お姉ちゃんは0番改め機人長女リリカルハルナA's 作:Y.Sman
仕事がクソのように忙しくて妄想を文章に起こす暇すらない今日この頃・・・。
台風で休みが取れたので何とか更新できました。
今後も多分更新は遅くなると思うので亀更新タグをつけておきますw
でも頑張って完結目指すので見捨てないでください(懇願)
Sideなのは
鳴り響く警報、明滅する赤色灯。
海でジュエルシードが発動したと聞いた私とユーノ君はハルナちゃんに連れられてブリッジに向かいます。
「状況はっ!?」
ブリッジに入るなりハルナちゃんが大声でききます。
「海鳴沖合にてジュエルシード複数起動!エネルギー量より6つと推定!」
すぐさま管制官のランディさんが答えます。
これまでの捜索で私達が見つけたジュエルシードは9つ、フェイトちゃんたちが見つけたのが恐らく6つだから残りのジュエルシードが全部発動したことになります。
「映像来ました!」
同じく管制官のアレックスさんがそう言った直後、ブリッジ正面に現場の様子が投影されます。
荒れ狂う海、空には竜巻が立ち上り、稲妻がとどろいています。
そんな空にポツリと小さな影が二つ。
「フェイトちゃんっ!」
そこに居たのは竜巻を避けながら必死に電撃を放つフェイトちゃんとアルフさんでした。
Side Out
機人長女リリカルハルナ
第19話「アニメじゃない!なの」
「全く、無茶をする子だわ・・・」
そう漏らすリンディさんですがその言葉には呆れではなく怒りや苛立ちが感じられる。
その矛先は恐らくフェイトさんにこんなことをさせている黒幕・・・彼女の母親で間違いないでしょう。
「それだけ焦っているんでしょう。あそこにあるのが最後のジュエルシードですから」
そう言いながらクロノは恐らくフェイトさんとジュエルシードを確保する算段を考えているのでしょう。
「あのっ!私今すぐ行って・・・!」
出撃を進言するなのは。
恐らく今すぐ言ってフェイトさんを助けたいのでしょう。
でも・・・。
「いや、行く必要はない」
うん、そう言うと思ってました。
「どうしてっ!?」
「あれだけのジュエルシードだ、放っておけば勝手に自爆してくれる。仮に封印できたとしても激しく消耗するのは間違いない。そうなったところをジュエルシードもろとも確保する」
「そんなっ・・・!」
愕然とするなのはを横目にクロノはフェイトさん捕獲の準備に取り掛かる。
「言いたいことは分かるわ。でもこれが私たちのやり方なの・・・」
非常かもしれませんがリンディさんの選択は間違っていません。
私達の任務は常に数百の世界と数千億の人命がかかっています。
今回の事件もそう、もし私達が失敗してジュエルシードが暴走すれば・・・地球だけでなくその周辺の世界も巻き込んだ次元断層で何百億と言う命が失われてしまいます。
それをさせないためにはまず助ける側にいる私たちの安全が確保されていなければいけません。
味方が一人無事ならそれだけ救える人が増えるのですから。
そして残念ながら、敵であるフェイトさんは抑えるべき損害に含まれていないのです。
「でも・・・」
なのはが助けを求めるように私に視線を向けます。
「・・・・・・」
でも私はそれに応えられない。
本音を言うなら今すぐにあそこに飛んで行ってフェイトさん達を助けたい。
しかし例の魔導師Aの姿が確認できていません。
もしフェイトさんを助けているときに襲撃されたら今度こそ、それこそクロノやなのはを巻き込んで大惨事になる可能性が捨てきれない・・・。
私は時空管理局の執務官です、大勢の局員と更に大勢の人の命を預かる立場の人間として軽率な行動はできません。
(それなのに・・・っ!!)
モニターの向こうで必死に嵐と戦うフェイトさんを見ていると胸が張り裂けそうになります。
何度彼女が竜巻に呑まれそうになり、その度に悲鳴が喉元までこみあげてきたことか・・・。
畜生・・・何が時空管理局だ、何が執務官だ!目の前で苦しんでいる女の子がいるのに、肝心な時に動けないでなんの意味があるんだ!
(・・・ナ、ハルナ)
「ふぇっ?」
悔しくて脳みそが沸騰しかけていたその時、唐突に父さんの声が聞こえそちらに・・・。
(ああ、こいつは秘匿通話だからそのままで、下手に反応すると艦長たちにバレるよ)
おっと、あぶないあぶない・・・。
私を始め姉妹達(ギンガとスバル含む)には頭に思考補佐用の補助脳が存在します。
その補助脳同士はデータリンクで結ばれていて念話とは別のプライベート通信ができるようになっています。
ちなみに父さんも脳みそに専用のブレインチップを埋め込んでるんで通話可能です。
(どうしたの?急に秘匿回線で通話なんてして・・・)
それを使って通話してきたってことはリンディさんやクロノたちに聞かれたくない内容ってことですよね?
(いやね、君が何やら悩んでいる様だったからね。大方彼女を助けに行きたくて仕方がないんだろう?)
鋭い。いや、私の顔に出てたんでしょうか?
(それで?どうするつもりだい?)
(どうするもこうするも・・・フェイトさんがばてるまでここで待機って方針で・・・)
私の返答を聞いた父さんは「はー、ヤレヤレ」とばかりに首を振ります、何かムカツク。
(時空管理局のスカリエッティ執務官としてはそれで正しいだろうね。それじゃあただのハルナ・スカリエッティはどうしたいんだい?)
(私は・・・)
それは遠回しに助けに行って来いって言ってるんですか?
それが出来れば苦労しませんよ!
(フェイト君の年齢は多分なのは君と同じ9歳・・・トーレと同い年の子が死にそうな目に遭っているのにハルナは平気なのかい?
(ッ!助けに行きたくないわけ無いじゃないですか!)
私が平気だと想っているんですか!?
妹と同じくらいの女の子が危険な目に・・・死にそうな目に遭っている。
助けたくないわけないじゃないですか!
(フフン、もう答えは出てるんじゃないか)
へ?
(ハルナ、君は難しく考えすぎだよ。まだ十代なんだからもっと後先考えずに突っ走ってみたらいいじゃないか)
(でも、そんなことしたら・・・)
(まぁ、一緒に怒られるくらいはしてあげよう。それに・・・)
(それに?)
(彼女たちの方は行く気満々のようだしね)
父さんの言葉に視線をそちらに向けると、なのはとユーノがアイコンタクトを指定す。
恐らく念話で内緒話をしているのでしょう、そしてその内容はきっと・・・。
「・・・・・・っ!」
「あっ!?おいっ!」
踵を返し転送ポートに向かって走り出すなのは。
それに気づいたクロノは慌てて制止しようとしますが。
「うりゃっ!」
「うぇっ!?グハッ・・・!」
とっさに私が食らわせた足払いで床と熱烈なベーゼを躱すことになりました。
「ごめんなさいっ!高町なのは、勝手に出撃します!」
「あの子のいる空域に緊急転送!」
そうこうしている間にユーノの手でなのはは現場の上空数百メートル上空に転送、レイジングハートを起動しながら降下していきました。
直後にユーノもなのはに続き自身を現場に転送。
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
そして残された私と突き刺さる皆の視線。
「あーこれはいちだいじ、なのはがかってにしゅつげきしたぞー。すぐにおいかけないとー」
とっさに渾身の演技で乗り切った私はなのはを追って転送ポートの上に乗ります。
「なっ!おいハルナっ!」
「さぁエイミィ!なのは達のピンチだ!急いで転送!ハリーハリーハリィィ!!」
何としてもこの場を乗り切りたい私はエイミィを急かします。
「あ?え?りょ、了解っ・・・!」
そのかいあって転送ポートは機動、私を現場海域に飛ばす準備にかかります。
「・・・ハルナさん、彼女達をお願い。それと気を付けて・・・」
怒るクロノや慌てるエイミィとは対照的にリンディさんは落ち着いた声と至極真剣な表情で私を送り出してくれます。
恐らく件の少年Aを警戒しての言葉でしょう。
「・・・了解っ!」
その負託に応えるべく私も気合の入った返事を返します。
とにかくこれで峠は越えました、後はこのどさくさで私の不祥事をうやむやにできれば逃げ切れます。
「あぁ、それと・・・さっきの事は帰ってからじっくり「おはなし」しましょうね♪」
畜生、逃げ切れなかったか。
Side アルフ
「フェイトちゃんっ!」
桜色の極光がフェイトを捉えていた竜巻を吹き飛ばした直後、頭上からその声は聞こえた。
雲の切れ間から降り注ぐ陽光・・・。
こっちの世界で天使の階段と呼ばれるそれから降りてくるのはあの白い魔導師だった。
私達がやって来る以前から本来の持ち主と共にジュエルシードを探していたフェイトと同じくらいの年齢の子供。
何度もフェイトの前に立ちふさがって邪魔をした、最初は弱かったけれど出会う度に強くなっていった女の子だ。
「うぉぉっ!フェイトの邪魔はっ・・・!」
またフェイトの邪魔をしに来たと思った私は残った力を振り絞りその魔導師に突撃する。
「待った!今は争ってる場合じゃないよ!」
しかしその直後私の前に展開されたシールドが行く手を阻む。
それはジュエルシードの本来の持ち主であるスクライア族の男の子だった。
「今は協力して暴走を止めないとっ!」
そう言うとそいつはバインドを展開して暴れまわる竜巻を捕まえる。
そこでさっきの白い魔導師がフェイトの方に向かったのに気づきそちらに目をやる。
「フェイトちゃん、一緒に止めよう!」
フェイトに自分の魔力を分け与えながら白い子が言う。
「えっ?えっと・・・うん」
助けてもらった上に魔力も分けてもらったためか、フェイトも強く拒否することが出来ず頷く。
それも一瞬の事で目に力の戻ったフェイトが愛用のデバイス、バルディッシュを構える。
ご主人様がやる気になったんだ、ならアタシも頑張らないとね。
アタシはスクライアの子の隣で同じようにバインドを放ち、残りの竜巻を拘束する。
「二人で一緒に、せーのでいくよっ!」
「・・・うんっ」
白い子とフェイトは頷き合うとデバイスに魔力を充填する。
白い子のデバイスに桜色の光が、フェイトのバルディッシュに金色の雷光が集約する。
暴れまわる竜巻の力が強くなり、いよいよバインドの強度が限界に達しようとしたところでようやくその時が訪れた。
「行くよ!せーのっ!ディーバイィン・バスタァァァァァっっっ!!!」
「っ!サンダーっ・・・!レェイジッッッ!!!」
合図で同時に二人のデバイスから強烈な一撃が放たれる。
桜色の閃光が海を割き、金色の轟雷が空を焦がす。
ジュエルシードもその暴走がもたらす竜巻も、全てを呑み込んで魔力の本流が吹き荒れる。
目の前が光に包まれアタシは思わず目を瞑る。
そしてそれが収まり瞼を開くとそこにあったのはさっきまでの嵐が嘘の様に静まり返った穏やかな海だった。
「・・・フェイトちゃん」
「・・・」
静かな世界で対峙するフェイトと白い魔導師・・・。
ジュエルシードを前にしているというのに、二人の間にあるのはとても穏やかな空気だった。
そんな空気の中見つめ合う二人・・・。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
訂正、三人・・・。
「って、ハルナちゃんっ!?」
「おっす」
いつの間に現れたのか、そこに居たのは以前やり合った銀髪の執務官だった。
Side Out
私の登場になのはもフェイトさんも大層驚いています。
「ハルナちゃん!?どうしてここに・・・?」
「どうしてって、そりゃなのはを追っかけてきたに決まってるでしょう」
全く、こんなに無茶をして・・・いや、共犯の私が言えた口じゃありませんが。
「あの、大丈夫なの?傷・・・」
そこでなのはの横にいたフェイトさんが恐る恐る聞いてきます。
敵の筈の私を心配してくれるとは、やっぱり根はやさしい子のようです。
「ああ、大丈夫ダイジョーブ。ちゃんと治ってるよ、ほら」
そう言って騎士甲冑をめくって傷一つないお腹を披露するとホッとしたように胸をなでおろします。
「そっか、よかった・・・」
ホントにいい子です。
こんな子を利用して危険な真似をさせるなんて・・・フェイトさんの親御さんには一言物申さずにはいられません。
まぁ、いまはそれよりも・・・。
「そう言う事なんで遠慮しないで、続けて続けて」
なのはとフェイトさんにそのまま友情を育むよう促します。
「ふぇっ!?急にそう言われても・・・」
「あなたは、その・・・私を逮捕しなくていいの?」
戸惑うなのはと困惑しながらも質問するフェイトさん。
「ああ、気にしないで。それも大事だけど今は二人がお話しする方が重要だと思うから」
毒を食らわばテーブルまで、ここまで来たら最後までなのはに付き合いましょう。
誰だって女子の友情に首突っ込んで馬に蹴られたくはありませんから。
それに・・・。
「それに、私はどっちかって言うと蹴っ飛ばす馬の方になりたいし・・・ねっ!」
そう言って私は左手の中華チョップ(形状は普通の左手)で飛来してきた弾丸を打ち返します。
「えっ!?」
「何っ!?」
驚く二人の前で打ち返された弾丸は元来た軌道で下手人に・・・慌ててシールドを張った少年Aに命中しました。
「なっ?ぐぁっ!?」
ギリギリシールドが間に合ったようですが飛んできたのは先日私に打ち込まれたのと同じ12.7㎜弾、シールドで防いでもその衝撃はすさまじくAは身体をのけ反らせます。
ちなみに今私を撃った狙撃銃は被弾の衝撃で手からすっぽ抜け海に落っこちていきました。
「てなわけで私はお邪魔虫を蹴っ飛ばしてくるから二人はそのまま続きをヤっててね、それじゃっ!」
「えっ?ちょ、ハルナちゃんっ!?」
なのはの制止も聞かずAに向かってぶっ飛んでいく。
なのはには申し訳ないけれど、こいつだけは私の手で倒さなきゃならない。
やり返したいって思いも無いことは無いけれどもし私がケリを付けなきゃ最悪父さんやお爺ちゃんズがこいつをブっ殺しかねない。
家族の手を汚させたりはしない、その為なら・・・私はどんな業だって背負ってやる。
「お久しぶりだね少年A君、自分が撃った弾丸に撃たれる気分はどうかな?」
「ぐっ、貴様ぁっ!」
おお、怒ってる怒ってる。
何で私が相手する輩って挙って沸点が低いのでしょうか?
ならお約束のコーメイ戦術です。
バカと悪党は煽って隙を作らせるに限ります。
と思っていた時期が私にもありました・・・。
「お前さえ、お前さえいなければっ!」
私が煽る必要もなく、Aは親の仇を見るかのような形相で腰からサーベル型デバイスを抜いて切りかかってきます。
太刀筋は鋭くそれなりに鍛錬なり訓練なりはしているようですが太刀筋が単調なのでこうして輪切りにされずに済んでいます。
「避けるな!」
「やだよ!痛そうだもん!」
「っ・・・!舐めやがってぇ・・・っ!」
失敬な、至極真面目に答えてますよ。
しかし・・・。
「・・・へたっぴだね」
「っ!ぶっ殺す!」
思わず口に出た言葉に切れるA。
だって仕方ないじゃないですか、あんまりにも直線的過ぎて防御以前に避けられるんですもん。
これは何と言うか、怒って直線的になってる以前に実力の問題でしょうね。
訓練は積んだけれど実戦は経験したことないって感じです。
あと注意力も散漫です。
ブンブン剣を振り回す彼の視線の先には・・・。
「フェイトちゃん、私の話を聞いて・・・」
幼女二人がお話をしていました。
刃が空を切る音と頭に血が上った若者の怒声がうるさい空に白い魔導師の子の声が響く。
「私ね、理由は分からないけれどずっとフェイトちゃんとお話ししなきゃって思ってた。でも、やっとその理由が分かったの」
そう言ってなのはは一呼吸おいてから言った。
「友達に、なりたいんだ・・・」
「えっ・・・」
その言葉に言葉を失うフェイトさん。
彼女は、高町なのははそのためにずっとフェイトさんにぶつかっていたのだから。
任務や義務感からではなく、フェイトさんと友達になりたくて何度も何度も・・・。
ここまで拒絶されたら普通は諦めるでしょうがなのはは決して折れることなくフェイトさんと向き合い続け、ようやく彼女に思いを打ち明けられた・・・。
・・・アレ?これってめっちゃ重要なシーンなんじゃね?
Aの方もすっかり二人に意識を集中してしまい、剣先がリーチの外にあるのにも気づかず機械的に振るわれては私の遥か手前で空を切ります。
これ、このままブっちめて逮捕しちゃってもいいのかな?
そう悩んでいると見る見るうちに空模様が悪くなり、周囲は暗雲に覆われてしまいました。
そして迸る稲光と轟音。
「ひゃっ!?」
驚き首をすくめるなのは、そして・・・。
「そうか、これは・・・」
何かに気づいた様子のAと・・・。
「・・・母さん?」
怯えた表情で空を見上げるフェイトさん。
まさかの事実!フェイトさんのお母さんは雷様だった!?
でもそれならフェイトさんが某任天堂のドル箱電気ネズミみたいに電流ビリビリさせているのも納得です。
てのは冗談で、こいつは空間跳躍型の遠距離攻撃です。
本来複数人で行うか強力な増幅器やエネルギー炉が必要な一撃、それをその「母さん」一人で行ってるとしたら・・・オーバーSの超ヤバイ大魔導師じゃないですか!やだー!
そういやさっきからアースラとの通信ができません。
この大規模魔法の余波で妨害されているだけならいいのですが、最悪既に撃沈された可能性も・・・。
私が最悪の事態を想像して青ざめているうちに頭上の雷雲はゴロゴロと帯電を続け、溜められた電力がついに撃ちおろされます。
「皆っ!そこから離れてっ!」
空を見上げていた全員が私の声に反応し退避を始めます。
彼女たちのいた所を通過する稲妻。
そう、『彼女達』のいた所です。
この攻撃を行っている下手人は私やなのはどころか味方である筈のフェイトさん達まで見境なしに電撃を撃ってきます。
しかしそれが違うと分かったのは直ぐでした。
それまで手当たり次第にばら撒いていた電撃は明確に一人を狙い撃ちするようになります。
「フェイトちゃんっ!」
そう、フェイトさんを・・・。
「っ・・・!」
ジュエルシードの強制起動にその後の戦闘、なのはから魔力を分けてもらったとは言え負担の大きい大出力の広域魔法の使用・・・フェイトさんの消耗は深刻なレベルに達しており、もはや回避起動もままなりません。
そんな彼女を雷は容赦なく襲い。
「まぁにぃあぁえぇぇぇぇっっ!!」
「えっ・・・!?」
彼女を安全圏に突き飛ばした私に直撃します。
「ぐっ、ぐぁぁぁぁあああああああああーーーーっっっ!!!」
「ハルナちゃんっっ!!」
やばい、これは冗談抜きで本気でヤバいです!
さっきから頭の中で警報が鳴り止みません。
『対電磁コーティング限界突破』『電装系損傷78%』『電磁筋肉に異常過負荷』『補助脳機能停止』
ざっと上げただけでも全部深刻なダメージです、身体の中の電子機器の大半がスクラップと化しました。
既に飛ぶ力すら失った私は重力に従い落下していた所をなのはに抱き留められます。
どうやら春先の海鳴湾へダイブしないで済んだようです。
フェイトさんはどうなったでしょう?
見れば顔面蒼白で私を見つめるフェイトさんをアルフさんが抱えて飛び去って行くのが見えます。
彼女の手にはジュエルシードが3つ。
残りはと探せば駆けつけたクロノが確保していました。
「無事かハルナっ!?」
険しい顔でクロノが問います。
「・・・メカの部分はほとんど、全滅。生身の部分は・・・なんとか」
イェーガーが守ってくれたのでしょう。
とっさに展開されたバリアが無ければ今頃電子レンジの中のネコ状態でした。
「分かった、とにかく今は動くな。すぐにアースラへ・・・!?」
そこまで言いかけたところでクロノがS2Uを構えます。
疑問に思いデバイスを向けた先を見れば・・・。
「・・・何故だ?」
偉く驚いた顔の魔導師Aが私を見ていました。
「何が、です?」
こちとら生焼けで体中痛いんです。
機械系が死んでるから痛覚カットも出来ず、喋るだけで体が痛むんですからあまり喋らせないで欲しいんですけど。
「分かっていたはずだ、守る必要は無いのに・・・なのに、どうしてだ!?」
ここまで来ても訳わかんないこと言ってる少年A。
これはあれでしょうか?
ストーリー上あの攻撃はフェイトさんが食らう筈だったと、でも主人公補正か何かで死なないんだから守る必要な無いだろうってことでしょうか?
・・・馬鹿じゃねーのコイツ。
「あんなの食らったら、普通死ぬでしょうが・・・何、を・・・いって・・・ぐっ」
この世界はアニメじゃないんです。
そこで生きているのはアニメの登場人物かもしれませんが怪我をすれば血が出るし、酷ければ命を失う事だってある。
あの攻撃をフェイトさんが食らって大丈夫な保証なんて、この次元世界のどこを探してもありはしないんです。
「おまえは・・・何を言って・・・」
訳が分からないと言いたげな顔でこちらを見つめるAに我慢の限界が来たのかクロノが吼えます。
「いい加減にしろ!お前は自分が何をしたのか分かっているのか!?次元管理法違反と公務執行妨害、そして・・・殺人未遂だ!今すぐに武装を解除しろ、でなければ・・・!」
これには私も驚きました。
常に冷静でクールなクロノが本気で激怒しています。
それもよりによって私の件で。
常に素っ気なくて仕事以外では殆ど話しかけてこないクロノ。
私が撃たれた時も冷静さを欠かなかったから心のどこかで彼から嫌われてるんじゃないかと思っていたからなおさら驚きです。
今にも撃ち殺さんばかりの殺気をぶつけられたAはたじろぎ、逃げるように私たちに背を向け・・・。
「待って!」
なのはの声に足を止めます。
「私、なのは!高町なのは。あなたの名前は・・・?」
フェイトさんにそうしたように、Aとも対話して彼を止めようと試みるなのは。
「ガヤルド。ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラ・・・」
謎の魔導師A・・・ガヤルドはそう名乗ると改めて私達に背を向け逃走します。
飛翔中に転送魔法を使ったのか彼の身体は霞のように空に溶けて消滅しました。
「エイミィ!追跡は最小限でいい、今はハルナが最優先だ!大至急転送の準備を・・・!」
クロノの声が遠ざかっていきます。
あれを食らったせいかそろそろ体力的に限界のようです。
まぁ今回はメカの部分が全損ですがそれ以外は何とか無事なので命に別状はないでしょう。
「てなわけで、おやすみ・・・ガクッ」
「なっ!?おいっ、ハルナっ!?」
「ハルナちゃんっっ!!」
皆の慌てふためく声を子守歌に私はそのまま寝落ちして・・・。
「・・・おはよう」
数時間後に目が覚めてすぐ、既に顔なじみになりつつあるアースラ医務室の天井に挨拶しました。
Side なのは
「幸い今回は大事に至りませんでしたが、あなた達の軽率な行動が部隊全体を危険にさらす可能性もあったんですよ?」
「ごめんなさい・・・」
「すみませんでした・・・」
海での戦いが終わってから1時間後・・・現在私とユーノ君はリンディさんからお叱りを受けています。
私達の行動がどれくらい軽はずみだったか、もし失敗したらどんなことになっていたのか・・・。
改めて聞かされると私たちがどれだけ危険な事をしていたのか・・・。
フェイトちゃんを助けたかった気持ちに偽りはありませんがリンディさんの言っていることも正しいのは私にもわかります。
「・・・はぁ、とは言え確かにあのまま静観していたら次元震が起っていた可能性もありますし、今回は不問にしますが・・・次はありませんよ」
最後に静かに、しかしはっきりとそう言ってリンディさんのお叱りは終わりました。
「「はい・・・」」
「結構、それじゃこの話はおしまい。さっき事件に進展があったの」
私達が反省しながらそう返事をするとリンディさんも険しかった表情を崩し、今後の方針に話を移します。
「あの、ハルナちゃんは・・・?」
そこでふと、私はここにいない友達の事が思い浮かび聞いてみました。
あの雷からフェイトちゃんを守ってまた怪我をしたハルナちゃん。
今回はそこまで重症じゃないらしいですが今もまだ医務室の中です。
「ああ、ハルナさんね・・・」
私の質問を聞いてリンディさんは困ったように苦笑します、何買ったのでしょうか?
「彼女の怪我に関しては問題ない。すでに意識も戻って明日には現場復帰できる。今は・・・」
そう言って会議室に置かれた机の中央に映像が投影されて。
『お、おわ、おわった・・・』
『はい、なのはちゃんの出撃幇助に関する始末書はこれで全部ですね。それじゃその後の無断出撃及び不明魔導との交戦に関する報告書がこっちです』
『始末書と同様提出は今日中なので急いでお願いします』
『・・・・・・・』
医務のベッドに逃げられないよう縛り付けられた状態で延々と書類を書かされているハルナちゃんがいました。
「君たちに対する無断出撃幇助と独断専行等・・・罰則行為が多すぎて医務室で謹慎中だ」
「最初は文句や悲鳴も上げてたんだけれどね、もうそんな気力も残ってないみたい・・・」
「うわぁ・・・」
精魂尽きかけた状態でも尚、ランディさん達に急かされながらひたすら始末書や報告書にペンを走らせるハルナちゃん。
私達の為とはいえ、始末書を書くだけの機械状態のハルナちゃんに私もユーノ君も若干引き気味です。
「昔から何度言っても鉄砲玉みたいに飛び出していくからな、ここらで痛い目を見ていい加減周りが心配しているのを分からせないと・・・」
ため息をつきながらぼやくクロノ君。
いつもからかわれて怒っているイメージでしたがやっぱりハルナちゃんが心配なようです。
「それでクロノ?今回の事件の首謀者が判明したって本当?」
「はい、ドクターからの証言のおかげで該当する人物を突き止めました。」
そう言ってクロノ君が卓上のコンソールを操作すると始末書マシーンと化したハルナちゃんの映像が脇においやられ、新たにモニター緩やかなウェーブのかかった長い黒髪の優しそうな女の人の画像が投影されます。
「あら?彼女はもしかして・・・」
「はい、プレシア・テスタロッサ。かつて大事故を起こしミッドチルダを追放された大魔導師です」
「テスタロッサ・・・そう言えばフェイトちゃんあの時『母さん』って・・・」
「やはり親子、かしらね・・・」
やはり親子だからか、写真の女の人はフェイトちゃんに似た優しそうな雰囲気がある。
だから分からない。
なぜフェイトちゃんがあそこまで怯えていたのか・・・。
「現在、エイミィが当時の事故の裁判記録など残った資料から彼女の足取りを追っています」
「それまでは向こうの動向待ちね・・・なのはさん」
どうやらまたしばらく動きは無いらしい、そう判断したところでリンディさんが私に話しかけてきます。
「あ、はいっ」
「そう言う事だから当面は待機になるわ、だから久しぶりにご家族にあっていらっしゃい」
そう言って私にお休みをとるよう促すリンディさん。
とてもありがたいです、ありがたいのですが・・・。
「はい。・・・あの、その・・・ハルナちゃんは・・・?」
やっぱりハルナちゃんが心配です。
机の隅に追いやられた映像の向こう側で今も「あ゛~」とか「う゛~」とか言葉になっていない声を上げながら作業を続けています。
私の言葉にリンディさんとクロノ君は顔を見合わせ、苦笑します。
「ん~、さすがにいい加減解放してあげないと可哀想かしら?」
「個人的にはもう少し反省していてもらいたいところですが・・・確かにこのままでは逆に艦から脱走しかねませんしね。上陸を許可してもいいと思います」
「そうね。と言うわけでなのはさん、ハルナさんも一緒に連れて行ってもらっていいかしら」
お許しは直ぐに出ました。
「はいっ・・・!」
忙しい時に不謹慎だとは思いますが嬉しくて思わず顔がほころんでしまいます。
帰ったら皆に何を離そうかな?
あと学校も最近お休みしてたから投稿して、アリサちゃんとすずかちゃんともお話しして。
でもその前に・・・。
『大きな光が点いたり消えたり・・・わぁ、流星かな?いや、違うな。流星ならもっとこう・・・ブワァってなるもんなぁ・・・』
先ずはハルナちゃんの魂を連れ帰ってこないといけません。
ディバインバスタ―でいけるかな?
ようやく名前の出てきた謎の魔導師A事ガヤルド君。
ちゃんとリリカルなのはの命名基準に則り車から取ってきましたw