お姉ちゃんは0番改め機人長女リリカルハルナA's   作:Y.Sman

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ようやくお姉ちゃんがお姉ちゃんになりますw


第9話「再開、父よ・・・パクリだって?リスペクトと言ってください」

「よし、最後にもう一度確認するぞ」

そう言って作戦会議を始めるのはダンディなおじさん・・・首都防衛隊きってのストライカー、ゼスト・グランガイツ三佐です。

「A班は俺と正面、B班はクイントが指揮して裏手から回れ。スカリエッティ・・・」

おや、私ですか?

「はい?」

「お前はクイントと共にB班だ」

うん、予想はしてましたがクイントさんといっしょですか・・・。

「いい、ハルナちゃん?私から離れちゃダメよ?」

心配してくれるのは嬉しいんですけどねクイントさん、頭撫でるのは勘弁してください・・・。

 

機人長女リリカルハルナ

第9話「再会、父よ・・・パクリだって?リスペクトと言ってください」

 

皆さんお久しぶり、変わらず元気にやってるハルナちゃんです。

マリーとの喧嘩&仲直りのあとも色々ありました。

これまでその狂犬っぷりから単独行動だった私でしたがそれが落ち着いた為か漸く一つの部隊に腰を据えることになりました。

首都防衛隊特別捜査班、通称ゼスト隊。

クラナガンを護っている首都防衛隊、そこのお偉いさんのレジアス・ゲイズ准将直属の部隊です。

通常の部隊では複雑な命令系統のせいで即応性に欠けるとの事で准将がゼストのおっちゃんと立ち上げた少数精鋭の即応部隊です。

正規の部隊が到着するまでの間被害を最小限に抑える事が目的でその為結構横紙破りな行動も許可されています。

次にですが、なんと私に家族が出来ました。

あ、言っときますけど私がお腹を痛めて赤ちゃんを産んだわけではありません。

何でもこの年齢で一人暮らしは法律的にマズイらしく、その為保護責任者がつく事になったのです。

しかも驚く事に保護者となったのはクイントさんとそのご亭主、ゲンヤ・ナカジマさん。

そう、3期の主人公スバル・ナカジマのご両親ではありませんか!

何と言うことでしょう、以前3話で言ったとおりの事態になってしまいました。

しかもスバルとギンガに先駆けて・・・。

「と言うことは私は二人のお姉ちゃんと言う事でOK?」

「なにいってるの?」

おっと、口に出してしまいましたか。

クイントさんが怪訝な顔でこっちを見ています。

「いえ、クイントさんにはがんばってもらわないとな~と、ね・・・」

なんたってこれから家族が増えるわけですからね、いろいろ大変だとは思いますが頑張ってください。

「?ハルナちゃんって偶に訳分かんない事いうわね。それよりも任務中なんだから気を抜かないでね」

「ラジャー!」

今回の任務は違法研究をやっている施設の手入れです。

何でも研究員の中から密告があったとの事で突然ゼスト隊にお鉢が回ってきました。

恐らくレジアスのおっちゃんに手柄を取らせたい最高評議会のご老体達が手を回したんでしょう。

そうでなきゃ首都防衛隊所属のゼスト隊が同じミッドチルダとは言えこんなド辺境に派遣されるはずがありません。

「そう言えばハルナちゃん、この間の話考えてくれた?」

この間?

・・・何の話でしたっけ?

「はぁ~、その顔は覚えてない様ね・・・養子縁組の話よ」

おぉ、そういえば先週言ってましたね。

「そろそろ私達との生活も慣れてきたみたいだし本当の家族になってみないかって言ったじゃない」

そうでしたそうでした。

私は今クイントさんとゲンヤさんの家で暮らしていますがあくまで保護責任者と被保護者といった間柄です。

そのせいかクイントさん達は私との間に見えない壁みたいな物を感じたんでしょう。

だから私に娘にならないかって言ってきてくれたんです。

非常にありがたいお誘いではありますが・・・。

「・・・ゴメンなさい」

でも、私はそれを受ける事が出来ませんでした。

「・・・やっぱり私が家族じゃ駄目なの?」

聞いてくるクイントさんの表情はとても沈痛な物でした。

「いえっ!そうじゃないんです!」

そんな事はないと私は全力で否定します。

「養子にならないかって聞かれた時凄く嬉しかったです」

正直に言ってメチャクチャ感動しました。

私みたいなのを家族として迎えてくれると聞いた時は涙をガマンするので精一杯でしたもん。

「それじゃあどうして・・・」

「私は、まだ父さんの事を諦めていませんから・・・」

そう、父さん・・・ジェイル・スカリエッティの消息は未だ掴めていません。

それどころか生死すら判らないままです。

でも、だからこそ私が諦めるわけには行かないんです。

この身とハルナ・スカリエッティと言う名前、そして相棒のイェーガーと今までの思い出・・・。

私が父さんから貰った物で残っているのはこれだけなんですから。

父さんを見つけてこれからもっと沢山いろんな物を残したいんです。

「・・・だからクイントさん、ごめんなさい。せめて父さんの生死が確認できるまで、待ってください・・・」

私がそういうとクイントさんは深々と、なんて言うかえらくワザとらしいため息をつきました。

「はぁ~、だめだったかぁ」

そういうクイントさんでしたが顔は笑っていました。

そんな彼女の横で相棒のメガーヌさんがクスクスと笑っています。

「フラれちゃったわね」

「うっさい!しっかし・・・そういうことなら仕方ない、お父さんが見つかるまで待つことにしましょう」

あぁもう、何でこの人はこんなに母性溢れる人なのでしょうか・・・。

一度断ったのにそれでも待ってくれるというんです。

ちくせう、また涙が出そうじゃないですか。

「・・・ハイッ」

そのせいで私はそう答えるので精一杯でした。

「しっかし・・・ハルナちゃんのお父さん、スカリエッティ博士だっけ?こんないい子放って何処にいるのやら・・・」

全くです、私みたいな可愛くて賢くてプリチー(死語)な魔法少女を放っておくとは・・・。

「いい、ハルナちゃん?お父さんを見つけたら一発殴っておきなさい、話はそれからよ」

「ラジャーっ!」

そんな感じで私とクイントさんが話し、それをメガーヌさんが微笑ましく眺めていると・・・。

『ハンターリーダー(ゼスト)よりオールハンター(全隊員)。状況開始、突入せよ!』

ゼスト隊長からの突入命令に私達は早速行動を開始しました。

「っしゃ!行くわよ皆っ!!」

「ええ、何時でも!」

「ガッテン承知!」

クイントさんの声にメガーヌさんと私が答えます。

それを確認したクイントさんは眼前にある研究所の壁に向かって相棒であるデバイス、リボルバーナックルを構えます。

「どっせーい!!」

掛け声と共にクイントさんが壁をぶち破り私達は施設内に侵入します。

「全員動くな!時空管理局だ!神妙にしろーっ!!」

イェーガを構えながら投降を呼びかかけます。

当然素直に従う奴はいません。

近くにいた研究員と思しき人たちは一目散に逃走を図ります。

「逃げるなー!」

そんな彼らの背中目がけて発砲。

え?非殺傷だからって容赦無くねって?

大丈夫!今回は秘密兵器を用意しました。

「うわっ!う、動けない!?」

「バインドだと!?」

逃走を図った研究員達は私の弾丸を喰らった途端忽ちバインドで簀巻きにされてしまいます。

どうです!これが今回の秘密兵器、リストバレットです。

地球の警察、主に機動隊等で使われているネットランチャーを参考にして作ってみました

弾丸にバインドの術式をこめて発射、命中した対象をバインドで拘束する魔力弾です。

コイツなら弾丸の速度で飛んでいくから普通のバインドみたいに態々相手に接触したり罠みたいに予想進路に置く必要もありません。遠くにいる相手も簡単に捕まえられます。

結構便利なのにどうして誰も考えなかったんでしょう?

「クソッ!捕まってたまるかよ!」

施設の警備員でしょうか、研究員と一緒にいた魔導師たちがデバイスを構えます。

でも慌てる事はありません。なぜなら・・・。

「させない!行って、インゼクト!」

私には頼れる仲間達がいるからです。

メガーヌさんが叫ぶと彼女の周囲に画鋲に羽根の生えたような羽虫が召還され一目散に敵魔導師たちに殺到します。

「なっ!?」

「召喚術士かっ!?」

魔導師たちが一瞬たじろぎますが、それが彼らの敗因となりました。

「何だ?魔法が使えない!?」

「デバイスが機能停止っ!?さっきの虫か!」

メガーヌさんが召還した小型の召還虫インゼクト。

偵察等のほかにも機械の操作に干渉したりなんかも出来る優れものです。

ちなみに操作できるのは無機物だけで私の体の一部になっている機械は操れないとのことです。いや~、よかったよかった。

忘年会の一発芸とかで操られたりしたら笑えませんからね。

こうしてデバイスが使用不能になった魔導師たちは次々に私とクイントさんに取り押さえられていきます。デバイスに頼りすぎるのも考え物ですね。

「制圧完了。ここは後続の陸士隊に任せて先に進みましょう」

クイントさんを先頭に私達は研究所の中を進んでいきます。

途中先程のように研究員や警備の魔導師に遭遇しましたが難なく制圧、更に奥へ進みます。

結構地下深くまで降りてきたところでまたもや研究員に遭遇。

しかしこの二人、多少は機転が利くようで二手に分かれて逃走を開始します。

「ハルナちゃん!そっちお願い!」

そう言ってクイントさん達はもう片方を追いかけます。

「了解!待ちやがれー!!」

私も即座に追跡を開始しました。

とは言えもやしっ子の科学者と訓練を受けた戦闘機人、速攻で追いついて捕まえました。

「さぁ!あなたには黙秘権と弁護士を呼ぶ権利とカツ丼を注文する権利があるから大人しくしろー!」

「いや、訳わからないんだけど・・・」

バインドでグルグル巻きにされながらもツッコミを入れてくる研究員、結構大物ですねこの人。

ちなみに取調室で出されるカツ丼、刑事ドラマでは警察側が奢ってますが実際は容疑者の自腹とのこと。

しかも最近では自白に向けた利益誘導になるという理由から食べさせてくれないらしいです。

捕まえた研究員を立たせて連行しようとしたその時、少し先から物音が聞こえました。

「ん?」

音のした方を見るとそこには一枚の扉。

物音を立てずに扉の前まで行き、聞き耳を立ててみます。

やはり間違いありません。中からガサゴソと慌しい物音が聞こえます。

これはアレです。大慌てで荷造りしている音です。

昔父さんと研究所から逃げ出す準備をしている時にこんな感じの音を立てていました。

更に中から小っちゃい子供の泣き声も聞こえてくるじゃありませんか!

もしかしてここで行われていた違法研究と言うのは人造魔導師関連!?

聞こえてくる泣き声がその研究素体である子供の声だとしたら辻褄が合います。

もしそうなら一刻の猶予もありません。

こういう研究をしている手合いはガサ入れが入ると証拠を消しに掛かります。

その証拠の中には実験体にされている被験者の処分・・・殺害も含まれます。

(このままだと中の子達が危ない!!)

そう結論付けた私は早速ドアを蹴破り突入します。

「全員うご・・・」

同時に投降を呼びかけようとして目の前の光景を見て言葉を失いました。

「ドクター、こちらは終わりました!」

「データの消去も完了したわ、これで追跡のほうは大丈夫なはず!」

「こっちもです、早く脱出しましょう!」

カバンに荷物を詰め込んでいる紫がかった髪の少女二人。

片方はウェーブの掛かった長髪、もう片方はベリーショートです。

その隣で端末を操作している金髪ロングの少女。

「やーだー!この子もつれてくのー!!」

「ダメだぞスバル!もうにもつがイッパイなんだ!だからだからなくんじゃない!なくんじゃ・・・うえぇぇん!」

「もう、チンクまで泣き出してどうするの!スバルも泣き止んで?ね?」

「ちょっと!もう少し静かにしてよ!セインちゃんとディエチちゃんが起きちゃうじゃない!」

ぬいぐるみ片手に駄々をこねる蒼髪ショートの女の子とそれを諌めようとしてつられて泣き出す銀髪サラサラロングの女の子。

それをあやすスバルと呼ばれた子に似たロングヘアの女の子とスヤスヤと眠っている子供二人を抱きかかえた茶髪のメガネっ子。

うん、これはまだいいです。

研究員の助手と被験体の女の子ってことで説明がつきます。

室内のテラカオスな状態も脱走前の喧騒ってことで許容してあげましょう。

問題はその喧騒の中心にいる人物・・・。

「判ったよウーノ。もうちょっと待っててくれ。ああ、スバルもチンクも泣かないでくれ。すまないクァットロ、もうしばらくセインとディエチを見ててくれ・・・」

スーツの上から白衣を羽織った・・・。

「とう、さん・・・?」

ハルナの呟きに気付き白衣の研究員が振り向く。

「ハルナ、なのか・・・っ?」

それにつられてほかの子達も私に存在に気付いたようですが今の私には周りの事見えていませんでした。

あぁ、間違いありません。

気づいた時にはその人物目がけて走りだしていました。。

「なっ!?管理局か!ドクター達には手を、へぶっ!!?」

「「トーレ!?」」

途中で横から飛び出してきた誰かを弾き飛ばしたような気がしましたが今はそれどころじゃありません。

なんたって目の前にいるのは私がずっと探していた・・・。

「父さぁんッ!!」

 

Sideクイント

薄暗い通路を私は全速力で疾駆する。

ハルナちゃんとの連絡が取れないと知った直後、私はあの子の向かった方向に駆け出していた。

「大丈夫、よね・・・」

ハルナ・スカリエッティ。

私の後輩兼部下で、そして掛け替えのない娘。

血は繋がってないし書類上も保護責任者と披保護者という間柄だが彼女は間違いなく私の家族なのだ。

戦闘機人という最新の戦闘用サイボーグの彼女がそうそう遅れをとる事は無いだろう。

だが物事には万が一という物がある。

怪我もするし最悪命を落とすかもしれない。

実際管理局に保護された直後に巻き込まれたロストロギアの暴走で生死の境を彷徨ったと聞いている。

幸い一命は取り留めたがそんな奇跡が二度も起こるほど世の中都合よくできてない。

「お願い、どうか無事で・・・っ!!」

そこで私は通路に倒れている人影を見つけた。

最初はハルナちゃんかと思ったどうやらここの研究員のようだ。

バインドで拘束されたその人物は芋虫のように張って逃走を試みようとしているようだ。

「動かないで!アンタには黙秘権と弁護士を呼ぶ権利とカツ丼を注文する権利があるわ!」

「・・・それ流行ってるの?」

よく分からない質問をして来る研究員を再度組み伏せていると通路の先から声が聞こえてきた。

「・・・・・・!!・・・・・・っ!」

内容は聞き取れないが叫び声の様だ。

「まさか・・・!?」

あそこでハルナちゃんが誰かと戦っており重傷を負ったのだとしたら・・・。

すぐさま立ち上がり、扉を蹴破る。

「ハルナちゃんっ!!」

突入した室内で私が見たのは・・・!」

「うわぁぁぁぁんっ!!今までドコで何やってたのさー!!父さんのバカー!!!」

「・・・うん、ゴメンね、ハルナ・・・。だからその、そろそろ離れて、父さん苦しいんだけど・・・」

「トーレ!?しっかりして!傷は浅いわっ!!」

「ぐっ・・・すまん、ドゥーエ・・・私の変わりにドクターを、妹達を・・・頼む。ガク・・・」

涙と鼻水で顔をグシャグシャにしたハルナちゃんとハルナちゃんに抱きつかれそのまま絞め殺されかけている白衣の男。

それと何故か壁にあいた謎の穴とその前でグッタリしている短髪の女性と彼女を介抱している女性二人。

それらを呆然と見ている少女達数人・・・。

「・・・え?何これ、どういう状況?」

私はそれしか言えなかった。

結局メガーヌが隊長たちを連れてやってくるまでこのカオスな空間は続くのだった。

SideOut

「あ~、そろそろ落ち着いたかな、ハルナ?」

「ヒック、グスッ・・・うん。ところであの子等はどちら様で?」

「ん?あぁ、あれね。君の妹」

「・・・え?マヂで?」

「マヂで」

ハルナが父と再会し、妹達との邂逅を果たしていたそのころ・・・。

「・・・ところで私は何時まで通路に放置されていればいいの?」

廊下では簀巻きにされた研究員が一人、彼の呟きを聞くものは一人もいなかった。


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