ノコギリ山からやって来たモンスターのライライに、ククリとミグとついでにキタキタおやじがさらわれてしまった。アスタ達は急いでククリとミグを助ける為に、ノコギリ山に向かう。
その2人は今、牢に入れられていた。
「勇者様…」
「私達、どうなっちゃうんだろう…」
思わず泣きそうになるミグ。けれども、ククリはそんな彼女に優しく話しかけた。
「大丈夫。ユノくんとノエルちゃんと、それから勇者様が絶対に助けに来てくれるよ」
「本当に?」
「うん!じつは勇者様は魔法が使えないけど、諦めるのが嫌いで優しいんだよ。この髪飾りは勇者様が買ってくれたの♪」
ククリは心の中でアスタを想像しながらも話した。ただし、想像したアスタは周りから呆れたり引いたりする程、かなり美化されている。
「へ~~~勇者様って優しいんだね!」
「そうなの!優しくて強いの!」
ククリはしたことのないポーズをとる程に、美化されながらもアスタを想像して自慢。
「じゃあ、ここのモンスターなんて一捻りだね!」
「そうなの…一捻りなの!」
囚われているのを忘れて2人は牢で大騒ぎしているとライライがやって来る。
「コラお前ら、静かにしていろ!大体、お前らは人質だと分かっているのか?!」
「なによ。鳥の癖に偉そう…」
「本当、鳥の癖に…」
大声で怒鳴るが2人は空気読めという目をしながら、グチグチと文句を吐く。
「たく、だから人間は嫌いなんだ」
独り言を呟きながらも牢をタテジワネズミに任せると出て行き、別の部屋に入ると一緒に連れてきたおやじが重労働をさせられていた。
「しっかり働けよな」
「あの…これに何の意味が?」
「意味はない」
この重労働は全く意味がなかった。しかし連れてきた以上何かさせないと、モンスターのプライドに関わるのでやらせているらしい。
丁度、その頃。アスタとユノ達がノコギリ山ダンジョンの入り口に到着した。
「これがダンジョンの入り口」
「早く、ククリを助け出さないと!」
「待った。まずはミモザ頼む」
さっそく入ろうとしたアスタを止めるクラフスがミモザに指示した。
「分かりました。植物創造魔法、魔花の道標」
すると地面からノコギリ山内部の形をした植物の模型が生えてくる。
「スゲェな!こんなこと出来るんだ!」
「はい、と言っても…私サポート関係しか出来なくて、戦闘はあんまり」
少し恥ずかしそうになりながらもダンジョン内部の確認をし始めた、
「まず、ここが入り口で…まっすぐ行くと二手に分かれています。左右の到着する場所は同じみたいですけど、右側は敵が少ない分ちょっと遠回りですが、左側は敵が多い上に罠もあるけども近道みたいですね」
説明が終わると同時に模型も消えて、そのまま入り口に入って進むと本当に道が二手に別れていた。
「それで、右と左…どっちに行くのですか?」
ザザはどちらを進んだ方が良いのかアスタ達に尋ねる。
「そりゃあ、左だ!モンスターが多くても近道には変わりないだろ!」
「全く…だから、黒の暴牛は野蛮な問題集団なんだ」
「なにを!?」
「たとえ近道でも、モンスターを倒して罠を潜って行くという事は時間が掛かり体力も消耗する事。ここは遠回りでも敵の少ない方を行くのがベスト」
アスタは近道で左側に行こうと言い出したが、安全面を考えてクラウスは右側にしようと主張する
「でも、こうしている内にククリとミグが危ないんだぞ!」
「そもそも、それが原因だ」
「なに?」
「魔法騎士団に入った者は、クローバー王国の民のために戦うのが鉄則。それなのにモンスターにさらわれるなどと、この失態はどう出る?」
などとククリがライライに掴まった時点で、魔法騎士失格だと言い出すクラウス。
「でも…ククリは本当にスゴイ魔法を使えるんだ!」
「何がスゴイ魔法だ。第一、聞いた話では魔導書を持っていないと聞くが?」
「だけど、スゴイのはスゴイんだ!」
「こんな時に何を…」
そのまま喧嘩をし始めてユノとノエルとミモザは少し
「でさぁ、早く行こうよ。僕達が左で、君達が右でいいんじゃないの?」
「そうですよ。言い争っている場合じゃありませんよ!」
「第一、喧嘩している暇があるなら妹とククリさんを助けるのが先決ですよ!」
でも、ここでラックとトマとザザが2人の喧嘩を止めて2人を探すのが一番だと言う。
「あっ、そうだった…」
「たしかに、喧嘩よりも救助が最優先だ」
少し恥ずかしくなりながらも、アスタ達黒の暴牛とトマは左でユノ達金色の夜明けとザザが右に行く事になった。
右の道に進んだ金色の夜明けだったが、歩きながらユノはクラウスに声をかける。
「クラウスさん」
「なんだ?」
「アスタを舐めない方が良いですよ。それにククリの事をあまり悪く言うと、絶対に許しませんから」
などと言いながらも強く睨んだりする。
それから右側を進んだユノ達が着いたのはオオカミの間と書かれた部屋。
「オオカミの間?」
「あのレリーフ…オオカミか?」
部屋にはあまりオオカミとは言えない形のレリーフと扉だけで、その扉にもオオカミの頭のレリーフがあった。すると再びミモザは魔花の道標の模型を出す。
「扉は1つですが、部屋は2つみたいですね。そしてそのうちの1つがハズレの部屋…」
「たしかこういう扉を開けるには…開けゴマとかの合言葉のような呪文を」
ユノが思わず開けゴマと言った途端に部屋が揺れながらも扉が開いた。これには全員驚く。
「なっ、なんだ!?」
「もしかして、今の呪文で?」
「いや違う…これは」
それはまさにハズレの部屋で、人の生首が浮かんだ血の沼にいるのは巨大な鎌を持った悪魔のハズレ大魔王が、不気味な笑みを見せる。
「うふふふふ、ベタな呪文を唱えた貴様達で21人目だ。ようこそ死の沼へ…さぁ、覚悟するが良い!このハズレ大魔王が、お前らの首を」
ユノは勢いよく扉を閉めてなかったことにした。
「コラーーー!卑怯者!開けろ!開けろと言ってるだろうが!」
「いいのですかな?こんな風で」
ハズレ大魔王が扉越しに怒鳴っているがモミザ以外は全員スルー。
「ユノ、あまり下手な真似はするな!貴様はまだ新人だからな」
「すみません…ククリを早く助けたいあまりに…」
ユノもアスタと同様に早くククリを助けたい気持ちでいっぱいの様子。だが、そんな時
『探せ…』
「え?」
「声が」
「どこからか、声がした」
4人は突然響く謎の声に驚くがまた声が出てきた。
『闇のオオカミを…探せ』
「闇の…オオカミ?」
「とりあえず、この部屋を調べてみよう」
さっそく壁や床や天井を調べたりしているとザザが何かを見つけた。
「こんな所に蝋燭が!」
「蝋燭?」
「ふむ…とりあえず、火をつけてみるか」
ユノ達は蝋燭がついてある燭台に駆け寄る。そこでクラウスが蝋燭に火をつけてみると、部屋は少しだけ明るくなって影が出来ていた。
「とくに何も起きないな?」
「あるとしたら影だけですしね」
「そうですね。って、影!」
するとミモザは何かに気づいて扉の前に立つ。
「どうしたミモザ?」
「もしかして、これが闇オオカミ!」
すぐに手で影絵のオオカミを作ってみると、それはレリーフのオオカミと同じ形でそのまま重ねた。その時、ゴゴゴっと音が鳴り響くと扉が開く。しかもハズレの部屋ではなく、ちゃんとした道があった。
「これって、アタリって事ですか!」
「なるほど…影の鍵で開く仕組みだったのか」
「とりあえず先に進めますね」
さっそくユノ達はオオカミの間から出て進んだ。
一方、左側のアスタ達はと言うと
「なんだ?このブサイクなサルの像?」
「サルの間だからじゃないの?」
サルの間という部屋に来ていた。しかし部屋には大きなサルの彫像が置かれて、その後ろは断崖絶壁の崖で先に扉が1つ。
「てか、どうやって渡るのよ!」
ノエルは崖に恐れをなすけど、ラックはサルの像の口に手を入れたりして調べる。
「このサルの像、なんか口の中は空洞みたいだね?」
「何かを入れる仕掛けですかね?」
「う~~~ん。サルが好きな物といえば…あっ!」
その時、アスタは縄で吊るされている金のバナナを見つけた。
「バナナだ…」
「それも純金の…」
「でもやっぱりバナナ」
さらに銀の棒と銅の立ち台もいつの間にか置かれていた。
「これって…」
『なれ…』
「「「「え!」」」」
するとユノ達と同じ謎の声が響いた。
『サルになれ…バナナを取れ…』
「何よこの声!」
「まるで命令されているみたいだ」
「じゃあ、バナナを取ってみるか」
アスタはさっそく銅の立ち台に乗って銀の棒を突っつきながら、金のバナナを取ろうとしたが全然意味がなかった。だが、こうしている間にも謎の声が言い続ける。
『サルだ…サルに…サルだ!お前はサルになるのだ!』
「うぐぐぐぐ…ウキャーーー!!」
アスタは謎の声による重圧に負けてしまいサルと化してしまった。
「勇者さんがサルになってしまった!」
「結構バカだから、耐え切れなくなったんだね」
「でも、ちょっとカワイイかも」
1人だけ感想が違った。
しかしサルになったアスタは大きくジャンプして見事に金のバナナをゲット。
「バナナを取った!」
「後はこのバナナをサルに!」
「良し、分かった!」
すぐにラックがバナナをサルにあげようとした。アスタの方に
「そっちじゃなくて、彫像の方!」
「あっ、だよね…」
ちょっとしたジョークのつもりらしい。さっそくサルの像の口に金のバナナを放り込むと、サルの像が地面からせり上がって来た。
「「「これは!?」」」
それは自転車に乗ったサルの像。
じつはサルの像は座っていたのではなく、自転車に乗っていた姿だった。さらに崖の間に綱が出て繋がると、サルの像も崖の方向に動き出す。
「早く、サルに乗りましょう!」
すぐにサルの背中に乗ったアスタ達。サルの像は綱渡りのように進んでいったが、これはまるで遊園地の乗り物みたいで情けない絵に。
「なんだろう…渡れたのは良いけど…」
「こんな姿、兄様達に見られないのは嬉しいけど…」
「とても恥ずかしいね」
「ウキャキャキャキャキャ♪」
恥ずかしさのあまり泣いてしまうノエル達だったがアスタは未だにサルのまま。それでも扉のある方に無事に渡り。
「よっしゃ!じゃあ、早くククリとミグを助けて、モンスターを倒すぞ!」
元に戻ったアスタはみんなを誘導し始める。
「さっきまで、サルだったのに…」
「まぁ、元に戻ったんだし良いですよ」
「それよりも、どうやらこの先は大変そうだね」
「「「え?」」」
ラックは扉の先に魔力の気配を感じて、少しストレッチをしながらも楽しそうに笑い始めた。
「とりあえず、僕が先に行って雑魚を倒していくから君達は後からついて来てね!」
「あっ、ラック!?」
両足に雷創成魔法の雷神の長靴を纏ったラックは猛スピードで進んで行った。
「行っちゃったよ…」
「どうしますか?」
「そりゃあ、追いかける!」
慌ててアスタ達もラックの後を追いかけた。だが、この先にとんでもない罠があることも知らずに。それはユノ達も同じ事だった。