オラリオに暴獣が来るのは間違っているだろうか 作:チミチャンガ
待たせたな(cv.大塚明夫)
スミマセン冗談です
熱中症でぶっ倒れまして入院してました( ;∀;)
暑さヤバイですね、復帰しても仕事するのが辛いですよホント
意外と駄文が多いわたしの作品を待ってくれている方々のためにも頑張ってまた更新していきたいと思います
次郎からの攻撃(当たってはいない)を受けたベートは暫く動くことができないでいた。
状態異常になった訳でもなく、かといって気絶させられた訳でもない。寧ろ意識はハッキリしている。
だが動くことができなかった....もし少しでも動けば死ぬ。
そうイメージしてしまうほどの殺気、そう錯覚してしまうほどの恐怖が自分の首もとに添えられた手に込められていた。
「どうだいベートくん。まだやるかい?」
手をおさめた次郎は優しく、ベートに勝負続行するのかどうかを問うた。
「.........っ!」
「まだ、やるのかね?」
「いや.....参った。 俺の、負けだ」
そう呟いたベートは極度の緊張から解放されたのか、その場にガクッと膝をついた。
次郎からすれば少し脅かす感じでやったつもりなのだがベートには結構堪えたらしい。
(あらら、ちょっちやりすぎたか? 手加減するって案外難しいもんじゃなぁ)
次郎が反省しているとき、ギャラリーの面々は激しく騒いでいた。
「嘘....ベートが負けた...」
「しかも聞き間違いじゃなければ参ったって言ったわよね? あのベートが」
ティオナとティオネはベートが負けた事実と、本人が自ら負けを認めたことに驚いていた。
それもそのはず。ベートは決して弱音を吐かず、同時に例え相手が誰であろうと自分から"参った"と言うような人物ではない。 にも関わらず、その言葉を吐いたベートを信じられないというように見ていた。
レフィーヤもまた、これでもかというくらい目を見開きレベル1がレベル5に勝ったという有り得ない状況に頭を混乱させた。
「アイズ....ジロウの動きが見えたかい?」
「...ベートさんの攻撃が当たりそうになる直前までジロウはその場から動いてなかった。 でも....そのあとにベートさんのうしろにどうやって移動したかが全然見えなかった。」
「あぁそうだね...僕もだよ。ベートの動きは酔っていたのもあったけど相当な速さだった。 だが彼はそれを
上回るスピードでベートの背後をとった。
しかもあれを軽くやったように見ると恐らく....」
「....本気で動いたら私たちでも追いきれないほど早いという事か...」
「そういうことだろうね....とんでもないよホント」
「まさかあんな男がこの世におったとは....世界は広いのう」
フィンとアイズは次郎の第一級冒険者を軽く超える動きに驚嘆し、リヴェリアやガレスも改めて目の前の男が自分達が出会ってきたどんなモンスターよりも異常な存在だと再認識した。
「それだけやない....フィンたちも聞いたやろ?ベートが今言ったこと」
「まさかベートが自分から負けを認めるとはね....今までの彼からしたらとても口から出てくるような言葉とは思えなかったよ」
「あぁ、それにベートの首もとにジロウが何かしたように見えたが....」
「角度的に判りづらかったけど恐らくは手刀だね。痛がるような素振りをベートが見せてないところを見る限り、寸止めしてくれたようだけど」
「つまりベートはそんだけであんな死にそうな表情して立ってられなくなる状態にされて、普段だったら絶対言わないようなことまで言ったっちゅうことやな。 ハハ...規格外すぎて笑えてくるわ....」
ロキは、子供遊び程度の行為でベートがあんな状態にされた現実に引きつった笑みを浮かべた。
(私も闘いたい....)
「おいおい、マジかよ!『凶狼』に勝ちやがった!」
「どうなってんだ? だってあいつレベル1だろ?」
「なんかの魔法かスキルじゃねぇのか? 首になんかしてたっぽいし」
「いや、でもレベル1がレベル5を倒せる魔法やスキルなんて聞いたことねぇよ....」
ベートの圧勝を確信していた冒険者たちは、自分達の予想と大きく外れた結果になり騒いでいた。
魔法やスキルの類いによるものかと言い始める者もいたが、本当にそうなのかもわかるわけがなく多少の疑問を残したもののもう一度飲み直すため、店の中へと戻っていく。
実際は、ただの首トン(触れてはいない)なのだが。
そして試合結果を店内で見ていた者たちは、
「アッハッハ!やっぱりあの子が勝ったかい! まあ大方予想はしていたけどまさか相手に傷を負わせることなく勝つなんてねぇ....あんな子は今まで生きてきて初めてだよ」
(....動きが全く見えなかった。彼はまだ冒険者になって日は浅い筈。 とてもじゃないがレベル1の動きではない。それにもしあれが本気では無いのだとしたら本当の実力はどれ程なのだろうか....一体彼は)
相手を傷つけることなく勝利するという次郎の業に、ミアは店内に響く大声で笑い、リューは自分より遥か格上の相手を下した次郎という男を、多少の警戒を含んだ目で見つめた。
「凄い!凄いですよベルさん! ジロウさん勝ちましたよ!
ねぇベルさん?.....ベルさん?」
「.......」
「あの~ベルさん?」
周りの者と同じく次郎の勝利に嬉しそうにはしゃいでいたシルだが、ベルの方を見ると普通なら同じファミリアの仲間が勝ったというのに黙って二人の様子を見ているためシルは不思議がった。
(...ジロウさん、やっぱり凄い! 何をしたのかあんまり分からなかったけど本当にロキファミリアの人に勝っちゃった.....いつか僕も...僕も強くなっていつかジロウさんみたいに...)
信じてたとはいえ、実際はベルも多少心配していた。だが次郎はベルの期待を裏切ることなく勝負に勝った。
その結果を見てベルは次郎への尊敬をより一層強くし、ぎゅっと拳を握りしめ強くなることを誓うのであった。
一方、事を終えた次郎も周りの様子を見てそろそろお勘定でもして帰ろうとも思ったが、その前にまず目の前で膝をついたまま動かない狼少年をなんとかするべきだと頭を掻きながら考えた。
(ふむ...どうしたもんか。元々始めたのはワシじゃしこのままほっとくのはダメかのう)
もう酔いも覚めたであろうベートへと次郎は大人として自分が始めた以上、責任を持つべきだと思い話しかける。
「あ~...ベートくん大丈夫かい? 自分なりにケガさせんようやったつもりなんじゃがもしどっかケガしてたら手当てせんと「なんでだ」...ん?」
それまで黙ってたベートは少しよろめきながらも立ち上がり、先程まで酔ってバカにしていたときとは違う真剣な目を次郎へと向けた。
ロキファミリアの面々が見たところ無事なベートに安堵の表情を浮かべる。
「なにがじゃ?」
「どうして....どうしてテメェはそんなに強え? 何をしたらそんなに強くなれる」
「どした。唐突に」
「...テメェはレベル1だ。だから負けるなんてあり得ねぇ....俺は最初そう思ってた。だが結果はこのザマだ」
ベートは怒っていた。次郎に対してではない。
レベル1の男の実力を見抜けず、雑魚だと疑わず向かっていき子供扱いされて負けた自分自身にだ。
ミノタウロスを倒したなんて話を信じなかった。仮に真実だとしてもレベル5である強者の自分が負けるなんて思いもしなかった。
だからこそベートは知りたかった。駆け出し冒険者が圧倒的強者である筈の自分を、圧倒的力で負かした。
どうしたらそんな風にレベルの差を覆す強さが得られるのか。
「教えろ....テメェはレベル1でどうやったらそんなに強くなったんだ」
「...お主、アイズくんみたいなこと言うのう」
次郎が口にした言葉に自分の名前が出たアイズやロキファミリアは反応した。
「アイズ、彼から何か聞いたのかい?」
「うん。ミノタウロスを倒した時に...どうやったら強くなれるかって」
「それで、ジロウはなんて答えたんや?」
「それは...」
アイズはあの時言われた事を思い出しながら次郎を見る。
「...これはアイズくんにも言ったんじゃがの。
ワシは強くなろうとして強くなった訳じゃないんじゃよ」
「....? どういうことだよ」
「強くならんくちゃ生きていけんような世界...ワシはそういうとこで育った。だから今の強さがある。」
「強くならなきゃ生きていけないような....」
ベートはそれを聞き俯いてその言葉を復唱した。
レベル1であんな化け物みたいな強さを手に入れるなど、どんな環境で育ったんだとツッコミたいフィンたちであったが口には出さない。
「じゃが、ワシの強さは正しい強さではない」
そう言った次郎は一度目を伏せ、再度ベートを見た。
どうゆう意味かと質問しようとしたベートだったが、その目が先程までの飄々としたものではなかったため息を飲んだ。
「ワシが思うにな、本当の強さってのは孤独の中強くなるもんではなく仲間と共にお互いを助け合いながら成長して手に入れる。
それが真の強さだとワシは思うんじゃよ」
「.......」
「お主にもあるじゃろう?ロキファミリアという仲間が」
「.............あぁ」
普段口には出さないが次郎が言ったように、ベートにとってロキファミリアのメンバーは大切な仲間だ。
だが本人の性格上それを面と言うのは恥ずかしいため、小さな声で答えた。
「...それでも強さは強さだ。俺はテメェに負けた。
それは変わらねぇ...弱いから負けたのは事実だ」
ベートはひたすらに己を恥じた。
レベルだけで判断し相手の実力もわからず、八つ当たりのように向かっていき手加減された上で雑魚と侮った相手に負けたことに。
しかし普通はレベルで強さはだいたい判別できるため、ベートの思考はあまり間違ってはいない。
次郎が規格外すぎるだけである。
(クソが!...なにが強者だ。てめえと相手の実力差も解らねぇで無様な姿を晒して...弱者は俺の方じゃねぇか!)
なんかどんどんネガティブ思考に陥ってるベートに、これはいけないと次郎は自分なりの考えを語る。
「ふぅ....いいかねベートくん? 強くあろうとするのは大事なことじゃが弱さも時には必要なんじゃよ」
「なに言ってやがる....弱さなんて何の役にも立ちゃしねぇ」
ベートには次郎の言っていることが理解できなかった。
強さこそが全てだと思っているからこそ、弱い部分などあってはならないと。
「勿論、弱いよりは強い方がいい。それは当然じゃ。
だがな?人ってのは弱い部分があるからこそ強くなれる生き物なんじゃよ」
次郎はそのまま言葉を続ける。目の前のアイズと同じように強さを求めている少年に、間違った道を進ませないように。
当のアイズもそんな次郎の話を真剣に聞いている。
「人ってのは誰だって最初は弱い。ちっぽけなガキじゃ。お主も、このワシもな。 だがそこからどうやって強くなっていくかが重要なんじゃよ。
ベートくん、きみは今の強さを手に入れるのに一人で、一度も挫折を知らずにきたのかね?」
その質問にベートは無言だったが、次郎の言う通りベートはレベル5の地位を手に入れるまでとてつもない努力をしてきた。
何度も敗北を味わい、ロキファミリアという家族と共に、数々のモンスターとの戦いを経て今の第一級冒険者としての強さがあるのだから。
「そういうことじゃよ。誰だって自分の中に弱さを持っとる。大切なのはそれらを否定するのではなく受け入れることじゃ。
時には相手の強さを認め、自分の弱さを認める。そんで自分になにが足りなかったのかを学び、周りの仲間と共にお互いを支え合って成長すること。それこそが本当の強さであり強者だとワシは思うがのう」
次郎がただ強くなったのはギネスに育てられたから。だがそこから更に成長できたのは、紛れもなくアカシア達と出会い家族の温もりを知り、一龍や三虎と共に修行し成長したから。
それがあったからこそ次郎は強さの在り方を知り、節乃と出会い愛を知った。
弱い者も強い者も含め、様々な出逢いが人を強くすると次郎は思っているのだから。
次回タイトル
「美の女神の思惑」