ユノ達が妖精のグリエルからボスの弱点を聞いて先に進んだ頃、ククリとミグは未だに牢の中。
「あっ!ねぇ、良いこと思いついちゃった♪」
「良いこと?」
「色仕掛けよ」
ミグはポーチをククリに見せながら言う。それから見張りのタテジワネズミに
「ねぇ~~~ネズミさ~~~ん♪」
「タテジワネズミ第8小隊、第3視察員(自称)と呼びな」
訂正するかのような発言をして、タテジワネズミが振り向くとピタッと固まった。
「ネ・ズ・ミ・さ~~~ん♪」
なぜなら顔に物凄くケバいメイクをしたミグとククリだった。これにはタテジワネズミは怯えて
「うわぁぁぁぁ!バケモノぉぉぉぉぉぉ!!」
「バケモノ!?」
そのまま逃げてしまうけども、バケモノ呼ばわりされたミグは心に100のダメージを受けた。
「やったー!鍵を落としていったね。イロジカケってすごいんだね」
ククリはのん気に落とした鍵を拾い上げて喜ぶが、未だにミグの心の傷は癒えない。
一方その頃、近道コースを選んだアスタ達は目的の場所に着いた。
「ユノ達はまだみたい…俺達が一番最初に来たんだな?」
「そりゃあ、近道ですからね」
右の遠回りコースを進んだユノ達はまだ来ていないと確認すると、ラックが2つの扉に気づく。
「扉が2つだけど、どっちにする?」
「…じゃあ左の扉にして見る?」
「そうだな。じゃあ、左を!」
さっそく左の扉を開けてみると、中には錆びた剣や折れた杖に銅像や甲冑とかのガラクタが捨てられた部屋だった。
「なんだこりゃ!?」
「モンスターのゴミ捨て場みたいだね?」
とりあえず中に入って一応ガラクタを調べてみる。
「こういうダンジョンって、大抵財宝が隠されているけど…これって?」
「理想と現実の差って奴だね?」
割れた手鏡を手に取って呆れるノエルに、兜を被ったラックが言い返す。
「でも、こういうガラクタの中には、貴重なアイテムが混じっていますからね!なんか、興奮してきましたよ!」
「トマ…お前って、オタクなのか?」
大きな鎌と盾を持ったアスタは、何かに目覚めてガラクタを漁るトマに少し引いたりする。だが、突然ネロがアスタの頭をクチバシで叩く。
「痛て、痛て!いきなりなんだよネロ?」
するとネロは誘導するかのようにアスタの髪を引っ張って目の前の壁を見させる。
「その壁が何だって?」
「どうしましたか?」
「なんか、ネロがこの壁を見ろって?」
「壁?」
トマは壁を調べ始めた。壁を触って叩いたりしていると何かに気づく。
「この壁…隠し扉、つまり隠し部屋があるみたいですよ!」
「隠し部屋!?」
「はい、それも魔力で完全に塞いでいるようです!」
「じゃあ、これで」
さっそくアスタは大剣で壁を破壊すると、本当に隠し部屋になっていた。しかも隠し部屋には黒い剣が1本刺さっていて、少し大剣に似た雰囲気だけど長くてスマートな形状。
「この剣は……」
アスタは恐る恐る長剣を持って振り回して見る。
「あっ!なんか大剣よりも、ちょっと軽いな?」
「そうなんだ。じゃあ、ちょっと僕にも貸して!」
「良いぜ。ほら」
そのままアスタはラックに長剣を手渡す。
「重っ!?」
だが、かなりの重量に支えるのが精いっぱいだった。
「そうかな?まぁ、俺には少し軽い方だけど…」
「あはははは、こりゃあ…君にしか扱えないね」
再び長剣を持って楽々振り回すアスタにラックは苦笑いしか出来なかった。
「良し!この剣を持っていこう!」
こうしてアスタは長剣を手に入れて部屋を出る。おまけに丁度良く、ユノ達もやって来た。
「ユノ!」
「アスタ、大丈夫そうだな?」
「皆さんもご無事でよかったですね」
ユノのミモザはアスタ達が無事だったことに安心した。
「ほぅ…まさか、ちゃんと生き残っていたとはな?だが、無事で何よりだな」
少し上から目線だがクラウスもアスタ達のことが心配していた様子。するとユノはアスタの持っている長剣に気づく。
「その剣は?」
「ああ、見つけたんだ。これからは俺の剣にしようかと」
「そうか…実はな。俺達、妖精を見つけたんだ」
「「「「妖精!!?」」」」
アスタ達は妖精の言葉に興味を持った。そしてユノは妖精のグリエルとボスの弱点を話す。
「ボスの弱点が分かったのなら、俺達の勝ちだな!んで、弱点は?」
「はい!たしか、肩の後ろの2本のゴボウの真ん中にあるスネ毛の下のロココ調の右…でしたっけ?」
「「「え?」」」
「「「「は?」」」」
ザザが口にしたボスの弱点に、この場にいる7人は気の抜けた声が出てしまう。
「なんだか、凄そうなボスだな…」
アスタはボスの姿に変な想像をして少しやる気が抜けそうになった。
「早く、ボスを倒してククリ達を助けよう」
「そうだな…ククリ!」
ユノの言葉にアスタは切り替えてククリを頭に浮かばせる。ただし、お尻の。
「良し!行くぞ!」
突然、アスタに不思議な力がみなぎって扉らを開けた。
でも次の瞬間、砕け散った。なぜなら部屋には、キタキタおやじが宙釣りにされて鉄板の上の焼き肉を食べさせられていたから。ちなみにこれもモンスター達が行った意味のない事。
「き…キタキタおやじ!?」
「あのおじさん…なんでここに?」
「しまった。金色の夜明けの私としたことが、すっかりあの人を忘れてしまった…」
全員すっかりおやじの事を忘れていて、クラウスも忘れた事に自分自身を恥ずかしくなってしまう。それでもアスタ達は部屋に入る。
「おお、勇者殿に魔法騎士団の皆さん!助けに来てくれたのですか!」
おやじは助けに来てくれたことに感謝して涙を流すが、アスタはそんなおやじの手を掴むと
「この!!」
「ああぁぁあああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁ!!?」
そのまま強くぶん回しておやじは遠い世界に旅立った。
「一生回ってろ」
せっかくのやる気と力が無駄になってアスタは不機嫌になった。それでもザザとトマがおやじを下ろす。
「あの扉を行けば、ボスの部屋に続くみたいですよ」
「そうか、では行くぞ」
ミモザが魔花の道標で現在地を確認して進もうとした。
「ちょっと待った!」
「「「え?」」」
「その前に、喜びのキタキタ踊りを」
「おやじ…置いてくぞ」
踊り始めるおやじにまたイライラが溜まり出すアスタ達。
一方、ククリとミグは無事に牢から逃げ出した。
「なんか、焼肉の匂いがしない?」
「ええ?」
ククリは少しお腹を空かしている様子。それから曲がり角に進もうとしたが、誰か人影が居るので止まった。2人はこっそりと覗いてみると、鍵の付いた【大事な鍵】と書かれた大きな看板を首にかけて、かなりきつそう表情をするカセギの姿。
当然、その姿にククリもミグも不思議がる。
ちなみにアスタとユノ達はというと
「旨いな、この焼肉♪」
焼肉を喰っていた。
「あっ、ちょっと焼き過ぎだな?」
「タレはないの?」
「塩と胡椒とレモンは?」
「野菜も欲しいですね」
「でもやっぱり、ご飯は欲しいね」
「お前ら何やっている…」
「早く進みましょうよ」
彼らは意志が弱かった。ちなみにおやじはまだ踊っている。