部屋が設けられている。

そこはそこで、安心感のある空間となる。

...つまり、逆にいえば、『自分の部屋以外に安心感を得られる場所がない』ということになる。

 

「どうしてそんなに他人が苦手なの?」

 

「うーん、どーしてやろねー。」

 

「またごまかししてる!教えてよ!」

 

ココアから投げかけられた疑問を、そのまま右から左に流すように答えることをしない。

『教えてよ』と言われようが、教えられない。

...それをすれば、ここでの生活ができなくなる。偽った全てを知られてしまう。

 

「...またいつか、その時になったらかな。一年後ぐらいになるかな。」

 

「割と具体的だな、どうしてだ?」

 

「一年後、ある日にその時が訪れる。」

 

『また、その時に』話そうと、それは『一年後』だと。

一年後、自分が生きているかどうかすら確証もない。

その日まで、心が罪悪感で壊れてしまわないだろうか。

この手を血で汚してしまった自らの過去を告げたとき、僕は正気を保っていられるだろうか。

 

「なんか、家族とか昔の話になるとごまかそうとするよな。」

 

「...単に言いたくないんだよ。」

 

「じゃあ、その時になったら教えてくださいね。」

 

「わかったわかった。その時にな。」

 

訪れることのない『その時』を彼女らは待ち続けることになる。

 

「...お疲れさまでしたー。」

「お疲れさまー!」

「お疲れさまでした。」

 

「またな。チノ、ココア、深」

 

仕事も終わり、リゼを見送る。

『いつも通り』の日常。穏やかな日常。

僕はこの日々を続けていい人間ではない。でも、手放したくもない。

...考えていると疲れてしまう。だから、

 

「さて、またいつも通り、ネットサーフィンとしゃれこむか。」

 

現実逃避にひた走るのだ。

そのための部屋だった。彼にとってそんな場所が楽園になっていた。

いや、そうしてしまったんだと、気づいた時には何もかもなくしていた。

 

「...夕飯食べないんですか?」

 

「おっと、そうだったそうだった。」

 

夕飯を食べることを忘れていたわけではない。

ただ、無意識的にそちらを優先しようとしていた。

 

「ご飯のこと忘れるぐらいパソコンのこと考えてるなら食べなくていいです。」

 

「わかったよチノ…ちゃんと食うから、飯抜きはさすがにキツいって。」

 

チノにそう叱られてしまうとは、なんとも情けないことだが、

それをヘラヘラ笑いながら誤魔化そうとする自分も自分だとは思う。

すると、後ろからココアが勢いをつけて抱き付いてきた。

 

「ふたりとも仲良いね!いいね!深くんもそんな感じで学校で誰かと話しすればいいのに。」

 

「うぉっ!びっくりしたぁ!突然後ろからはびっくりするだろ…。」

 

突然の事なので驚いてしまったのだが、そんな事より若干首が締まっている。

首が締まるのが若干苦しいし、何が、とは言えないが当たっている。

そんなココアにすこし助けられているような気もした。

チノも同じことを思ったのか、二人とも微笑を浮かべ、

 

「やれやれ…。」

「やれやれです…。」

 

「今ハモった!?なんか複雑。」

 

安らぎの感情からか、そう呟いたのである。

ココアは二人に同時にそう言われたことに多少のショックがあったのだろう。

抱き付いていた体を離して口に手を当てるようにして驚いた。

 

深はその安堵の感覚にひどく動揺した。

そんなはずはない、おかしいと自らに気のゆるみに気づかなくなっていた

事実に頭がついていかなかった。ここ数年の間、まったく感じなかった、

他人に対する安堵だった。

 

「ココアは、クラスの誰かとどんな話をするんだ?」

 

「ラビットハウスの事とか、実家がパン屋でパン作りができることとか。かな。」

 

「実家が、パン屋?...そうなんだ。何て名前か聞いていいか?」

 

なぜ安堵を感じたのか、ココアの行動に秘密がないのか、記憶を辿っていると、

ココアがクラスメイトと話しているときの相手の表情に何ひとつ嫌悪感などない顔をしていたこと

を思いだし、何を話題とした会話なら、それほど他人から受け入れられるのか、

それを無意識的に問うことをしていた。自分の行動の理由がわからない。

相手への詮索は警戒感と嫌悪感を与えてしまうリスクが伴うと知っているのに。

 

「うん。"保登ベーカリー"っていうんだ。」

 

「...そうか、そこだったのか。懐かしいな...。」

 

「あれ?来たことがあるの?」

 

「いや、友達が旅行でそこのパンが美味かったって言ってたから、なんか懐かしいなって。」

 

そんな人たちの家族ですら、自らを偽り、欺瞞を続ける。

自分に嘘は向いていないのが、心にのしかかる後ろめたさが証明する。

パンがおいしいのも、懐かしいと思うのも事実。

嘘なのは、居もしない友をまるでいるかのように演じて見せたことだ。

 

「そうなんだ、なんだか嬉しいな♪」

 

そんな嘘に容易すぎるほどに騙されてくれる、

そんな純粋な水晶のような性格とアメジストのような瞳をした、

ガーネットと金をの色を少し合わせた色をする髪を揺らして笑う少女を

羨ましく、思ってしまった。疑うことを知らないでいるこの少女を。

 

 

 

 

「ココアから手紙よ!」

 

「わー!ココアからだ!どんなこと書かれてるんだろうね!」

 

「向こうで楽しそうにやってるみたい!よかったー!」

 

一方、その少女の家族は送られた手紙を見て、嬉々としていた。

内容を音読して、2人で一緒に読んでいた。

少女の母と姉とおぼしき人物だ。

2人はどんどん読み進めていくが、ある部分で文を追う目が止まった。

 

「ん?ちょっと変わった男の子?...あれ!?男の子と一つ屋根の下!?」

 

驚くのも無理はない。

本来ならば避けるべき異性の同居。

少し変わっているとはいえ、何かあっては困る。

そんな焦りはすぐさま消え去った。

 

「えー!?そうなの?大丈夫かなココア!?...あ、写真が入ってる。」

 

「...内容からすると、部屋にこもって本を読んだり...。内向的な子、みたいね。

写真撮られてても全く笑顔を見せないあたり、写真を撮られるのが嫌いなのかな...?

青野 深、君っていうんだね。」

少女の姉は写真を取り出し、それだけを見ている。

一方で母は手紙の文を見ながら、写真をチラリと見るだけだった。

そして、2人ともその写真でやたら無表情でいる少年の顔に見覚えがあった。

 

「あれ?この子、見たことあるような気がする...なんでだろ?」

 

しかし、どこでそれを見たかを覚えていない。

でも確かに、その子を見た覚えがある。

先に少女の母が気づいた。

 

「そういえば…昔、夜中に、男の子を家の中で応急処置したことがあったわよね?

その子にそっくりじゃない?名前を言わずに、お礼と仕事の手伝いだけして

くれただけどこかへ行っちゃったじゃない?」

 

「ああ!そういえば、その子、翌日の昼にすこし目を離したあとに

お礼の置き手紙だけ残して姿を消しちゃったけど、あの後、警察の人に

同じ特徴の子を探しているって言われてびっくりしたけど…。その子がそうなの?」

 

その子は付近に住んでいるわけでなく、帰る場所ももうない、と言っていた。

でもその子は当時中学生。当然、帰るべき場所があるはずだが、それをどこかということは言わず、

ここまで来た理由も言わなかった。素性が全く分からなかったが、それでも

「お礼に何か手伝わせてください。」と言ってくるような子だったので、

悪い子ではないことはわかったが…

 

「あの子…なのかな?」




そろそろ、大方の展開が頭の中で固まってきました。
完全オリ回の引き出しがあまり少ないので原作回にオリ要素入れる形になります。
(ゲーム回を先にきららMAXの方で描かれていたので、一回練り直さなきゃ...)

前回、投票いただいてアンケの片方。
「深の過去に触れるシリアス回」
セリフベースでだいたいの展開だけ作ってあります。
20以降のどこかで出します。

次回内容は投稿現在(06/22)時点では決まってないです。
ごめんなさい。

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