お姉ちゃんは0番改め機人長女リリカルハルナA's   作:Y.Sman

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第7話です。
今作で誕生編は終了、次回から新章突入です。


第7話「お姉ちゃん、バレる」

暗い、此処は何処だろう?

「・・・!・・・・っ!!」

何か聞こえる・・・。

「血圧・・・下!・・・にも乱・・・!」

「・・・だ!輸血・・・!」

これは・・・声?

「不可能で・・・こんな身体の・・・前例が無・・・!」

「やるしか・・・!彼女の命が・・・!!」

そっか、そういえばISの使いすぎで身体が限界を超えちゃったんだっけ。

多分私は今手術中で聞こえているのはお医者さんの声なんだ。

どうでもいいけどお医者さんと聞いてエロいイメージが浮かぶ私はかなりアウトかもしれませんね・・・。

とまぁ、アホな思考はそろそろ止めにして・・・やっぱ私死んじゃうんですかねぇ・・・。

あれだけ大量に吐血したって事は間違いなく内臓やられてますしね。

それに先生方の会話からして私を治療することが難しいみたいです。

考えて見ればそうですよね。この時代に戦闘機人なんて私以外に存在しませんもん、治療方法なんて当然ありません。

それなのに妙に他人事に感じるのは私が達観しているのか既に諦めの境地に到達してしまったのか・・・。

あぁ、でも最後にまた父さんに会いたかったです。

あと、出切ればアニメシリーズ3作品分位活躍したかったですし妹にも会いたかったですし栗毛と金髪のツインテ百合カップルやチビだぬきな大阪系少女とかと友達になりたかったですし・・・。

あれ・・・やっぱり未練タラタラじゃね?

「な・・・だ君は!?」

「ここ・・・部外者は・・・だ!」

おや?なんか騒がしくなってきましたよ?

だれか関係者以外が入ってきたんでしょうか?

「許可・・・受・・・る。ここ・・・私に任・・・」

誰かがそう言うと人の気配が少なくなっていきます。

先生方が退出したようです。

「・・・・・・」

何でしょう、誰だか分らない人と密室に二人っきり・・・。

何をされるのか分らない分さっきより一段と不安になってきました。

もしかして薄い本のようなエロい目に!?

「大丈夫だよ」

え?

この声は・・・!?

私は何とかして目を開けようと意識を集中させます。

そしてやっとこさ瞼を開けると・・・。

「とぉ・・・さん・・・?」

今だ焦点の会わない視界の中、父さんが私を見下ろしていました。

しかしそこで気力が尽きたのか私の意識は闇に落ちていきます。

「必ず君を助けてみせるよ、ハルナ・・・」

それが意識を手放す直前に耳にした父さんの言葉でした。

 

機人長女リリカルハルナ

第7話「お姉ちゃん、バレる」

 

「知らない天井だ・・・」

しつこいようですが様式美です。異議申し立ては受け付けません。

とそこで何かが落ちるような音がして其方を見ると看護師さんが立っています。

足下には点滴のパック、これから取り替えようと病室に入ってきたみたいですね。

「目が、覚めたの・・・?はっ・・・!そのまま動かないで!まだ身体は衰弱したままだから!」

そう言って看護師さんは私の枕もとに来ると備え付けのナースコールボタンを押してお医者さんを呼び出しました。

その後は慌てて病室にやって来た先生方に身体に異常は無いか検査されたんですが明らかに違うことを調べてるようにも感じました。

まぁ、先程も言いましたがプロジェクトFなんて影も形もない時代です。

そんな所に超高性能な戦闘機人なんて現れたら大騒ぎになるでしょう。

そして諸々の検査で丸一日つぶれたその翌日。

「こんにちは、スカリエッティさん」

クライドさんがやってきました。

手にはお花と果物の詰め合わせ、どうやらお見舞いに来てくれたみたいです。

「その、身体の具合は大丈夫かい?」

クライドさん、心配してくれていることに嘘偽りは無いようですがどうもそれだけの為にきた訳じゃないようです。

どこか落ち着かないというか警戒しているような素振りですしチラチラとこちらの様子を窺ってきます。

それに各センサーでスキャンしてみれば病室の周りには完全武装の魔導師と思われる人たちが待機しており、何かあればすぐ突入できる状態にありました。

うん。すげー警戒されてますね、私・・・。

まぁ、正体不明の人造魔導師のようなナニカが相手です。警戒するなという方が無理でしょうね。

「はい、おかげさまで」

とりあえず当たり障りの無い返事をしてみましたがさて、どう転ぶでしょうか・・・。

「そ、そうか・・・それはよかった・・・」

クライドさんはそういうとそれっきり黙ってしまいました。

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

沈黙が続きます。

気まずいです!

私こういう雰囲気ダメなんです!

なので先に心が折れてしまいました。

「あの~、何か聞きに来たんじゃありませんか?」

「っ!な、何故そうおもったんだい?」

うわぁ、メチャクチャうろたえてますよ。大丈夫なのか管理局?

結構偉い人なんですからもうちょっと腹芸が出来なきゃだめですよ、クライドさん。

「思いっきり態度にでてますよ・・・それでどうします?続けますか尋問?」

私がそう聞くとクライドさんはガバッという効果音が付きそうな勢いで立ち上がります。

「違う!違うんだ、スカリエッティさん・・・」

全力で否定してくるクライドさん。

助けた女の子にこんなことしたくないんでしょうね。

理想と任務の狭間で葛藤しているようですがどんだけいい人なんですかこの人?

こりゃ余計なことを口走ったらいけませんね。

最悪、最高評議会の送り込んできた暗殺者に消されてしまうかもしれません「お前は知りすぎた」とか「騙して悪いが仕事なんでな」とかいって。

「はぁ・・・そんなに知ってる事は多くありませんよ?」

「・・・すまない」

罪悪感で胸がいっぱいなクライドさんを前に私の身の上の説明を始めました。

とりあえず当たり障りの無い内容を話すとしましょう。

「既に調べたと思いますけれど私の身体は普通じゃありません。人為的に作られた物です」

「では、やはり人造魔導師・・・」

「研究所の人は戦闘機人って呼んでました、文字通り戦うために機械と融合した身体だからでしょう・・・」

その話を聞くや否や顔を歪めるクライドさん。

人間を何だと思ってるんだって顔ですね。

「生まれて3~4年位研究所の中ですごしてきたんですけれども少し前に管理局の強制捜査が入りましてその時に父さん・・・私を生み出した研究員の人に転送ポートで逃がしてもらったんです」

「そしてあの森で守護騎士に襲われて倒れていた、ということか・・・」

そう言ってクライドさんはどこかと連絡を取り始めました。

恐らく最近捜査が行われた研究所の洗い出しをしているのでしょう。

「すみません、大して力になれなくて・・・」

「いや、こちらこそ嫌な思いをさせてしまった。改めて謝罪させて欲しい」

そう言って頭を下げるクライドさんでした。

保身の為に管理局に協力的なポーズをとっておこうと言う下心も少しはありますがクライドさんにはそういった思惑抜きで強力したくなる何かがあります。

これがこの人の人徳なのでしょうね。

それで尋問と言うか事情聴取は終わったのか後は他愛無いお喋りばっかりでした。

クライドさんに私と歳の近い息子さんいる事とか、私と父さんが地球の漫画やアニメを観て盛り上がってた事とか地球つながりでクライドさんの上司兼師匠が地球出身だったとか・・・。

こんな感じに会話が弾んでいたらいつの間にか日が傾いていました。

まぁ、クライドさんがやって来たとき既に午後に突入していたのですから仕方ありません。

看護師のお姉さんが入ってきて面会時間の終わりを告げてきました。

「それじゃあ私はそろそろ行くよ、今日はありがとう。」

名残惜しいですが仕方ありません。

クライドさんだって多忙な中、態々時間を作ってやって来てくれたんですから。

「はい、此方こそありがとうございました」

ですからちゃんとお礼を言わないといけません。

「ああ、そうだ。君の身柄は私が責任を持って護る。だから安心して今は養生してくれ」

更に私が不安にならない様に此処まで気を使ってくれるなんて、もうクライドさんの方に足向けて寝れませんね。

最後に「それじゃあお大事に」と笑顔で言ってクライドさんは病室を出て行きました。

扉が閉まり病室に静寂が訪れます。

「・・・・・・」

病院は静かな場所なのは知っていましたがクライドさんが去った病室はやけに静かで逆に耳がキーンと痛くなるような錯覚すら感じました。

べ、別に一人になって寂しく思ってる訳じゃないんだから!本当だからね!

さて、ほのぼの&ギャグパートはこれ位にして・・・。

「隠れてないで入ってきたらどうですか?」

ここからはシリアスパートといきますか・・・!

声をかけられて観念したのか入ってきたのは一人の男性でした。

本局の青い制服姿の中肉中背40代位の無個性なおじさんです。

人ごみにいたら周囲に溶け込んで絶対に見つけられない。それ位個性と言うものが感じられません。

ガンダムで言うところのGMです。超没個性、同じヤラレメカのザクだってもっと個性があるというのに・・・。

私が思うにきっと名前はジョン・スミスか田中太郎に違いありません。

情報部とかそんな部署の、恐らく最高評議会の息のかかった人でしょう。

「これは失礼しました。隠れている積もりは無かったのですが中々どうして・・・女性の部屋と言うのは入るのを躊躇ってしまっていけない」

場を和ませてるつもりでしょうか?

仮称ジョンさんがジョークを言い放ちますがすげーつまんないです。

これは笑わなきゃいけないんでしょうか?アメリカンコメディのノリでHAHAHA!って・・・。

うん、無理。

「それで何の御用でしょう?面会時間はさっき終わっちゃいましたよ?」

なのでスルーして話を進めてしまいましょう。

「今のジョークは渾身の出来だったのですがね・・・まぁいいでしょう。」

マジで笑いを取るつもりだったんですか?!

部屋に備え付けの椅子に「よっこいしょ」と言って座ってから改めて目の前のおじさんは口を開きます。

「自己紹介がまだでしたね。技術部システム管理課のジョン・田中です」

なんと、本当にジョンさんでしたよ。しかも苗字が田中・・・おもいっきし偽名ですって言ってるようなもんじゃないですか。

おまけに技術部?無個性の癖に眼光だけ鋭かったり身体の重心が全くブレなかったり思いっきり戦闘者じゃないですか。

あなた隠す気ないでしょう?どう見ても最高評議会の刺客ですよ。

「それでその田中さんが何の用で此処に?事情聴取なら先程済みましたよ?」

ここで余計なことを口走ったら田中さんは私を消しに掛かるでしょう。

私だけならまだいいです。返り討ちは無理でも逃げるくらいなら出来るはずです。

問題はクライドさんです。

さっきも言いましたが知りすぎたとかいわれて消されたり、あとは人質にされたりとかしたら私は何も出来ません。

なので下手な手は打たないで様子を見ましょう。

私の前に現れたということは私に何がしかを要求しているのでしょう。

「いえ、なに・・・貴女の今後について話し合いに参上した次第です」

確定。コイツ間違いなくノーミソ老人会の差し金です。

「私の今後ですか?」

とにかく今は無知なフリをして情報を引き出しましょう。

「はい、貴女は現在複雑な立場にいます。違法研究機関の被験体、それだけ観れば被害者として保護される立場です」

「しかし・・・」と田中さんはそこで一回区切ってから話を続けます。

「貴女は非常に強力な力を持っている。使い方を誤れば多くの人を傷つけてしまう程危険な力を・・・。それらは然るべき教育を受けた上で然るべき場所で正しく振るわれなくてはならない。貴女なら理解できますね?」

つまり意訳するとこういうことですかね。

オマエの力はヤバイから管理局の為に使われるべきだ、と。

すげー傲慢な発言ですが本来私は管理局が魔導師不足を補う為に父さんに開発させた戦闘機人な訳であながち間違いでな無いんですよね。

「つまり私は退院後は管理局の預かりになると、そういう事ですか?」

「まぁそう言う事になりますね。具体的な配属先などは追って通達しますので・・・」

なんつぅかこの人、私が管理局入りすること前提で話進めてるよ・・・。

「拒否権とかはあるんでしょうか?」

この手の質問が来ることを予想していたのでしょう。

田中さんは空間ディスプレイを投影してある画像を見せました。

「なっ・・・!!」

それを見た私は文字通り息をのみました。

そこにはバインドで両腕を繋がれた父さんとあの研究所の研究員さん達が連行されている光景でした。

父さんの近くにクイントさんが写っている事からあの日、局員が突入してきた日のものでしょう。

「貴女が正式に局員として管理局に来てくれるのであれば貴女のお父上、スカリエッティ博士との早期再会が叶うのですか・・・いかがでしょう?」

ちくしょう・・・迂闊でした。クライドさんの心配ばっかりしてたせいで父さんの事忘れてましたよ!

そうですよ、父さんあの後御用になったに決まってるじゃありませんか。

口封じに殺されるかと思っていましたが私を縛るための人質にするとは・・・。

こうなっては最高評議会に従わざる追えないでしょう。

「・・・分りました。ご要望通り入局しましょう」

私が大人しく従ったことに田中さんは顔をほころばせます。

「それは良かった。断られたらどうしようかと心配しましたよ」

話は終わったとばかりに田中さんは席を立ちます。

「ただし・・・」

退室しようとする田中さんに私は決して大きな声ではないですがハッキリとした口調で言ってやります。

「私の縁者に何かあった場合はその限りでありませんから。そのつもりでいてください・・・」

父さんだけじゃなくて研究員さん、そしてクライドさん達に何かあったらタダじゃ済まんぞワレェ・・・!と脅しておきました。

最も何かあったらブラフでも何でもなくタダじゃすましません。

アラモ銃器店で全品100%オフの買い物をしてからで羽の付いたカヌーで突入、『デェェェン!』て感じに完全武装してターミネーターと化した挙句爆弾攻勢を開始、首謀者も実行犯もタダの案山子も資本主義者も特殊訓練を受けたゲリラも一人残らず安物のナイフであすたらびすたべいべーした上でカバンにしてやる所存です。

「・・・ええ、承知しました。」

それだけ言って田中さんは今度こそ病室を後にしました。

「はぁ~緊張した・・・」

ガチの工作員と腹の探り合いなんてするもんじゃありませんね。

気力の使い過ぎでお腹がすきました。

食堂に行きたいですがお医者さんの言いつけで病室からは出られません、最もこの体じゃあ立つこともままならないんですけどね。

あ、クライドさんの持ってきてくれた果物がありました。

「頂きます。もきゅもきゅ・・・あ~バナナおいしい」

とりあえず今は養生しましょう、局で働くにしても体が治らなきゃ始まりませんから。

 

Side ジョン・田中

病院を後にした彼、ジョン・田中は通信を入れる。

「私です、ご命令の通り彼女に入局を促しました」

相手は彼の直属の上司、時空管理局最高評議会。

「はい・・・はい。彼女も了承してくれましたよ。ただ・・・」

かわいい孫(最高評議会談)が路頭に迷わない様就職先を用意するという彼らの意向を伝えに来た田中であったが・・・。

「ミズ・スカリエッティは何か勘違いしているようでした・・・」

どうやら説明不足だったらしい。

当の本人は父を人質に服従を迫られたと思ったのか最後に此方を脅すような発言をしてきた。

「釈明しようにもあの様子では信じてくれないと思われます」

結局彼女が真相を知るのは父と再会してからになるのは間違いない。

それまで続くだろうギスギスした関係を想像したジョンは深くため息をつくのであった。

Side out


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