ウマ娘プリティーダービー 短編集   作:ピーナ

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お久しぶりです。第二期決定記念+リハビリがてらに書きました。


メジロ~その血の運命~

ウマ娘達の目標は何処なのだろうか。

ウィンタードリームトロフィーに代表されるドリームシリーズに参加する事? あるいはダービーを勝つ事? それは彼女たちがそれぞれ定めるものである。

ただし、ある一門に属する彼女たちには定められた目標が存在する。その一門の名は『メジロ』。彼女たちの目標とは日本最長G1・天皇賞(春)。

 

 

 

今年、その名前を背負い偉業に挑戦する少女が居る。彼女の名前はメジロマックイーン。彼女には一門の名の他に背負っている物がある。

彼女の育ての親ともいえる、育成年代の師、メジロティターン、さらにティターンの師であるメジロアサマ。メジロの名を背負い日本最長のG1を制した葦毛のヒロイン達である。

名の運命、選手としての血脈の運命を背負い彼女は大舞台に挑む。

 

 

 

(大丈夫ですわ。この日の為に去年の秋から準備をしてきたんですもの。ダービーより、ジャパンカップより、有馬記念より大切な子の舞台の向けて。名の為、先生の為、そして何より共に歩む仲間の為に、今日はかならず勝ちますわ!)

 

マックイーンの事情を理解しているトレーナーはクラシック最終戦の菊花賞後、マックイーンとの話し合いにより翌年の天皇賞(春)に照準を定め、半年準備に費やす事を決めた。

そして、この半年の間マックイーンは既に天皇賞を勝っているスペシャルウィークをパートナーにスタミナの強化とレースのイメージを作ってきた。

京都レース場に詰めかけたファンの目線はマックイーンに注がれる。歴史と伝統の春の盾を賭けたレースの主役は譲れないのだ。

 

 

 

ゲートが開かれる。京都の外回り3200メートルはスタートすぐに三コーナーの上り坂がある。長丁場である事も相まって明確な逃げ戦術を打つ選手が居なければ序盤はペースが上がりにくい。今回も平年通りのペースでレースは進む。

マックイーンは中団の前目、外側でレースを進める。

 

(逃げの選手にも後ろの選手にもプレッシャーを掛けれる位置こそ私にとってのベストの位置ですわ)

 

マックイーンの理想のレースはチームメイトのスペシャルウィークの天皇賞(春)である。逃げる有力馬娘のセイウンスカイのすぐ後ろに位置してプレッシャーを掛けながらレースを進め、後ろからくるメジロブライトと同等の末脚で追撃を凌ぐという、卓越したスタミナと瞬発力が両立しているスペシャルウィークならではの戦法で勝ったのだ。

もちろん、マックイーンにスぺの戦法をそのまま使う事は出来ない。しかし、見習うべき所はたくさんあった。

 

 

 

京都レース場は1~2コーナーがかなり急なカーブとなっている。なのでここで行われる中長距離のレースはコーナー過ぎからの向こう正面でペースがやや落ちる。これはコースの形状的に仕方のない事なのだが、そこにも駆け引きがある。

マックイーンは自分より前にいる選手に少しペースを上げるように見せてプレッシャーを掛ける。G1に出てくるような選手だから、それに反応してしまい、なし崩し的に動いてしまう。それが連鎖して先頭を走る選手のペースまで狂う。

 

(ここで息を入れさせない。向こう正面から坂を超えるまでにどこまで消耗させられるかが鍵ですわ)

 

マックイーン最大の武器であるスタミナを活かすためにはとにかく消耗戦に持ち込ませるしかない。長距離戦の実績なら出場選手の中でもナンバー1なのだが、より自分の土俵に持ち込む事に決めた所に彼女のこのレースに賭ける並々ならぬ思いがある。

 

(仕込みは上々、後は仕上げるだけですわ)

 

マックイーンはセオリー通り坂を下ってから仕掛けた。

 

(坂で仕掛けれるのは天才か頭のネジが外れたバカですわね)

 

坂を下ってすぐでもかなり早い位置でのスパートになる。が、彼女が勝つために作った作戦なのだ。彼女のプライドを賭けた選択だ。

 

 

 

『さあ、第4コーナーを回って先頭はメジロマックイーンに変わった!』

 

最後の直線、場合によっては数秒で展開が二転三転する見ている側からすると非常に面白いのだが、走っている側からするとしんどい。たったの数百メートルなのに今まで走ってきたよりも消耗すると言っている子までいるくらいだ。

しかも、今回はマックイーンの作り上げたとっておきの舞台(しょうもうせん)だ。彼女はそこを先頭で駆けていく。

 

『後ろからの追撃を振り切って今、ゴール! 今年の春の天皇賞はメジロマックイーンが勝ちました! 名門「メジロ」に、師匠に捧げる春の盾!』

 

春の天皇賞は春のシニアクラスのG1では一番権威のあるG1である。そして、そこを勝った彼女は自らの実力でトゥインクルシリーズの主役に名乗りを上げたのだ。

 

 

 

「主役の座は譲りませんわ!」




主役はマックイーンかテイオーで行くつもりでした。二期はテイオーメインっぽかったから、マックイーンの方にしました。

個人的にアニメの公式サイトにあったキャラのキャッチコピーでマックイーンの「主演の座は譲れない」というのが一番好きです。
本作はアニメ寄りで書いたのですが、もしもリアル寄りの世界観で書くとしたら、キャッチコピーをより意識した形になったかなと思います。

マックイーン一回目の天皇賞というのはまさに「この年の主演の座をかけた戦い」と言っても良かったでしょう。
稀代のスターホース、オグリキャップが引退した後不在になった主役の座。その座の最有力候補だったマックイーンの前に現れたのは直前に無敗で皐月を制したトウカイテイオー。ぴったりだったと思いませんか?



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