お姉ちゃんは0番改め機人長女リリカルハルナA's 作:Y.Sman
あと本作の最後の方、ジークアクスの4話観て情緒がグチャグチャな状態で書いたので微妙なので落ち着いたら修正しますw
目を開けると知らない天井・・・ではなく見知ったアースラ医務室の天井でした。
「・・・またこの展開かよ」
機人長女リリカルハルナA's
第33話「ハルナちゃん死す!?デュエルスタンバイなの!・・・いや、勝手に殺すなし」
こんにちはこんばんはおはようございますおやすみなさい・・・Zzz。
え?寝るな?全く、怪我人はもっと労って欲しいもんです。
はい、ハルナ・スカリエッティ・・・現在絶賛療養しています。
うん、多分みんなはこう思ったはずです。「あれ?一話飛ばしたかな?」って・・・。
ところがどっこい残念ながら飛ばしてません!
これは33話、そして前回は32話、しっかり続いてます。
果たして前回から何があったのか・・・え?さっさと言え?はいはい、んじゃ回想という名の本編スタート。
「はい、それじゃあまずベルカ式とは何ぞや?というところから始めます」
前回、謎の魔法少女マジカル☆紙袋がコダ革のアジトを叩き潰した少し後・・・。
現在私はなのはとフェイトにカートリッジシステムについての特別講座を開催中です。
昨夜、各々のデバイスと話し合った結果二人は相棒たちの意を汲んでカートリッジシステムの搭載を了承しました。
そのため、カートリッジシステムの特性や危険性、運用上の注意点などを勉強することになり、その講師役として実際にカートリッジを扱っている私に白羽の矢が立ったという訳です。
ちなみに「白羽の矢が立つ」の語源はその昔、白羽の矢を放って屋根に刺さった家の娘さんを儀式の人柱にしたことから来ているそうです。
あれ?それってつまり・・・。
クロノのヤロウ、それっぽい理由つけて私にめんどくさい仕事押し付けやがったな?!
「ハルナちゃん?」
「いや、何でもない。ただちょっと後でクロノをぶっ飛ばそうと決意しただけだから・・・」
ムッツリ執務官への制裁云々は置いといて、今は講習です。
「まずベルカ式ってのはその名の通りかつて存在した次元世界『ベルカ』を中心に使われていた魔法体系でね、射程や攻撃範囲を度外視・・・つまり射撃戦を捨ててインファイトでのガチンコ勝負に重点を置いてるのが特徴だよ」
この辺はなのはとフェイトも分かってるでしょう。
前回交戦したシグナムとヴィータの二人はいずれも寄って斬るorブッ叩くと言うスタイルでしたから。
「もう一つの特徴はデバイスに組み込まれたカートリッジシステムだね」
そう言って私はイェーガーを起動します。
「カートリッジシステムは魔力を封入したカートリッジを装填、点火して瞬間的に爆発的な魔力を底上げさせることができる画期的な機構なんだけれど・・・」
『ガシャコン』とカートリッジを装填する私、身体に魔力が満ちてくるのが分かります。
同時に微かな、普通の人なら気づかないであろうリンカーコアへかかる負荷も・・・。
「ここからが重要な話。カートリッジシステムは魔力を底上げするけれど急激に流し込まれた魔力は当然使用した人とデバイスに負荷をかける。必要なのはわかるけれどむやみやたらと使用すれば当然デバイスは破損するし使用者のリンカーコアも傷つく、最悪の場合命に係わる危険性もある・・・」
「「・・・・・・」」
私の説明を聞いていたなのはとフェイトの顔が強張る。
大げさに聞こえるかもしれませんが命に係わるのは事実です。
それを私は知っている。
そう・・・今から2年後、なのははガジェトⅣ型との交戦で重傷を負う。
万全なら対応できたであろうガジェットの攻撃、しかし積もり積もった負担や疲労で反応が遅れた結果なのははそれをくらってしまった。
原因は色々あるだろうがその中でもカートリッジシステムの多用は大きな理由の一つだろう。
だから私は脅す様に警告する。
なのはに怪我をさせないために、なのに二人とも緊張した面持ちではある者の怯えた様子はない。
きっと二人は使うのだろう。
大切な人を救うために、無理するのだろう。悲しい今を打ち抜くために無茶するのだろう。
なら、私も二人を追いかけよう。
グイグイ進んでいく二人をたしなめて、叱って、最悪が起こる前に首根っこ掴んで引き留めよう。
それでダメなら・・・そん時は私が体を張って二人を守ろう。
なんたって、私はお姉ちゃんなんだから。
Side なのは
ハルナちゃんの講義から数日後、ついに引き渡しの日になりました。
「いや~、何とか間に合ったよ・・・」
目の下に隈を作ったマリーさんが頭をぼりぼりとかきながら言います。
このマリーさん・・・本名マリエル・アテンザさんはなんでも本局にお勤めしているデバイス専門の技術者で、あとハルナちゃんの友達とのこと。
カートリッジシステムへの換装という予想外の大改造が行われることになったにも関わらずヴィータちゃん達との戦いが控えている現状、納期は遅らせることはできません。
そんな状況にもかかわらず、ハルナちゃんに頼まれて修理と改造を引き受けてくれたそうです。
「「ありがとうございます」」
「あ~、お礼だったら私じゃなくてあっちに行ってあげて?」
そう言ってマリーさんが指さした先は死屍累々と言った感じです。
「はっはっは・・・何だねその顔は?君達、私を誰だと思ってるのかね?天才なめんなよぉ!」
おかしなテンションでそう叫ぶのは目の下にすっごい濃い隈を作ったジェイル先生。
流石にこの短期間ではレイジングハートたちの改修は終わらないという事で急遽ジェイル先生達が助っ人として参加。
それでも三日連続徹夜という強行軍で何とか今日の受け渡しに間に合わせてくれたそうです。
「あ、そう言えばなのは達は合うの初めてだっけ?紹介するね、妹のウーノとクアットロだよ!ほら二人とも、寝てないで挨拶してっ!」
デバイスが無い私達の代わりに警戒に就いていたためデスマーチから逃れたハルナちゃんがそう言って紹介してくれたのは二人の女の人。
ジェイル先生に似た色のウェーブのかかった髪のウーノさん、机に突っ伏して寝ているところをハルナちゃんにゆすられて若干不機嫌そうです。
その足元、床に大の字になって眠りこけてる丸い眼鏡が特徴のクアットロさん、ハルナちゃんが揺らしても全く起きるそぶりを見せない辺り大物です。
「「は、はじめまして・・・」」
寝ているところを起こしてしまったことに罪悪感を覚えつつ私とフェイトちゃんは挨拶をします。
それに対して二人は私達の挨拶に律儀に応えようとして・・・。
「「よろしグゥ・・・」」
途中で寝落ちしてしまいました。
「もぅ、二人とも!挨拶するか寝るかどっちかにしなさい!」
ハルナちゃん、そんな「しゃべるか食べるかどっちかにしなさい」じゃないんだから・・・。
「「ZZZzzz・・・」」
そんなハルナちゃんの叱責に対してウーノさん達はいびきで応えました。
「うーむ、そこで寝る方を選ぶとは・・・さすが私の妹達、欲望に忠実だ」
「ハルナちゃん、そこ自慢げに言うところじゃないから」
得意満面に言うハルナちゃんにすかさずツッコミを入れるマリーさん。
ハルナちゃんとの付き合いの長さはクロノ君以上と聞いた時はさすがと思いました。
ともあれレイジングハートたちも完治、私のリンカーコアも回復して元気いっぱいです!
次にヴィータちゃんたちにあったら必ずお話し聞いてもらいます。
甲高い警報が鳴り響いたのはそう意気込んだ直後でした。
Side Out
Side リンディ
「海鳴市内で緊急事態!」
『観測地点にて結界発生!』
『術式は・・・エンシェントベルカ!?』
エイミィの報告で海鳴市駐屯所・・・ハラオウン邸の面々に緊張が走る。
同時にアースラのランディとアレックスからの追加報告で守護騎士出現の可能性が確信に変わった。
「武装局員、状況を!」
すぐさま急行した武装隊から連絡が来る。
『現地にて捜索指定対象三名を確認!現在初動対応班4名で包囲、結界の破壊を試みていますが・・・」
包囲した武装局員達がバリアブレイクを結界に打ち込むが結界は小動もしない。
『この結界・・・硬すぎる!!』
「増援と執務官を送ります。あなた達はそのまま包囲を維持!」
私の指示に武装局員は『りょ、了解・・・!』と返す。
うちの武装隊は優秀だ。
クロノやハルナさんに鍛えられ、去年まで紛争地帯で実戦を経験していた管理局内でも有数の実力者だ。
そんな彼らが破ることができない結界・・・。
相手がミッド式と異なる古代ベルカ式というのもあるけれどそれを差し引いても相手の実力は相当なもの・・・。
下手な戦力投入は逆に返り討ちにある、ならば・・・。
「クロノ、現地に向かって。エイミィ!」
クロノへの指示と同時に私はエイミィに声をかける。
「はいっ!」
「至急本局に連絡を、ハルナさん達を呼び戻して」
まだ改修されたデバイスの慣らしも済んでいないなのはさんとフェイトさん・・・しかもなのはさんは少し前に退院したばかり。
本音を言えば彼女達を戦いに出したくはない、けれど他に取れる手段がない以上やるしかない。
相手はあの闇の書なのだから・・・。
Side Out
Side シグナム
スカリエッティとの密約で蒐集を続けることが決まってから数日・・・。
我等守護騎士は海鳴で結界を展開した。
狙いは強力なリンカーコアを持った管理局の魔導師・・・そう、テスタロッサだ。
こうしてこれ見よがしに存在を主張すれば我らを捕えに管理局は彼女を派遣して来るはず。
テスタロッサの魔力は並の魔導師のそれを凌駕している、先日蒐集した白い魔導師・・・高町なのはと同等のリンカーコアは夜天の書を潤してくれるだろう。
自称姉のスカリエッティは怒るだろうがそれだけあれば闇の書の呪いもしばらくは停滞する。
同時にテスタロッサという戦力を欠いた管理局側の動きも鈍化し、スカリエッティが主の呪いを解く時間稼ぎになる。
(責め苦は全てが終わってから甘んじて受ける。だから、だから今だけは・・・)
その願いが天に届いたのか、直後結界に侵入して来たのは我らが待ち望んだ者達だった。
Side Out
Side フェイト
守護騎士達が現れたと連絡を受けた私達は大急ぎで海鳴に戻って来た。
エイミィの誘導で既に現地に到着していた武装局員達が結界に開けた穴から結界内部に転送、ビルの屋上で再び彼女達と対峙した。
「来やがったか・・・!」
鉄槌型のデバイスを構えた赤い騎士甲冑の子がこちらを睨みつける。
彼女のすぐそばでもう一人の騎士・・・シグナムもこちらを見ていた。
いつもと変わらない鋭い眼差しで、こちらに何をするでもなく悠然と佇んでいる。
恐らくこちらの準備が終わるまで待ってくれているのだろう。
その姿勢からも彼女が度を越して実直で、清廉な人物であることが分かる。
そんな彼女が何故闇の書を復活させようとするのか・・・。
分からない、でもそれを知る方法を私は知っている。
彼女と話そう。
言葉を交わして、それが叶わないなら何度でもぶつかっていこう。
かつてなのはが私にそうしてくれたように。
だから・・・。
「ぶっつけ本番でゴメンね、レイジングハート」
「バルディッシュも・・・いけるよね?」
デバイスを取り出しながら私となのはは各々の相棒に尋ねる。
『大丈夫、そのための私です』
『問題ありません』
デバイス達の頼もしい返答を聞いた私達は彼らを起動した。
「レイジングハート!」
「バルディッシュ!」
「「セェェットアァァップ!!
直後、私となのはの周りを光が包む。
『起動命令が承認されました』
『新システムの動作チェック開始』
改修後の最後のシステムチェックが始まる。
本来なら受領後の慣らし運転の時に行われるものだが、受け取った直後にシグナム達を発見したためその暇が無かった。
『換装パーツの動作良好、神経接続承認・・・A01からB65まで完了』
『変形機構の確認、異常なし』
再起動中のこの瞬間は完全に無防備な状態であり、攻撃を受けたらひとたまりもない。
その点については待っていてくれているシグナム達に感謝だ。
『メインシステム起動』
『ハーケンフォーム変形準備。最高性能での戦闘可能』
『アクセル・バスター、両モードへの変更が可能になりました。同調率90%を維持』
そのお礼という訳では無いけれど、彼女には全力で立ち向かおう。出し惜しみは一切しない。
『コンディション、オールグリーン。ゲットセット・・・』
『スタンバイ、レディ・・・』
最終チェックが終わったのを確認した私達は改めて相棒の名を、新たに生まれ変わったその名を叫んだ。
「レイジングハート・エクセリオンっ!」
「バルディッシュ・アサルトっ!」
『『ドライブ・イグニッション』』
Side Out
結界の中で閃光が瞬くのが見えた、どうやらフェイト達がデバイスを起動したみたいです。
私は前回同様、クロノと手分けして結界の外で術者・・・つまりシャマルを探して走り回っています。
前回はそれでボロ負けしましたがそれは奇襲を受けたのとフェイト達がベルカ式対策をしていなかったのが理由です。
でも今回は違います。攻めるのはこちら側、加えてフェイトとなのはもカートリッジシステムを引っ提げてリターンマッチに臨んでいます。
元より滅茶苦茶強い二人です、この間のようにはいきません!
そんな訳で私も安心してシャマルを探して・・・いるわけではないんですよねぇ・・・。
「うーん、どうしよう・・・?」
フェイト達の方は心配ないのですが問題は私・・・というかシャマルの事です。
もしここで彼女が捕まっちゃうと芋ずる式に八神家全員がお縄になる可能性があります。
それだけは何としても阻止しなければいけません。
私が見つければ何かと理由をつけて見逃がすことも可能ですがクロノが見つけた場合、何とかして彼女を脱出させる必要があります。
とは言え、クロノを出し抜いてシャマルを逃がすのは生半可なことではありません、さてどうしたものか?
とりあえず探す傍ら、シャマルを逃がす算段を考えることにしますか・・・。
Side ヴィータ
「アイツら・・・!」
シャマルの結界を破って中に入って来たのは二人。
栗毛のチビと金髪のチビ・・・。
間違いない、前回リンカーコアを蒐集した奴と管理局のしょくたく魔導師なハルナの妹・・・妹だっけ?
よく見るとアイツの守護獣・・・いや、使い魔の女もいる。
とにかくアタシらの敵なことに違いは無い。
「二人とももう回復したのか、呆れた回復速度だ・・・」
シグナムの声は言葉とは裏腹にどこか安心した感じだ。
確かにはやてのためとはいえ無関係な奴を襲うのはいい気持じゃないからな。
とはいえ・・・あれだけボコボコにしてやったのにもう復活するとかどんだけ頑丈なんだよ?
「それに、アイツらのデバイス・・・あれってまさか・・・!?」
何よりあいつらの持つデバイスをみてアタシは声を上げずにはいられなかった。
増設されたパーツ・・・あれはまさか・・・!
アタシの予想に答えるかのようにあいつらのデバイスはカートリッジを装填する。
「やはりカートリッジシステムか・・・」
「何だろうが関係ねぇ!ジャマする気ならブッ叩く!」
アタシはアイゼンを構えて空を駆ける。
シグナムとザフィーラもそれに続く。
アタシらの接近に気付いて向こうも飛翔する。
「私達は戦うために来たんじゃない!話を聞いて!」
「教えて!闇の書を完成させようとする理由を!」
声が届く距離まで来たところで二人が言う。
なるほど、確かにハルナの言う通りいいやつらなのかもしれない。
こないだ話し合った時コイツらの話題になった時延々と自慢げに話してたからな。
全く終わらなくてそのまま日が落ちて夜になりそうだったからはやてがハリセンで叩いて打ち切らせたけど・・・。
「あのさぁ、ベルカのことわざにこんなのがあるんだけど・・・『和平の使者なら槍は持たない』」
アタシの言いたいことが理解できないのか二人は顔を見合わせて首をかしげる。
全く、これだからお子様は・・・。
「話し合いをしようって奴が武器を持って来るかよバカって意味だよ!バーカ!」
「なっ・・・!?いきなり有無を言わさず襲ってきた子がそれを言う!?」
ぐっ・・・それを言われると言い返せねぇ。
「それにそれは諺ではなく小話のオチだ」
相手の使い魔と対峙しながらザフィーラがアタシにツッコミを入れる。
てか、アホを憐れむような眼でアタシを見るんじゃねえ!
「うっせー!いいんだよこまけえ事は!とにかく!自慢の新型武装ぶら下げた奴が言う事かよ!」
「・・・私が勝ったら、話を聞いてもらうからね!」
ここまで拒否ってんのに・・・コイツ強情過ぎだろ!
「だー!お前にもう用はねぇんだ!」
こうなったらこいつをぶっ飛ばして撤退するしかねえ。
そうだ、ここで道草食ってる暇は無ぇんだ。
はやてを助けるためにもアイツからリンカーコアを収集しないと・・・!
「これでも食らって眠ってろー!」
アタシはそう叫んで点火したラケーテンハンマーを振りかざし白い魔導師に突撃した。
Side Out
シャマルどこやー!?シャマルどこやー!?シャマルどこやー!?
シャマルおらんやないか!
いやホント、一体どこに隠れてるんでしょう?
どうしよう、このままシャマルが見つからなかったら・・・。
・・・いや待てよ、これ見つからない方がいいんじゃね?
このままシャマルが無事隠れ果せれば八神家は無事脱出出来て幸せ、フェイト達もパワーアップしたデバイスの慣らし運転が出来て幸せ。
みんなwinwinじゃん、よしこれで行こう!
という訳でシャマル、いい子だからそのままクロノに見つからないで・・・。
『ハルナちゃん!クロノ君が目標の守護騎士を発見、拘束したよ!』
畜生、言ってるそばからこれだよ・・・。
Side シャマル
『状況は良くないな。シグナムやヴィータが負けるとは思わんが・・・シャマル、何とかできるか?』
結界の中からのザフィーラの質問に私は顔を顰める。
ザフィーラが言うには結界内の戦闘は拮抗、例の二人・・・なのはちゃんとフェイトちゃんは私達の予想以上に強かったみたい。
何とかしたいのはやまやまだけれど・・・。
私は空を仰ぐ。
快晴の青空、その遥か遠くにたくさんの黒点が見える。
「管理局の増援、武装局員に結界魔導師も・・・対応が早すぎる」
先日増員があったのはハルナちゃんから聞かされていたけれどまさかもう投入して来るなんて。
それにあの結界魔導師・・・なのはちゃんの友達だという彼も最初の交戦でかなりの実力者なのが分かっている。
彼らが現場に到着したら私達に勝ち目はない。
なんとか足止めしたいけれどそうするとシグナム達の脱出をサポートすることが出来ない。
仲間たちを離脱させ同時に管理局の増援を煙に巻く、そんな都合のいい手段ある訳が・・・。
(ううん、一つだけある。だけど・・・)
それをやれば、はやてちゃんを救うという目的から遠のいてしまう。
「動くな!」
私が躊躇していると唐突に背後から声がかけられた。
ゆっくりと振り向けばそこには黒髪黒目で、これまた黒いバリアジャケットの真っ黒な男の子。
(ハルナちゃんが言っていた執務官、たしか・・・クロノ・ハラオウン)
ハルナちゃん曰く、沈着冷静な実力者、それでいて頑固者で・・・あとムッツリスケベ・・・。
なんと言うか最後のインパクトが強すぎる、はやてちゃんには合わせちゃいけない子かも・・・。
「捜索指定ロストロギアの所持、使用の疑いであなたを逮捕します」
ムッツリ・・・もとい、クロノ執務官がそう告げたところで彼の隣に新たな人影が現れる。
「シャ・・・守護騎士を捕まえたってホント!?」
ハルナちゃん!
あぁ、助かった!地獄に仏ってこういう事を言うのね!
「あぁ、ハルナか。見ての通りだ。僕が見張っているから被疑者の武装解除と拘束を頼む・・・」
話しかけているためか、執務官の意識がハルナちゃんの方に向く。
その隙を突いて私はハルナちゃんに助けを求めた。
とは言っても念話を使えばすぐにばれちゃう、なら・・・。
ハルナちゃん!助けて!(アイコンタクト)
そう念を込めて視線を送るとハルナちゃんもそれに気づいたようです。
※ハルナ視点
(何!どんな拷問でも口を割らないからこのまま捕まえろ!?
シャマル・・・なんて忠義に厚い子なんだ・・・!
君がはやてをそこまで思っているだなんて・・・分かった!シャマルの犠牲は無駄にはしない!)
あ、なんかダメっぽい・・・。
執務官に気付かれないようにサムズアップするハルナちゃん。
その眼は何と言うか・・・「お前の犠牲は無駄にはしない!」的な何かを感じます。
マズイマズイ・・・どうしようどうしよう!
みんなは結界の中だし、ハルナちゃんは頼りにならないし・・・!
「抵抗しなければ弁護の機会が貴方にはある。武装を解除して投降を・・・」
執務官がそう言って私がもうダメだと諦めかけたところで・・・。
「てあぁぁぁぁぁっ!!」
鋭い掛け声とともに現れた新たな人影がハルナちゃんを強かに蹴り飛ばしました。
Side Out
「ごふっ・・・!?」
え?なに?何が起こったの?
お腹の辺りに激しい衝撃を受けたと思った直後、隣のビルまで吹っ飛ばされる私。
壁に激突し意識が朦朧とする中、実戦と訓練で繰り返してきたルーチンに従い自身の状況を確認する。
『腹部及びビルに激突した背中に重度の打撲、骨折多数、内臓損傷、脳震盪、脊椎損傷・・・』
判明した被害状況から推察されるに・・・襲撃を受けている!?
P.T事件であのガヤルド某の奇襲を受けた時と似ている状況からしても、何者かが私を攻撃したのは間違いありません。
なんとか先ほどいたビルを見れば・・・。
「はぁっ!」
仮面で顔を隠した男が返す刀ならぬ脚でクロノを蹴り飛ばしていました。
何者だコイツ?
しっかし、声が良いな。声優で例えるなら檜山修之さんでしょうか?
「あ、あなたは・・・」
「・・・闇の書の力を使って結界を破壊しろ。衝撃波で管理局をかく乱できる」
戦闘機人の強化された聴覚がビルの向こうのシャマルと仮面の男の会話を拾う。
シャマルを助けに来たのは間違いないようですが彼女の困惑具合から仲間というわけではないようです。
「でも、あれは・・・」
闇の書の力を使う事を躊躇うシャマル。
あれは闇の書にため込まれた魔力を使います。
つうまり力を使うという事は闇の書の覚醒を先延ばしにするという事。
確かに闇の書の覚醒は遅らせる必要があります、しかしそれははやての体の浸食を加速させるとい諸刃の剣でもあります。
「使用したページはまた増やせばいい。仲間がやられてからでは遅かろう・・・」
「・・・・・・」
諭すように説得されたシャマルは闇のを書を見ながら逡巡しますが、覚悟を決めたのか闇の書を開きます。
それを確認した仮面の男は奇襲から立ち直ったクロノと対峙します。
アイツがクロノとやり合っているうちはシャマルの安全は確保されます。
それは安心なんですが・・・。
「・・・ちっくしょう」
ジュエルシードの時と言い、何でいつも私は大事な時に動けないでしょう・・・。
「闇の書よ、守護者シャマルが命じます。眼下の敵を打ち砕く力を今ここに・・・!」
シャマルが詠唱を始めると結界の直上に紫電を纏った暗雲が立ち込め始めます。
あれが撃ち込まれれば結界が爆散、その衝撃波に紛れて逃走するつもりなのでしょう。
これでひとまず八神家一行の安全は確保されました、なら・・・。
私は何とか動かせる左手でイェーガーを構えます。
標準は上空・・・クロノと戦っている仮面の男!
「お前は何者だ!」
「・・・今は動くな。時を待て、それが最善だとすぐに分かる」
クロノの詰問に仮面の男は答えることはなく、何やら意味深な事を言っています。
発言からしてシャマルを助けたのは何か目的があっての事のようですが関係ありません。
この場で撃ち落として、拘束して、洗いざらいゲロさせてやります!
「はぁ、はぁ・・・インパクト・・・」
仮面の男に悟られないように静かに魔力を充填し、インパクトカノーネを放とうとした瞬間・・・。
「えっ・・・?」
突然、左腕をバインドで拘束され自由を奪われます。
「なん・・・がっ!?」
直後打ち込まれた誘導弾で私の意識は完全に刈り取られました。
「で、冒頭の部分になるという訳です」
病室の時計を見る限り気絶してから3日経っているようです。
いやー、前回みたいに1週間も眠らずに済んでよかった。
「読者への説明は終わったかな?なら早速怪我の状態を説明しようか」
何やら第四の壁を越え始めた父さんがカルテ片手にそう切り出した。
「打撲はまぁ、問題ないね。湿布貼っとけば直るだろう。骨折や内臓の損傷もPT事件の時程酷くはない・・・」
よかった、ならすぐ復帰できますね!
「だが背骨・・・これが一番の重傷だ。バッキバキに砕かれて脊椎もやられてる。私でなきゃ一生寝たきりだったよ」
そう思ってた時が私にもありました・・・。
戦闘機人と言えども身体を支える背骨がやられたら立てませんし脊椎が損傷したら身体そのものが動かせません。
やられた部分は毎度おなじみ、父さん印のクローン技術で精製できるんですが問題はその後・・・。
まずうなじから腰まで、背中を縦にパックリ開いて砕けた背骨を丸々摘出、新しい背骨をつっこんで脊椎と脳を接続するという大手術だったそうです。
ハッキリ言って映像化したらR-18Gのグロ画像になってしまいます。
よい子も見れる安心安全健全な「機人長女リリカルハルナ」ではとてもじゃありませんがお見せできません。
「とまぁ手術シーンはカットするとしてもしばらくは生体ポッドとベッドから出られないからそのつもりでいる様に」
「はーい・・・」
流石に身体が動かせないんじゃあ無断出撃も出来ません、大人しく入院することにしましょう。
「ああ、そうだ。父さん・・・」
「君を足蹴にしたあの仮面男の事なら目下捜索中だよ」
既に予想していたのか、私が聞きたかったことを父さんが教えてくれます。
あの直後、シャマルがどでかい魔法を撃って結界を破壊、その時の爆発に紛れてヴォルケンズもあの檜山仮面(仮)も姿をくらませたそうです。
「しかし、守護騎士達も凄いがあの仮面の男もなかなかやるじゃないか。我々に気付かれず結界内に侵入してうちのハルナを足蹴にしていくとは・・・ククッ、ククク・・・」
あっ、これはヤバい奴です。
「父さんどうどう、私は大丈夫だから・・・」
「おっと、いかんいかん・・・一番つらいのはハルナだというのに・・・すまないね」
私の言葉に冷静さを取り戻す父さん。
まぁ、辛くないと言ったらうそになります。
まだ身体中痛いし、そもそも身体動かないし。
でもそれもリハビリが終わるまでの辛抱ですし、何よりこの借りは1000倍くらいにして返す予定なので・・・。
「それにしてもあの仮面、何者なんだろ?」
「さあねぇ・・・例のガヤルドとか言う少年と同様、転生者という可能性はないかな?」
父さんは転生オリ主の可能性を示唆しましたが私はそれは無いと思います。
例のガヤルド以下略と違い、あの男はなのはやフェイトに何の反応も示しませんでした。
私の様に原作知識を失っている可能性もありますがなら今度は何で物語に介入してきたのかという疑問が生まれます。
私の場合は管理局員なので介入してますが、そうでないあの檜山仮面がわざわざ厄介ごとに首を突っ込む理由が分かりません。
・・・よし、難しく考えるのは性に合いません!いつも通り逮捕してから聞き出そう!
さて、そうなるとまずは怪我を治すことが最優先。
そのために必要なのは・・・そう、栄養です。
そう判断した私はさっそく艦の厨房に連絡を入れました。