お姉ちゃんは0番改め機人長女リリカルハルナA's   作:Y.Sman

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皆様お久しぶりです。
活動報告通り投稿することが出来ました。
目まぐるしく変わる状況に投稿する時間も意欲も奪われていましたが他の方のSSに元気づけられ続けることが出来ました。
ありがとう青川トーン先生!ありがとうおりん!
シンフォギアXV編での活躍も期待しています!
そんなこんなで無印編もいよいよ佳境、ハルナお姉ちゃんの激闘をお楽しみください。
それでは本編開始です。


第21話「笑えない決着と悲しい決着なの」

いよいよ決戦の時が来た。

相手はプレシア・テスタロッサ・・・大魔導師とまで呼ばれたオーバーS魔導師だ。

怖くないと言えば嘘になる。

それでも私は行かなきゃいけない。

フェイトの心を救うために、彼女の尊厳を守るために。

どうしてあの子の為にここまで必死になっているのか、考えたけれどなんてことはない。

あの子は私と同じ父さんの技術でこの世に生まれた命、いわば私の妹も同然だ。

ならお姉ちゃんとして、私にはフェイトを守る権利と義務があるわけだ。

何より、あんないい子を泣かせたプレシアを私は決して許さない、日本全国の・・・訂正、全次元世界のお母さん&お姉ちゃんを代表してお仕置きしてやる!

「さーて、ペイバックタイムだ。行くよ、イェーガーっ!」

『地獄の底だろうと喜んで』

ホントによくできた頼もしい相棒です、本当にあの変態な父さんが作った子なのでしょうか?どっかの研究所から攫ってきたとかじゃないよね?

ま、それは後で父さんに問い詰めるとして・・・。

「マギア・イェーガー、セットアップ!」

『anfang・・・!』

どこかこれまでよりも力強いイェーガーの声と同時に私の体が光に包まれる。

カッコイイBGMをバックに光の中を漂う私の体。

来ていた黒い執務官用制服が光の粒子に変わり下着姿に。

次いで下着も制服同様光りに変わる。(前回と違って今度はちゃんとスポーツブラを付けてます)

飛んできたパーツが次々に合体してデバイス形態のイェーガーに。

それのグリップを掴むと灰色の騎士甲冑が形成され背中に羽の様な浮遊型パーツが展開。

コンバットブーツの靴紐を結んでから防弾ベストを羽織り、ハンドガンの初弾を装填してホルスターへ。

ベストに予備の弾薬や手りゅう弾、肉厚なコンバットナイフを装着してから顔や腕にドーランを塗って迷彩を施す。

ライフルとショットガンに初弾を装填し、最後に足元に置いてあったロケット蘭ちゃんのベルトを掴みながらライフルを肩に担いで・・・。

『デエェェェェェェェェェェンッッ!!!』

最後にこの効果音、パーフェクトだイェーガー。

『感謝の極み』

え?何です?何か問題でも?

ふざけないでちゃんとやれって?

ふざけてませんー、これから決戦だから気合を入れたんですー。

「それじゃあ改めて、フェイトのお母さんをぶっ転ばしに行きますか!」

 

機人長女リリカルハルナ

第21話「笑えない決着と悲しい決着なの」

 

転送ポートから再び時の庭園に戻ると(格好もちゃんと元に戻しましたよ)内部は先ほどとはかなり変わっていました。

そこかしこに亀裂が走り、床が抜けて外が見えます。

恐らく動力炉を臨界までぶん回した負荷で庭園の崩壊が始まっているのでしょう。

その証拠に床の抜けた穴からは虚数空間が見えます。

こいつは次元断層が原因で次元空間に空いた穴で簡単に言ったらブラックホールみたいなもんです、この中では魔法も使えないので落ちたら上がってこれません。

これがあるって事はいよいよもってヤバいですよ、小規模ながら次元空間にひびがが入っているじゃないですか。

この亀裂が次元断層に変わるのも時間の問題・・・それを止めるためには庭園の動力炉とプレシアのジュエルシード、両方を止める必要があります。

一足先に突入したクロノたちを追って走るとすぐさま彼らに追いつきました。

「こんなところで何してるのさ?」

「見ての通りだ、足止めを食らってる」

そう言ってクロノがあごでしゃくった方を見ると、うわぁ・・・いるわいるわ傀儡兵の群れ。

えーと・・・ちゅう、ちゅう、タコ、イカ、ウニ・・・ざっと40体位。

「なのは、ユーノ。君達はハルナと一緒に動力炉の停止に向かってくれ」

クロノがなのは達に指示を出す。

「クロノ君は?」

「プレシアを止める。今、道を・・・!」

敵を蹴散らそうとクロノがデバイスS2Uを構えようとしたので止めます。

「はいストップ」

「何っ?」

「ハルナちゃん?」

皆が困惑する中、私は最前列に出ます。

「こいつ等は私が蹴散らすから、なのははユーノとアルフと一緒に動力炉へ行って。プレシアは私とクロノが相手する」

「ハルナっ!何を言って・・・」

「彼女の実力は本物だよ、クロノ一人じゃ返り討ちに遭う」

「だが・・・」

なおも食い下がるクロノの言葉を私は砲撃の轟音で遮った。

「時間が無いから異議申し立ては後で聞く!ぶっ飛べ、インパクト・カノーネッ!!」

そう言って私は密集した傀儡兵に魔力の塊を叩きこむ。

第6話以来のお披露目となる砲撃魔法はその名に恥じぬ威力を以て敵の防衛線に風穴をぶち開けた。

「今だ!行けぇっ!」

私の大声になのはは動力炉への道を一直線に飛んでいきます。

ユーノとアルフがその後に続いたのを見届けると私も玉座の間への道を駆け抜けます。

「待てハルナ!今の言葉は本当か?」

後ろからクロノが聞いてきます。

「ふぇ?プレシアの事?半分は嘘」

「ちょっ!?何だ半分はって!?」

驚来ながらも襲い掛かる傀儡兵をスクラップに変えるクロノに説明します。

「実際プレシアの実力は想像以上だったよ、でも私かクロノが頑張れば何とか勝てると思う」

「それじゃあどうしてなのは達だけで動力炉へ向かわせたんだ?」

隔壁をぶち破りながら言う私にクロノが胡乱気な顔で聞いてきます。

「単独じゃプレシアにたどり着けるか分かんないじゃん」

「僕や君が傀儡兵に遅れを取るとは思わないんだが?」

扉を傀儡兵もろともぶち抜いて広間に出た私とクロノ。

「いやほらさぁ、こういう状況じゃん?なら出て来るじゃない?」

「何が・・・っ!?」

直後飛来した無数の弾丸を私とクロノはシールドで防御する。

傾斜させたシールドの表面で何度も弾丸が火花を散らしながら跳弾する。

数秒して射撃が止むと部屋の角の暗がりから一人から人影が姿を現す。

「お前は・・・!?」

「ほら、居たでしょ?こうゆうしっちゃかめっちゃかな状況で介入してくる輩が・・・」

そう言って私は鋭いまなざしを先ほどの襲撃者、ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラに向けました。

 

Side クロノ

最悪だ、最悪のタイミングで現れてくれた。

ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラ、事件の渦中に突然現れハルナに襲い掛かってきた謎の魔導師・・・。

以降も何度かハルナに対して襲撃をかけてきたが、よりにもよって一番現れてほしくないタイミングで姿を現した。

しかもプレシアが巧妙に隠匿していた時の庭園にだ。

僕達だってアルフからの情報提供とプレシア本人の次元跳躍攻撃から発射位置を逆算してようやく正確な座標を割り出したというのに・・・一体どうやって?

いや、その方法を突き止めるのは後だ。

今はこいつを突破してプレシアを逮捕しなくては。

だが・・・。

「本当に、こんな時に・・・」

無意識のうちにいら立ちで歯を食いしばっているのに気づく。

次元断層が発生する前に何としてもプレシアを止めなければいけない、そんな一刻を争う時にこんな厄介な相手が立ちふさがるとは。

手には屋内での戦闘を想定してかこれまで使っていた大口径の狙撃銃ではなく小型のサブマシンガン―確かハルナの呼んでいた電動ガンカタログに載っていたFN-P90というタイプの銃だ―を構えている。

噂だと高い連射性と防弾ベストも貫く貫通力を持ったとんでもない銃だったはず。

それが無くてもなのはやフェイトを上回る魔力の持ち主だ、これまで魔法を使ったところを見たことは無いが決して油断していい相手じゃない。

そこで僕はようやく気付いた。

「クロノ、行って」

ハルナが無理を言って僕とプレシア捕縛に向かう事にした理由に。

「ハルナ・・・まさか、このことを!?」

どうやら彼女はこの混乱に乗じてガヤルドが襲撃してくる可能性を想定していたのだろう。

だから標的である自分からなのはを遠ざけ、彼女の安全を確保したというのか・・・。

「まぁ、来るんじゃないかなぁとは警戒してたよ。ホントに来てほしくはなかったけど・・・」

心底げんなりした顔で頭を掻きながらハルナは一歩前に出る。

「こいつの狙いは私だよ。だから悪いけどここからは一人でプレシアの所に向かって」

そう言ってイェーガーを構えたハルナを見て、彼女がやはりこうなる可能性を危惧していたのだと確信した。

「駄目だ!危険すぎる、ここは二人で・・・」

「ジュエルシードの臨界まで時間が無い、こいつに時間を取られてたら次元断層が防げなくなるよ」

これほど苦々しく感じたことが今まであっただろうか?

ハルナの言う通り、ここでガヤルドを相手にしていたらプレシアとジュエルシードを止める時間が無くなってしまう・・・。

これもハルナの想定の内だというのか?

だとしたらこれほど腹立たしいことは無い。

どうしてこの可能性に気づけなかったのか?どうして彼女は全部一人で背負い込もうとするのか・・・!

同時に僕は何とかして二人でこの状況を打開できないかを模索する。

しかし思いつかない。

どう対処しても二人で行動していたらプレシアの元に間に合わない。

二人でガヤルドと戦えばタイムアップ。

ガヤルドを無視してプレシアの所へ向かえば追撃されて大きな損害を受ける。

逆に僕が残ってハルナがプレシアのもとへ向かうとしてもこれもアウトだ。

仮にハルナが背中を向ければガヤルドは僕には目もくれず彼女の背中に銃弾を浴びせるだろう。

ほぼ八方塞がり、唯一の道はハルナを置いていくこと。

局員として、人として、一人の男として認められないその道を・・・。

「・・・さっさと終わらせて追いかけてくるんだ。倒れるなんて許さないからな!」

僕は選択した。

不甲斐ない自分と、勝手に自己完結させるハルナへの怒りを押し殺して絶対に死ぬなと言ってやる。

「フフンっ、お姉ちゃんに任せなさい!さぁ!ここ任せて先に行け!くぅ~、一度行ってみたかったんだよねー。あ、待てよ。このセリフ、死亡フラグなんじゃ・・・」

・・・うん、心配するだけ無駄そうだ。

かなり余裕そうなハルナに背を向け、僕は玉座の間に向かって走り出した。

Side Out

 

ガヤルドの隣を通り抜け、反対側の扉へ駆けて行くクロノ。

案の定ガヤルドはクロノには目もくれず私にガン飛ばし続けている。

とりあえずプレシアとジュエルシードの方は大丈夫になった。

クロノは石頭でムッツリだけど私なんかよりも優秀な魔導士ですから、相手が大魔導師プレシアでも後れを取ることは無いでしょう。

なので・・・。

「おかげで心置きなくこっちに専念できる・・・!」

イェーガーもみなぎっているのかマガジンから追加でカートリッジを装填します、私に無断で勝手に・・・。

「・・・一つ、聞きたいことがある」

私がこのフリーダムな相棒に帰ってからどんな制裁を加えようかと考えていると、突然ガヤルドが私に声をかけてきました。

今まで私の話なんぞ聞く耳持たず問答無用で殺しにかかって来た相手がです。

「・・・お聞きしましょう」

私もこいつに聞きたいことがあったし、それにまだ彼は間に合います。

原作に介入したいだけなら私も協力を惜しまない、だからこれ以上罪を重ねないでほしい。

そんな思いもあり彼の質問に応じました。

「・・・お前は、転生者なのか?」

「ええ、そうです。そう言うあなたも?」

私が問い返すとガヤルドは頷きました。

「そうだ、ずっとこの時を待っていた・・・なのに・・・!」

彼顔が見る見るうちに憎悪に歪み、手にしたP90の銃口を私に向けます。

「お前が全てをぶち壊したんだっ!」

惹かれるトリガー、閃光、銃声。

回避行動をとりながら展開したシールドの表面で5.7x28mm弾が火花を散らします。

「くぅ・・・っ!」

あぁ、もう!結局このパターンかよ!

「この世界で生まれ変わって凄く嬉しかったんだ!本物のなのはに、フェイトに会えると!だからずっと準備してたんだ、魔法を学び、戦う術を学んだ!なのに・・・ようやくこの時が来たと思ってやってくれば俺がいるべき場所には見たことも無い奴が、お前がいる・・・ふざけるな!」

そう言って今度は左手に持った短機関銃・・・ヴェクター CRBをフルオートで発砲してきます。

アメリカ製サブマシンガンから放たれた45APC弾の猛射が被弾し減衰していたシールドを叩き割る。

「チッ・・・!」

脚を止めるとやられると判断した私は踵に仕込まれたローラーダッシュで高速走行を開始。

聞いただけでむせそうになる駆動音を響かせながら床や壁を駆けまわり機銃掃射を必死にかわします。

私が通過したすぐ後ろを鉛のシャワーが降り注ぎ前衛アート的な内装にリフォームしていく。

「何でお前が、お前だけが!なのはやフェイトと一緒にいられるんだ!」

「んな事、言われても・・・うわっ!?」

もし最初に私を襲撃しなければ違う結果になっていたでしょう。

管理局員を襲撃した犯罪者としてではなく、フリーの魔導師として協力することもできた筈です。

でも彼は私を撃ってしまった。

結果として彼は管理局から追われる身となり、アースラメンバーからのヘイトを一身に受けることになってしまった。

「なら、だからこそ投降してください!今ならまだ間に合う、私を殺したらそれこそ取り返しのつかないことになっちゃいますよ!」

アクセルキーパで牽制射を放ちながら私は説得を試みる。

自慢じゃないが私はなのはからそれなりに好かれている。

クロノやリンディさん達アースラメンバーとの信頼関係も築けましたしアリサとも友達です、すずかとの関係は何やらアレですが・・・。

何より、私に何かあったら父さんやおじいちゃん達が何しでかすか分かったもんじゃありません。

確か父さん達が登場するのは3期・・・つまりアニメは後2シーズンあるという事です。

今投降して、罪を償えば次回作でならなのは達と共闘もかなうかもしれない。

だというのに・・・。

「情けのつもりか?ふざけるなっ!お前さえ・・・お前さえいなければっ!!」

ヤベェ!こいつが沸点低いの忘れてた!

頭に血が上った状態で私に向けて弾丸をぶちまけるガヤルド。

それでも両方同時に弾切れになることは無く、左右交互にリロードしてどちらかは確実に私に照準を向けたままです。

思ったよりも冷静なのか、それとも怒っていてもできるくらい動作が身体に染み付いているのか・・・。

前者だと厄介ですが後者だともっと厄介です。

身体に染み付くと言う事はそれだけ反復練習・・・訓練を重ねてきたという事です。

剣の腕も実戦で洗練こそされていませんがしっかりと訓練を受けた太刀筋でしたし・・・。

何よりコイツの魔法は未知数なのです、どんな奥の手があるのか分かったもんじゃありません。

そんな理由から攻めあぐね、マルチタスクで打開策を考えていたのですがもう一つ大事なことを忘れていました。

私とクロノがこの部屋に入った時、彼は『既にここにいた』んです。

一体いつからいたのかは分かりませんがトラップの準備をする猶予くらいはあったようです。

「うぇっ!?」

足に何か引っかかったと思った時にはすでに遅し・・・ワイヤーに引っ張られて隠されていた手りゅう弾の安全ピンが引っこ抜かれました。

 

Side なのは

「っ?」

何だろう、一瞬何かを感じた。

ジリジリとした焦りの様な、何か嫌な感じ・・・。

(ハルナちゃん達に何かあったのかな?)

プレシアさん・・・フェイトちゃんのお母さんを止めるためにハルナちゃんとクロノ君は玉座の間へ向かった。

広い庭園の中、分厚い壁や天井に遮られ、二人の魔力反応も感知できない。

なのに感じた予感のような何か・・・ハルナちゃん達が危険な目に遭っているのかも・・・。

「なのはっ!」

「ふぇっ?」

そんなことを考えていたせいでしょうか、いつの間にか背後に近づいてきた傀儡兵が手にした戦斧を振り下ろすまで気づきませんでした。

スローモーションで迫ってくる大きな刃・・・。

「なのはぁっ!!」

ユーノ君の声が聞こえる。

でもたぶん間に合わない。

「・・・っ!」

思わず目をつぶってしまったその時聞きなれた声がしました。

「サンダーッレェイジッッ!!」

その声を耳にした直後、閃光と轟音が辺りに轟きます。

目を開ければ周囲にいた傀儡兵は殆どが破壊され煙を吹いています。

そして見上げれば・・・。

「フェイトちゃんっ!」

バルディッシュを構えたフェイトちゃんがいました。

その眼には再び光が宿り、抜け殻の様だった先ほどとは打って変わり強い決意に満ちています。

「フェイトちゃん、来てくれたんだね・・・」

「うん・・・追いかけなきゃ、行けないから」

「えっ?」

私が首をかしげるとフェイトちゃんは明後日の方角・・・おそらく玉座の間のある方を向きながら続けます。

「母さんが行っちゃう前に、私のこの思い・・・ちゃんと伝えないといけないから」

「・・・うん、そうだね」

「それに、ちゃんとお礼も言いたいし・・・」

「えっ?」

お礼?ハルナちゃんに?

「あの子は私に選ばせてくれた。私が人形じゃないって、フェイト・テスタロッサっていう一人の人間だって教えてくれたから・・・」

「あっ」

そこでようやく私はハルナちゃんの言葉の意味を理解しました。

出撃前にハルナちゃんがフェイトちゃんにかけたあの言葉・・・。

最初はフェイトちゃんに早く立ち直って欲しいから言ったんだと思っていました。

でもそれだけじゃなかった。

ハルナちゃんはフェイトちゃんに来てもいいしアースラに残ってもいいと言ってました。

それはつまり言われるままに動くんじゃなくて自分で選びなさいって言う意味だったんです。

遠回しにフェイトちゃんに自分が人形じゃない事を自分自身で証明しなさいって言っていたんだと思います。

明るくて妹が大好きで、ちょっとおバカな感じがするけれどとてもやさしい・・・。

これもそんなハルナちゃんのお節介なのでしょう。

「・・・うん、そうだね。お礼言わなきゃねっ」

「うんっ、そのためには・・・」

直後壁を打ち破って現れる大型の傀儡兵。

これを倒さないと先には進めなさそうです。

「装甲が厚い、一人では撃ち抜けない。でも、二人でなら・・・」

力を貸してと言うフェイトちゃんからのお願い。

これもハルナちゃんが背中を押したからかもしれません。

「っ!うん、うんっ!」

だから私も、後でハルナちゃんにお礼を言うために、フェイトちゃんと一緒にここを切り抜けるっ!

「いこう、フェイトちゃん!」

「うんっ」

傀儡兵から繰り出されるビームを左右に回避しながら私とフェイトちゃんは反撃を開始しました。

Side Out

 

耳が痛い・・・。

腕も痛いし足も居たい、背中も腰も・・・たぶん痛くないところを探した方が早い感じで体中が痛い・・・。

「・・・グッ、いでっ」

うかつでした、まさかブービートラップまで用意してくるとは・・・某魔術師殺しさんの戦法はリリカルな世界でも有効なことが実証されてしまいました。

今まで魔法戦に特化しすぎた弊害ですね、ケイネス先生の事を笑えません。

帰ったら魔法以外を使った戦術も勉強しないと。

「チッ、まだ生きているのか・・・」

帰れればいいなぁ・・・。

煙の向こうから現れる人の話を聞かない転生者、ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラ。

作者でも名前を打ち込むのが面倒でコピペで済ますレベルの長い名前のあん畜生。

そいつが短機関銃のマガジンを交換しながらこちらに近づいてきます。

「最後に聞かせろ、どうしてあの時フェイトを助けたんだ?お前なら彼女が無事なのはわかってたはずだろう?」

銃口を向けながらそんな質問をしてくるガヤルド。

そう言えば私の原作知識の事は知らないんでしたね・・・。

「そんなこと言われても、原作の知識があいまいですからね・・・何が起こるかなんて知りませんよ」

「えっ?そうなのか?」

それが予想外だったのか呆けるガヤルド・・・。

恐らく彼は十分すぎる原作知識を持っているのでしょう。

父さんが露出過多な魔法少女(19)にホームランされる事以外にもいろいろ知っているんでしょうね・・・う、羨ましくなんかないんだからっ!!

「第一、決まった未来なんて存在しませんよ・・・」

ここが仮に「リリカルなのは」の世界でアニメに登場する人物がいたとしてももうここはアニメの中じゃない。

そこに居るのも同じ姿で同じ性格の、同姓同名の別人です。

ここはそんな皆が一日一日を精いっぱい生きている現実の世界何です。

そこに決定づけられた未来なんて、シナリオや台本なんて存在しない・・・紛れもない現実の世界なんです。

「・・・そうか。いや、そうなのだろうな」

私の言葉にガヤルドは目を閉じながら答えます。

「確かに未来なんて決まっていない、未来はこれから作るもの。そのために俺はこうして戦ってるんだからな・・・」

おや?これは説得のチャンスなのではないでしょうか?

「そうですよ。今ならまだ間に合います、投降して罪を償えばもしかしたら次のストーリではレギュラー入りできるかも・・・」

「そうだ!だからお前から本来の居場所を取り戻すことだってできるはずだ!」

だからどうしてそうなるんだこのやろう!

「お前がいなくなれば皆も目を覚ます!そうに決まってる!」

やっぱコイツ馬鹿だ!

「そうすればみんなの心は俺に戻って来る・・・!」

しかもコイツハーレム願望持ちかよ!

戻って来るも何も最初からあの子たちの心はオメーの所にねーから!

「・・・あー、何か疲れてきた」

思わず口に出しちゃいましたが当のガヤルドは自己陶酔に入っちゃってるのか聞いていません。

「安心しろよ、彼女たちは全員俺が守って見せるから」

「へー、ぜんいんってだれ?」

得意げに言い放つガヤルド、ここはテキトーに聞き流して隙が出来た所を拘束して先に進みましょう。

「勿論全員さ!皆守ってやる、幸せにしてやるよ!なのはもフェイトも、はやてもヴォルケンリッター達も・・・」

まぁ、なのはとフェイトはまず候補に挙がるでしょうね、すさまじく気に入りませんが・・・。

「はやて」と「ヴォルケンリッター達」と言うのは分かりませんが今後出てくる人たちなんでしょう・・・。

さて、まだ続くみたいですが誰が出てくるのやら・・・。

「マテリアルズもフローリアン姉妹も、ユーリとイリスも、スバルもギンガも、ティアナもキャロも、ヴィヴィオもナンバーズ達もアインハルトも・・・」

・・・あ゛ぁ゛ん゛?

コイツイマナンテイッタ?

スバル?ギンガ?ナンバーズぅっ!?

気が付けばいつの間にか私は立ち上がり目の前の馬の骨のすぐ至近まで接近するとその右腕を野郎の顔面に叩き込んでいました。

この間僅か1.4秒・・・人体の構造どころか完全に物理法則を無視していますね、鳥山先生のマンガかよ?我ながらどうやったのやら・・・。

「ぶぶぅっ!?」

豚の様な泣き声をあげながら飛んでいく人の形をしたナニカ。

壁に激突するも辛うじて意識は保っていたのか起き上がろうとする。

頑丈ですね、近接戦用に装備した「超むせるアームパンチver1.55」をもろに食らったのに生きてるどころか意識を手放さないなんて・・・。

とりあえず「それ」の所までツカツカと近づきます。

「が、はっ・・・な、なにが・・・」

起き上がろうとしてた「それ」が何か言おうとしているのでとりあえず髪の毛を掴み、顎に膝を叩きこんでおきます。

「ふんっ!」

「がっ!?」

反動で頭が跳ねあがった所に私はすかさず追撃を加えます。

右、左、裏拳、肘打ち、地獄突き・・・。

反撃しようとしていたので鼻っ柱に頭突きを叩きこんで黙らせてからなおも続けます。

「おい、今なんて言った・・・?」

何でしょうね、理性では拘束した上でアースラに連行しなきゃいけないと分かってはいるんですけれど・・・。

「誰を守って、幸せにしてやるって?」

胸の奥底から熱く、どす黒い感情がマグマのように湧き上がってきて止まりません。

それでいて脳みそは凍り付くぐらい冷徹に冴え渡り、目の前のこれをどうやって始末しようかを淡々と計算している・・・。

ああ、なるほど・・・私、今本気でキレちまってます。

「ひ、ひぃぃぃぃ・・・!」

恐怖に駆られたのか床を這いながら私から逃走を図ろうとする男・・・。

「・・・おい、どこに行く気だ?」

それに向けて私は左腕のフリーガーシュレークを発射。

「がっ・・・!?」

延髄に直撃をくらい床に接吻する男の襟首をつかんで回収用のワイヤーを巻き取る。

ずるずると顔面を擦りながら私の元まで引きずられてくる馬の骨。

よく見ると気を失っているので一発殴って目を覚まさせます。

「ぶぅっ・・・はぁっ・・・!?」

「スバル?ギンガ?ナンバーズ?・・・ふざけるなよテメェ・・・っ!」

ギリギリ理性が働いてくれたのか、非殺傷に設定されたアクセルキーパ―をゼロ距離で猛射します。

「あっがぁあああぁぁあぁぁっっ!!??」

距離が近すぎてシールドは展開できず、バリアジャケットもゴリゴリと削り取られてついに砕け散ります。

「お前が、お前ごときがっ!あの子達の名前を呼ぶ事すら烏滸がましい・・・っ!」

カートリッジの切れたイェーガーを放り捨てながら火山の噴火の如く、目の前にいるナニカに対して罵詈雑言と共に拳をぶちまけます。

殴る、殴る殴る殴る殴る蹴る殴る殴る殴る肘殴る殴る殴る膝殴る殴る殴る殴る殴る頭突き殴る殴る殴る・・・。

拳林弾雨にさらされ、肉の詰まったサンドバックは見る見るうちに無残な姿に変わっていく。

「あまつさえそれを「守ってやる」?「幸せにしてやる」だぁ?いいだろう、よっぽど殺されたいらしいな貴様ぁ・・・!」

起き上がろうとするボロ雑巾をひたすら激情のままにけたぐり回す私・・・。

「ぶべっ、がっ・・・!ひっひぃっ!なんで、何でそんなに怒って・・・何なんだよお前はぁっ!?」

振り下ろされた踵を必死に床を這い転がり回って回避し、怯えた表情で私に問う男、ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラ・・・。

今までさんざん殺そうとして置いて、相手が何者なのかも調べなかったんですか。

なら教えてやりましょう。

私が何者なのか、自分が何をしでかそうとしていたのかを・・・。

「スカリエッティ家長女にしてナカジマ家長女・・・ハルナ・スカリエッティだっっ!!!」

先ほどプレシア・テスタロッサに言ったものと同じ言葉を、あの時以上に誇りと力を込めて宣言してやりました。

案の定ガヤルドの顔が驚愕に染まります。

「スカリエッティ・・・だと?それじゃあお前まさかジェイル・スカリエッティの・・・!?」

何かゴチャゴチャと言っていますがそんなの無視です。

「マギア・イェーガー!」

私の命令でイェーガーが手元に戻って来る。

「ロードカートリッジっ!!」

マガジンを交換した直後に薬室にぶち込まれるカートリッジ、その数バースト三斉射分9発。

全身に魔力が行き渡り、過剰供給された魔力があふれ出す。

熱変換された魔力が揺らめき、逆立つ髪の毛と合わせて怒りのオーラのように周囲の空間をゆがませます。

「ま、まてよ!お前は騙されてるんだ!お前だって知ってるだろう?あいつは犯罪者だぞ!いずれミッドチルダを滅茶苦茶に・・・!」

「黙れ」

私は静かにそう言うとリストバレットを撃ち、ヤツの手足と耳障りな騒音を垂れ流す口をふさぎます。

「むぐぅっ!?」

「私からあの子たちを奪おうとしただけじゃ飽き足らず父さんまで侮辱したその罪、万死に値する・・・っ!否っ!!一万回死んだ程度じゃ到底足りんっ!!!」

足元にベルカ式魔法陣が展開し、膨大な魔力が迸る。

周囲の床が、柱が、天井が、分解され魔力に変換されていく。

なのはみたいな大規模魔力収束が出来ないから無意識のうちにISが発動して漏れ出す魔力を補填する。

集めた魔力をイェーガーの中で力任せに固めて固めて固めまくる。

圧縮され密度が急激に高められ一転に凝縮された結果魔力は超質量物質・・・要するに極小サイズのブラックホールに変質します。

こうして完成したマイクロブラックホールが装填されたイェーガーの銃口をガヤルドに向けて・・・。

「百穣回死んで償えぇぇっっ!!!!グラビトロン・デトネイタァァァァァッッッ!!!」

絶叫と共に引き金を引いた。

投射された超重力の塊は周辺の空間を歪ませながらガヤルドにぶち込まれる。

「ぐぎっ、が、ぁぁあっ!?があぁぁあああぁぁあぁぁぁぁああああぁああああああああっっっ!!!」

全身を押し潰すようにかかる重圧にガヤルドが悲鳴を上げる。

私の耳の超高感度収音マイクからは野郎の骨がミシミシと軋む音が聞こえてきます。

やがて圧縮された超質量は崩壊を始め熱と光を放ちながら縮小、消滅しました。

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・」

肩で息をする私とその視線の先で大の字になって倒れるガヤルド。

え?殺したんじゃないのかって?

非殺傷設定に決まってるじゃありませんか。

いくらプッツンした私だってさすがに殺したりはしませんよ、実際に妹にちょっかい出されたわけじゃありませんし。

何より妹達が人殺しの家族とか周りから言われるのは嫌ですからね。

「ぜぇ、ぜぇ・・・お前なんぞに、妹達はやらんっ!!」

ヤムチャ状態で倒れ伏す馬の骨をバインドで拘束してからそう高らかに宣言した私はクロノを追って玉座の前向かおうとして・・・。

「ま、まて・・・」

背後から聞こえた声に足を止めました。

「・・・まぢかよ」

恐る恐る背後を振り向くと、倒したはずの転生者・・・ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラが立ち上がりこちらを睨んでいました。

必殺のグラビトロン・デトネイターの直撃をくらい、その前にもさんざん滅多打ちにした結果その身は正にボロ雑巾のようです。

蒼いバリアジャケットは完全に砕かれ半裸状態、銀髪も埃や煤に塗れて輝きを失っています。

しかしその憤怒に歪んだ貌、その紅い瞳は相も変わらず憎悪に満ちた眼差しを私に向けてきます。

てかあれくらって立ち上がれるとか頑丈すぎでしょ、転生者特典か何かでしょうか?

「ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなっ!!」

直後膨れ上がるガヤルドの魔力。

そういやコイツ、なのは達の倍近い魔力持ってるんだっけ・・・。

そりゃもう某集英社の看板マンガの戦闘民族よろしく轟々と闘気が体中から噴き出しています。

スパウザーとかつけてたら計測不能で壊れるレベルです。

おかげであいつを簀巻きにしていたバインドが魔力で弾けましたよ。

「そこは俺の居場所だ・・・!俺が主役なんだっ!」

そう言って腰のサーベル型デバイスを抜き放つ。

足元に見た事の無い魔法陣が展開され、デバイスの刃に魔力が集まっていきます。

「・・・・・・っ!!」

そのとんでもない威圧感に再び戦闘態勢をとる私。

「お前が・・・お前がっ!お前がぁあっ!!」

聞いただけで呪われそうな怨嗟に満ちた絶叫をあげながらガヤルドはデバイスを振り上げ・・・。

その直後彼の足元から突然生えた光の柱に飲み込まれました。

「っ!・・・え?」

最初はそう言う攻撃なのだと思い一瞬身構えましたがその光が私に注がれることも光の中から彼が飛び出してくることもなく、「桜色と金色の」極光は螺旋を描きながら庭園の壁や天井をぶち抜き、そのまま通り過ぎていきました。

光りが収まった時そこにはガヤルドの姿はなく、あるのは盛大に穿たれた巨大な穴・・・。

「・・・イェーガー、さっきのは何?」

『・・・推論ですが魔力波長からして高町嬢とテスタロッサ嬢の魔法と思われます』

なのはとフェイトの魔法?

そう言われると確かにさっきの光、桜色と金色でしたけれど二人の合体攻撃だったの?

うん、何それ怖い。

ガヤルドとの距離があと数メートル近かったら私も巻き込まれてましたよ。

てかフェイト、自分のお家ぶっ壊しちゃダメでしょうに・・・。

「・・・そうだ、あの自称オリ主はどこ行ったの?」

そこで私は光に飲み込まれたガヤルドの事を思い出します。

『魔力反応なし、先ほどの魔法は秘殺傷設定でしたから死んではいないと思いますが・・・』

と言う事はあのままお外にぶっ飛ばされたってことですか。

「えぇぇ、マヂかよ・・・」

また仕事が増えましたよ、こんな次元振で荒れてる海の中から人一人捜索するなんて・・・!

「はぁぁ・・・とりあえず今はプレシアを止めるのが先決かな?」

とりあえずエイミィに周辺の捜索を頼んだ(押し付けたんじゃありません、ええありませんよ!)私は今度こそ玉座の前向かって駆けだしました。

にしても・・・本当に締まりませんね!

遂に決戦だと思って意気込んできてみれば、私がやったことと言えば一山いくらの傀儡兵薙ぎ払ってから妹達に手を出そうとしていた色ボケ転生者をボコっただけじゃないですか!

もうちょっとこう・・・活躍できると思ったのに!

思い返せば思い返すほど私の胸にはフラストレーションがたまっていきます。

振り上げたこの腕はいったいどこに下ろせばいいんだ!?

そう思っていると実にタイミングよく、私の進路を妨害するように傀儡兵の群れが時代劇の悪者のようにわらわら現れて立ちふさがります。

「・・・ありがとうっ!いっぱい出てきてくれてっ!」

イェーガー曰く、この時私はすっごくイイ笑顔を浮かべていたらしいです。

そんなオリジナル笑顔状態のまま、私は傀儡兵の集団に向かって突撃をかましました。

 

Sideプレシア

先ほど大きな揺れが起った・・・。

侵入した管理局の魔導師が暴れているんでしょう。

私を捕えるために、私からアリシアを取り上げるために。

でももう遅い、もうすぐアルハザードへの道が開かれる・・・。

「もうすぐよ、もうすぐ・・・っ!?」

そこで私は気づいた。

揺れが止まったと・・・。

戦闘の振動は今も断続的に響いている、しかし次元振が起こす継続的な振動が収まっていた。

『そこまでですプレシア・テスタロッサ』

広域回線で念話が届く。

投影モニターが表示されるとそこ映っていたのは管理局部隊の指揮官と思しき緑の髪の女だった。

『次元振は私が抑えています。庭園の動力炉も停止、あなたの元には執務官二名が向かっています」

何処までも私とアリシアの邪魔をしてくれる・・・!

でも今は我慢よ、ジュエルシードは私の手中にある。

これさえあればいくらでも挽回は可能なのだから・・・。

「忘却の都アルハザード・・・そんなものはもう存在しない。かの地に眠るという英知も軌跡も、とうの昔に失われています」

だから今は彼女の話に付き合おう、私に必要なのは再びジュエルシードを起動させるための時間なのだから。

「いいえ、アルハザードはあるわ。失われた奇跡も時間と空間の狭間に確かに存在しているのよ」

だというのに、私の言葉は次第に熱がこもっていった。

「仮にアルハザードが存在したとして、そこに至ったあなたは一体何を成そうというの?」

知れたこと、たどり着いたならすることなど一つしかない・・・っ!

「取り返すのよ、アリシアとの失われた時間を。こんなはずじゃなかった世界の全てをっ!」

そう叫んだ直後だった、背後で大きな爆発音とともに壁が崩れ大穴が穿たれる。

「はぁ、はぁ・・・ふざけるなよコンチクショウ・・・!」

粉塵の中から現れたのは黒い髪の男の子と例の小娘・・・。

ジェイル・スカリエッティが制作した戦闘機人の試作機・・・声を大にして私の計画を、アリシアの復活を邪魔すると豪語した銀髪の小娘。

「ハルナ・スカリエッティ・・・!」

忌々し気に私がその名を口にする中、二人の執務官はズカズカと玉座の間に入ってくる。

バリアジャケットはボロボロ、額や頬に切り傷を負い血が流れているが、その眼に宿る戦意は通信で話した時と変わらず彼女達の心が折れていないことを如実に表していた。

「あんたほどの天才が分からないわけ無いだろう?どれだけ技術が進歩しても、どれだけスゴイ魔法が生まれても、死んだ奴はなぁ!絶対に生き返らないんだよっ!」

「世界はいつだって、こんなはずじゃないことばっかりだ・・・それに立ち向かうのか、それとも現実から逃げるかは個人の自由だ。だけど・・・自分の勝手な悲しみに無関係な人間を巻き込んでいい権利は誰にもありはしない!」

彼らの言葉が私をいらだたせる。

知ったようなことを言う小僧と、相も変わらずアリシアの復活を否定する小娘。

だが同時に私は焦りも覚えていた。

本局の執務官が二人・・・仮に魔力が上で相手が消耗していたとしても油断していい相手じゃない。

さっき一方的に攻撃できたのは瀕死の取り巻きを守っていたから、それがいない今なら心置きなく私を攻撃してくる。

あの小娘の悪辣さはアリシアを狙ってきたことからよく分かる、今同じことをされれば間違いなくもう一人の執務官に対応できない。

庭園の残った魔力をかき集めながら私が打開策を思案していると・・・。

「母さん・・・」

二度と聞きたくなかった声が聞こえてきた。

Side Out

 

「母さん・・・」

私とクロノがプレシア・テスタロッサと対峙していると、彼女を挟んで反対側の通路からフェイトとアルフがやってきました。

どうやらなのはとは別行動をとり、プレシアの所に駆け付けたようです。

「・・・」

「・・・・・・」

何を言えばいいのか分からず言葉に詰まるフェイトとただ無言でフェイトを睨むプレシア。

どこかでなのはが戦っているのか、時折庭園が揺れる以外はこれまでと打って変わって静まり返る玉座の間。

「・・・ごふっ!?」

その沈黙はプレシアの吐血によって破られた。

「なっ!?」

突然の喀血に私とクロノは驚愕する。

思えばミッドを追放されてから、プレシアの記録は一切途絶えています。

もちろん病院などへの通院や診察の記録もありません。

恐らくずっとアリシアを蘇らせるために生命創造の研究を続けてきたのでしょう。

病気になってもろくに治療もせず、ボロボロの身体に鞭打って何年も何十年も・・・。

「母さんっ!」

崩れ落ちるプレシアにフェイトは駆け寄ろうとする。

「・・・何をしに来たの」

しかしプレシアの嫌悪に満ちた眼差しと言葉に足を止めてしまう。

「消えなさい・・・あなたにもう用はないわ」

明確な拒絶の言葉にフェイトは一度俯くも、顔を上げると決意に満ちた表情で口を開きます。

「・・・あなたに、伝えたいことがあって来ました」

再び静まり返る玉座の間。

「私は、アリシア・テスタロッサじゃありません」

「・・・」

フェイトの言葉をプレシアは黙って聞く。

「あなたが造った人形なのかもしれません。ただの失敗作で、出来損ないなのかもしれません。アリシアになれなくて、期待に応えられなくて・・・」

フェイトの表情が一瞬陰る。

一度俯き口を閉ざすも、フェイトは顔を上げプレシアに続ける。

「だけど私は、フェイト・テスタロッサは・・・あなたに生み出してもらって、育ててもらったあなたの娘です!」

フェイトがぶつけた思いの丈に対し、プレシアは・・・。

「・・・フフフッ、あっはっはっはっはっ・・・!」

嘲笑で返した。

「だから何だというの?今更あなたを娘扱いしろと!?」

それはアリシアになれなかったフェイトに向けた物か、それともフェイトを愛せなかった自分に向けた物か・・・。

プレシアの叫びは、どこか怒りと悲しみを孕んだものだった。

「・・・あなたが、それを望むなら」

彼女の慟哭に、フェイトはまっすぐに返す。

「あなたがそれを望むなら私は、あなたを誰からも、どんなことからも守る・・・」

そう言って手を差し出すフェイト・・・。

「私が、あなたの娘だからじゃない。あなたが、私の母さんだから。生み出してもらってからずっと・・・今もきっと、母さんに笑って欲しい、幸せになって欲しいって言う思いだけは本物です。私の、フェイト・テスタロッサの・・・本当の気持ちです」

今度こそ本当に全部、プレシアに対するありったけの想いと共に差し出されたその手を・・・。

「・・・くだらないわ」

プレシアがとることは無かった。

「っ・・・!」

フェイトの顔が悲しみに染まる。

話は終わりだとばかりにプレシアはデバイスで地面を突く。

彼女の足元に魔法陣が展開され、ジュエルシードが一層まばゆい輝きを放ち始める。

「くっ・・・!」

同時に庭園が一層激しく揺れ、庭園の内外問わずそこかしこで紫電が迸る。おそらくリンディさんが次元振を抑えきれなくたってきたんだ。

『艦長!ダメです、庭園が崩壊します!』

それを裏付けるかのようにエイミィから連絡が入る。

『クロノ君たちも脱出して、崩壊まで時間が無いよ!』

「そうは言うけどジュエルシードはどうすんの!?このままじゃ次元断層が・・・!」

そう、ここから脱出できたとしても次元断層が発生したら変わりません、アースラどころか地球を始め周囲の世界も巻き込まれてしまいます。

『大丈夫!規模なら次元断層は発生しないから!』

・・・うん、なら心置きなく逃げましょう!

「てなわけでクロノは出口の確保お願い!私はフェイトとアルフを連れてくる!」

「今回ばかりは君に同感だ。そっちは任せた!」

「まかされたーっ!」

落下してくる瓦礫を直射魔法で撃ち落として転送ポイントを確保するクロノに背を向けて私はフェイトに走る。

「フェイトーっ!」

私の声が届いていないのか、フェイトは今にも泣きそうな顔でプレシアを見つめている。

「母さん・・・」

「私はアリシアと行くわ。いったでしょう、私はあなたが大嫌いなの・・・」

アリシアの入ったポッドに寄り添いながらプレシアはフェイトに拒絶の言葉を投げかける。

そしてまるでそれが合図だったかのように彼女のいた足場が崩落した。

「っ!アリシアっ!母さんっ!!」

慌てて駆け寄るフェイトだがすでに遅く、プレシアとアリシアは虚数空間に堕ちていく。

しかし崩落はなおも止まらず、今度はフェイトの足元も崩れ、彼女の身体が投げ出された。

 

Side フェイト

「あっ・・・」

ガクンと一瞬揺れたと思った瞬間、私の身体が浮遊感に包まれる。

「フェイトっ!」

背後からアルフの叫び声が聞こえる。

何とか身体を捻って振り向くとこちらに走ってくるアルフの姿が見えた。

そしてその姿が地面に沈んでいく。

(ちがう、アルフが沈んでいるんじゃない、私が落ちてるんだ・・・!)

恐らく崩落に巻き込まれたのだろう、私はの体が重力に従い落下していく。

慌てて飛行魔法を展開して上に上がろうとする。

「あがらないっ!?」

でも魔法は発動せず、私の身体は重力に従って落ちていく。

そこで私は自分が時空の裂け目にいるのだと気付いた。

(そうか、虚数空間・・・!)

魔法が使えない原因に気づいた私は、どこか達観・・・いや、諦めの様な感情に包まれていた。

もう脱出はできない。

でも、いいかな・・・このまま、母さんやアリシアと一緒に行くのも・・・。

(フェイトちゃんっ!)

そこで頭をよぎるのはあの子の顔。

(お願い!話を聞いて!)

何度も、何度も私にぶつかって語り掛けてきたあの白い魔導師。

(友達に、なりたいんだ・・・)

「っっ・・・!!」

そうだ、このままあの子に会えなくなるのは嫌だ。

まだ何も話せていない、何も伝えていない!

それなのに、このままあえなくなるなんて、嫌だっ!

思わず伸ばした右手・・・。

取る者のいるはずの無いその手に、私は確かに感じた。

強く、強く私の手を握る手の感触を。

「えっ・・・?」

恐怖に瞑っていた瞼を開けると。

「フェイトぉっっ!!」

銀髪の執務官がそこに居た。

「な、なんで・・・!?」

「助けに来たっ!」

私が困惑していると彼女はただ簡潔にそう言った。

「で、でもここでは魔法が・・・」

「なら、魔法以外を使えばいいっ!」

そう言って右腕で私を抱えた執務官は左腕を上に向け。

「カッとべ鉄拳!フリーガーシュレークっ!!」

発射した・・・。

「えぇっ!?」

うん、思わず声を上げた私は悪くないと思う。

Side Out

 

ロケットモーターの閃光と共にワイヤーという尾を引きながら天に向かって飛んでいく私の左腕・・・。

今回装備した義手は二種類。

右腕にあのガヤルドとかいうハーレム願望野郎をぶっ飛ばした格闘戦専用義手の「超むせるアームパンチver1.55」、そして左腕がこの「飛ばせ鉄拳フリーガーシュレークver2.45」です。

度重なる改修とバージョンアップを経て、かつての無誘導ロケットパンチは光ファイバーを用いた有線誘導ミサイルパンチへと進化を果たしました。

ちなみにこの誘導用ワイヤー、パンチの回収機能も兼ねる優れもの。

ワイヤーの強度も強く、かなりの重量を保持することが可能。

(だから、こういう無理な使い方もできる!)

飛んでいったゲンコツは玉座の間の天井に突き刺さり、落下していくはずだった私とフェイトをつなぎ留めます。

「んぎっ!?」

あ・・・やばいです、何か今左肩から「ゴキッ」っていう聞こえちゃいけない系の音が聞こえてきました。

案の定左腕に力が入らないばかりか激痛まで走りだしました、これは間違いなく脱臼しちゃってます。

軽い女の子とは言え、人二人分の重量+落下による運動エネルギーにワイヤーは耐えられても私の肩関節は耐えられなかったみたいです。

てか痛い!超痛い!

(でも泣かない・・・だってお姉ちゃんだもんっ!)

いつも通り脳内麻薬を大量分泌して痛覚をマヒさせてからワイヤを巻き取り始めます。

キュルキュルとリールがワイヤーを巻き取り、徐々に私とフェイトの身体は上に登り始めます。

「・・・って遅っ!」

こんな使い方想定していなかったせいか、私とフェイトの上昇速度は非常にゆっくりしたものでした。

しかし私達が上にたどり着くのを待ってはくれず、庭園は徐々に崩壊の速度を速めていきます。

「・・・・・・」

上昇を始めてからフェイトは一言も話しません。

ただ黙って眼下に、プレシア・テスタロッサとアリシア・テスタロッサが落ちていった方向を見つめています。

「フェイト、お母さんの事は残念だった。でも今は顔を上げて!」

「・・・えっ?」

私の言葉にフェイトが私を見る。

「虚数空間の影響圏から脱したらすぐ魔法であそこまで飛んでいくんだ。崩壊まで時間が無い、一秒だって惜しい。だから今は下を向いちゃダメだ。顔を上げるんだ、生きて・・・帰るために!」

「帰る、ため・・・?わたしの、帰る場所は・・・」

フェイトにとって帰る場所とはこの時の庭園、それが崩壊を始めたということは彼女の帰る場所は無くなったと言う事。

でも・・・。

「帰る場所が一つだなんて誰が決めたんだ!?フェイトがいなくなったらアルフはどうなる!?」

私の言葉にフェイトは「ハッ」となる。

「フェイト―っ!」

見れば未だ退避せず、崩れかけた足場から顔をのぞかせ私達を見ているアルフがいた。

「頑張って!フェイトちゃん、ハルナちゃんっ!」

その隣には、やはり避難せずにこちらに手を伸ばすなのはの姿もある。

「皆帰りを待っているんだ。本当の自分を始められるんだ、新しい帰る場所だってきっと作れる。だから、生きるのを諦めるなっ!!」

最後にとある歌って戦うアニメの名言を拝借してそう叫ぶと、フェイトは顔を上げて上に、なのはとアルフに向かって手を伸ばす。

未だに互いの手が届く距離ではない、でもそこには彼女の生きたいという思いが感じられた。

『急いでハルナちゃん!崩壊が加速してる!そこももう持たないよ!』

だというのにエイミィから告げられた現実はとても無粋だった、もうちょっと空気読んで待っててくれてもいいじゃない!

実際フリーガーシュレークを打ち込んだ天井もひび割れはじめ、いつ突き立てられた拳が抜け落ちてもおかしくありません。

「ちっくしょう!まにあえぇぇぇぇぇっっっっ!!!」

毒づきながら私は脚のスラスターを全て展開、全力でブースターをふかします。

さっきのガヤルドとの戦闘で攻撃を躱すのに結構使ったので燃料が持つか不安ですがもう悠長なこと言っていられません。

上昇速度が速くなり、落ちてきた足場が近づいてきます。

あと20メートル、15メートル、10メートル・・・。

あと5メートルで虚数空間の効果範囲から出られる、そう思ったところで天井が崩落を開始、突き刺さっていた私の左腕が抜け落ちました。

「げっ!」

「あっ!」

さすがに足のブースターだけでは推力が足らず、私達の体は再び落下を始める。

なら、せめて・・・!

「なのはぁっ!受け取ってっ!!」

せめてフェイトだけでも、そう思い私は渾身の想いを込めてフェイトの身体を上へ投げます。

「っ!ダメッ!!」

だというのにフェイトは効果範囲外に届いたと思った瞬間魔法で加速して私の所に戻って来るじゃありませんか!

「なっ!?バカーっ!何で戻ってきたの!?」

そう怒鳴りつけてしまいましたがフェイトは委縮する様子もなく毅然とした様子で返してくる。

「私の帰る場所にあなたもいて欲しいからっ、こんな形でお別れ何て・・・嫌だっ!」

「っ・・・!」

何ともまあ嬉しいことを言ってくれます。

非常時だというのに目がウルっとしてしまいましたよ。

全く、そんなこと言われたら諦めかけていた私だって・・・もっと生きたいと思ってしまうじゃありませんか!

「うぉりゃぁぁぁぁぁぁああああああああっっ!!」

気合を入れなおして脚のスラスターを全力噴射。

ついでに天井が崩れ、使い道の無くなった左腕をパージして身を軽くします。

強度重視で造られたえらく重たいロケットパンチを切り離したことでかなり重量を削減出来たのか、私達の身体は再び浮かび始めます。

無理なブーストでスラスターが異常過熱を起こしているのをフラスコ・オブ・アルケミストで強化、ついでに足りない燃料も魔力からFOAで作り出します。

そんなことできるのかって?

魔力を炎に変換できるんです、なら炎を燃焼させる酸素や可燃性ガスに変換するのだって不可能じゃありません。

「二人ともっ!頑張って!」

「もう少しだっ!諦めるな!」

いつの間にか魔法で飛翔し、安全圏ギリギリまで接近していたなのはとクロノが私達に手を伸ばす。

「・・・・・・っ!」

片腕の私に代わり、抱きかかえられたフェイトがなのは達に手を伸ばす。

もう少し、あと3メートル・・・!

それなのに、あと少しなのに・・・届かないっ!

燃料はおろか魔力も枯渇し、FOAで無理くり持たせていたスラスターももはや限界に達していました。

私自身もFOAの連続使用が祟り、もう意識を保っているのがやっとの状態です。

「ちっくしょう・・・!」

こんな事なら左腕を切り離さなければ・・・いや、そうしたらここまで上がって来ることすら出来なかったです。

万事休す・・・いや、まだ諦めんな、何か手はあるはず・・・!

どうする?考えろ?何か、何か無いのか?

混濁する意識の中で必死に脱出の糸口を探していると。

『マスターっ!膨大な魔力が接近、下方です!』

「何ッ!?」

イェーガーの報告に下を向くと、眼下の虚数空間の中から膨大な魔力がこっちに向かって吹きあがってきます。

魔力と言うファンタジーな名称ですがれっきとしたエネルギーです。

水や炎に変換していない素の状態でもそこにはしっかりと質量が存在します。

しかし物理法則に干渉、しかも人二人を浮かせるだけの魔力量なんて人の限界を超えています。

そんなことが出来るものと言えば・・・。

「まさか、ジュエルシード?」

そして今この場でジュエルシードを操れるのは・・・。

「っ・・・FOA、フルドライブ!」

いや、今は脱出が最優先です。

手放しかけていた意識をなんとが手繰り寄せ、最後の力を振り絞る。

とは言えFOAで魔力を燃料に変換して脚のスラスターに充填している暇はありません。

スラスターもまた補強しなきゃいけませんし、そんな時間はもう残っていない。

なので背中を押すこの魔力を水素ガスに変換、点火して爆風で一気に上まで上がります。

危険ですがこれだけの爆発力なら・・・!

「フェイト!シールド張って!」

私が何かをしようとしているのを察したのか、フェイトは指示通りにシールドを展開します。

クロノも私の行動を予感したのか、青ざめた顔でなのはを引っ張って退避します。

「ぐぅ・・・!」

FOAの負荷で神経が焼けるように痛い。

血流も加速しているのか、鼻血がツーっと滴り落ちる。

でも拭いている暇なんて無い、一心不乱に周りの魔力を手当たり次第に変換していく。

そして十分な量の水素が集まったのを確認した私はフェイトにしっかりつかまる様に言ってからイェーガーを下方に向けた。

「届えぇぇぇぇっっ!!」

引き金が引かれ、撃針がカートリッジを叩く。

銃口から吹きあがった発砲炎が水素に飛び火し、一気に燃焼を開始する。

膨れ上がった炎は私の背中を思いっきり叩き、私達の身体は上に向かって一気に加速する。

「ぐうぅぅぅぅ・・・!!」

まるで背中を熱した金属バッドでぶん殴られた様な衝撃と熱に耐えながら私はスゴイ速度でなのは達に向かって飛んでいく。

伸ばされる二人の手、それに対し私とフェイトも手を伸ばし・・・ようやく取ることが出来た。

「脱出するぞ!エイミィ、転送をっ!」

『了解っ!!』

既にいつでも回収できるよう待機していたのであろう、クロノが連絡を入れると私達の周りに転送用の魔法陣が展開され周囲は光に包まれた。

 

Side プレシア

「行ったようね」

遥か上で小さな光が瞬くのを確認した私はそう独り言ちた。

恐らく転送魔法の輝きだ。

ならば彼女たちは無事脱出できたのだろう。

「全く、世話を焼かせてくれるわ・・・」

脳裏に浮かぶのはさんざんケンカを売って来たあの憎たらしい銀髪の小娘、そして・・・。

「・・・フェイト」

アリシアの出来損ない、どうしようもないお人形、私の・・・。

「・・・・・・」

そこまで考えた所で私はかぶりを振った。

そうよ、あの子は私の娘なんかじゃない。

娘じゃない筈だ、なのに、なのに何で・・・。

何で私はあの子を助けたんだろう?

「いいえ、理由は分かっている・・・」

私は寄り添っていた生体ポッドに目を向ける。

「アリシア・・・」

虚数空間に落ちてすぐの事だった。

ポッドの中で眠っていたアリシアがわずかに動いたのだ。

驚き目を見開いていると微かに、本当に微かに彼女の口が動いた。

(フェイトを、たすけて・・・)

声を聴いたわけではない、でも確かにアリシアは私にそう言っているように感じた。

気付けば私は共に落ちてきたジュエルシードから魔力を抽出して落ちてくる二人に向かって放射した。

虚数空間では魔法が使えない、しかし魔力が消滅するわけでは無い。

あれだけの魔力があればあの忌々しいスカリエッティの娘が何とかするでしょう。

「・・・・・・」

思い起こすのは失われたあの日々、事故が起こる前の最後の誕生日に何が欲しいか聞いた時アリシアは言った。

「妹が欲しい」と・・・。

・・・本当はどこかで気づいていた。

フェイトはアリシアにはなれなかった。

しかし決して人形ではなかった。

紛れもない私が生み出した命、アリシアの妹で、私の娘なんだと・・・。

でもアリシアを蘇らせることに必死だった私はどうしてもそれを認められなかった。

認めてしまえば、アリシアに向けていた愛情をフェイトに注いでしまうから。

アリシアを蘇らせるのを諦めてフェイトと生きる道を選んでしまいそうだから・・・。

「本当に私は、気づくのが遅い・・・」

今更あの子に何かしてあげる何でできない。

ならばせめて、あの子の未来が明るくありますように・・・。

そう祈りながら私は目を瞑ると、アリシアを抱きしめながら重力の底に落ちていった。

 




次回、無印編完結です。(多分)

告知
私がお世話になっているTRPGサークル「からあげ会」さんが出しているマブラヴオルタTRPGの上級ルールブックとシナリオ本が夏コミで出ます。
本家マブラヴのシナリオを手掛けたタシロハヤト先生も制作に携わっています。
日時は一日目、8月9日の金曜日、場所は南棟ハ―21bになります。
マブラヴ好きな方もTRPG好きな方も、コミケに参加されるならぜひ立ち寄ってください。
また私がセッションに参加した同TRPGのリプレイ本が三日目、8月11日の日曜日に出ます。
場所は南棟ソ―38b「夕霧じゅぴたー」です。
あ、でも私は売り子とかやっていませんので行っても会えません、あしからず。
でも本は買って欲しいです(圧力)
そんな訳でこれまでと勝手が違うしガッデムホット(めっさ暑いわ)な上に台風も近づいて波乱万丈なコミケですが皆さん身体に注意して楽しいコミケをどうぞ。
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