自称ファーマーは大量生産の夢を見るか? 作:Kazuma@SB
友情とふれあいの宿泊研修 初日
乾 日向子シェフの課題
「限られたフィールドの中で食材を確保し調理……私を満足させる一品を作れば合格です」
「調味料や調理器具、倉庫内の道具を自由に使っていいです」
「制限時間は2時間」
「ひとつ注意を。フィールド内で食材を確保する必要がありますが、畑の作物、つまり誰かが育てている物に関しては絶対に使ってはいけません。利用許可を得ているのは自生しているものだけなので、泥棒にもなっちゃいますしねー」
「それでは、用意始め」
「すみません、その収穫してる野菜を分けて頂けませんか!?」
「あん? あぁ、あの人の試験か。いいぜ、後輩に譲るくらいしてやるさ。使いたいだけ持ってけよ、特にじゃがいもと人参はいい出来だぜ」
「ありがとうございます! (やった、魚以外の食材ゲット! 直接許可を貰えば大丈夫だろ)って先輩なんですか? 上級生がどうしてここに」
「おいおい、んなことより行かなくていいのか? さっきの焦りようから見て時間制限でもついてるんじゃねぇか?」
「そうでした、早く調理しないと! すみません、本当にありがとうございます!」
「まぁ適当に頑張れや、ははっ」
「美味しくないです。やり直し! 時間切れまで何度でも作り直して構いませんからねー。あら、こちらは意外と美味しい」
「合格ですか!」
「いえ、やり直しです。あなた畑の作物を使っているでしょう? 注意しましたのに」
「あ、いえ、そうですが! 収穫していた方に許可を頂きましたので盗んだ訳では———」
「そうではありません。美味しいのは付け合わせの野菜だけ、それも調理に難があり味が落ちてしまっています。これなら調理前の野菜をそのまま食べた方が美味しいです。食材に見合う調理を出来ていない時点で合格はあげられませんねー」
「そ、そんな……」
「調理で味を落とす!?」
「中等部から進学できた以上、そこまでレベルの低いやつはここにはいないはずでは……?」
「ふふ……遠月の生徒とはいえあなたたちはまだまだ研鑽の途中。一見普通のようでも扱えない食材というものもあるのです。はい、ではやり直してくださいねー」
———例年のことでしょうに態と後輩に収穫物を渡すとは。どうせ不合格になる子を想像してニヤついていたのでしょう。やり直しの効く私の課題なので一応経救いはありますか……いえ、そこまで見込んでやっていますね? まったくあの子は。
友情とふれあいの宿泊研修 二日目
四宮 小次郎シェフの課題 +α
「この課題では俺が指定する料理を作ってもらう」
「食材は厨房後方の山から任意で選び使用してくれ」
「ひとつアドバイスを送ろう。周りの奴ら全員敵だと思って取り組むのが賢明だぜ」
「あー、もうひとつ追加だ。目利きは料理人に必須だが、自分の力量を把握できてないやつはそれ以前の問題だ」
「それでは始めろ」
「失格……お疲れ! こっちもダメだな、退学。……よし、合格。最後は……退学だ。さ、これで全員提出したな? 不合格者は荷物をまとめて———」
「あのうっ! ど、どうして私の品ダメなんでしょうか……?」
「誰がルセットを変えていいと言った? 傷み始めのカリフラワーにワインビネガーを使った時点でお前が作ったのは最早別の料理だ。課題に沿わない品を出せば当然失格」
「納得いかないっすね! 食材管理の責任はトップにある筈。シェフとして落ち度があるんじゃ」
「誰に向かって口利いてんだ、あ? 状態の悪いカリフラワーはわざと混ぜた。合格者を絞るためにな。ついでに言っておこう、カリフラワーとは逆に状態の良すぎる、一見して他と釣り合わないレベルに良い食材も複数混ぜた。自分の腕に合わせて適切なものを選べるか試すためだ。状態の悪いもの、あるいは良すぎるもの、その目利きを怠った間抜けは漏れなく失格にした。お前は通したが、これ以上文句をつけるなら退学にしてやろうか?」
「……遠月のあのルールって卒業生にも適用されるんすかね?」
「急に何の話だ」
「食戟であんたを負かしたら、田所の退学取り消してくんないすか?」
「くふっ、それで食戟って、ふふ、超面白、ふは、ははははははは!」
「縁てめぇ、笑いすぎだコラァ!」
「しかも合宿の最中に卒業生と在校生で非公式の食戟。シャペル先生に知れたらどうなるかな」
「怒られるだろうな、こっぴどく」
「もしもバレたら私は逃げる……全部四宮のせいにする」
「ははははは、ふぅ、ふふっ。あー、ずるいですよ冬美さん。消費する食材分は確実に証拠が残るじゃないですか。課題で使い切れずに残った量は帳簿につけてますし、補充する俺は特にバレ易いんですから。一蓮托生ですよ」
「あー、只今より2対1の野試合を執り行う。審査員どもは静粛にな」
「何あれ」
「何々……幸平創真……。珍しい、高等部からの編入生とは!」
「そういえば始業式の挨拶でぶちかました奴がいるって噂がありました。この幸平くんがそうなんですねー。……すみません、ついでに解説頂けません? 冬美さんが気にするくらい凄いんですよね?」
「そうか、君には分からんか。彼は常に田所さんの仕事を先読みして、自分の作業との両立を崩さずにサポートしているんだ」
「しかも決して余計なことはせず、彼女の邪魔にならないよう神経を張り巡らせている」
「へー。てっきり銀さんの酔狂かと思ったんですが。田所ちゃん主体の幸平くんサポートって今回の形だからこそ彼の凄さが際立っている、ってことで合ってます?」
「そう。あの動きは学生のレベルをはるかに超えてる」
「これで田所ちゃんは復活と。小次郎さんは行っちゃいましたし、そうすればまぁ日向子さんも着いて行きますよね。銀さんと平さんは何か話し込んでますし、そろそろ俺も食っちゃって大丈夫でしょうか」
「そういえば縁くんはまだ手をつけてなかったか」
「勿体ない。給仕されてすぐ食べればよかったのに」
「いやー、交互に食わないとどっちが美味いかすら比べられないですからね。そもそも一定以上は全部美味いとしか言えない俺が皆さんと一緒にいる時点でアレですし、決着つくまでは端に避けとくのが礼儀ってもんでしょう」
「遠月史上初の十傑番外が白々しい」
「まぁまぁ。とはいえ縁くん、あまり料理を放っておくのは関心しない」
「ですね、ではいただきます」
———そーいやさぁ田所、先輩たちと一緒にいた人って見覚えあるか?
え? うーん、知らない人、だよね。研修始めの挨拶の時にも壇上にはいなかった気がするよ。
だよなー。食戟始めるまでは喋ってたっぽいけど、途中から全然目立たなかったし聞き忘れてたわ。
友情とふれあいの宿泊研修 三日目夜 ~ 四日目朝
課題 朝食の新メニュー作り
「メインの食材は卵! 和洋といったジャンルは問わないが、ビュッフェ形式での提供を基本とする」
「審査開始は明日の午前6時だ。その時刻に試食できるよう準備してくれ」
「朝までの時間の使い方は自由。各厨房を解放するからそこで試作を行うも良し、部屋に戻り睡眠をとるも良しだ」
「試作のせいで審査時に食材が無いといった不備は絶対に起こさないので、安心して試作してくれて構わない。まず無いと思うが、万が一試作用の食材が切れたら最寄りのスタッフに声をかけてくれ」
「では明朝6時にまた会おう。解散!」
「———それでは皆様、朝食のひとときを存分にお楽しみください。審査開始!」
「よ、よかったら召し上がってください。一口サイズの朝食おでんです」
「おでん? 良いねぇ、事務疲れの体に染み入るわぁ。田所ちゃん、ごちそうさま」
「あれ、食戟の時の———」
「おっと、あんまり口に出しちゃだめだぜ。どこからシャペル先生の耳に入るか分かんねーからなぁ」
「は、はい! すみませんでした!」
「いいってことよ。じゃあ200食頑張れー」
「ありがとうございます! (ふらふらしてるけど大丈夫なのかな? あ、名前聞きそびれちゃった。制服着てたしやっぱり卒業生じゃ無い、よね?)」
「番外席次。お一ついかがかしら」
「さんくす。うん、やっぱりえりなちゃんの料理に間違いは無ぇな。美味いわー」
「当然です。……あら、確かこの研修の担当は叡山先輩ではありませんでしたか?」
「それな。竜胆ちゃんが事務すっぽかして出かけたからその穴埋めで、俺が更にその穴埋めやってんの。俺ぁやっぱ体動かす方が性に合うぜ、机についてると妙に消耗してよぉまったく……」
「何というかその、お疲れ様です」
「投げやりな労いどうもー。あん? えりなちゃんの横の彼、幸平くんじゃねーか」
「な! 彼と面識がお有りで?」
「おう、ちょっとな。あー、課題の要点を掴み切れてねぇのか。ありゃダメだな、もっとこう面白い奴かと思ったんだが。ちょっと会場回ってくるわ」
「えぇ、彼はここで終わりでしょう。ではまた。(番外席次が知っている……あの食戟の噂は事実ということ?)」
「ようアリスちゃん。何か面白そうなもん出してんな」
「あら縁さん。3つの形状の卵プレートよ。お一ついかが?」
「くふっ、やっぱり従姉妹だなぁ、勧め方がえりなちゃんと同じだぜ」
「まぁ! でも味は私の方が上でしょう?」
「知ってるだろうに。俺には繊細な評価とかできねーから、どっちも美味いとしか言えねーよ」
「うふふ、そうでした。私としたことがついうっかり」
「良く言うぜ、俺が迂闊なこと言おうもんならそれを根拠にえりなちゃんに突っかかるんだろう?」
「突っかかるだなんて。正当な評価をもらったって自慢しに行くだけですー」
「それもどうかと思うぜ、俺は。まぁ良いか、美味かったよ。ごちそうさん」
「また今度伺いますわ。お裾分け、楽しみにしてますね。(えりなは確かA会場……後で見に行こうかしら)」
「あれ、幸平くん通ってるのか。すんません銀さん、彼どうやって合格したんです? てっきりここで終わったと思ったんですが」
「ライブクッキングだ。メニュー選択でのハンデを自らの技量を魅せることでカバーした。残り30分からの巻き返し、中々見事な対応力だったよ」
「30分で! そりゃ惜しい見世物を見逃しちまいましたね。もちっと早くこっちに戻っとくべきでしたか」
「なに、これからも彼を見る機会は十分あるだろうさ。楽しみにしておくと良い。そろそろ次のアナウンスだな。では、もう少しの間よろしく頼む」
「はいはいお任せ下さいなっと。ではこの辺で失礼しますー」
———む、そういえば研修の締めのコースで使うのは普通の食材だったか。今回は中々面白い連中が揃っているようだし、少しギアを上げても良さそうだな。差し当たっては彼にもう一働きしてもらおう。至高の品に我々の腕、現時点で把握できるものがどれだけいるか分からんが、経験を積ませてやるのも先達の務めだな。
友情とふれあいの宿泊研修 研修終了
フロントにて
「ふぅん。田所ちゃんに幸平くん、彼女らにはそりゃ声をかけるか。流石に皆さん動きの速いことで。青田買いにも余念が無い、今期はなかなか豊作なようだ」
「君がそれを言うのか。現二年生とて大概だっただろうに」
「おっと銀さん。いやぁすみませんね、今回は大分構って頂いて。お陰様で思ったより楽しめましたわ。在校生に振る舞うコース、そのための食材の選定やら用意———うちの畑からの運搬———までそれはもう。まさか研修四日目に急に発注がはいるなんてえぇ、結局今日に至るまで随分寝る時間を削ってしまったほどですとも」
「そう拗ねんでくれよ。高い壁を見せておくことも研鑽の一部、我々が揃って調理する機会など早々ないのだから張り切りもするさ。もっとも研修後の疲労と解放感の中で、どこまで感じ取れたか定かでは無いがね」
「私たちも後から思い出して悔しい思いをしたわ」
「冬美さん。新人勧誘はもう良いんで?」
「三連敗。縁、代わりにうちに卸す量増やして」
「いつでもクソ兄貴のケツ蹴り上げますよ。でも本気じゃないんでしょう?」
「えぇ。……もう少しスタッフを育ててからじゃ無いと活かせないからね」
「つれないなぁ。別に普通に使ってくれりゃ文句ないですし、冬美さんが望んでくれれば喜んで働くんですが」
「フィールドこそ違えど互いに一流、不用意な仕事が出来んことは重々承知だろうに。なぁクロノス?」
「………………それ、本当にやめません? 大抵の人は時の神の方思い浮かべるんで、ほぼ意味が通らねぇですし。俺ぁ錬金術師とか言われて誇ってるクソ兄貴と同じセンスだと思われてるんですかねぇ……いやマジで」
「まぁそう言うなよ。ただ農耕神と言うより外連味があって良いじゃないか。そも、名で表すに十分な体があるだろう」
「縁以上の生産者はいないでしょ。それに料理人に二つ名はつきもの」
「料理人じゃないですし、変に気取ってカミサマ名乗るつもりなんて更にないっつってんです。どうしても片仮名表記したいならファーマーとかシンプルなやつ希望っすよ」
「似非敬語をやめれば私は考える」
「似非ってこれは銀さんと城一郎さんのせいでしょう……っと。それに考えるって冬美姉さん、やめるつもりないって言ってるよねそれ」
「ん。素直でよろしい」
「ははは、お熱いことだな! っと、そろそろバスの時間だろう、遅れないようにな」
「じゃあまたね。今度は私の店に来て」
「はいはい、お二人もお気をつけて。食材はいつも通り兄貴経由でお送りしますが、瑕疵がありましたらこっちに直接ご連絡ください。今後とも
ぼくのかんがえた(cv杉田の弟なら)これくらいのすぺっくがあるべきしゅじんこう
叡山 縁
十傑評議会第九席の叡山 枝津也の双子の弟
黒髪細マッチョでメガネ無し日焼け追加の九席な見た目
生産物のラベル、ブランドとして使うため商会(商社)を立ち上げており、何気に社長を名乗れる
ちなみに社名は誰かさんのそれに習いE.E.E(Enishi Eizan Enterprise)とした
漫画的なスキルを料理でなく生産に全振り
東方っぽい表記だと 作物の最適な育て方をなんとなく感じる程度の能力 持ち
手ずから生産した食材は全て至上の味となり、生半な料理人ではまともに活かせないほど
そのため基本的に十傑以上を目安とし現職・経験者・薙切一族にのみ卸している
遠月での行動指針は自身の能力で感じた生育条件の特定と明文化
つまり誰でも自分と同等の品を育てられるような手引書の作成を目的に活動している
小学校低学年の課題プチトマトの鉢植え生育で能力を発揮、口にした全員をソーマ的リアクションの渦に叩き込む
これに目をつけた兄貴(当然小学生)が小遣い稼ぎを目論んだことがコンサル業への第一歩とか妄想してみたり
別に兄弟仲は悪く無いがインテリヤクザと農家が仲良くする風景が浮かばず棘のある言葉が飛び交う関係になった
互いのスタンスは尊重しているので所謂仲良く喧嘩している状態
相互に影響を及ぼしており、それぞれ農業・コンサル業に関しても一定の力量を持つことに
最近兄貴の小物ムーブが目立つため、正しく支配者ロールができるよう言動矯正を画策中
調理技能ではなく特異な生産技能により小学校中学年で遠月入り、正確には兄貴が繋ぎを取った結果薙切一族に囲われた
遠月入り時点から継続して番外席次の座を与えられており十傑に次ぐ権利を持ち、自身の遠月入り以前の歴代十傑とも密な交流あり
基本的に表には出ず畑作に邁進しており、十傑未満の遠月生間では知名度が低い
たまに一色の畑の面倒も見ており極星寮周辺にも出没
学園内の至る所に田畑や果樹園等を持ち(委託を受け)うろちょろしているので、その辺を探せばエンカウントは比較的容易
イベントキャラなので遭遇時に判定がかかり、成功すると収穫物を分けてくれる
なお一般生徒の場合それを料理すると想定した味を作れず混乱を引き起こしスランプに陥るまでが確定イベント
精神を立て直せないと授業で成果を出せず退学になることもありタチが悪いが本人はそこまで把握していない
おまけ
極星畑で収穫した野菜を用いた料理教室ビジネス
地味にノウハウを兄貴が提供、経費+純利益の0.01%を回収する超薄利多売モデルのサンプルケース。
「くくく、利益率はほぼ無いようなもんだが、このモデルで間違いなく俺の支配域が広がるぜ!」
「(食材提供から運営のサポートまで格安で……これ支配ってか唯の足長おじさんじゃね? まぁゴキゲンみたいだし黙っとくか)」
自身の介入で極星畑の質が向上したため様子見に。
一部の最高品質手前の野菜だけは出荷前に選り分け、こども料理教室では使わせず一色の婦人向け教室へ回す。
「お前んとこの畑産だが、この辺はうちまであと一歩ってレベルなんでやめとけ。これ使うと分不相応に味が底上げされちまうからな」
「ふふ、素直に子供たちが心配だって言えば良いのに。次に普通の野菜を使って料理した時に落胆しちゃうかも、ってね」
「るせぇぞ慧!」
丁度手が空き、一色に誘われていたので後追いで料理教室へ向かう。
陰から軽く様子を見る程度のつもりだったが創真の飾り切り(ストライク?)にそれどころではなくなる。
「なんだこれおいやべぇな幸平くん! 料理人ってのはこんなもんまで作れんのか! 待て、もしかして適当にその辺の遠月生捕まえれば量産も効く……?」
「うおっ、いやちょっと分かんねーっす(急に出てきたなこの人! あれ、確か宿泊研修の時の?)」
「そっかー。すまん、邪魔したな。———おい慧、お前ならできるやつリストアップできるよな? ってかできろ、やれ。あれ絶対ぇー需要あんぜ。権利元と遠月巻き込んで大々的にビジネス化しねぇ? もちっと手ぇ加えて直に食えるようにすれば更に———」
「そうだね、飾り切りならあの授業の———」
「……なんだあれ」
「さ、さぁ……?」