その後は椎葉と仮屋の協力体制でカケラ集めが進んだ。
そして、仮屋はあの1件で保科に対する後ろめたさを感じ、一人で自宅を尋ねる様になった。
「ねえ、保科。仮屋だけど、今大丈夫?」
「……」
これまで海道と一緒だったからなのだろうか、ここで追い返されてばっかりだったのに、今回はすんなりとドアが開いた。エレベーターに乗り、部屋の前まで向かう。謝罪こそできなくても、もしかしたら少しは励ましになるかもしれないと。最低でも学校に行ってない期間の勉強を教えるぐらいは出来るんじゃないかと。なにかしなければという使命感と、後ろめたさで家を訪ねる。
もともと人間関係が希薄だったとはいえ、それなりに知り合いが増えてしまった今、多くの人から届くメールやメッセージを見るたび、その裏に透けて見える悪意にトラウマを掘り起こされる。その中で、なぜだか、仮屋からのメッセージだけは特に何も感じなかった。直接会ってみて、その仮説を確認したいと思っていた保科としては仮屋が一人で訪問する今はとてもチャンスだった。
「お邪魔します」
「……」
「保科、部屋はいるよ」
返事はないものの、拒絶の意志は感じない。ドアをゆっくり開ける。
「保科…」
そこにはやつれた顔、死んだ魚のような目。もう何日も風呂にすら入っていないような、まさに廃人とでも形容すべき様子の保科がいた。
「どうして、オレのところなんて訪ねた」
「それは…!保科が、心配で」
その言葉にウソ偽りはない。ただ、多少のウソを含んでいる。それがいけなかった。
「ねぇ、何を隠しているの」
「なにも隠してないよ、本当に心配なだけで」
「ウソだ、そこまでしてみじめなオレを笑いたいのか」
「違うって!そんなつもりじゃない!」
「ならなんで、オレはこんな感覚を覚えなきゃいけないんだ!」
ふいに仮屋の肩を掴む。焦点が定まらないまま掴みかかったおかげでバランスを崩す、そのまま床に組み敷く形になる。仮屋はされるがまま、押し倒された。
「だから、オレを笑うために来たんじゃないのか、違うのか」
「そうじゃないって!」
「そうやってウソを言って!オレを傷つける!」
無抵抗な仮屋に容赦ない暴力が襲う。しかし、仮屋は動くことができなかった。動いたら自分自身の後悔の念に押しつぶされそうになるから。無理やり服を脱がす。小ぶりな胸が露わになり、それを無理やり揉みしだかれる。それだけで終わることなく、手はゆっくりと下へと伸びていき、ショーツの下の秘部が露わになる。保科はズボンを乱雑に脱ぎ捨て、怒張したモノを無理やり入れていく。それでも仮屋は、動くことなくされるがままだ。
「……」
「保科、本当はこんなことがしたいわけじゃないよね」
「…うっ、うっ……」
自分を組み敷き乱暴を働いた男が、そのままの状態で涙を流している。仮屋はそんな保科を抱きしめ、ただ苦しみを少しでも和らげられたら、とそのままでいた。
保科が不登校になってからもう1月以上が経った。綾地は一応学校には来ているものの、以前のような人当たりの良さはなくなり、ただ義務感から学校に行っているかのようだ。そんなわけでオカ研の活動は次第になくなり、生徒会の組織改編とともに、ついに部室からも追い出されてしまった。学校から保科の痕跡がどんどん消えていく。そんな中でも、仮屋は保科の家を訪ね続けながら欠片集めを続けた。
そして、そんなある日、ようやくカケラが十分な数集まった。
「ふぅ…ようやくあつまったね。それじゃ、魔法を行使するよ」
「ねぇ、もしここで魔法を使ったら、私はどうなるの」
「どうなるも何も、君の願いの性質からして、おそらくは過去の時点にタイムスリップしてしまうんじゃないかな」
絶句した。仮屋にとって、保科とはこの世界の、心を壊されてしまった保科なのだから。仮屋は過去に戻ったとしても、この世界には心を壊された保科が残り、仮屋だけが戻る。そのことはもう、ありえないことだった。
「……ごめん、このカケラ、魔法には使えない。」
「どうしてさ、君はようやっと願いを叶えられるというのにどうしてここで台無しにするようなことを。協力相手の椎葉さんもそれが望みじゃないの?」
「私が使ったところで、この世界の保科は苦しみ続けるんだから。それなら私は、このカケラを使って、少しでも保科の心を埋めるために使う。」
「……実のところ、アルプとはいえ魔女から無理やりカケラを奪うような真似はできないんだ。君がすきにすればいいさ。ただ、これから君との接し方をもう少し考える必要がありそうだけどね」
保科の家を訪ね、いつものように上がる。そして、カケラを保科に向けて開くと、それは保科の身体を包むどころか、周囲をまるごと光で包み込んだ。
「…なるほど、君の選択は間違ってなかったみたいだね。僕との契約も完遂したみたいだ。全く、こんなイレギュラーだらけな魔女なら契約しないほうが良かったかな。」
自他の境界が曖昧になりそうな世界は更に広がり、いつの間にか意識を失っていた。
「あの……保科君、ちょっといいかな?」
それは昼休み、トイレから教室に戻る途中だった。
そして、仮屋和奏はそこにいた。
「……今度は、私が保科の支えになる」
ちょっとネタバラシ。
最後は柊史くんを救うために、その欠片を費やした和奏ちゃん。その結果世界線のリロードが発生し、2周めの和奏ちゃんとstart世界線の最初に戻る結末になりました。
まあ、これに限らず、restartルートのほかヒロインはどんな扱いなんでしょうね。というか和奏ちゃんは付き合っていたわけではないにせよ、突然片思い相手に彼女できたって報告されたらまあ辛そう。
ともあれ今日中に書き終えることができてよかったです。総文字数は12000ほどなので、さほど長くはないかと思いますがなんとか完走できてよかった。