オラリオに暴獣が来るのは間違っているだろうか 作:チミチャンガ
ちなみにまだ闘わないよ(о´∀`о)
店のドアが開き、一組の団体客が入店してくると同時にその団体客を見た店内の冒険者たちがざわめいた。
「おい....アレ」
「おぉ!中々の上玉じゃねぇか」
「バカっ....よく見ろよ!あのエンブレム」
「おいおいロキファミリアじゃんか」
「じゃあ、あいつが噂の名高い"剣姫"か?」
冒険者たちの騒ぎようで食事や酒に夢中になっていた次郎とベルも、団体客の方へ視線を向ける。
「ジ、ジロウさん....あれロキファミリアですよ!」
「ん? なんじゃベル君。知っとんのかい?」
「ジロウさん知らないんですか!? このオラリオでは凄い有名なんですよ!....凄い!本物だ」
周りの冒険者が騒ぎ、ベルが興奮するのも無理はない。
それほどに入店してきた団体はこのオラリオで有名なのだ。
ロキファミリア
女神ロキが主神の探索系ファミリアで、道化師のエンブレムが特徴的。
オラリオでは数少ないレベル5や6など、高レベルの冒険者が数多く在籍するこのオラリオでは最強のファミリアの一角である
「ロキファミリアの皆さんはお得意様なんです。主神のロキ様にうちの店がえらく気に入られてしまって」
ロキファミリアに注目していた次郎とベルにシルがそう告げる。
「ほー、有名なところのファミリアが気に入るなんてやっぱりこの店は凄いのう.......ん?...あの子は...」
次郎は改めて豊穣の女主人が人気な酒場なんだなと思うがそんな時、ロキファミリアの中に見覚えがある少女を見つける。
「よっしゃあ!みんなダンジョン遠征ご苦労さん。 今夜は宴や、飲めぇ!!」
テーブルについたロキファミリアは主神の声と共に宴会を始めた。
「あ、あの!アイズさん。お隣よろしいですか?」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます!」
エルフであるレフィーヤ・ウィリディスがアイズに恐る恐る聞き、了承の返事が返ってくると嬉しそうな笑顔で隣の席へと座る。
「団長、おつぎします」
「ありがとうティオネ。 でもさっきから尋常じゃないほど酒を飲まされているんだけど、酔った僕をどうするつもりだい?」
「ふふっ お気になさらず。さぁどうぞ♪」
「ほんとにブレねぇな、この女.....」
きわどい格好をしているアマゾネスのティオネ・ヒリュテが、小人族でありロキファミリア団長のフィン・ディムナに酒を執拗に勧める様子を狼の耳や尻尾が特徴の狼人、ベート・ローガが呆れるように言う。
「よーし!ガレス、うちと飲み比べで勝負や!」
「いいじゃろう、負けんぞ!」
「...全くお前たち、いくら宴会とはいえ仮にも主神と幹部なんだからそんなバカみたいにはしゃぐんじゃない」
「せっかくの宴なんやからそんな固いこと言わんでもええやんママ!」
「誰がママだ」
こちらでは主神のロキがドワーフであるガレス・ランドロックと飲み比べの勝負を申し込み、まさしくママという言葉が似合いそうなハイエルフのリヴェリア・リヨス・アールヴが二人を注意していた。
飲んだり食べたりそれぞれが楽しんで暫くした頃、ふとアイズに質問が投げ掛けられる。
「ねぇねぇ!そういえばさアイズ」
「なに?ティオナ」
「あの話ってホントなの? レベル1の冒険者がミノタウロスを倒したって話!」
ティオネと同じアマゾネスであり、双子の妹であるティオナ・ヒリュテが遠征帰りにアイズが会ったというミノタウロスを倒した冒険者のことを聞いた。
そして内容を聞いた他のメンバーも、興味深そうにアイズにその時の話を聞いた。
「あぁ、そう言えば言っていたね。アイズ、その冒険者は本当に自分のレベルを1と言ったのかい?」
「うん、言ってた...まだ自分はレベル1だって」
「でも無理じゃない? レベル2以上ならともかく1なのにミノタウロスを倒すなんて。 ねぇ?レフィーヤ」
アイズの発言に対し、いくらなんでもあり得ないとティオネは言う。
「え!?....そ、そうですね!....ごめんなさいアイズさん。私も流石にそれはないかと思います..」
「むぅ....ホントのことなのに...」
「こらこら、ティオネもレフィーヤも確証も無いのにそんな簡単に断言しちゃいけないよ?」
「はい、団長!!」
「す、すみません!」
顔を膨らますアイズのフォローを入れるフィンの一言で、ティオネは一瞬で意見を変えレフィーヤはアイズに謝った。
「しかし、アイズの会ったというその冒険者....名前や所属ファミリアは分かるかい?」
「ファミリアは聞かなかったけど、名前は確か.....ジロウって言ってた」
「ジロウか....聞いたことない名前だね。 リヴェリアやガレスは知ってるかい?」
「いや、ワシも聞いたことないのう」
「私もだ。少なくともレベル1でミノタウロスを倒せる者など今まで聞いたことないしな」
「そうだね。 ロキ...きみはどう思う?」
フィンは、もしかしたら主神であるロキならば事の詳細を知ってるんじゃないかと問う。
「いんや、ウチも知らんわ。 そないな奴がファミリアに入ったらすぐ知れ渡っとるだろうしな......でもアイズたんは別に嘘はついてへんよ」
「そうか.....ちなみにアイズ。 そのジロウという人はどうやってミノタウロスを倒しんだい?」
ロキの言葉でアイズの言うことが真実かもしれないと思ったフィンは、謎の人物であるジロウがどんな方法で倒したのか気になった。
「ええと......こうって言ってた」
アイズは、ダンジョン内で次郎がしてみせた様に空中を指で弾いた。
それを見たロキファミリアの面々は、
「えっ...マジ?」
「うそでしょ...デコピンって....」
「ホ、ホントにレベル1なんですか、その人...」
「そりゃ、凄いのう...」
「もしかしたら魔法の可能性もあるが、レベル1が詠唱もなしにミノタウロスを瞬殺できる魔法など聞いたことがない...」
一様に信じられないという様子であった。当然である。
アイズの言うことを疑いたくはないが、レベル1の冒険者がする所業にしては流石に無理なんじゃないかと皆が言う。
「なるほど.....その話が全て本当なら是非ともジロウという人物に会ってみたいものだね」
フィンだけはアイズが会ったというジロウに興味を持ち、その人物像を知りたいと思ったがそんな時。
「くだらねぇ!!」
さっきから黙って酒を飲んでいたベートがエールを机に叩きつけ叫んだ。
「そんなのありえねえだろうが! ましてやレベル1だぞ?そんな雑魚にミノタウロスを倒せる訳がねぇ!」
「ベートの信じられない気持ちも分かるけどな、アイズたんは別に嘘はついてないで?」
「んなもん、バカみてぇに震えてる雑魚冒険者をアイズが見間違えたんだろうよ!なぁそうだろアイズ?」
ベートにそう言われたアイズは微かな怒りを覚える。
確かに自分はミノタウロスをレベル1でありながら倒す冒険者を見た。何より彼は、初対面の自分に色々と教えてくれて優しかった。 それを侮辱されてさしものアイズも口調が強くなる。
「見間違いなんかじゃありません....本当に見たんです」
「じゃあ連れてきてくれよ、その冒険者をよぉ!」
「ベート....いくらなんでも酔いすぎだろう...」
「いや~ 多分アイズたんが見ず知らずの男に興味持っとるからイラついてんちゃう?」
普段ならばアイズにここまで強い口調で言わないベートだが元々の性格もあり、そこに酒も回って挙げ句の果てには自身の想い人であるアイズがどこの馬の骨かも分からない相手のことを話してるため、強く当たってしまう様子だ。
まあ、いわゆるヤキモチである。
「それは........あ」
「ん?どうしたアイズたん」
ベートの言葉に言い返そうとして顔をしかめていたアイズだったが、突如なにかを見つけたように声をもらした。
「いた....あの人」
「あぁ?」
「え、どれどれ?」
「もしかしてあのカウンターに座ってる男性かい?」
「うん....間違いない。 ミノタウロスを倒した人」
「ほぅ、あの者が...」
カウンター席にて、こちらを見る件の人物。ジロウと目が合った。
「ジロウさん....ロキファミリアの人たち、こっち見てません?」
ベルは、なぜ自分たちがロキファミリアから見られているのか分からずもしかしたら何かやらかしたんじゃないかと青ざめる。
「...分からんが目が合っちまった以上、無視する訳にもいかんし挨拶にいくとするか.......ちょっとした知り合いもおることだしのう...」
「え!?...ちょっ、ちょっとジロウさん!」
席を立ち、ロキファミリアのところへ向かった次郎をベルも慌てて追いかけた。
次回タイトル
「アイズとの再会」