ウマ娘プリティーダービー 短編集   作:ピーナ

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スーパー行って思いつきました。


Tony's kitchen

日本で唯一の国立のウマ娘養成施設、通称『トレセン学園』。地方にいくつかある養成施設よりもあらゆる面で良い環境である。しかし、どれだけ素晴らしい施設でも補えない物がある。その一つが……

 

「故郷の味、恋しい……」

 

大盛りのご飯を食べながらそう呟くのは現役屈指のスターウマ娘である『葦毛の怪物』オグリキャップ。

何も知らない人から見たら、凄い食べているように見えるのだが、胃袋までもが怪物な彼女からしたら、ビックリするくらいいつもより少ない量しかない。

理由は端的に言えばホームシックである。

 

 

 

この学園にいるウマ娘達のほとんどは地方出身であるのだが、トレセン学園に入ってくるような娘達は幼年期教育の段階で同じ学校やトレーニング施設を使っている場合が多く、友人、知人がそれなりにいるから、ホームシックになる生徒は殆どいない。

しかし、オグリキャップはそういった過程を通らず直接地方自治体が開催しているウマ娘レース(ローカルトゥインクルシリーズやご当地トゥインクルシリーズなどと呼ばれているもので、URAの管轄しているトゥインクルシリーズより参加条件などが緩い)に参加して、そこで実力が認められてトレセン学園に入学したという珍しい経緯を持っている。なので、周りに知り合いがいないから、他の娘に比べるとホームシックになりやすい。

まあ、彼女の場合図太い方なので寂しさよりも独り言の通り地元の味を食べたいという思いが大きいのだが。

 

「どうしたの、オグリ?」

 

 

食堂の入口の方から何故か軍手を付けて七輪を持っている女の子が話しかけた。

 

「……トニービンさん、地元の味が食べたいです」

 

オグリに話しかけた茶髪の少女はトニービン。イタリア生まれでヨーロッパ最高のレースである凱旋門賞にも勝った超一流のウマ娘なのだが、凱旋門を制した翌シーズンから日本に移籍してきた。この謎の移籍に向こうのメディアでは移籍の理由について様々な憶測が流れている。

 

「オグリって出身何処?」

「岐阜の笠松。中京レース場が一番近い」

「ふむふむ、よし、このトニーさんに任せなさい!」

 

そう言ってトニービンは、どこからか取り出したバンダナとエプロンを装備して食堂の厨房に向かう。気になったオグリは後ろに着いていく。

 

 

 

さて、厨房は基本的に自由に使う事が出来る。生徒は使った食材を報告しておけば無償で使う事が出来るので何人かの生徒はここで自作の弁当を作っているし、休日にお菓子作りを仲間内でするという姿も見られる。その一角に通称『トニービンゾーン』がある。これはイタリア時代にグルメ本やレシピ本を出版するレベルの美食家で料理人の彼女が地元から持ち込んだ調理器具や様々な調味料、香辛料が置かれ、その品揃えは本職の料理人が足りない物を借りに来るレベルである。

そう、ヨーロッパトップレベルの彼女が日本への移籍を決めた最大の理由は「美味しい物があるから」だった。なので、本来ならレースやらその応援がある休日は日本中を飛び回って様々な料理を食べ歩いている。

 

「少し前にオグリの地元の方に行く機会があってね。その時に食べたのが美味しかったから作ろうと思ってね」

 

そう言いながらトニービンは温めなおしたご飯を荒めに潰し始める。

 

「……五平餅!」

「あ、分かるんだ。外で炭火を作ってて丁度タイミング良くオグリが故郷の味を食べたいって言うから、誘ったんだ。手伝ってくれる?」

「ああ!」

 

トニービンの潰したご飯をオグリが割っていない割り箸に小判型に貼り付けていく。トニービンが下準備を済ませると、外で炭火を作っていた円形の七輪から、お店で焼き鳥なんかを焼くのに使われるのをよく見る長方形の七輪に炭火を移して、形にした五平餅を素焼きしていく。

 

「……たれは?」

「冷蔵庫に作ったのを入れてあるよ。出してきてくれる?」

 

オグリは頷いて、冷蔵庫に向かった。戻ってくると、たれを入れた容器と透明なプラスチック製のタンブラーを持っていた。

 

「これは?」

「ああ、私特製のミックスジュースだよ。ニンジンって寒い時期が旬なんだけど、雪が降る所なんかは一冬雪の中で寝かせるんだって。そうするとそこら辺のニンジンとは一味違ったものになるのよ。そのニンジンをベースに色々入れて作ったのがそれ」

「……飲んでいい?」

「どうぞ」

 

蓋を開けて一口含んだ瞬間、大きく目を見開く。そこからは吸引力の変わらないオグリの本領発揮で一息に飲み干した。

 

「美味い、もう一杯!」

「残念ながらメインのニンジンが残ってないんだ。明日お店から送ってもらうけど、増やせないか聞いてみるよ」

「お金、一杯払います」

「いやいや、適正価格で渡すから」

 

そう言いながら、トニービンは素焼きの餅に自家製たれを塗っていく。辺りには焦げた醤油味噌系のいい匂いが漂っていく。

 

「……この匂い、良い」

「この香りは日本独特だと思うよ。食欲を刺激するズルい香りだね。……あ」

「どうした?」

「いや、この香りを換気扇で外に出してたら、人が来そうだな~って」

「……それまでに食べきらないと」

「しっかり噛んで食べてね。……さてと」

 

腕まくりをしたトニービンは再び作業を始める。廊下の方を向いている彼女の耳にはここに向かってきているいくつもの足音が聞こえていた。

 

「さて、少し腕を振るいますかね」




行ったスーパーで移動販売の車が五平餅を売ってたのを見て、思いつきました。


トニービン

「料理もレースもライブも、皆が笑顔になってくれたら嬉しいよね」

ヨーロッパから日本に主戦場を移した変わり者なウマ娘。
業界一の食通にして料理上手で本の出版やレース場のフードのプロデュース、コンテストの審査員など副業を沢山しているので日本ではトゥインクルシリーズの選手の印象がかなり薄い。
しかしその実力は本物でヨーロッパではいくつものビックタイトルを取っている、スター選手の一人である。



スタートは五平餅を見ていたら大量に食べているオグリが想像できて、誰に作らせようか? でオリキャラとしてトニービンを選びました。
ま、まあ88年のJC一緒に走ってますし。

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