オラリオに暴獣が来るのは間違っているだろうか   作:チミチャンガ

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ベルとの出会い

「おい、てめぇいい加減にしやがれ!! さっさと寄越せってんだよ!」

 

「嫌です!これは絶対に渡しません!!」

 

 

ベル・クラネルは困り果てていた。

 

自分の祖父が亡くなり、哀しみにくれていたが冒険者になって強い男になるため祖父が残してくれた貯金を片手に迷宮都市オラリオという様々な人が集まる大都市に向かう途中であったのだが、ガラの悪そうな男にその金を盗られそうになるといういわゆる"カツアゲ"なるものに遭っていた。

 

 

暫く綱引きのような状態が続いていたが、痺れを切らしたのか男は懐からナイフを取り出し、ベルに向けた。

 

 

「ひっ!」

 

 

ずっと拒否して耐えてれば、いつかは諦めてくれる。

 

そう思っていたベルもナイフが出てくるとは思わなかった。そしてなによりそんなものを今まで人から向けられた事がないベルは"殺されて奪われる"かもしれないということを想像し、恐怖で悲鳴をあげた。

 

 

「素直に渡してりゃ痛い目に遭わさずにすんだんだけどなぁ、渡さないてめぇがわr「コラコラ」あん?」

 

 

 

 

ベルと男の前に現れたのは一人のおかしな髪型をした男であった。その男は二人の間に割って入ると優しく、まるで年老いた老人のような口調で話した。

 

 

「こんな若い子供に大の大人がそんな危ないもん向けちゃいかんよ、聞かせて貰ったがこのお金はこの子にとって大事な家族が残してくれた物じゃ、少し貸してもらうならともかく無理矢理奪うのは感心せんのう」

 

「なんだおっさん...いきなり割り込んできやがって、つーかなんだその変な髪型は?」

 

「あ、あの...あなたは?」

 

 

ベルは自分を助けてくれそうな男に一瞬安堵したが、この突然現れた男が見たところ何の武器も持っていないのを見て叫んだ。

 

 

「だ、だめです!その人ナイフを持ってます逃げてください!」

 

 

自分が今にも殺されて金銭を奪われるかもしれないという最悪な状況のなか、見ず知らずの男の心配をするなどなんともお人好しだと次郎は思ったが、それと同時にそういえば前の世界でもこんなお人好しの、今や世界最高の料理人となった少年を思いだしきっとこの子を助けたのはこの子があの少年に雰囲気が似てたからかなと次郎は微笑んだ。

 

 

「おい、おっさん俺はそのガキに用があるんだよ...見たところあんたは何も持ってなさそうだしこのまま消えれば見逃してやるぜ?」

 

 

男はナイフをちらつかせ、目の前の奇妙な髪型した男に脅しをかけるが次郎は笑みを見せたまま言う。

 

 

「先程も言ったろう、これはこの子の大事なもんじゃ...それを無理矢理奪うのは見過ごせん、お前さんこそこのまま大人しく引けば何もせんぞ?」

 

「はっ! おっさんこの状況解ってんのかよ それともそんなに死にたいってのか」

 

「僕のことなら大丈夫ですから! だから逃げてください!」

 

 

ベルは目の前に現れた自分を助けようとしてくれている男がナイフで刺され殺されるかもしれないという展開に必死に男に呼び掛けた。

 

 

「まあまあ見てなさい、大丈夫じゃ......こんなオモチャごときで殺られるほど柔な体はしとらんよ」

 

 

次郎はベルに優しく言うと、男に向かって挑発的な笑みを浮かべた。

 

 

「じゃあ、お前から死にやがれ!」

 

 

 

その表情が癪にさわったのか、男はナイフを振りかぶり次郎に刺そうとした。そして自身を助けてくれた男が殺されてしまう結果を見まいとベルはとっさに目をつむった。

 

 

 

 

 

だが、いつまでたっても男の悲鳴は聞こえない

 

 

不思議に思ったベルは恐る恐る目を開けると、そこには男のナイフを人差し指の腹で受け止めている次郎の姿があった。

 

 

「え、えぇ!?」

 

「な、なんだよ...どうなってんだよこれぇ!」

 

 

驚くのも無理はない話である。普通ナイフで攻撃されたら刺されて血が出るか、例え皮膚に当たらなく服などにかすった場合でも傷がつくのが常識なことであり、ベルもナイフを刺した男もそうなるものだと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

だが、あいにく目の前にいる男は普通ではない.....。それどころか人外もいいところな存在であり、ただのナイフで傷がつくなど皆無である。

 

そしてナイフの先端が指の腹に当たってるのに血が出ないのは単純に次郎の皮膚が強すぎて傷つけることができないというだけでの話であった。

 

 

「ふぅ~、まさかホントに刺してくるとは.......ワシじゃなかったら死んどったぞ?」

 

「す、凄い....!」

 

 

ベルは先程までの恐怖は何処にいったのか、目の前の男にキラキラと効果音がつくような眼差しを向けていた。

 

 

「あ、あぁ.....」

 

 

そしてナイフを指で受け止めるという化け物っぷりを発揮した目の前の男にこちらも先程まで強気でいたが、今ではすっかり小鹿のように足が震えていた。

 

 

 

「金が欲しいなら、しっかりと就職して働かんといかんぞ? 窃盗は重い罪じゃ....殺すことはせんが暫くは反省せい」

 

 

 

そして次郎はさっきまでナイフを押さえていた人差し指で男の額を軽くつついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピキィィィィン!!!

 

 

 

「あ、が....が」

 

 

すると男は手を前に向けた体勢のまま動かなくなってしまった。それを見たベルは男が突然動かなくなってしまったことに疑問を感じ、次郎に質問をした。

 

 

「あ、あの....何をしたんですか? 動かなくなっちゃいましたけど」

 

 

そして次郎はベルに向き直るとニッコリ笑い

 

 

「うん? あ~大丈夫、少しばかりこやつの体を"止めた"だけじゃ、それより少年こそ大丈夫かの?」

 

 

 

「(止めたってどういうことだろう?)あ、はい! お陰でお金も無事でしたしありがとうございます!本当に助かりました」

 

「ほっほ、礼ならええよ ワシが勝手にやったことじゃ、但し次からはもっと気を付けるんじゃぞ?」

 

「はい!......あの、僕はベル・クラネルといいいます! 助けてくれて本当にありがとうございました!.....えっと」

 

 

あぁ、そういえばまだ自分の名を名乗ってなかったなと思い出した次郎は、目の前のベル・クラネルという少年に自分の名を告げた。

 

 

「そういえばまだ名乗ってなかったの...ワシは次郎というものじゃ」

 

「ジロウさんですね!.....あの、これから僕オラリオというところに向かうところだったんですけど良かったら一緒に行きませんか?」

 

 

ベルは自分を助けてくれた次郎に共にオラリオを目指そうかと告げる。

 

 

「おらりお? 一体どんなところなんじゃ、街か何かか?」

 

「はい! 色々な人が集まる世界最大の都市で、僕はそこで冒険者になって強い男になるためにオラリオを目指してるんです」

 

 

(ふむ、冒険者か.....美食屋みたいなものか?)

 

 

次郎はベルの誘いに少し迷ったが、元々自分も行き先など決めてなかったし、世界最大の都市ということは情報もそれなりに集まりそうだし、なにより酒も沢山ありそうだと考えた次郎はベルの誘いを受けることにした。

 

 

 

「よし分かった、ワシも一緒に行こう 旨い酒があるかもしれんし、冒険者というものにも興味があるからのう」

 

「本当ですか!?良かった~ じゃあ早速行きましょう!ジロウさん」

 

 

次郎が共にオラリオに同行してくれることに喜んだベルは笑顔を浮かべた。

 

 

「ほいほい」

 

(コロコロと表情豊かで面白い子じゃのう.....)

 

 

 

こうしてベル・クラネルという少年と共に次郎はオラリオを目指すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにカツアゲ男のノッキングが解除されたのは次郎達が去ってから四時間後のことであった.......




次回タイトル

「迷宮都市オラリオ」
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