「ちょっと待て、それをこっちに向けるなよ...。
まず誰なのか説明を求むよ。会って早々銃向けないで?」
「お前こそ誰だ!怪しいやつめ!」
打開策の思案中、モデルガンを向けられた。
この状況で明らかに怪しいのはどっちか。
下着姿のまま、銃を向ける女性と、それに対し怯えもせず、
向き合う男性の二人がいる
どちらもおかしいのだが。どちらがより怪しいかと聞かれれば
女性の方である。
(...こんなことしたくないけど仕方ないか...。)
疲れたような顔をしながら、ゆっくりと深呼吸する。
それが彼の
その直後、口調が変わる、不敵な笑みを浮かべて。
これは所詮、かつての彼の猿真似でしかないが、
それでも彼にとっては最善の、勝負の前のルーティン。
「──撃ってみろよ、お前に、俺を撃てるなら」
ゆっくり近づき、そのまま左手で首を掴み、
右手で銃を掴み、その銃口を自分の心臓の位置に当てる。
「なっ...脅しが全く聞いてない...!?」
効かないに決まっている、モデルガンで人を撃ち殺せるわけがなく、
そもそも撃つための機構がそもそも存在しないのだから。
──これ以上なにか害をもたらそうというのなら、処分しよう。
「あわわ...チノちゃーん!!」
後ろで大きな声がして、後ろを振り向いた。
閉めたはずの更衣室の入り口が開いている。
声はどうやら、先ほど、
コーヒー利きを全て間違えたポンコツの女の子の声だ。
ドアを開けて早々、こんな物騒な光景を見たら、
悲鳴を上げて逃げ出したくもなるだろう。
厄介なことに、やりとりの一部始終が見られていたようだ。
チノを呼んでどうこうできる状態でもなさそうだが、
仕方がないが、できるだけの弁明をしようと、諦観した。
「どうしたんですか...!って...リゼさん何やってるんですか。」
チノさんは
この、初対面の人間に当たり前に銃を向ける女の事を知っているようだ。
──よかった、この女、チノさんが知っている人だ。
「チノ!こいつ誰だ?」
「深さんです、新しい仕事仲間ですよ。
ていうか下着姿で何やってるんですか...?」
警戒心が漏れているような声を出して、扉から呆れたように見つめる
チノに聞く。
この、リゼという人には何も伝えていなかったのだろうか。
それはそれで伝えておいてほしかったのだが。
今にも、やれやれ、と村上...ナントカさん
が小説に書く主人公のようにそう言いたげな表情で
ちゃんとこの状況にメスを入れてくれた。
「え?下着すがt...ああああ!!」
いや、なぜ今の今まで忘れていたんだ、と言いたくなったが、
今言ってしまうと、理不尽な目に遭わされそうな予感がしたのでやめた。
実際、ここまでの行動力があればやりかねないだろうという推測でしかないが。
「なんで平然としてるんだよ!」
なぜか怒られた。平然としていたというか、理解が追い付かなかったというべきか。この状況で慌てない人など、ほとんどいないだろう。
こういう場面に慣れている人がいれば、それはそれで人生経験豊富だといえよう。
とりあえず、一つだけ言っていいなら、まずは服を着ろ、としか言いようがない。服をさっさと来てもらうためにも、銃と首から手を放す。
「うう...。見られてしまった...。」
ここまで、さも今までたくさんドンパチやってきた軍人かのように振舞っておいて、乙女らしいところを出されても、反応に困る。
後から恥ずかしがるくらいなら、服を着てから
かかってきてほしかった。いや、かかってこられても困るが。
「とりあえず、リゼさん、深さん、ココアさんの順に着替えて下降りてきてください。」
ところで、なぜ、こんなわけのわからないトラブルに対してもこれほど冷静に対処してくれるのだろう。かなり問題処理能力が高い少女だ。
不思議と心強さを感じる。しっかりした女の子だ。胃が痛くならないだろうか。これから胃に穴が開かないことを祈ってやるしかないだろう。
この騒動の後、ようやく本来の目的を思いだし。制服に着替えた
この制服は、ここのマスターの制服の予備だったらしい。
といっても、サイズが違うので、多分、予備のつもりで作っておいたのだろう。服のサイズを間違えていて予備にすらなっていないように見える。
下手をすれば、この制服に着替えることは数えるほどしかないかもしれない。それだけは、絶対に避けなければならない。
一枚の写真を見返してから、チノの下へ向かう。
「着替え終わりましたね、コーヒー豆を運びます。ついてきてください」
初仕事。コーヒー豆を倉庫から運び出すらしい。
なるほど、力仕事であれば男の領分、ということなのだろうか。
コーヒーの淹れかたや、器具についての説明を受けるつもりでいたのだが、基礎の基礎から教えてくれるという事だろう。
「ねぇ。私ココアって言うの!保登 ココア。これからよろしく!」
と話しかけられた。
「...俺は深。青野 深です、これからよろしく。」
と軽く自己紹介した。
そんな話をしていると様々なコーヒー豆が入っているであろう麻袋がいくつも並んでいる倉庫に入った。
チノから指示を受け、とりあえず一つ持ちあげようとしてみる。
思ったより重い、意外と、腰に負担がかかりそうだ。
別に腰が悪いわけではないが、それほど重い。
きっと、そのうち、この重さにも慣れるだろう。
「保登さん、体、持ち上がってないんですけど、大丈夫ですか。」
「そうだね...『普通』の女の子にはきついよ...。」
とココアが言うと、
「そうだな!『普通』の女の子にはきついよな」
と袋を慌てて降ろしたリゼさんが言う。
今、自分の目に一切の間違いがなければ、ココアの三倍は持っていた。
ココアの言葉を聞いて慌てて降ろさなくとも、自分がいるので、
もう誤魔化しようのないことすら気づいていない。
(普通...か。)
普通、かつて、自分もそうだったのだろうか。
その道から外れた今となってはただの過去でしかないが。
今度はコービーを入れる練習やラテアートの練習に入る。
どうやら俺はリゼさんに教えて頂くことになった。
「よ、よろしく。」
「あの、さっきはすみませんでした。
突然首掴んだりしてしまって、その...。」
さっきの謝罪をした。
流石にこれから働く先輩とギクシャクするのは避けたい。
「こっちこそすまなかった。
急にモデルガンとは言えど銃を向けてしまった。」
この様子だとリゼさんも謝りたかったらしい。
「これからよろしくお願いします。」
「ああ、よろしく」
右手で握手を交わし、和解したあと、ラテアートを教えてもらった。
やっとメイン三人揃った...
意外と難しいのな...二次創作もの...。
08/18 09/14 一部書き直し。
以降の更新は九月の活動報告にのせる予定です。
2020/03月末、少しずつ、微妙に書き直していっています。