―牛と戦っていた一般冒険者side-
「今やオラリオは世界の中心だ
「娯楽も幸せも冒険も、すべてがオラリオにはある」
誰が言ったのだったか、そんな甘い噂が、幼い時から既に世の中にはバラまかれていた。
それこそ世界の隅にあるような小さな村まで。
入り口に橙色の古びたランプをかけた村の小さな食事処で、酔っ払った父や大人たちが、興奮した様子でオラリオについて教えてくれていた。
神様が降りてきて人々に加護を与えているそうだ!まるでおとぎ話の世界じゃないか!
(いつかきっと僕もオラリオに行くんだ!)
俺はそんな大人たちの話を聞いては、そう信じて疑わない子供たちの一人だった。
村の大人たちが楽しそうに語るオラリオを、俺は楽園か何かだと信じて疑わなかった。
夢でもなんでも叶うものだと思って信じていたんだ
だが地の底に広がる魔の迷宮に蓋をするよう築かれた迷宮都市は、もう手遅れなほどダンジョンの敵意と欲から滲みだした悪意に侵され始めていた。
もしこの時俺がオラリオへ来なければ――
ふと目が覚めた。
村の喧騒と父の声はふと無くなって、張り詰めた静寂があたりを覆っている。
横たわった体は、寝起きの心地よいふわふわとした感覚で思考がまとまらず、何か考えようとするとすぐに霧散してどこかへ消えていってしまった。
どうにも、夢を見ていたらしい。
...嫌な夢だ。
村にいた幼い自分の夢、それに俺がオラリオに来ることを決めたあの日のものだ、最悪の目覚めと言って差し支えない気分だった。
とそこで一つ思い当たった。
――あのミノタウロスも夢の一つだったか?
自分を瀕死にまで追い込んだミノタウロスから逃れて――勿論今自分が安全である確証はないが――今生きていることを鑑みるに、あれが夢だったか、助けが来たのか。
ダンジョンで助けは期待できない、それがダンジョンでは常識だ。
死ぬときは死ぬ。
ならばアレは夢だったのだろう。
考えてみれば当然だ、上層にミノタウロスなんているはずがない。
(現に体のどこにも痛みなんて無いじゃないか)
きっと俺が生んだ妄想だと言い聞かせてみるが、どちらにせよそれは自分が弱いことを自覚していることになるわけで...
久々に見た夢を思い返して憂鬱になりながらも、行動を起こすため重い瞼をもちあげて重たい鉛のような体を起こすと、明るい光に目がくらんでつい目を瞬かせた。
同時に体の感覚が腹部に固まった血がべったりとついている様を伝えてきて、ミノタウロス戦が夢でないことを理解した。
脱力感と眠気から、目をつぶればすぐにでもまた寝てしまいそうだった。
襲ってくる眠気と戦いながら、強引に視覚情報を確保すべく奮闘していると、ぼやけた視界の中央に見慣れないものがあることに気づいた。
最近ようやく見慣れたダンジョンの通路、その中心にひとり男が立っていたのだ。
見慣れないシルエットだったことこら顔見知りではないことは容易に想像がついた。
その男はこちらに向けて向き直したと思うと
「おはようございます」
そう挨拶してきたのだった。
男の言葉を聞いた途端、何か違和感と共に冒険者として培った何かが警報を鳴らし、体に絡みつく靄が晴れるような感覚がした。
少しだけ思考がクリアになり、肌が粟立った。
眠気が消えて警戒が湧き出してきた。
何かがおかしい。
(
咄嗟に男に視界を走らせる。
焦茶色の髪に青い瞳、あごの下まで無精髭が残っている男。すぐに動けるよう僅かに曲げられた膝に、体が引き締まっていることからおそらく冒険者―
(いや違う)
ダンジョンであるにも関わらず鎧を着こんでいない、それにボロボロの青いシャツや無精髭、人と長く関わっていないのだろう。
明らかに事情がある人間、ただし冒険者に非ず。
だが先ほどから男から漂う、空気を軋ませるような気配は、明らかに先のミノタウロス以上だ。
何一つがちぐはぐ、まるで違和感の化身だ。
そもそもそれを抜きにしても、気を抜けばすぐに命を落とすこのダンジョンで防具も武器の一つも見当たらないこの男はどう考えても異常だった。
――ミノタウロスはこいつがやったのか?
なら助けた後に居座る必要もない、俺に何か用でもあるのか...?
「話を聞いていいですかね?」
――何を言ってるんだこいつは
またしても思考が止まった。
ミノタウロスから助けて、恩でも着せるのかと思えば、質問?
わけがわからなかった。
とにかく、そう切り出した男は俺に対して幾つか質問をしてきたのだった。
状況把握すらままならないまま質問をされた俺はその質問の内容でさらに困惑した。
「ここはどこか」から始まり、「誰が運営しているのか」「ここがいつからあるのか」「どれだけの人がいるのか」―――
どれも一つ一つの質問が繋がっていないようにしか思えない、何が聞きたいのか見当もつかないものばかりだったのだ。
どうするべきかと、呆けて黙り込んでいる俺を見てどう思ったのか、男は少し考えるそぶりを見せたのち
「あっそっかぁ」
などと呟いてどこかへ行ってしまった。
取り残された俺は、寄ってきたゴブリンの顎を殴りつけると、怯んでいる隙に片手をついてようやく立ち上がった。
壁の隅にもたれかかる魔石を詰めたバッグを背負い込むと上へ向けて歩を進めた。
一度状況を推理する時間が欲しかった。
例えるなら非日常の体験とでも言うべきか、上層にいるはずがないミノタウロスに襲われて、その痕跡もなく、気づいたら素性不明の男がいるときた。
わけがわからない。
「なんなんだよ...」
我ながら空虚な声が出た。
少しした後に、ロキファミリアが来てミノタウロスの謝罪をしてきたが、多少ロキファミリアにヘイトが溜まった。
命の危機に会って、素性不明の怪しい男に会って、結果酒の肴が増えただけという事実に打ちひしがれた、オラリオの昼下がり。
今日もオラリオは平和でした。
―スティーブside―
中々起きないクラフター兄貴を待って早数分、ぐらい。
死んだふりなのかどうか不安になってきました。
もしかしてこの人離籍してない?
というかこれはどういう状態なのだろうか、モーションを使っているという解釈で大丈夫か?
なんかもはやマイクラじゃないよなぁ...。
表情も指も表情も、まるで異世界のそれだ。
あ、身じろぎした。
そろそろ起きてくださいお願いしますなn(ry
そしてむっくり起き上がるクラフター兄貴、起きるまで割と時間がかかった。
最近待ったりすることが無かったからか、もうストレスが溜まってる気がするのです(脆弱)
ヤ゛ロ゛ウ゛ふ゛ざ゛け゛や゛が゛って゛ぇ゛(ベネット並感)
と、まぁ冗談はほどほどにして早速会話を図ろう。
どんな時でも挨拶は忘れてはならない、挨拶はコミュニケーションの必須テクだ。
古事記にもそう書かれている(適当)
では今回は古事記のおさらいも兼ねて、手順を追ってコミュニケーションをとってみましょう。
手順一。まずこちらを向いているクラフターに向け
リアル調のサーバーでシフト連打は不気味でしかないのでやめておこう(戒め)
「おはようございます」
...挨拶の返し無いけどもういいや、質問しよう。
なんか動きというか行動が、初心者みたいだし、知っていることだけを教えてもらったらもう立ち去ろう。
BANされるまで時間がもう無いかもしれない以上、手段を選んでいる場合じゃない。
手順なんて無かった、いいね?
強引に聞き出させてもらおう。
「話を聞いていいですかね?」
ただし答えは聞いてない(ゲス顔)
これが俺の持つコミュニケーション高等テク、その名も『質問に答えた方が面倒じゃなさそう』!
半ば強引に会話を進行することで、強引に質問に答えさせる技だ。
マイクラの世界で暇すぎて考え付いた技だから、試すのは彼が初めてだが...効いてそう、いや効いてる(確信)
じゃあ質問をさせてもらおうか。
「まず、ここはどこですか?」
返答無し。
...聞き方が悪かったか。
「この
返答無し。
「いつからありますか?」
返答無し。
「どれくらい人がいますか」
返答無し...技効いてませんねぇ!(驚愕)
何故だ!?
というか一切の反応を示さないのだが、これ中に人いる?いなくない?
おい待て、
現にこうしてクラフターが...
瞬間、俺の脳裏に電流が走った。
『マインクラフトじゃないみたいだ』
...あっそっかぁ(察し)
なるほど、俺はどうもとんでもない勘違いをしていたようだ。
彼はマインクラフターじゃない。
『村人』だったんだ。
さっきから一度もチャットもとい会話をしていない、つまりそもそも喋れない...
つまり村人だ(迷推理)
何故気づかなかったのだろうか、ここまでのテクスチャと、本来無いはずの動きまで追加したプログラマーだぞ?
NPCを改造して流用していても、なんらおかしくないではないか!
というより、あの鼻が目立つ見た目のままであるはずがない...!
つまり彼は村人だ。
聞いても分からないわけだよ。
だが逆に言えば、NPCがいるということはクラフターも少なからずいるということでは?
ならクラフターを探すのが先決だろう!
善は急げ、パパっと探してBAN回避だ!
もしクラフターがいるならきっと休憩所か拠点のような場所があるはず。
パパっと探して、ステータス修正もとい弁明、正式にサーバー参加して終わり!。
歩いてれば見つかるでしょ(適当)
簡単なお仕事ですわぁ...と、先にサバイバルに戻さなければ。
「/gamemode 0」
悪質扱いされると困るからね仕方ないね。
さて探索...あ、村人ニキ(推定)二人目とすれ違った、オッスオッス。
どれくらい時間がかかるだろうか?
今はこのサーバーのテクスチャをゆっくり楽しむ余裕もないから、早く運営に問い合わせたい。
願わくば明日にでも、この世界を心行くまで楽しみたいです(切実)
その後早くも階段を発見したスティーブは、階段で下の階層に降りたため
その間スティーブはダンジョンを徘徊する羽目になったため、スティーブは新手のモンスターか何かだとして冒険者の間でまことしやかに噂されるようになったのだった。
――なお、この噂に対して、何故か最終的にロキファミリアが調査に向かうことになる。
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いやぁホント、なんでこうなったんでしょうかねぇ...(困惑)