ロボット、それは現代に存在する工作用や実験的に作り出されたそれとは異なり、少年の夢を此れでもかと内包した浪漫の呼称である。空を飛び、ビームを放ち、駆動音を響かせて地を駆けるそれを少年達は熱狂的に支持し、テレビの前に釘付けとなった。時代が変わってもそれは同じ、扱う問題が異なるだけで人より大きい人工的な人型機械がビルを背に敵と戦う作品は衰えることなく未だなお出続けている。世代を超え、時代を超えても愛され続ける男の浪漫、それがロボットなのだ。


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ちょっとしたロボット熱にうかされて書きました。


単眼信者

 

 結晶騎士(シルエット・ナイト)の技術が100年ごとに更新され、地道な進化を遂げてきたこのフレメヴィーラ王国において数日前より機械工廠に出入りし始めたこの男は、はっきり言って異常以外の何物でもなかった。自分の顔をファッションだと言う顔の上半分を覆う仮面で隠した奇妙な金髪の男は、配属されたその日に自分のシルエットナイトを赤く塗り替えてしまったのだ。

 

その奇行はそれだけに留まらない。メンテナンスと称して工廠の親方を説得し、シルエットナイトの外装を変え最後には内部の一部機構まで彼によって組み替えられてしまったのだ。双眼の騎士風だったシルエットナイトの姿は今は無く、桃色に発光する単眼に流線型の丸みを帯びたボディ、左肩に備え付けられたスパイクに、頭部と腰部、足関節に伸びる太く長いパイプはまるで単眼の魔物であるサイクロプスを彷彿とさせた。

 

「うむ、矢張りロボット言えばこれだ……重厚感あふれるボディ、これこそがシルエットナイトの至高!」

 

無駄に低く渋い声を放ちながら仮面の男は、満足げに自身のカスタムしたシルエットナイトを見つめる。彼の開発した『チューブパイプ機構』それはシルエットナイトが本来持つ魔力循環パイプをボディ外に押し出した異例の者だった。ボディ内部の余分な緩衝が減ったため関節などの駆動が飛躍的上昇するという効果はみられたが、人間で言うならば血管という弱点をそのまま露出してしまうため実践は不向きかと思われた。

 

だが彼はそこで諦めなかった。『試作03』と名付けたそれを更に改造して生み出したのが『試作04』とされる、弱点の露出をそのままに駆動域を限界まで広げた機体だった。弱点が気にならないほどの運動能力は、既存のシルエットナイトにも対抗できる性能を持ち、かつ電力などの別のエネルギーである程度可動するため、魔力消費が少なくて済むという画期的なものだった。

 

しかし彼はまだそこからさきを目指していた。まるで目指すべき先があらかじめ分かっているかのように。彼は単眼のシルエットナイトを試行錯誤を加えながら生み出し続けたのだ。その結果がこのサイクロプス型シルエットナイトなのだ。

 

「団長……毎度毎度思っていましたがこれは本当にシルエットナイトなのでしょうか?」

「ロボットの可能性は無限!!ロボットに明確な基準なんてないんだ!!例え全長930億光年だろうと、129.3㎝だろうと私たちが情熱を注ぎ込む限り、二足歩行機械はロボットとなる!!シルエットナイトもしかりだ!」

 

貴方と合体したい!!俺を誰だと思っていやがる!!だのと連呼し始めた仮面の男をよそに、傍に控えていた部下は一歩引いた目線でため息をついた。

 

「団長、ロボットと言うのは良くわかりませんが、これがシルエットナイトではないことは私でもわかります。だってこれ明らかに魔物っぽいじゃないですか」

「だからなんだ?魔物を似せたシルエットナイトがあって何故おかしい。そもそもロボットが人型でなくてはならないという道理はない。そういう固定概念にしばられていては良いものを作り出せない、時には突飛な発想で挑んでみるのも大切だ。もちろん失敗は付きまとうが、その分成功した時の喜びは大きい。もっとも私の発想は過去の偉人たちが作り出してきたものの模倣にすぎないけれどね」

「はぁ……また団長の妄想ですか。まぁそうやって頭の中に設計図があるのも凄いですけどね。正直尊敬はしますけどああなろうとは思えませんよ」

「それもまた一興さ、お互い別の道に進むというのもね」

そいって仮面のとこは話を区切り、また新しくひらめいたのか白紙の紙に設計図を起こし始める。

 

『合体』『変形』『融合』『装備』『射出』『進化』ロボットの可能性は無限。其処に発想があるだけロボットは産まれ続けていく。これは単眼の機体を愛した史上最高にして最強の指導者の誕生秘話である。



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