ウマ娘プリティーダービー 短編集   作:ピーナ

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今までとは違う短編です。3~4話で纏められたらなあ。


二人の3冠ウマ娘シリーズ
2冠ウマ娘と新人さん ついでに未完の大器と絶対王者


私がトレセン学園に入学した頃、トゥインクルシリーズは類を見ない位盛り上がっていたと思う。

 

 

 

数多のウマ娘と同じく私もレースとウイニングライブに憧れた。子供の頃から華やかなスターウマ娘は何人もいた。地方からたたき上げたハイセイコーさん、激しいライバル関係だったトウショウボーイさん、テンポイントさん、グリーングラスさんなど、私達の世代が憧れた物だ。けど、強さの象徴は居なかった。

日本のトゥインクルシリーズにおいて、強さの象徴と言えば戦後初の3冠ウマ娘シンザンさん。大レースを獲り逃さず、当時あった大レースをすべて取った伝説の5冠ウマ娘。彼女を超える事、それがすべてのウマ娘やその関係者の合言葉にいつしかなっていた。

 

 

 

私が入学してすぐの頃、ある一人の先輩と出会った。中長距離がメインだった日本において、短距離に注目を集めさせ開拓していった先駆者、『短距離の絶対王者』ニホンピロウイナー先輩だ。高飛車なお嬢様然とした風貌とは違い、非常に面倒見も良く、私の先代の生徒会長でもあった彼女にデビュー前から目をかけてもらっていた。

 

「ルドルフ。貴女はあのシンザンさんを超えるようなウマ娘になるかもしれないわね」

 

ある時、彼女は私にそう言った事があった。しかし、彼女達の世代には2冠を制し、3冠目にチャレンジする権利を持っていたミスターシービー先輩がいた。ウイナー先輩はシービー先輩と仲が良く、一緒に居る事も多かったのだが、それだからこそ何故私にそんな事を言うのか分からなかった。

確かにその当時から自分の実力に自信はあったし、3冠を狙う心積もりではあったが、『3冠を獲れる』などという言葉を簡単には吐けなかった。

 

 

 

私のデビューが11月の末に決まって、そこへ向かって調整をしていた時、シービー先輩の3冠の掛かった菊花賞の直前の事だった。

遅くまで練習をしていた私が更衣室に戻ると、更衣室の入り口から明かりが漏れていた。誰かいるのか除いてみるとシービー先輩が一人でいた。彼女は一人で脚のアイシングをしていたのだ。それだけなら自己管理の範疇で片付けられた。けど、その横には大量のテープが置かれていた。それから考えられるのは一つだけ。あの人は脚を練習中からテーピングでガチガチに固めていたのだ。

勝負服が珍しくロングパンツスタイルで、練習中もそうなのは慣れるためだと思っていた。けど、それは違った。痛々しいテーピングを誰にも気付かせないため。事情を聴こうと私が室内に入ろうとした時、後ろから止められた。振り向くとウイナー先輩とカツラギエース先輩がいた。

 

 

 

「あー、見ちゃったか。シービーの秘密」

 

更衣室の裏手に連れていかれた私にエース先輩はそう言った。

 

「先輩、シービー先輩のあのテーピングは?」

「あれはアイツの脚の爆弾をかばうためのだよ」

「分かったのはクラシック前の練習中だったかしら。それからずっとテーピングとアイシングでだましだましやっているの。これは他言無用よ」

 

あり得ない。確かに3冠レースは一生に一回だけど、治してからでもシービー先輩の実力なら大きいレースをいくつも勝てると思う。

 

「なんで! なんでそんな事をしてるんですか! おふたりもどうして止めないんですか!?」

「止まらないわよ。あの娘はマイペースだけど頑固で責任感が服を着ているような娘なの」

「アイツは自分に能力があるのを知ってる。だから、3冠ウマ娘になって自分がトゥインクルシリーズの旗頭になろうとしてるんだよ」

「旗頭……」

 

確かに私が入学する直前のトゥインクルシリーズはスター不在だと言われた。中距離までなら『スーパーカー』と謳われるマルゼンスキー先輩がいるけれど、王道路線には何年も核になる存在が居ない。

 

「短距離を狙った私も発展途上なエースもあの娘を止められなかった。きっと、シービーは壊れるまで走り続けるでしょうね。止められるとしたら、あの娘と同じくらい、ひょっとしたらそれ以上の実績を作れる貴女だけよ」

「私だけ……」

 

ウイナー先輩が言った言葉の意味が分かった。距離不安が無ければシービー先輩は3冠ウマ娘になるだろう。そんな先輩を止めれるとしたら、シンザンさんを超えるようなウマ娘じゃないといけない。ウイナー先輩は私にそれを見出したのだ。

 

「デビュー前のルドルフに言うのも酷だと思うけどな。まあ、あんまり気にすんなよ。お前まで怪我したら元も子もないし」

「それに脚に不安があっても、あの娘は正真正銘の怪物よ。ベストディスタンスは中距離までなのに圧倒的な能力とセンスでそんな物を乗り越えるんだから、私達の心配なんて杞憂かもしれないし」

 

そう言ったウイナー先輩の顔には不安の色があった。

シービー先輩の絶大な人気の裏に最後方から最後の何百メートルで全部を抜き去る極端な『追い込み』戦法である事が理由だと言われている。派手だけど、取りこぼしもあるし、シービー先輩ならもっと前でのレースの方が安定して勝てると思っていた。けど、あの極端な戦術は距離適性を誤魔化すための苦肉の策だった。

 

「……1年後、無敗で3冠ウマ娘になって、シービー先輩を倒します。目標は……ジャパンカップ」

「言い切ったな。OK、私もそこまでに自分の走りを完成させるか」

「エースは普段せっかちなのに一部はのんびりなのかしら?」

「私もシービーと同じでマイペースなんだよ。……ルドルフ」

 

真剣な表情で私の名前を呼ぶエース先輩。

 

「無敗って言ったけどレースに絶対は無え。シービーだって負けてる。シンザンさんだってパーフェクトレコードじゃない。それでも挑むのか?」

「はい。私が絶対を証明して見せます」

「そっか……あー、やっぱり私にシリアスは似合わねえわ。こんなのはウイナーの仕事だろ」

「エースは普段からそうしていれば後輩からの人気ももっと出るでしょうに」

 

後輩人気では抜群のルックスと強さを持つシービー先輩が1番人気、才色兼備、文武両道の生徒会長ウイナー先輩が2番人気でエース先輩は3番人気だけど、マイペースで強者のオーラを持つシービー先輩やお嬢様なウイナー先輩より接しやすさでは断然上だ。

 

「疲れるから、やだ!」

「でしょうね。ルドルフ、練習熱心は良いけど、オーバーワークにはならないようにね」

「そーそー。レースが決まってから遅くまで練習してるのシービーも気にしてたからな」

「はい……」

 

秘密の練習を見られていた事は少し恥ずかしい……私が先輩になったら、見ていてもオーバーワークじゃない限り言わないでおこう。




何故かの後輩ルドルフと一個上の世代のウマ娘達のお話でした。
本当はシービーとルドルフの話にする予定だったのですが、アニメの2話で出て来たシービーの勝負服が珍しいロングパンツ(現状分かっている娘ではフジキセキのみ)だったので、その理由を妄想して話を書いてみました。

キャラ紹介もどうぞ今回はシービーです

ミスターシービー

「私は走る事しかできないし、この走り方しかできないからさ」

圧倒的な実力とビジュアルで流星の如く現れた3冠ウマ娘。現在のトゥインクルシリーズを引っ張るスターの一人。
『天馬』と謳われたトウショウボーイに憧れて、学園に入り、同期のニホンピロウイナー、カツラギエースと共にチームを結成し活躍中。
最後の直線で持ち前のスピードと瞬発力を活かし全ての相手を抜き去る極端な追い込み戦法で『魅せる』レースをしながら勝てる稀代のエンターテイナーでもある。
しかし、それは自分の能力を鑑みた苦肉の策であり、本領は中距離とウイナー、エース、担当トレーナーは評している。
自分が今のトゥインクルシリーズを引っ張っている自覚と責任を背負い、怪我を隠しながらレースに出続けている。



実は僕が考えているウマ娘の作品のルームメイトに選んだのがシービーでした。怪我の設定なんかは勝負服を見て思いついた事ではあったのですが、マイペースな頑固者というのはその時に作った性格付けでした。



短編なので次回があるとしたら翌年のジャパンカップになるかなと。史実ではシービーVSルドルフで勝者がエースでしたがこの世界ではどうなるか……
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