お姉ちゃんは0番改め機人長女リリカルハルナA's 作:Y.Sman
今回もえらく間が開きましたが何とか投稿です。
色々忙しいですが今年ものんびり続けていくので宜しくお願いします。
そんな、嘘だ・・・。
嘘だよね、嘘だと言ってよバーニィっ!
「いや、その・・・妹じゃ、ないです・・・」
うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~っっっっっ!!!
機人長女リリカルハルナA's
第29話「過去の因縁&予想外の再開なの」
Sideシグナム
この状況・・・当事者ではあるが全く理解できない。
目の前で困惑するテスタロッサと打ちひしがれる彼女の姉を名乗る不審な少女・・・。
管理局の執務官らしいがそれすら疑わしいレベルの不審な存在だ。
それが今器用に空中で突っ伏し、悲嘆に暮れている。
原因は今しがたテスタロッサに「妹ではない」と否定されたからだろうが何故それであれほどまでに・・・それこそ絶望と言えるほどに衝撃を受けているのだろうか?
「・・・・・・」
「・・・えっと、あの」
打ちひしがれているテスタロッサの姉(自称)になんと声をかけようか困惑しているテスタロッサ・・・。
何とも言えない空気に支配されていた戦場だったが不意にテスタロッサ姉(自称)が立ち上がる。
「・・・殺(シャー)っ!!」
かと思えば突然私に斬りかかって来た。
「なんだとぉぉ!?」
Side Out
こんにちは!ハルナお姉ちゃんです!死ねっ!
あ、言っとくけど読者の皆に言ったわけじゃないよ?
今の発言と殺意の矛先は目の前にいる何かどっかで会ったような気がするピンクポニテの女騎士です。
「待て待て待てっ!いきなり斬りかかって来るとはどういうつもりだっ!?」
フェイトに姉であることを否定され絶望と悲嘆に沈んでいたお姉ちゃんとしましてはこのマグマの様に沸き立つ哀と怒りと悲しみのぶつけどころに困っているときにふと気が付いたんです。
いるじゃないか、目の前にちょうどいい相手が・・・。
公務で殴ってよく、何よりフェイトを傷ものにしたという許すまじ相手が・・・!
「そう言う訳だから覚悟しろこん畜生!」
「って、それは明らかに八つ当たりだろうがっ!?」
「そうだよ!」
「開き直るなっ!!」
そんな感じで言葉の応酬を繰り広げながら同時に首から下で刃と魔法の応酬も行います。
イェーガーの銃口部に形成された魔力製の銃剣で鋭い刺突を繰り出すも女騎士は身体を反らして回避。
がら空きになった私の胴体を一閃しようと刃を繰り出します。
「チッ・・・!」
訪れたピンチに私は思わず舌打ちしますが慌てず騒がずイェーガーから手を放して女騎士のデバイスが加速に乗る前に受け止めます。
「何ッ!?」
まさかデバイスを手放すとは思っていなかったのか女騎士の顔に驚愕の色が浮かびます。
そんなチャンスを見逃すハルナちゃんではありません。
「フッフッフンッ・・・!」
右っ!左っ!ローキックっ!
MGS3で鍛えたCQCを女騎士に叩き込みます。
「クッ・・・!」
バリアジャケット・・・いや、恐らくベルカ騎士と思われるので騎士甲冑に阻まれ思ったよりダメージは与えられませんでしたが想定外の徒手格闘技に女騎士は私から距離を取ります。
でもそれこそ私の狙いです。
フェイトに姉否定されたショックから少々自暴自棄になりかけてはいますが、さすがにベルカの騎士相手に白兵戦を仕掛けるような真似はしません。
こうして一度相手の得意な間合いで戦ったうえで肉薄するのは危険だと思わせる・・・一種のブラフですがこれで彼女の全力は封じることが出来ました。
「面白いヤツだな、魔導師だというのになかなか奇妙な技を使う・・・」
「大陸に伝わる武術でね、俗にいう東洋の神秘ってやつだよ」
え?さっきCQCって言っただろって?
嘘は言ってませんよ、これは以前中華キャノン開発の際に中国の奥地より招いた仙人のお爺さんから教わった武術でその名を「チャイニーズ・クリティカル・カンフー」・・・略してCQCとの事です。
・・・うん、言いたいことは分るよ?
これ聞いた時、私もすごい勢いでうさん臭く感じましたからね、「こいつ本当に仙人か?」って・・・。
でもその実力は見た目に違わぬものでこうして目の前の女騎士に接近を躊躇わせることに成功しました。
「だがデバイスを手放したのは悪手だったな、いくら貴様が体術自慢でも徒手空拳でベルカの騎士とやり合えるとでも?」
「武器が無かろうと戦う術はいくらでもあるんだよ?」
あー、やっぱりこいつベルカの騎士だったか・・・。
なんというか方向性は違いますがどことなくゼスト隊長に通ずる何かを感じますし・・・。
しかもその言動と見るからに一品もののアームドデバイス・・・彼女は私みたいな近代ベルカ式を使うなんちゃって騎士じゃなくて正真正銘、古代ベルカ式の使い手足る騎士です。
余裕のある感じで返してみましたが内心ヒヤヒヤです。
やっぱりハッタリかましたのは正解でしたね。
切った張ったガチ勢なベルカ騎士相手に近接戦闘とか手の込んだ自殺もいいところです。
しかし今打った一芝居のおかげで彼女もうかつに斬りかかってきたりは・・・。
「成程、私が思っている以上にこの世界は奥が深いと言う事か・・・しかしだからこそ面白い、死合う甲斐があると言うものだ・・・っ!」
「・・・はぁぁっ!?」
そう思っていた時期が私にもありました・・・。
あろうことかこの女騎士・・・すっごいいい笑顔で斬りかかって来やがりましたよっ!
畜生っ!これだから脳筋ぞろいのベルカ人は嫌いなんだ!何なのコイツら!?薩摩武士なの!?なら私じゃなくて江戸幕府かそうでなきゃ異世界行って黒王様でも相手にしてろよっ!
「・・・イェーガーっ!」
『了解、自立戦闘モード』
女騎士のデバイスが私の首を切り落とすその直前、私の叫びに応じてそれまで重力に従って落っこちていたイェーガーは突如飛翔、ファ〇ネルよろしく浮遊したまま女騎士に目掛けて発砲します。
「何ッ!?」
再び私から距離をとる女騎士、何とかハルナちゃんの愛らしい顔は胴体から離れず済みました。
え?アホらしいの間違いだろって?お前ら後で屋上な?
って、そんな事言ってる場合じゃないっ!
このままチャンバラを続けていても私が負けるのは時間の問題・・・。
カッコ悪いけどここはフェイトの手を借りて・・・。
「って、いない!?」
どゆこと?まさか私を見捨てて!?
な訳ないですね、見ればここから離れた所でアルフと協力して犬耳グラップラーとやり合っています。
どうやら劣勢だったアルフに加勢しに行ったみたいです。
優しいフェイトの事です、きっと私とアルフ・・・どちらの助力に向かうか真剣に悩んだでしょう・・・。
いやー、そんなお姉ちゃんを想ってくれる妹を持てて私は幸せです・・・。
とか思っていると気付けば目の前に刃が・・・。
「あぶなっ!?」
慌てて躱す私。
急いで距離を取ると同様に一旦下がった女騎士でしたが私が飛んできたイェーガーのグリップを握るのと同時に再度斬りかかってきました。
ああそうかいっ!あくまでガチンコをご所望かよっ!
分かったよ!そっちがその気ならとことん付き合ってやろうじゃないかっ!
「イェーガーっ!白兵戦闘モードっ!」
『了承、トレンチ・フォルム・・・』
イェーガーがそう言うと、銃口部に取り付けられていた銃剣が射出されます。
私がそれをキャッチすると柄の部分が伸長し徐々に刃の部分も変形していき・・・。
「おい、まさか『それ』で私とやり合うつもりか・・・?」
予想外の得物を手にした為か、女騎士は唖然としながら私が手にする『それ』を指さします。
「当然っ!こいつの性能を馬鹿にしたら痛い目みるぞ!?」
そう言って私は某サンライズアニメでおなじみな勇者ロボっぽい構えで手にしたスコップ・・・白兵戦等モード、通称「トレンチ・フォルム」に変形したイェーガーの切っ先・・・いや、堀っ先?を女騎士に向けました。
「・・・・・・」
その質実剛健なフォルムに女騎士も恐れ慄いたのかプルプルと震えています。
「ふざけているのか貴様っ!?」
・・・訂正、慄いてたんじゃなくて怒ってたみたいです。
「失敬な、大真面目ですよ!」
全く、戦の名手たるベルカ人のくせにスコップの素晴らしさを理解できないとは嘆かわしい・・・。
古くは古代中東のモスクで聖遺物として祀られ、二度の世界大戦においても最良の白兵戦装備として兵士達から愛され、日本の芸能界においてもスコップを手に頂点に上り詰めたアイドルもいるほどだというのに・・・。
殴ってよし、突いてよし、斬ってよし、掘ってよし、埋めてよしの万能兵器、それこそがスコップなのです!
ちなみに東日本では大きいものが「スコップ」、小さいものが「シャベル」と呼ばれていますが西日本だと呼び方が逆になるそうですので遠方で穴を掘る場合はご注意ください。
「信じられないというならばいいでしょう、地球人が生み出した最高の近接兵器の力その身をもって思い知れーっ!」
そう言って私はイェーガートレンチ・フォルム・・・もう長いからスコップでいいや、手にしたスコップを銃剣よろしく構えると女騎士目掛けて突撃をかましました。
「・・・ちぃっ!」
弾丸よろしく突っ込んできた私に女騎士は応戦します。
突き出された鋭いスコップの先端をデバイスでいなすとそのまま突進、あて身を喰らわせてきます。
「なんのっ・・・!」
それをスコップの柄の部分でガード、勢いを殺したところでイェーガーに死角から発砲させます。
「クッ、レヴァンティンっ!」
『Panzegeist』
イェーガーの弾丸が直撃する寸前、女騎士のデバイスがカートリッジを装填。
彼女の周りにバリアが展開され殺到した魔力弾を受け止めます。
「さすがベルカ式・・・固い」
ちょっとくらいはダメージを与えられると思ったんですがそこはさすがの古代ベルカ、煙の中から現れた女騎士の甲冑には傷一つ突いていません。
「フッ、テスタロッサといいお前といい・・・この時代の魔導師もなかなかやる。いや、それともお前は騎士か?カートリッジを使っているようだが・・・」
「・・・一応書類上は騎士になります」
こんな私ですが自慢じゃないけど聖王協会から正式に騎士号も貰ってたりします。
え?ならもっと騎士らしく正々堂々と戦えって?
チッチッチ・・・わかってませんねぇ、中世の騎士は結構ろくでなしが多いんですよ?
ベルセルクのモデルになったことで有名な「鉄腕のゲッツ」ことゲッツ・フォン・ベルリヒンゲンなんてお前騎士じゃなくて盗賊だろ?ってくらいの悪党だったらしいです。
つまり何が言いたいかというと・・・。
「ならばこの時代の騎士よ、改めて名乗りを上げよう。私はヴォルケンリッターが将、烈火の・・・」
勝てばよかろうなのだー!
なんか女騎士が悠長に名乗り始めたので某チンギスさんとこの騎馬民族よろしく名乗りの途中で攻撃を仕掛けてやりました。
「うぉっ!?き、貴様っ!相手が名乗りを上げているときに襲い掛かって来るなどそれでも騎士か!」
「違うっお姉ちゃんだ!」
「・・・いや、それは今しがたテスタロッサに否定されただろ?」
「・・・ブッコロガス!」
コイツは今言っちゃあいけない事を口にしました!
私とフェイトの姉妹の絆を否定した罪・・・その報いを受けろぉぉぉぉぉぉ!
「ちぇすとぉぉぉぉぉぉ~~~!!」
「ちぃっ!レヴァンティン!」
『シュランゲフォルム!』
吶喊する私に女騎士はデバイスを蛇腹剣へと変形させて鞭のようしならせながら打ち込んできます。
あんなのを喰らったら一瞬でざっくばらんにされてしまいます。
「なんのっ!」
なので対抗してスコップの刃の部分が高速で回転を始めます。
「何ッ!?」
打ち込まれた剣の鞭はドリルのように高速回転するスコップの刃からめとられました。
「ハーハッハッハッ!どうだ!?これで自慢の剣は振るえないぞ!さぁ、武器を置いて大人しく投降しなさい!今ならカツ丼の付け合わせにたくあんもおまけしますか・・・」
そこまで行ったところで私は異変に気付きました。
「・・・ら?」
丁度胸のあたり、そこから腕が生えている。
「・・・ん?」
指の位置からして恐らく左手、細く白魚の様な人差し指と薬指には指輪がはめられている。
「・・・んん?」
そして生えた腕、その伸ばされた先には青白い光の玉が・・・。
「・・・んんん~っ!?」
あ、これやばいヤツだ。
そう思った矢先に件の手は青白い球から何かを吸収し始めました。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」
「シャマルか、助かった。ああ、そいつが終わったら白い魔導師も頼む」
吸われる・・・吸われる・・・吸われ・・・あれ?
「許せ、名も知らぬ騎士よ。我等には為さねばならない目的があるのだ」
・・・何も起こらないよ?
吸われてるように見えたのも見間違いで玉は変わらぬ大きさと光量で輝いています。
「だが卑怯とは言わないでもらいたい、それを言ったら貴様の方が・・・」
と言うかこの手誰だよ?
試しに指でツンツンしてみます。
「え?何っ?」
指で突くと腕がピクリと反応し、困惑した声が聞こえます。
改めて腕を観察するとこの腕・・・私から生えているわけでは無く、何やらワームホール的な何かから出てきているようです。
つまりこの穴の向こうに腕の持ち主がいる。
そしてこの状況でこんな事をしてくる相手はこの結界を貼った術者以外にいない・・・!
「確保ーっ!」
そう判断した私は穴から伸びた腕を逃げないようにガッチリホールドし、そのまま引っ張ります。
「キャアッ!?シ、シグナム~っ!!」
「大体貴様の行動は騎士としての・・・って何事!?」
穴の向こうにいる術者の悲鳴を聞き、延々と独り言をつぶやいていた女騎士が我に返ります。
でも今はそんなことよりもこの術者の方が優先です。
「ふんっ!こんのぉ・・・抵抗しないで出て来ぉーいっ!」
「イタタタっ!無理無理っ!やめてっ!もげちゃう!腕もげちゃうから~っ!」
力任せに引っ張りますが穴が小さいせいで肩から先がつっかえて術者を引っ張り出すことが出来ません。
「いかんっ!その手を放せっ!」
術者の腕をグイグイ引っ張っていた私に女騎士が斬りかかってきます。
「あぶなっ!?」
慌てて避けるも、うっかり術者の腕から手を放してしまいました。
自由になった術者は慌てて腕を引っ込め、ワームホール的な穴も消滅します。
「あーっ!逃げられたっ!」
チクショウ!もうちょっとだったのに~!
「ふぅ、今のは少々肝が冷えたぞ」
悔しがる私とは対照的に無駄にデカイ胸をなでおろす女騎士・・・。
「・・・上等。ならその肝、もっとキンキンに冷やしてやろうじゃないかっ!」
フェイトにお姉ちゃんて呼んでもらえない悲しみに加えて術者を捕まえられなかった悔しさ・・・。
全部まとめてぶつけさせてもらおうじゃありませんか!
改めて女騎士と対峙した私はスコップを構えると一気呵成に飛び掛かりました・・・。
Side シャマル
「はぁ、はぁ・・・あ、あぶなかったぁ・・・」
辛くも危機を脱した私はホッと胸をなでおろす。
本当に、今回の蒐集は驚かされてばかりだ。
「まさかハルナちゃんが本当に管理局の人間だったなんて・・・」
ハルナ・スカリエッティ・・・。
私達の主、はやてちゃんの大事な友達の女の子。
出会った当初は高い魔力を持っていたからもしかしたら管理局の局員なのではと警戒していたのだけれど・・・まさか本当に局員だっただなんて。
しかもシグナムと渡り合えるほど強くて、何より闇の書による蒐集が行えないなんて予想外過ぎるでしょう!?
「でも、どうして・・・?」
どうしてハルナちゃんの魔力を蒐集出来なかったんだろう?
「ううん、考えるのは後。今は・・・」
私は遠くに立つビルを睨む。
その屋上・・・そこに展開された緑色の結界。
中にいる者の傷を癒し、同時に外からの攻撃や干渉を防ぐ厄介な代物・・・。
そこに居る白い魔導師・・・。
ヴィータちゃんが狙っていた高い魔力を持つ女の子・・・彼女が結界から出てくるのが見えた。
それはまたとないチャンス、結界の中にいられたら旅の扉も使えないけれど外に出くれたのなら・・・。
「・・・ゴメンなさい、でもはやてちゃんのためなの」
言い訳なのは分かっている。
はやてちゃんを救うためにはやてちゃんと同じくらいの年の子を襲う事に対する罪悪感。
それから逃れるためだというのは分っている、でも、でもはやてちゃんの為なら私は迷わない・・・!
「座標、確認・・・」
左手を正面に掲げクラールヴィントを展開する。
両手の指にはめられた指輪型デバイス、クラールヴィントの宝石部分が空中に丸い円を描く。
その輪の中・・・旅の扉の先に彼女がいる。
狙うは白い魔導師の少女、その胸の奥にある・・・。
「座行固定・・・捕まえたっ!」
狙いを定めた私は勢いよく右腕を旅の扉に突き入れた。
Side Out
「なのはぁっ!!」
女騎士とのどつき合いに夢中になっていた私はフェイトの叫び声で我に返ります。
見れば顔面蒼白になったフェイトがなのはのいるビルに飛んで行くのが見えます。
なのはの身に何が?そう考えた時、私の脳裏に先ほどの腕だけ術者の存在がよぎる。
しまった!やっぱり確実にとっ捕まえとくんだった!
私に何かしようとして失敗した謎の術者、フリーになったのなら真っ先に狙うのは戦う力の残ってないなのはに他ならない・・・!
ユーノの張った結界に守られているはずですがあのなのはです、私達が戦っているのを見てじっとしていられるわけがありません。
「・・・っ!」
そこまで考えた所で私はフェイトを追ってビルへ飛んで行きます。
「させんっ!」
しかしそれを彼女が許してくれるわけがない。
案の定、女騎士は私の前に立ちはだかりました。
「・・・どけ」
自分でもビックリするくらい底冷えする声がでます。
「退かん」
しかしはいそうですかと女騎士が道を開けるわけがありません。
デバイスの切っ先を向けられた瞬間私の選択肢は一つになりました。
「押し通る・・・!」
そう呟き、私はイェーガーを構えます。
「通さん・・・!」
対する女騎士も不退転の構えでデバイスの切っ先をこちらに向けてきます。
そう、これが今の最善手・・・。
目下最大の脅威は目の前の女騎士。
戦闘中に観察した感じだとこいつが襲撃犯たちのリーダー格の様です。
あの赤いロリっ子やら犬耳マッチョがどれほどの強さかは分かりませんが連中が大人しく指示に従っていると言う事は相応の実力者なのは間違いありません。
仮にフェイトがこの女騎士の相手をしていたら決してなのはにたどり着けません。
その間になのはがどんな目に遭うのか?
だから私がこいつを釘付けにしてフェイトになのはを救出してもらうのが最善です。
なによりこの湧き上がる怒りのぶつけどころとして目の前の相手は正にうってつけでした。
何に怒ってるのか?
今戦っている女騎士か・・・否。
今なのはを襲っている謎の術者か・・・否っ!
私が怒りを向けている相手、それは他ならない自分自身です。
連中の狙いがなのはであることは最初から分かっていた。
なのに私は目の前の女騎士を相手することに夢中になり過ぎてなのはを助けるという一番大切な目的を忘れていました。
結果として今なのはが傷つき、苦しんでいる。
他ならぬ、私のせいで・・・。
「・・・・・・っ!!」
気付けば私は女騎士に肉薄、その首目掛けてスコップを振り下ろしていました。
結果から言うと負けました。
あ、別に私がボッコボコにされた訳じゃありませんよ?
私がシグナムとか言う女騎士に突撃かまして暫くした後、なのはが満身創痍の状態でスターライトブレイカーを発射。
私達を閉じ込めていた結界が破れるのを見た襲撃者一行は散り散りになって逃走しました。
・・・と、言えば聞こえがいいですが実際のところあっちが目的を達成して帰っていったというのが正しいところです。
なのはは命に別状はないもののリンカーコアが著しく衰弱、今しがた父さん達が本局の病院に搬送していきました。
レイジングハートも大破、フェイトのバルディッシュも損傷が酷いとの事。
対して向こうに与えた被害と言えばなのはのディバインバスターがあの赤いチビッ子の帽子を吹き飛ばした事くらいでしょうか。
それもあの女騎士が帽子を修復したみたいなので実質ノーダメージ・・・どこからどう見ても私達の完敗です。
「そっか、追跡は巻かれたか・・・」
『うん、ゴメン・・・』
おまけにエイミィの追跡の手からも逃れたみたいです。
物理で最強なのは知ってましたけどこういった後方支援系でも強いというのは初めて知りました。
『ああ、そうだ。ハルナちゃんが探してた結界の術者、こっちで姿を捉えたから映像送るね』
そう言ってエイミィが送ってきた映像を見て、私は目を見開きました。
「なっ!?」
そんな、バカな・・・!
『ハルナちゃん?』
そんな、まさか・・・。
「こいつ・・・晩ご飯はお鍋だ!」
飛翔する術者、彼女が手から下げたスーパーの袋から覗く品は、間違いなく水炊き鍋の材料でした。
『・・・・・・・・・』
うん、エイミィからの視線が痛いです。
「・・・冗談だよ?」
『本気で言ってたら艦長に言って減給してもらうところだったよ・・・』
何気に怖いことを言ってくるエイミィ・・・妹達に色々買ってあげたいお姉ちゃんにとってそれはあんまりな仕打ちです。
「・・・ロストロギア、闇の書」
『やっぱりハルナちゃんも知ってるの?』
「も」とエイミィが言うと言う事は恐らくクロノも気づいたんでしょう。
闇の書・・・私が管理局、クライドさんに保護されるきっかけとなった存在・・・。
あれからクライドさんは今もあのロストロギアを追っているとの事。
いわばあれはハラオウン家にとって因縁の存在という事です。
「本気でヤバいロストロギアだよ。あれが絡んでくるとなると・・・今回の事件はかなり大事になるかも」
あれが原因で滅んだ世界もある以上、管理局としてもいつも以上に本腰を入れなければいけません。
そう感じた私はエイミィに本局にいるグレアム提督にも事の次第を伝える様に頼みます。
あの人なら事の重大さを理解してくれるはずです。
『うん、分かった・・・!』
エイミィとの通信が切れます。
「・・・はぁ~!」
危なかった、気づかれないかとヒヤヒヤしましたが何とかごまかすことが出来ました。
胸をなでおろしながら私は改めて送られてきた映像を見ます。
闇の書とスーパーの袋を手にした魔導師、今回結界を展開していたと思しき術者・・・。
「・・・これ、シャマルじゃん!」
そして親友であるはやての家族、シャマルの姿に私は叫ばずにはいられませんでした。
次回、突撃隣のヴォルケンリッターw