森の中を進むのはアスタとククリとノエルとラック。
ただ今、彼らは魔法帝からの指令でキタの町という田舎町にモンスターが現れるというので向かっていた。しかもキタの町の近くにはダンジョンと言う魔力に満ちた迷宮があるらしいので気を引き締めている。筈だった。
「だから、トリタロウ!」
「ダメ、シルヴァンタスシュナウザーよ!」
なにやらアスタとノエルは揉めていた。ちなみにアスタの頭の上にはなぜかアンチ鳥がいる。
「2人共、なに言い争っているの?」
「なんでもアンチ鳥の名前で揉めてるみたい」
「アンチ鳥…あっ、あの子!」
それはこの間のソッシ村の任務でククリの前に石を持ってきたアンチ鳥。とりあえず黒の暴牛で飼う事にして、アスタとノエルがどんな名前にするか言い争っていた。
「勇者様もノエルちゃんも名前は、本人が気に入るように考えないと」
「「え?」」
「まず勇者様は簡単すぎて、ノエルちゃんも長いからね…」
ククリが2人の喧嘩を止めに入ると今度はラックがククリの尋ねてみた。
「じゃあ、ククリだったらどんな名前にするの?」
「私だったら?」
まさか自分がアンチ鳥の名前を考える事になって、アスタとノエルは興味を持ち始めた。
「えっと…ネロかな?」
「「ネロ?」」
「黒だからネロ。いいよね?」
アンチ鳥はククリの付けた名前を気に入って翼を上げた。
「ネロか…流石ククリ!いいセンスだな♪」
「たしかに、カワイイわね!」
アスタとノエルもネロと言う名前に賛成した。なんやかんやで2人はククリに少し甘くなっている。
それからキタの町近くにまでやって来たアスタ達。
「もうすぐ、キタの町だよな?」
「あっ、人がいるよ」
ラックが指を刺した方には1人の男が歩いていた。さっそくアスタは駆け寄って声をかけてみる。
「すみません!」
「はい、なにか?」
「じつは俺達、魔法騎士団の黒の暴牛ですけども…」
「魔法騎士団!」
すると男は魔法騎士団という言葉に飛びつく。
「アナタ方が、我が町に来る魔法騎士団の1組ですか?」
「1組?」
「それから、この人は勇者様なんです!」
「んがっ!」
「勇者!」
ククリが大声でアスタに指を刺しながら勇者と宣言した。ただし指がアスタの鼻の穴に突っ込んでカッコ悪い印象。
「えっと…はい、俺が勇者です」
「勇者様ですか!なんと幸運ですぞ!」
「うわっ!?」
「「きゃっ!?」」
「お?!」
男はすぐさまアスタ達を掴んで猛スピードで走った。
「まさにアナタ方こそこの世の救世主、勇者ですじゃ!是非、我がキタの町の宝を差し上げますぞ♪」
それから走っていき5人は町に到着。
「さぁ、着きましたぞ」
「ここが、キタの町?」
「呪われているな」
アスタの言う通り、キタの町は紫の霧に包まれて家という家には禍々して蔦が茂っている状態。だけど、そこに町の衆が現れてアスタ達の所に集まって来た。
「うわぁぁぁ!なんだ!?」
「ちょっ、ちょっと!?」
それからしばらくすると歓迎パーティーが始まって、一番いい席に座らせたアスタ達の所にキタの町の町長が近づく。
「いや~~~まさか本当にこんな田舎町に魔法騎士団の方々が来てくれるなんて♪」
「はぁ…まぁな♪」
「と…当然よ!」
褒められて少し照れ始めるアスタとノエル。ラックはご馳走を堪能しククリもVIP扱いにはしゃいだりしている。
「勇者殿!」
「「「「え?」」」」
「ようこそ我がキタの町に!そしてこれが、この町の宝…キタキタ踊りですぞ!」
先程の男が腰蓑と太陽の飾りがついた冠姿で不思議な踊りを踊りながら現れた。
「げっ、さっきのおやじ!」
男改めおやじの踊りにアスタとラックは引いて、ククリとノエルは気持ち悪くなったのか口元を手で押える。
「あっ、勇者様と黒の暴牛のみなさん。あれがノコギリ山です」
町長はアスタ達に目の前にあるノコギリ山と呼ばれる大きな山に指を刺して説明し始めた。
「元々この町はなにも無い貧しい村でしたが、あの山に星屑が落ちてくるのです。そこで星屑で魔法武器や魔法道具を作り名産にして町にまで発展させてきました」
「そうなんですか」
「しかし何十年も星屑が降ってこなくて、当然武器とか作れず寂れて行き…挙句の果てには山にモンスターが住み着き、町に呪いをかけてこのありさま」
真剣な話の中におやじの踊りが入ったりして頭に入らないアスタ達。これには町長もガマンの限界。
「おいっ!その気色の悪い踊りはもう中止!!」
「えっ!?」
どうやらおやじは3日も前から練習していたのでショックを受けた。
「とにかく、町を救ってください。お願いします」
町長は念入りにアスタ達に頼んだ。その夜、彼らは町の広場で話し合い中。
「とりあえず、一泊させてもらったし」
「ノコギリ山のダンジョンは明日からだね」
「こんばんわ」
「うわっ!?」
そこに3人の子供が現れた。
「君達は?」
「僕はザザ。こっちは妹のミグで、幼馴染のトマ。いきなりですが、魔法を見せてくれませんか!」
自己紹介するとザザが4人の目の前で正座しながら頼み込んだ。
「なに言いだしてるの君は?」
「お兄ちゃんは魔法騎士マニアなの!大きくなったら魔法騎士団に入る為に、毎日魔法の特訓をしているの!」
「僕も魔法騎士団の魔法が見たいし」
ミグもトマも魔法を見せてとお願いしてきた。
「…ねぇ、見せてあげたら?そしたら納得するかもね」
「え…うん」
ラックがそう言うのでククリはとりあえずツチヘビの魔法陣を描いた。
「地面に魔法陣?魔導書じゃないの?」
「ククリは魔導書を持たなくても、魔法が使えるのよ」
「なんというチート設定だ!」
「夜中にこういう事をしているのって、楽しいね!」
「じゃあ、危ないから下がって」
さっそくツチヘビを発動させた。すると少しザザの服に焼けた跡が付きながらも地面に潜った。
「これが、魔法?」
「スゴーイ!早すぎてよく見えなかった!あっ、お兄ちゃん感動している」
「怖かったんじゃないの?」
驚くトマにはしゃぐミグだったが、ザザは焼けた服を見ながら涙を流して固まっていた。
「あれ?どこに行ったんだろう?」
「さてと、明日は早いから宿に行こう」
アスタ達はザザ達と別れて宿泊先の宿に向かった。
一方その頃、町外れ。
「ここが、キタの町」
「汚い町だな?」
「ソッシ村のカセギとクロコを倒した勇者がいるらしい」
眉間にシワがあるネズミのモンスター、人獣タテジワネズミが3体現れた。
「奴らもマヌケな奴だな」
「魔法騎士団と勇者とて、こんな夜中に奇襲されるとも知らないで」
「ギリ様は勇者よりグルグルを気にしている」
「グルグル…我らモンスターの力をもってすれば…」
「「「笑止」」」
タテジワネズミはよく難しい言葉を使って喋ったりするが、あまり意味はない。
「なんだか、分からなくなってきたな?」
「意味など考えている暇などない」
「「「御意」」」
「行くぞ…倒すのだ。勇者を!」
「「「え?」」」
だが、ここでククリのツチヘビがタテジワネズミ3体を包んだ。
そして次の日。
「ふあぁぁぁ…よく寝た」
欠伸しながら町を歩くアスタ達。
「じゃあ、さっそく」
「ええ、ダンジョン攻略をして」
「モンスターを退治しなくちゃ」
「おはようございます」
「「「「え?」」」」
彼らの目の前にザザとミグとトマがいた。
「昨日のアナタ方の力、本当に感動しました。怖かったけど!」
少し涙目になるザザ。しかしすぐに本題に入った。
「僕達もモンスター退治に手伝いますよ」
「ええっ、お前達も来る気か!?」
なんと自分達もダンジョンについて行きたいと言って来た。
「はい!なんたって僕は、魔法騎士団に入隊予定ですから!」
「アタシは武闘家になるんだから!」
「僕は、僧侶になろうと考えているんですよ」
「そんな将来の夢をここで言っても」
呆れるノエル。けれども、一般人を危険な所に行かせるわけにはいかないので、なんとか説得しようとする。
「なぁ、悪いけど…ここからは本当に危険らしいぞ。だから、君達には危ない目に合わせたくないんだ」
「そうだ。勇者様の言う通り」
「お前達は山に入ってはならね。死にに行くようなものじゃ」
「うわっ、いつの間に!」
アスタの後ろには町長と老人が立っていたので驚く。
「パパ!?」
「お祖父ちゃん!?」
「町長の身内だったの?」
じつはザザとミグは町長の子供で、老人はトマの祖父で武器屋をやっていた。
「でも、勇者様と魔法騎士団だって」
「そうよ!勇者様は死んでもいいの?」
「バカモーン!勇者様はきっと特殊な修行してるから、死んでも平気なんだ!!」
「ええっ!?」
めちゃくちゃな理屈を言ってくると巨大なハンマーを構える町長。
「では、さっそく!」
「うわああああぁぁぁ!待って待って!」
そのまま力を溜める町長にアスタは必死にストップをかける。だが、ククリが素早く町長のハンマーを奪った。
「あっ、なにを?」
「勇者様を殴ったらダメ!」
ククリの芯の強い目で町長を睨んで怒った。これには町長は少し冷静さを取り戻し。
「…そうでしたな!つい興奮してしまいました!」
笑って誤魔化した。さて、肝心のアスタは
「助かったぜ。ククリ」
「え?」
なんとアスタはククリのローブの中に隠れていた。それから少し時間が止まり。
「いやーーー!」
「ぐはっ!」
ハンマーでアスタを思いっきりぶん殴った。
「勇者様、大丈夫?頭を強く打っているわ!冷やす物を!」
「自分でやって置いて、テキパキと…」
気絶したアスタの介抱するククリにノエルが呆れる。
「ククリ?」
「え?」
すると彼らの前に3人の男女が現れた。しかもそのうちの1人が、ククリとアスタにとってはよく知っている人。
「ユノくん」
それは魔法騎士団最強の金色の夜明けに入ったユノだった。