何か月ぶりだったか思い出せませんが、
本編の執筆に行き詰ったので、番外編をかきました。
本編の設定はなんとか少しずつでありますが組み立ててはいるので、
もう少し...(いつになるかはわからないですがなるべく早く)待っていただけると...。
CLOCKWORK RABBIT THE Parallel 01
「ここは、どこだ?今はいつだ、ここは...頭が痛い...。」
目が覚めると、そこは路地裏だった。
──こういうのをライトノベルで見たような気がするが、
これが
とりあえず、目覚めたところがラビットハウスの中ですらなく、
壁にもたれるように眠っていたのだから肩も痛くて頭も痛い。
その上、眠る前の数時間分の記憶だけなぜかない。
「...おい。なんなんだよ。ここは、どこだ?」
そうして、目を覚ました深は、なぜか自分の傍にあったリュックサックを背負って、
路地裏を出た。そうして、目の前の景色に目を見張った。
まず、そこには木でできた建物など何一つなかった。
目の前にあるのは数えきれないほどのビルで、地面はコンクリートだった。
ここは木組みの街ではないことをすぐに理解し、困惑した。
自分はなぜこの街にいるのか、そしてこの街の路地裏でなぜ眠っていたのか。
それが全く分からない以上、謎だらけだ。
「木組みの街じゃない、それどころか木組みの家が全くない。都会だ。
...そうだ、日付とか時間とか...スマホはある!よかった。」
とりあえず、今はいつなのかを確認しようと、時間を確認できるものを探した。
腕時計は腕についていない、ズボンのポケットにも何も入っていないとなれば、
リュックサックが最後の希望だ。手を突っ込んで
ガサガサ音を立てながら探し当てたものを掴み、手を引き抜くと
まさにその希望を叶えるがごとく、スマートフォンが入っていた。
電源は入っていて、さらに電池残量も七割近く、
壁紙やパスワードも機種も同じ。どうやら自分が今まで所持していたものとみて
間違いないようだ。これでラビットハウスにいるチノたちにも連絡がつくと思い、
ホッと胸をなでおろし、起動したスマホ画面を確認して、唖然とした。
「...は?いやいや...。そんなはずはない。」
そのスマホは、通信能力を失っており、
スマホのカレンダーウィジェットは2050年の4月を表示していた。
「2050年...だと?」
愕然とした。自分は今まで30年もあんな路地裏でぐっすり眠れていたのだろうか。
よほど疲れていない限りあんなところで眠ろうとは思わないが、
先ほどまで眠っていたのだからそうなんだろう。
路地裏で眠っていたという事実はともかくとして、その間30年近く経っていたというのは
あまりに長すぎる。それほどまで長く眠っていたのなら、それはもう
植物状態になっていたとしか考えられない。
しかし、それならば、自分は病院でしかるべき処置を受けていないとおかしい。
「おかしい、30年、いや、40年ぐらいか...?俺が知っているのは2010年代までだぞ!?
しかもそれなら、俺はもう四十路に近い...でも体は10代のままだ。」
さらにもう一つ、時間が30年も経過しているならば、
この体も30年分老化していないとつじつまが合わない。
しかし、全く、体の衰えによる、体力の低下、老眼などの影響も全く感じられない。
スマホのカメラを鏡代わりに使って、自分の顔を撮り、写真の拡大で顔を確認しても
しわどころか、はりやツヤも変わらない。
残る可能性、最も現実的でない可能性。
そもそもこの状況自体が現実的ではないのだから、何を今更というような話だが、
しかし、それしか残っていない。
──タイプスリップ。
30年以上の時空を移動して、この時間軸に辿り着いたという可能性。
(...タイムスリップか?いやいや、量子力学か?数学か?工学か?
何が発達してこうなった?その理論は?そもそも過去を変えてしまうかもしれないという倫理的問題だって発生するはずだ...。どうして...?)
となれば、自分はこの世界に居場所はない。
戸籍はおそらく存在しない。存在したとして、それは40代後半の自分だ。
どっちにせよ、この世界に「
本来存在しえない存在であることは間違いない。
ではどういう原理でこうなったのかを考えようとしたが、そもそも自分の知る限り、
タイプスリップの原理は判明していない。
その上、原理が判明し、その原理を応用した時空間移動するマシンを開発したとして、
一般家庭で用いることは決してあり得ないだろう。
なぜなら、過去に介入するということは、介入した時点でその過去を大きく変えてしまう
ことになり得る。たった少しのことでも、それが連鎖すれば、大きな変化になる。
いわゆるバタフライ効果だ。
過去改変によって歴史を改変されてはたまったものではない。
使い方によっては国どころか世界が滅ぶ。
だから、よっぽどのことでも起きない限り、人工的なタイムスリップはあり得ない。
(偶発的なタイムスリップ?いや、これはただの夢かもしれない。)
つまり、最終的な着地点は、偶発的に起きたタイムスリップであるいう結論になった。
しかし、こんなことが現実で起こり得るのだろうか。
そう考えるとそもそも現実的ではない。
となるとこの光景が夢であるかもしれない。
(にしては、人が多すぎる。これほど多い人間の顔は
絶対記憶してないぞ...?夢じゃないのか...?)
とも思ったが、夢として表れるものは、その人間が無意識的に記憶しているということを
小耳に挟んだ程度であるが聞いたことがあった。
しかし、ふと周りを見渡した時に、どう考えても多すぎる人の数と、
見たこともない奇妙な格好をした人を見つけたので、
残念ながら夢でないことを確信した。
(とりあえず、辺りを見て回ろう...。)
何もわからないにしろ、ただ立ち止まっているだけでは何も始まらない。
とりあえず、もう一度リュックの中身を確認して、整理しないことには
何が出来るかもわからない。
そう考え、スマホをポケットにしまって
リュックのジッパーを改めて開けると
中には、財布、タブレット端末、デジタルカメラ、
ソーラーパネル付きの携帯充電器、デジタルカメラの充電器、手帳、日記帳があった。
財布には学生証とコンビニのポイントカード、ゲームのIDカード、
銀行口座のICチップのついたカードがちゃんと入っていた。
タブレットには差し込んだSDカードにオフラインでも読める電子書籍が入っている。
デジタルカメラもちゃんと動作して写真も取れて保存できる。
その上、ちゃんとSDカードが入っていて保存できる。
しかもタブレット端末やデジカメに至っても充電は50%以上あるようだ。
ここまで来ると不自然なくらい眠る前の自分は準備がいい。
本当に自分自身が用意したのか疑いたくなるくらいばっちりだ。
こうして、最初にすべき目的が、
この近辺を散策し、ここがこの時代のどういうところなのかを把握し、
新しい下宿先、もしくは宿を見つけることだと理解した。
しかし、宿と言っても、リュックに入っていた財布の中には数万円しかないので
かなり安めのカプセルホテルに泊まることになるだろう。
人を避けながら付近の建物などの写真をデジタルカメラで撮り、
ある程度撮ったら、付近を散策し始め、目ぼしいものがあったらデジタルカメラで撮り、
ある程度撮ったらまた散策し始めるということを繰り返して、
付近の状況を確認しようとしていた。
そんなことをしていると後ろから誰かにぶつかられてしまい、
体勢を崩してこけてしまった。
ぶつかった相手とその隣で歩いていたであろう相手と同年代くらいの少年は、
自分をわざわざ起こしてくれた。
ぶつかられたとはいえ、ちゃんと起こしてくれたのだから、
気前よく許してお礼を言おうと思い、二人の方を見た。
「ああ、もう、前向いて歩かないから、すいません、友達がぶつかっちゃって。」
驚愕した。この街に来て驚いてばかりだ。
今、ぶつかった友人の代わりに申し訳なさそうに謝る、
この少年の顔は今まで一度も忘れたことのない。
それほどまでに脳裏に焼き付いた顔だった
「いや、いいんだ。あっ、だいじょ...」
『自分は大丈夫だけど、君達の方こそ大丈夫か』と聞こうとしたその瞬間、
その顔を見て、絶句した。
「...あっ、ああ...。...どうして、君がここに...?」
その人間は、深にとって恩人で、かけがえのない親友だった。
その親友は、友情のために死んでいった。
青野深の人生にとっての光で影になった少年。
彼を二度変えた少年。一度目は恩人として、そして友人として。
二度目は、失わせてしまった命として。
「...?どうしました?」
「海渡だよな...?久しぶりだな...俺のこと...覚えてるか?」
「誰ですか?」
「...え?覚えてないのか...俺だよ。深だよ、青野深だよ!覚えてないのか...?」
(あ...そうか、あいつはあいつでも...。)
そう、どれだけ、記憶の中の彼と、どこまでも似ていようとも、
深の記憶にある彼とは確実に別人なのだ。
なぜなら、深が知り得た彼はすでに死んでしまったのだから。
その顔を見たときの衝撃のあまり、ここにいるのは
自分の知りえる親友ではないことを失念し、必死に思いだしてもらおうと話しかけていたが、
その途中に察した。
そして彼こそが、この世界がパラレルワールドであるという一つの根拠にもなる存在。
ならば、それはもう確定事項だ。
先ほどまで必死に自分のことを思いださせようとしていたが、
相手がまったくわからないといわんばかりの表情をしていたので
それでいったん冷静になると、この世界が、パラレルワールドであることを改めて実感した。
「青野...深?...おい、深。こいつとお前の名前、一緒だぞ!?」
「同姓、同名...?」
「いや、顔もそっくりだ...うわっ、気持ち悪っ。」
「お前、バカ、人の顔見て気持ち悪いとかいうなよ。」
ぶつかった人間がまさか別の世界の自分自身だったとは。
そしてこの世界でも、二人は友人であること。
時代が違っても、この二人の関係は変わらないのかもしれない。
別の存在としての親友と自分は、「青野 深」という名前に驚いている。
顔をまじまじと見て、鏡で左右反転していない自分を見るのも、
親友と同じ容姿をした別人がいるのも、考えてみれば気持ち悪いものだ。
「だってホントにおんなじ顔してるぜ?写真撮って見せてやるよ。」
「こっち向いてほら!」
そうやって自分の顔を撮ろうとするもう一人の親友。
自分の左隣に駆け寄り、肩を組んで笑顔でカメラにピースサインを向けるもう一人の自分。
突然肩を組まれたことにポカンとしていると、右手で顔でカメラの方に顔を向けさせられる。
フラッシュがたかれることはなかったが、顔写真を撮られたらしい。
...が、写真を撮られたにしては撮ったであろうデバイスが見当たらない。
ふと気づいたが、この二人は変わったものを側頭面に装着しているが
もしかしたら、それがウェアラブルデバイスなのだろうか。
流石、未来のデバイスといったところだ。
撮った直後、空を切るように、人差し指を降ろすように振って、
何かを操作しているように指を動かしている。
すると、隣の自分が似たような動きをし始めた。
「ほら見てみろって。おんなじだろ?」
「...え、ホントだ。どうなってんのこれ。コラージュだろこれ。」
「いや、ホントなんだって。」
「信じられねぇ...おんなじ顔で、おんなじ名前...。」
二人がなぜその会話をしているのかがわからなかった。
今、写真が送信され、それを確認しているのだろうか。
これが新時代のデバイスなのか。
画面のぞき見によるプライバシー情報の閲覧が出来ない。
どうやってその撮った写真を確認しているのかが全く分からない。
「え、おいそれ、『スマホ』ってやつなのか?すげー!これどこで手に入れたんだ?」
自分もその画像を確認したいと思い、赤外線通信かBluetoothでなら送信できるだろうと
考え、とりあえずスマホを取り出してみたところ、
それがまるで珍しい物かのように目を光らせるもう一人の自分。
「...え?これ、二人とも持ってないのか?」
「え、今はもう、製造されてないし...。」
「...そうか、新しいデバイスが普及しているのか...。そりゃそうだよな...
何十年も経てば、そうもなるよな。」
なぜ持っていないのかなんてこの状況で少し考えればわかるものだ。
ウェアラブルであるため、つけていれば置忘れもなく、のぞき見による情報漏洩もない。
さらに、どうやら前を向いたまま操作しているため、歩きながらの操作による危険も少ないだろう。
しかも、ディスプレイを使わないのであれば、その分値段も浮いているのかもしれない。
そう考えると旧世代のスマホをわざわざ製造して売る必要性も買う必要もない。
...当たり前のことだ。古いものは忘れられていくものだから。
「...何十年も経てば?どういうこと?」
「...僕は...いや、いいよ。信じられないだろうし...。」
ふと漏れた言葉の真意を問われ、いざ話そうとしてみたが、同い年くらいの高校生が
『俺は過去からきた。でも、僕は青野深だ。過去の平行世界から俺は来たんだ』
と真実を告げられたとして、「何言ってるんだ君」ぐらいしか返す言葉もないだろう。
そんなことぐらいは察しが付くので言わなかった。信じられないだろうし、
不審な人物と思われ、警察に通報されても困るからだ。
「過去からタイムスリップしてきたとか言われても、信じるよ。」
「なんでわかるの!?」
「やっぱりな、だって、見たところ、僕と年齢変わらないのに、何十年も経ったらって普通に考えたらおかしいじゃん?でも、タイムスリップで過去から来たのなら、その言葉のつじつまが合うし。スマホを持っていることにも説明がつくし。」
「...思ったより、こう、状況把握が早いな...。」
不意を突かれた。声まで出てしまった。
そして驚くことに、この世界の自分は、どうやら、
突飛なことすら簡単に信じてしまうような人物らしい。
そこまでいくと詐欺に引っかからないか心配なくらいだ。
だが、その根拠として挙げられた事柄に明らかな矛盾点がない。
つまるところ、論理的な思考によって自分が自分の言葉を信じている。
自分ではこういうことを、こういう状況で、サラッと柔軟な思考にシフトして
信じることが出来ないだろう。
平行世界の自分ながら恐ろしい。どうやら、
柔軟な思考で頭の回転が速く、それでいて常識の枠に収まらない思考をしている。
「君は、いつの時代から来たの?」
「俺は...2010年代あたり...だったと思う。」
「曖昧すぎない?」
「ごめん、ちゃんと思いだせないんだ。」
さて、『タイムスリップしてきた人間』として話をされるが、
まず、一つの違和感が生じた。
──正確に思いだせない。
思いだそうとすると頭がぼんやりする。
2010~2020年の間であるという事だけはわかる。
ただ、なぜか下一桁、二桁あたりがしっかりと思いだせない。
これもタイプスリップの影響なのだろうか。
しかし、これでは本当にタイムスリップしてきたかどうかすら怪しくなってしまう。
今度こそ不審者として通報されかねない。それを避けるため、必死に思いだそうとしてみるが、結果は変わらなかった。
「頭を強く打ってるのかもしれないな、ティッピーでスキャンするから、ちょっとじっとして。」
そういって、背負っていたバッグの中から丸い物を取り出す親友。
そして、取り出してからそれを『ティッピー』と呼称した。
「ティッピー!?...え。それがティッピーって...いや、なんで浮いて...え。どうやって浮いて...え?」
その名前を『ラビットハウスにいるアンゴラ兎の名称』として記憶していたので
ますます混乱した。つやつやした白い球体であること以外はティッピーに似ていた。
浮遊している新時代のデバイス。これがこの世界の最新デバイスなのだろうか
「目立った外傷がないし...。頭は打ってないようだけど。」
「待ってくれ、なんだそれは。」
スキャンしたと言っているが、どうやってスキャンしたんだとか、
そういうことも含めて。今、目の前にあるティッピーという機械は、
どうやって浮いているのか全く分からない。
そもそも、最新のデバイスだと推測したが、人体をスキャンできるようなデバイスを
個人が所持しているのが驚きだ。
3Dモデルデータを作成するようなものだろうと、人体内部を検査するようなものだろうと
個人が所有できる、もしくは所有していい代物でないことを知っている。
「何って、これ、ティッピーだろ。今は基本的にみんな持ってる...。ああ、そうか。」
「なるほど、まだティッピーが開発段階だったころから来て...ないか。」
開発段階どころか、作る段階すら至らない時代に生きている。
自分自身はそれを把握し、彼らをそれを察した。
「いや、俺が知ってるティッピーはアンゴラ兎なんだけど。」
「ああ、これ確か、アンゴラ兎がモチーフなんだっけ。」
ティッピーにそっくりだと思っていたら、モチーフがアンゴラ兎だという。
なぜよりにもよってアンゴラ兎にしたのかデザイン担当やらなんやらに問いたくなるが、
それはそれとしてもっと重要なのは、
「いや、待って、それは置いておくとしてだな。」
「なんで浮いてるの。明らかに重力に反してるし、浮くための機構が見当たらないんだけど。」
どうやって浮いているのかが全く分からない。
風の力で浮かすにしろ、磁力で浮かすにしろ、かなりの動力が必要。
しかし、そのモーター駆動音が全く聞こえず、さらに、その機構すら見当たらない。
これは明らかに重力に反している。
「あー、そっか、反重力技術もないんだっけ。」
「は、反重力技術...!?」
「すげぇ驚いてるな...。これは本当に過去から来てるらしい。」
反重力。サイエンスフィクション物の作品において、よく取り上げられるもの。
物理学的には不可能と考えられてきたもの。
しかし、この世界では開発に成功し、よもや、個人に普及できるものとなっているとは。
──自らが生きているあの世界でも、いつか開発されるのだろうか。
そう思わずにはいられない。そしてそれに驚かずにはいられない。
目の前の自分が当たり前のように技術が、自分がいた世界では、未だ空想の範囲だと
いったら驚かれるのだろうか。
親友はそんな深を見て、本当に過去から来ていることを実感したようだ。
そもそもこの世界側の自分が理解するのが早すぎるので、この時点で納得するのが...
一般的というのだろうか。この状況自体が異常なのだから、
これに対する理解も、異常というべきなのかもしれない。
「技術的ブレークスルーが...ここまで...。」
どうやら、自分が想定している以上の技術発展と、普及がなされている。
ちなみ『技術的ブレークスルー』とは科学技術などの急激な発展を指す言葉である。
「一応、かいつまんで説明しておこうか?」
「ああ、頼むよ。」
「ティッピーは、浮遊自律型コンピュータなんだ。カスタマイズとかも可能だけど、
改造とかは仕方によっては違法になってしまうんだ。」
──────────────────────────────────────────
──数分後────
「法整備がしっかりされているのは安心できるな。」
説明をを聞くと、大体のところは、意外なことに割とPCみたいな感覚らしい。
ただ、悪意ある改造を制限する法律も整っているあたり、かなり悪用されると危険なことには変わりないようだ。そこあたりの法整備はかなり早い段階でされたらしく、
その政府の本気度がうかがえる。
さて、二人がどこかへ向かうことになっていたこともあり、
一緒に歩きながら説明を受けていたが、そもそも彼らはどこに向かっているのか。
「あれ、そうだ、話しながら歩いてるけど、二人はどこで歩いてるんだ。」
「ココアさんっていうクラスメイトの家にラボがあるんだ。」
「コッ、ココア!?え、ココアって、あのココアか!?」
「え、知ってるの!?」
いざ聞いてみると、思いがけない話をされたので
とりあえず、聞いた言葉を整理しようと、とりあえず目をつむる。
そして整理するとこうだ。
・ココアはこの付近に住んでいる。
・とりあえず、この世界の自分は少なくともココアを呼捨てにしていない。
・ココアはラボと呼ばれるような大掛かりなものを所有している。
・クラスメイトという言葉から、どうやら高校生にしてそれを所有している。
もう訳が分からない。
この世界におけるココアは、自分以上の設備、技術を保有していて、少なくとも
自分が慕うほどの存在になっていて、そこに訪れようと思うほど魅力的な施設らしい。
それを高校生にして所有している。
ちょっとばかり驚きすぎてどうにかなりそうになっていた。
「知ってるも何も、一緒に住んでたぞ!?...ああ、すまんあっちでな。」
向こうでは一緒のところで下宿していて、自分がプログラミングやら
アルゴリズムやら勉強しているものが分からないようだったので、
想像がつかない。それを伝えてみるとポカンとしていた。
同じ表情をしたいところだが、こちらもそうしてしまうと
もう話が進まないのでそういうわけにもいかない。
「一緒に行く?」
「え、ああ、そうだな...ほかに行く当てもないし。連れて行ってくれ。」
「わかった。...もしもし、ココアさん、ラボに、もう一人連れってっていい?」
今度はティッピーで自分が電話を始めた。
もうどんな機能があっても驚かないことを決意した。
どうやら連れて行ってくれるようなので安心した。
行く当てもなく、どこに行けばいいのかすらわからない中、
数分の間、足を休められて、かつ、情報を集められるのは助かる。
まさか自分が自分に助けられるとは。
その提案をしてくれた自分には感謝しかない。
電話からは楽しそうなココアの声が聞こえる。
どうやら「全然おっけー」らしい。やっぱりその明るい性格自体は変わっていないらしい。
そして、そこに向かうこと20分。とあるベーカリーについた。
保登ベーカリー。名前だけ見ると懐かしいものだが、景観はかなり違う。
都会にあるパン屋のイメージぴったりだ。
お店の前で待ってくれていたらしく、その姿は自分の知っているココアの服装ではなかったが
その顔つきや手を振りながら迎えるその笑顔は見慣れたものと同じだった。
「来たよー!ココアさーん。」
この世界側のココアを知っている自分が手を振り返す。
自分が純粋な笑顔をココアに向けているのは気恥ずかしいし、かなりの違和感を感じる。
どうやら、
「いらっしゃーい!入っていいよー!えーと、もう一人の子は...
あれ。ちょっと待っててね。目薬入れてくる。」
明るく迎えてくれていたココアが急に目を細め、
目薬をいれてくる、とベーカリーの中に戻っていってしまった。
一分も経たないうちに戻ってきたが、また目を細め、
今度は目をこする。
「あれ、ちょっと待ってね...おかしいなぁ...。」
「どうしたんですかココアさん。」
『どうしたんですか』とすっとぼけているかのような反応を返す自分を見る。
あれだけ簡単にもう一人の自分の存在を受け入れておいて、今度はなぜわからない。
今のこの状況がおかしいんだぞと言いたくなる。
ココアの目がおかしいのではない。今こうして、『青野深が二人いる』のがおかしいのだと。
「深君が二人いるように見えるんだよ。」
「ん、ああ、正常ですよ。」
何が『ああ、正常ですよ。』だ。
余計に混乱させる気でいるのかと思うくらいだ。
ふざけているのかと思い、お仕置きとして右手で頭頂部にチョップする。
しかし、チョップされたあとの『なんでそうされたのかわからない』
という顔を見るとどうやら天然らしい。
「そうなんだ!よかった!...いや待って!?」
「じゃあなんで深君が二人いるの!?」
ココアは自身の目が正常なことに安心しながら、今度は
『なんで同じ人間が二人もいるんだ』と至極当然の質問をした。
...これどっちがどっちかわからなくなりそうだな...。
もしわからなければコメントください。
これに関しては色分けしたほうがいいかもしれません。
なるべくわかりやすい色分けします。
...え?本編全然進まないくせにこっちも続けていいのかって_?
実はこっちのほうが意外と書きやすくてですね...。
もしかしたら交互に書くかもしれないです。
...え?「深の親友」って本編で言及してたかって?
...いや、まぁ、どこかでしたはずです(あんまり覚えてない)←コラッ