ご注文はゲーマーですか?   作:天翔blue

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久し振りです、...僕は毎回久しぶりだと伝えている気がしますね。
今回二つの案を同時進行していたせいでまたまた遅くなりました。
ちなみにもう片方も、もしかしたら出すかもしれません。
今回はシャロメインです。
その上、シャロとあともうひとりだけが知っている
「黒狼」という謎の存在が今回出てきます。


第二章 現れはじめたもの
16羽 Who are you?


 

「そろそろ特売ね、急がないと。」

 

今日はスーパーの特売日だ。シャロはこの日、その時間をを待っていた。

ここで目的の品を買えれば、余裕ができる。そのためにその時間を待っていた。

既に多くの人が同じくそれを待っていた。

 

「あったっ!あ!?あと一個!?」

 

シャロが目的の品を見つけたときにはあと一個だった。

急がないと持っていかれてしまう。

急いでそれの下へ走り出した。あともうすこしで手が伸びる距離だった。

しかし。その刹那、無常にも別の女性がすっと手に取り買い物籠に仕舞ってしまった。

 

「持ってかれちゃった...。」

 

結局、卵を手にいられなかった。

仕方なく、その他の安い食材でどうにかしようと思い、

スーパーの中で何かいい食材はないかと探すことにした。

しかし、ある光景をみて、これはどうしたものかと思いその光景をしばらく静観した。

 

チノが買い物をしている。そしてココアにあとをつけられている。

しかしつけられている本人は全く気付いていない。

...この状況を第三者が見たとき、どうするのが正解だろうか。

警察に通報する、つけている人にに声をかける、など、様々だろう。

ちなみに、この状況を見つけたシャロは。

 

「...。」

 

結局、ただ静観していた。

 

とりあえず、自分の買い物を進めようとしたが、そのチノがこちらに気づいて近づいてきた。

確かに、知り合いがいれば話し掛けようとするのは普通だ。

しかし、この状況で話しかけられるとココアが後からうるさいが、

避けたら避けたでチノはショックを受けるだろう。

 

「シャロさんこんにちは、シャロさんもスーパー来るんですね。」

 

「ええ、く、来るわよ?」

 

どうしようか、これをチノに伝えるべきだろうか、

それともココアのために気づかないふりをしてあげるべきだろうか。

それを考えながらぎこちなく返事をする。

 

「どうしたんですか?」

 

「ココアは一緒じゃないの?」

 

「ココアさんはついてこようとしましたけど、来なくていいって言いましたから。」

 

「そ、そうなの。」

 

実は、ココアがいる事に気づいているんじゃないかと思ったがやっぱり気づいていなかった。

前にお客さんから「シスターコンプレックス」だと言われていたらしいが、

もはやそんなレベルだと思えない。

 

「...にしてもどうしようかしら。」

 

「どうしたんですか?」

 

「卵を買い損ねちゃってね、これじゃ明後日からの分がないのよ。」

 

落ち込んでいる理由を聞かれて答えるも、チノがそれを聞いた時にポカンとした顔をした。

 

「え?あるじゃないですか?レジ袋に既に入ってますし、レシートもその中に入ってます。」

 

「...あれ!?私買ってないわよ!?なんで籠に一緒に入ってるの?」

買っていないはずの卵がなぜか手元にあった。

しかも丁寧にレシートとおつりも入っている。

しかし、その額を確認すると...

 

「あれ?おつりが十円分足りませんね...。」

チノの言う通り確かに十円分だけ少ないのだ。

しかし、なぜ十円だけなのだろうか。全部持って行ってしまえばいいのに、。

さらに不可解なのは、これを購入したであろう誰かが、なぜ私が気づかないうちにレジ袋を持たせたのか、普通にくれればよかったのに。

 

「...前で十円玉を指ではじいて遊んでる人いるけど、...偶然じゃないわよね?」

 

「偶然にしてはできすぎてますね。あの人に聞いてみましょう。」

 

前に黒いフードを着た男がいた。

指で何かを弾いていたようだったが、それが十円玉だとチノが気づいた。

かなり綺麗に輝く十円玉だった。偶然にしてはタイミングもぴったりだ。

二人はその男に近寄って話を聞くことにした。

 

「すいません、これ、買ったのはあなたのじゃ...。」

 

「それは君に譲渡したものだ。もう僕のものじゃない。

買い損ねたんだろう?卵。」

 

シャロは驚いた。

自分が卵を買い損ねていたこと、そして自分の分として買ったであろう卵を譲渡し、

それを持って来られても何も気にせず、「もう自分のものじゃない」なんて言葉が言えるとは。

 

「それはそうなんですけど...。いいんですか?」

 

「かまわない。今必要と言うわけでもないし、直食いが危険だってさっき知ったんだ。

捨てるにはもったいないし、誰かに普通に手渡すと顔がわかる。」

 

直食い...まさか、卵をそのまま食べようとしたのだろうか、それとも割って黄身をそのまま食べようとしただろうか、どちらにしても野性的な食べ方だ。

どこでそんな食べ方を知ったのだろうか、シャロの中で彼は

恩人と言うより変人だという認識にすり替わってしまった。

 

しかし、何かおかしい。

 

「...?顔がバレると何か困るんですか?」

 

「僕の顔がもしバレた日には、とんでもないことになっちゃうかもしれないからね。詳細は言えないけど。」

 

とんでもないこと...詳細は言えないが、顔が見せられないほど、彼には重要な何かがあるのだろう。

 

彼は持っていた十円玉をこちらに見せ、「これ珍しいだろ?ギザ十だぜ?」

なんて若干はしゃいでいた。いい人というか子供に近いような性格の人だった。

十円玉一枚だけ持っていったのはそれだけの理由らしい。

 

「じゃあ、僕は帰るとするよ、卵を有効に使ってくれ~。」

スマホを取り出し、時間を確認し、どうやら用事でもあるのか、

黒いメタリックカラーのスマホをすぐにしまって、

それだけ言って去っていった。

 

いい人でしたね、とチノは言っていたが、それだけだろうか、

顔を隠さなければならない事情がある人なんて何かやましいことでもあるんじゃないだろうか。邪推かもしれないが、それでも妙だと思った。

それを考えながらチノの話を聞いていると、

 

「おお、シャロ、買い物帰りか。」

 

「あっ、リゼ先輩。」

 

「チーノちゃーん!」

リゼがシャロを見つけて近づき、ココアはチノが買い物ができたかどうかを確認しようと、

走ってきた。

 

「ココアさん!?ついてきてたんですか!?シャロさん気づいてましたか?」

もちろんチノはついてこないように言っていた。

しかもつけられている事には全く気付いていなかった。

 

「私は一応気づいてたけど、言うのも何か..ね。」

 

「気づいていたなら教えてください!」

 

「チノちゃんがちゃんと買い物できるかな、って。」

 

「私、中学生ですよ!それくらいちゃんとできます。」

ココアが姉の様に振舞い、それをすこし鬱陶しそうに扱っていた。

帰り道、チノたちといつも通りの会話をしながら帰っている途中だった。

 

道の横からふらつきながら腹を抱えて逃げているガラの悪い不良のような少年が出てきた。

 

「どうしたの?大丈夫?」

ココアが見つけるなり、走って近づき、倒れそうな少年を支える。

 

「助けてくれ!突然こいつが…!?」

必死で助けを乞う様子が一瞬にして恐怖の顔に変わって、その先にいるものを指さした。

その先にいた者はこちらにゆっくりと近づき、ココアを見るなり、こう言い放った。

 

どけ、こいつは目的の男だ、始末しろと言われている。邪魔するならお前も始末するぞ。

その少年の後ろの物陰から出てきたのは、

両肩に狼のデザインのプリントがされている,

黒いフードを被るおおよそ170cmくらいの男。

_先ほどシャロに卵を譲渡した男だった。なるほど、

こういうことをしているなら顔を知られたくないわけだ。とも思ったが、それよりも

_あの服装に聞き覚えがあった。

 

振り向き痛みをこらえながら、先ほどの少年が折り畳み式のナイフを取り出し、

それを振るように変形させ、刃先を出す。

しかし、それを読んでいたのか、男の方も別のナイフを取り出した。

バタフライナイフと呼ばれる種類のものだった。

 

ココアを突き飛ばすようにどかして、その男に振り下ろされるナイフを相手の動きから冷静にどの角度で、

どのような軌道を描くのか。

それをしっかり把握してよけているのが見て取れた。

そして、そのまま、バタフライナイフで相手の手首を裂ける冷静な判断力、経験豊富なようだった

 

「てめぇ、なんなんだよ...。」

 

裂かれた右手首を左手で掴み、出血を抑えながら、それでもあふれ出る血を見つめ、男の方を睨みながら言った。

 

僕の名は...。

 

しかし、その名を告げたのは、彼ではなく...。

 

黒狼...。」

 

シャロだった。

ピクリと体が動き、背後の少女を見た。

動揺と驚愕を示すかのように、指を止め、

ナイフを持った手をおろした。

 

そして、チノたち三人もその名前を聞いた途端、シャロの顔を見つめた。

 

この姿を見せるのは初めてだったね。

 

黒狼はシャロを知っていた。

それもそのはず、シャロもチノも、この黒狼の表向きの顔をした人間を知っている。

しかし、その正体を確として知っているのは五人の中でシャロだけだ。

 

(この姿...?まるで別の姿の方を私たちが知っているような口ぶりをしてる...?)

 

「チノちゃん、ココア。先に帰っててほしいの。」

 

黒狼は危険であることはまず間違いなかった。

バタフライナイフを扱い、そして明らかに喧嘩慣れしているその動き、正体を知って、かつ協力している自分はともかく、チノとココアは何も知らないし、真実を知ってもらう訳にも、ここで負傷してもらう訳にもいかない。

 

「危ないです!一緒に帰りましょう!」

「シャロちゃん!危ないよ!」

 

当然だ、自分はこのことをみんなに伝えていない

…信頼する先輩にさえも。

「大丈夫よ、絶対に手は出さないはずよ。」

 

自分と、目の前の男しかその理由は知らない。

彼が自分たちには絶対に手を出さない理由。

 

わーお、ご名答。

 

顔は見えないが、声色でつまらなそうにしているのが

わかった。シャロの知っている彼のいつもの声とも違うが喋り方でわかる。

 

「...わかりました。ココアさん、一緒に帰りましょう。」

 

「チノちゃん...。」

 

「リゼ先輩もここを離れてください。」

チノはココアを連れてこの場を離れようとし、それにリゼにも場を離れるように促した。

 

「無理だ、それにシャロが心配だ。」

しかし、シャロが残っている以上、自分もここに残るべきだと思ったのだろう。

リゼもリゼで、目の前の黒狼を知っているシャロに聞きたいこともあった。

 

「私は大丈夫です。」

 

「なぜそう言い切れるんだ。あんなナイフを持っているんだぞ!?」

シャロが自分は大丈夫だという根拠なんて当然わからなかった。

ナイフと言う凶器を扱っている相手を前にしてもなお、それでも大丈夫だと言い張るシャロ。

 

「...わかりました。...リゼ先輩はここに残るんですね。」

シャロはリゼが残ることに関しては特別何も言うことはなかった。

しかし、危険だということは理解しているはずなのに、シャロは一切戻ろうとしなかった。

リゼはそこに大きな違和感を感じていた。

 

「リゼさん!?」

「リゼちゃん。」

 

「後輩がここに残るっていうのに見捨てて戻れない。」

 

「...でも!」

後輩のことを気にかけ、リゼは戻らないつもりでいた。

ココアもリゼの気持ちはわかるが、目の前の相手が危険かどうかなんて、考えるまでもない。

 

「大丈夫だ。それなりに護身術を身に着けてる。いざとなればそれを使って逃げるさ。」

その言葉を信じチノとココアはその場を離れ、ラビットハウスに帰っていった。

 

「シャロ、あいつのことをなぜ知っているんだ。」

リゼはシャロにその言葉を投げかけるが、シャロは目の前を見据えながら、

 

「彼のことを不用意に話せば何されるかわかりません。

言えば、私たちは無事では済まないでしょう。」

シャロはリゼの質問に答えなかった。

返した言葉は答えではなく、シャロは口封じをされていて、言えばシャロ自身も危ない

ということを示唆させるものでしかなかった。

 

邪魔をしたいならすればいい。俺はこいつを再起不能にして家でぐっすり眠りたいんだ。

 

「何をする気だ?」

 

見てりゃわかるよ。

そう言って、胸ぐらを無理やり掴んで、体持ち上げ、そのまま首に手をかけた。

リゼの顔が一瞬で動揺を表した。彼がしているのは再起不能なんて生やさしいものではなかった。止めようと足を動かそうとした瞬間、誰かの早い足音と吐息が聞こえた。

 

「もういい、それ以上やれば君も!」

 

その誰かの声を聞いて手を止めた。

それ以上やれば君も、から先の意味が理解できなかった。

目の前にいる男だけが理解しているようだった。

そうだからか、舌打ちをしながらその誰かの方へ向き、問いかけた。

 

もういいのか?君の友達も、君自身もこれ以降のことは望まないか?…本当にここまで?後悔しない?

 

つまり、これを続けるか否か、その選択肢は突然走ってきたその人にあるようだ。そして黒狼もここまでで本当に良いのか、しつこいほど確認している。

 

「ああ、もういい。それ以上やったら、死んでしまう。」

その言葉通り、あともう少し絞められていたら意識を失っていた。

首を絞めていた片手を離し、頭を掻きながらため息をついていた。

 

「死んでほしいわけじゃないなら、ないってそういってくれれば加減したのにさ。…よいしょッ。」

 

「...どういうことだ?」

 

その様子を見て、リゼはこの状況を理解できなかった。

まるで今までの狂気じみた暴行を突然出てきた子と少し話しただけですぐに腕を下ろした。

遊び飽きたおもちゃを投げ捨てるように、つまらなさそうにしながら

力の入らない人形のようになった少年を離した。

 

死んでほしいわけじゃないなら、そういえば手加減した。

おかしい、あまりにも狂気じみている。殺害前提だったかのような言い草だ。

まるで今までその非道を楽しんでいたかのように。

 

「...説明してあげるよ。黒狼っていうは僕が人助け...この場合は復讐の代行になるけど。そんな時に自分の正体を隠すときの格好でさ。」

 

正体を隠してきた。なぜならこれらをその他の人間に見られたくないのもあると

彼のフードの下はそういった。

 

「あの時の質問にも答えてあげよう。あの子…チノって名前でいいんだよね。伝えておいて?顔を見られちゃまずいのは、色んなリスクをなくすためなんだ。」

 

色々なリスクとはいうものの、そのほとんどは相手からの報復で間違いないだろう。

 

「ま、そういうことで。じゃあね。」

 

その男はそういいながら去っていった。

シャロはその後ろ姿を見据えて、こうつぶやいた。

 

_善と悪の境界線...と。




黒狼はという謎の男は、皮肉というべき行動をしています。
誰かが傷つかないようにするために、誰かを傷つける。
結局彼がしていることは、善のふりをして、
暴力という悪をなしているだけです。
しかし、それで人が助かっている。それは彼がなした「人助け」と
言う善であるはずです。
彼は誰かにとっての悪で、誰かにとっての善であろうとしています。

実はみなさん、とっくに正体気づいてるんじゃないんですかね...?

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